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直輝と決意とクリスマスイブ
10話
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俺は愛さんと下山したのだが、2時間足らずで降りることができた。
鋸山はたくさんの仏像に溢れて、時に大仏があったりと神聖な場所のようでもあった。
そろそろ下山も終わりそうなのか、景色がなだらかに変わりつつあった。
「みてみて!猿!」
「まあ、そりゃあ猿くらいいるよ。」
「もうー、冷めてるな。」
彼女は可愛いと繰り返しながら写真を撮っている。
全く……たまに愛さんはこういう無駄と思えるものがとても好きだった。
「そういえば……俺たちどこへ向かってるんだろう?さっきの浜金谷とは違うとこみたいだけど……。」
「……確かに。」
あれ?ここから先はノープラン?
「やばい!全然違う所へ向かってた!」
「え、まじ?」
「んー、どうしよう……このまま浜金谷だと遠いし、この先の保田駅の方が近いかも……ごめん!」
「はは……大丈夫だよ、愛さんもそんなところがあるんだね。」
もう、彼女に対して警戒している自分は完全にどこかに行っていて、このさり気ない幸せを感じてしまっている。
彼女との時間は……本当に楽しい。
☆☆
「……マジか。」
「千葉もなかなか難しいね。」
駅に着くと、1時間以上待つ必要があるみたいだった。
どうやら、たった今電車が行ってしまったらしい。
「どうしたもんかな……。」
このままのんびり1時間待つ……とはいっても、ここは何もないし、すげー寒い。
近くにカフェがあれば良いのだけど……なんて辺りを探してしまう。
すると、彼女は突然立ち上がった。
「あ……愛さん!?急にどうしたの?」
すると、彼女はまた不敵の笑みを浮かべていた。
いつものように少し余裕を持って……俺の手を引いていく。
「直輝くん……小学校いこっか!」
「……小学校?」
そういうと、俺たちは少し広い道に進んで行く。
住宅街をすすんで……まっすぐ進んでいく。
「小学校ってなに!?」
「え……知らない?」
「全くわからん!!」
「そうなんだ、じゃあ面白いかもよ!」
彼女に連れられて……俺は10分ほど歩いて目的地に着く。
そこは、道の駅 保田小学校という場所だった。
そこはかつて学校であった土地で校舎や体育館など形がそのまま残っている。
体育館はマルシェになっていたり、教室がカフェになっていたりと見た事ない景色に俺は唖然としていた。
「……すごい。」
普通、廃校になったらそこはただの廃墟として存在しているのだが、そこは人で賑わっていた。
何よりも、終わることが全てじゃないという地元の人たちのメッセージが込められていて、俺は少しだけ胸が暖かくなる感覚があった。
「テレビでやってたの思い出したんだ!駅の名前とかでピンと来ちゃった!」
「すごい記憶力だね。」
「みて!揚げパンだって、懐かしい~!」
そういうと、彼女と揚げパンを販売しているカフェに足を運ぶ。
きな粉の揚げパンか……中学の頃食べてた気がする。
「なんか、中学校の頃の私たちを思い出すね。」
「俺……2年生の緑化委員にはいるまで愛さん認知してなかったな~。」
「ひど~、私は最初から認知してたんだけど。」
「え……そんな接点あったっけ?」
どうしても彼女との記憶は緑化委員でペアになったことくらいでその時に俺をからかう彼女が怖かったことしか思いつかないんだけど……。
「私、中学入ったらさ……清水くんにめっちゃ狙われてたんだよね。」
「ああ……あの優等生の。」
「私入学したら彼にしつこく迫られた時、助けてくれたんだよ。彼女困ってるからやめな!ってね。」
少しだけこめかみが痛くなる。
そういえば、俺は中学の頃イジメられてたのはその清水って男に恥をかかせてからそこから逆恨みでずっと虐められてたな……なんてぼんやりと思い出していた。
「私……それから、君を見るようになったんだよね。私の事をみろー、とか……私の事好きになれってめっちゃ念じながら見てた。」
「……まじ?」
彼女のことを……怖いと思っていた。
でも、それも含めて彼女からの愛だと感じると……酷く胸を締め付けられた。
もっと早く気づいていれば……いや、この期に及んでifはやめておこう。
でも、彼女は止めなかった。
「私の初恋……直輝くんなんだよね。」
…………。
俺は、何も言うことができなかった。
なぜ彼女がこんなにも俺にこだわるのか……なんて答えはシンプルだ。
彼女はずっと俺が好きで、引きずっていた。
「でも、私捻くれてるから……接点がない時の君への接し方が分からない。ごめん、めんどくさいよね私。」
「そ……そんなことない!!」
どうしてこんなにも狼狽えてるのか……俺にも理解できなかった。
決断は決まったはずなのに……どうにも彼女との未来を歩みたい自分がどこかにあった。
さっきまで美味しかった揚げパンは心拍数が上がった今味がわからなかった。
「そろそろ……時間だ。もう少し君と小学生ごっこしたかったな。」
「なにか、方法はあるんじゃないか?日本に残る方法が!」
「……ないよ。転勤したら私はひとりぼっちになってしまう。それに我が家には仕送りするほどの余裕は無いの。それに、家族と離れるのは……辛い。」
まだまだ一人でいるには若すぎる彼女にとっては、誰か依代が必要だった。
そして、今色んな思いを背負ってる俺にとっては彼女の依代になる器は無かった。
学校という空間で彼女との過ごした時間がフラッシュバックする。
彼女の人生の選択を握っていることに、酷く責任感を感じた。
何が、俺たちにとって幸せなのだろう。
学校のチャイムが優しく……そして、俺に選択を急に迫るかのように鳴り響いていた。
鋸山はたくさんの仏像に溢れて、時に大仏があったりと神聖な場所のようでもあった。
そろそろ下山も終わりそうなのか、景色がなだらかに変わりつつあった。
「みてみて!猿!」
「まあ、そりゃあ猿くらいいるよ。」
「もうー、冷めてるな。」
彼女は可愛いと繰り返しながら写真を撮っている。
全く……たまに愛さんはこういう無駄と思えるものがとても好きだった。
「そういえば……俺たちどこへ向かってるんだろう?さっきの浜金谷とは違うとこみたいだけど……。」
「……確かに。」
あれ?ここから先はノープラン?
「やばい!全然違う所へ向かってた!」
「え、まじ?」
「んー、どうしよう……このまま浜金谷だと遠いし、この先の保田駅の方が近いかも……ごめん!」
「はは……大丈夫だよ、愛さんもそんなところがあるんだね。」
もう、彼女に対して警戒している自分は完全にどこかに行っていて、このさり気ない幸せを感じてしまっている。
彼女との時間は……本当に楽しい。
☆☆
「……マジか。」
「千葉もなかなか難しいね。」
駅に着くと、1時間以上待つ必要があるみたいだった。
どうやら、たった今電車が行ってしまったらしい。
「どうしたもんかな……。」
このままのんびり1時間待つ……とはいっても、ここは何もないし、すげー寒い。
近くにカフェがあれば良いのだけど……なんて辺りを探してしまう。
すると、彼女は突然立ち上がった。
「あ……愛さん!?急にどうしたの?」
すると、彼女はまた不敵の笑みを浮かべていた。
いつものように少し余裕を持って……俺の手を引いていく。
「直輝くん……小学校いこっか!」
「……小学校?」
そういうと、俺たちは少し広い道に進んで行く。
住宅街をすすんで……まっすぐ進んでいく。
「小学校ってなに!?」
「え……知らない?」
「全くわからん!!」
「そうなんだ、じゃあ面白いかもよ!」
彼女に連れられて……俺は10分ほど歩いて目的地に着く。
そこは、道の駅 保田小学校という場所だった。
そこはかつて学校であった土地で校舎や体育館など形がそのまま残っている。
体育館はマルシェになっていたり、教室がカフェになっていたりと見た事ない景色に俺は唖然としていた。
「……すごい。」
普通、廃校になったらそこはただの廃墟として存在しているのだが、そこは人で賑わっていた。
何よりも、終わることが全てじゃないという地元の人たちのメッセージが込められていて、俺は少しだけ胸が暖かくなる感覚があった。
「テレビでやってたの思い出したんだ!駅の名前とかでピンと来ちゃった!」
「すごい記憶力だね。」
「みて!揚げパンだって、懐かしい~!」
そういうと、彼女と揚げパンを販売しているカフェに足を運ぶ。
きな粉の揚げパンか……中学の頃食べてた気がする。
「なんか、中学校の頃の私たちを思い出すね。」
「俺……2年生の緑化委員にはいるまで愛さん認知してなかったな~。」
「ひど~、私は最初から認知してたんだけど。」
「え……そんな接点あったっけ?」
どうしても彼女との記憶は緑化委員でペアになったことくらいでその時に俺をからかう彼女が怖かったことしか思いつかないんだけど……。
「私、中学入ったらさ……清水くんにめっちゃ狙われてたんだよね。」
「ああ……あの優等生の。」
「私入学したら彼にしつこく迫られた時、助けてくれたんだよ。彼女困ってるからやめな!ってね。」
少しだけこめかみが痛くなる。
そういえば、俺は中学の頃イジメられてたのはその清水って男に恥をかかせてからそこから逆恨みでずっと虐められてたな……なんてぼんやりと思い出していた。
「私……それから、君を見るようになったんだよね。私の事をみろー、とか……私の事好きになれってめっちゃ念じながら見てた。」
「……まじ?」
彼女のことを……怖いと思っていた。
でも、それも含めて彼女からの愛だと感じると……酷く胸を締め付けられた。
もっと早く気づいていれば……いや、この期に及んでifはやめておこう。
でも、彼女は止めなかった。
「私の初恋……直輝くんなんだよね。」
…………。
俺は、何も言うことができなかった。
なぜ彼女がこんなにも俺にこだわるのか……なんて答えはシンプルだ。
彼女はずっと俺が好きで、引きずっていた。
「でも、私捻くれてるから……接点がない時の君への接し方が分からない。ごめん、めんどくさいよね私。」
「そ……そんなことない!!」
どうしてこんなにも狼狽えてるのか……俺にも理解できなかった。
決断は決まったはずなのに……どうにも彼女との未来を歩みたい自分がどこかにあった。
さっきまで美味しかった揚げパンは心拍数が上がった今味がわからなかった。
「そろそろ……時間だ。もう少し君と小学生ごっこしたかったな。」
「なにか、方法はあるんじゃないか?日本に残る方法が!」
「……ないよ。転勤したら私はひとりぼっちになってしまう。それに我が家には仕送りするほどの余裕は無いの。それに、家族と離れるのは……辛い。」
まだまだ一人でいるには若すぎる彼女にとっては、誰か依代が必要だった。
そして、今色んな思いを背負ってる俺にとっては彼女の依代になる器は無かった。
学校という空間で彼女との過ごした時間がフラッシュバックする。
彼女の人生の選択を握っていることに、酷く責任感を感じた。
何が、俺たちにとって幸せなのだろう。
学校のチャイムが優しく……そして、俺に選択を急に迫るかのように鳴り響いていた。
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