僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

文字の大きさ
307 / 369
天野家とみんなとハッピーニューイヤー

2話

しおりを挟む
緊張が走るボーリング場、デスソースはまた一際不気味に赤く光を乱反射している。
まるで、これから俺たちの舌を破壊するぞと脅迫しかねない佇まいである。

現在、舞衣がストライク……そして、俺たちはほぼガーターのようなものだった。

次に俺に球が渡される。
……しまった、実はボーリング未経験なんだよな。
一先ず龍の投げ方を研究しよう、あいつはどう投げるのだろうか?

すると、龍は得意げに右端に投げる。
玉は左に回転して、弧を描くと真ん中に向かって行きピンを全て吹き飛ばしたのだった。

「よくやった!褒めて遣わすぞ!」
「うっせえよ!ちんちくりん、てめぇガーターだった癖によ!」
「う……うるさいな。」

龍は、結論からいうと上手かった。
そして投げ方はあまり参考にならなかった。
相手チームはストライクとスペア、いきなり高得点で罰ゲームのデスソースがチラついてしまう。

「……逃げちゃダメだ。」

俺は小さくそうつぶやくと、手汗の書いた球を持つ。
指先が震えて、とてつもないプレッシャーに押しつぶされそうだった。

「な……直輝くん?大丈夫だよ!私……デスソース飲んでも大丈夫だから!」
「いや!ここはしっかりとやらせてくれ!」

彩奈は2cm以上のネイルできたので少し申し訳なさそうだった。なんて彼女は優しいのだろうか?
これがオタクに優しいギャルという生き物なのかもしれない。

俺は、勇気を振り絞り球を投げる。
とにかく、テクニックとかは無くした。
まっすぐ……真ん中に当てるのを意識して、及第点程度に投げると、ピンは真ん中に飛ぶ。

「「「おお!」」」

何とか6本ほどのピンが弾けて俺たちは9点をとった。
なんだ、意外といけるじゃねえか。

「直輝くーん!やるじゃん!」

彩奈がハイタッチを仕掛けた。
俺もそれに合わせてハイタッチをする。
結構……楽しいかもしれない。

「………………。(ビキビキ)」

その様子をみて舞衣は嫉妬をしてるのか笑顔なのに目が笑ってない。
それどころかスチール缶の飲み物が握力で歪んでる気がする。

ゲームは、続行される。
舞衣は相変わらず球速が激しくてストライクを連発していた。

「すげー!佐倉、ターキーじゃんけ!」
「……ふう。ストレス発散にはちょうどいいわ。(チラッ)」

ストライク取る度にドヤ顔でこっち見ないで欲しい。
どうすればいいか分からないから。

俺も少しずつ上達してきた。
まずは転がすので精一杯だったけど、遠心力を使ってる真っ直ぐ投げればおおまかスコアは取れるみたいだ。

たまに手元が狂うけど、何とか食らいついている。

俺たちは1ゲームを終えた。
結果は……暫定ビリである。
やっぱりストライクとか、スペア取らなきゃダメだよな……。

しかし、勝機はある。
意外とみんな球を投げ続けるとスコアがぶれてくる。
特に、舞衣はプロ顔負けのストライク連発……かと思ったらそうでもないみたいだ。

からららーん!!

「おー、スコア8かー。」
「……(むすっ)。」

スタミナ切れなのか少しだけ真ん中からズレてきてるのだ。そして、不機嫌になるとそれもボールの軌道を起こすのだ。
しかも、舞衣の8スコアは右端と左端だけ残してるので一番スペアが回収しずらいのも点数が伸び悩んでる原因だ。

からん!

「ちくしょー!ムズいだろ……これー!」
「1スコアって……あなた、何処に金玉ぶら下げてるのよ。」
「ひでぇ!パワハラとセクハラ同時にぶつけられてるよ!?」

こんな感じのやり取りが続いている。
一方……龍だとこうだ。

ブーッ!
「てめぇ!このちんちくりん、何回線を踏み超えれば学習するんだよ!」
「うっさいわ!……なんで、どこがダメなの。」

こんな感じに明らかにスコアを瑞希が落としている。
本人は少し泣きそうで同じミスを何回も繰り返すか、たまに1~3スコアを取るばかりだった。

そんな彼らを後目に、俺はストライクを叩き出していた。

「きゃー!?直輝くん!上達しまくってるじゃん!かっこいいよ!いえーーーい!」
「あ……ありがとう、彩奈。」

「……ボソボソッ(グシャ)」
「うお!?佐倉どうした!飲みかけのスチール缶がぐちゃぐちゃだぞ!?」

俺は何とか点数を追い上げていた。
順番を逆にして、俺が先に投げて後で彩奈に投げてもらうと、彼女はたまに絶妙なコントロールで残りのピンを回収してくれてるので、順位は一度1位になるほど点数が伸びていた。

全員がアマギフとデスソースをかけて全力になっている。
俺も少しだけ成長している気がした。
最後の球を投げる。

まだまだみんな点数を追い越したりと拮抗していて……誰が勝つか分からなかった。
舞衣も最後の力を振り絞ってストライクを連発する。

俺も負けじとそれに合わせてストライクを初めて出すことができた。
2ゲーム目の最後に人生初めてのストライク……こんなに気持ちの良い瞬間は中々ないかも知れない。

「直輝くん!まだ投げれるよ!」
「まじ?」
「うん!最後だけスペアかストライク出せば多く投げれるルールなんだよ!」

このように、ボーリングには知らないルールはまだ沢山ある。
スポーツはそれでもいい、楽しむためにあるんだと……最後の最後には妙に清々しかった。
汗は冷や汗のようなものではなく、体の芯から温まる良い汗だった。

もう一度球を投げると……再びストライクになる。

「すげーー!直輝、ストライクの神舞い降りてるじゃねえか!!」

ペアである舞衣がストライクを連発するので安全圏内で高みの見物をする飯田が適当な事を言う。
全く……こいつと来たら。

でも、2回もストライクは確かに奇跡かもしれない。
3回目の球を投げる権利を得る。

ここで決めれば……優勝も目に見えている。
しかし、いい事は何度も訪れなかった。

からん

「……4スコア。」
「うおおい!?最後の最後までがんばれよ!?」

最後にちょっと手元が狂ったけど……なんとかやりきる事ができたと思う。
全員がゲームをやり終えて、飯田は集計を手持ち無沙汰だったので終わらせていた。

「はい!お疲れっしたー!じゃあ……順位の発表をします!」

パチパチ……と乾いた拍手が小さく鳴る。
まあ、順位は大体わかるんだけどな。

「2位は……直輝&彩奈チーム!」
「2位か~、微妙やな。」
「直輝くん!めっちゃ頼りになった~!ありがとうね!」

彩奈はめちゃくちゃ感謝してくれた。
艶やかな金髪が揺れて、俺の手を握る。
少し爽やかなシトラスの香りも相まって少しドキッとしてしまった。
彩奈もかわいいんだよな~。

「そして、1位は……俺&佐倉チームー!」
「……あなたほぼ座ってただけじゃない。」
「それは言わないお約束!」

「と……言うわけでビリは虎ノ門&瑞希チームです!罰ゲームとして……デスソースの一気飲みです!あ、そーれ、一気!一気!」

飯田がクソみたいなコールをする。
瑞希は耐性がないのかブルブル震えていた。

「あわわ……ちょっと味見……辛っ!?無理なんだけど!?」

ちょっと可哀想な気もするけど、見守るしか無かった。
すると、龍は突然立ち上がり……瑞希の前に出る。
いけない、キレたか!?
流石にここで暴れられるのは危険だ……俺は臨戦態勢になるけど、そしたら龍はショットを2つもってデスソースを2杯一気飲みしてしまった。

「……へ?」

瑞希は呆気にとられてしまう。
そりゃあそうだ、自分が足を引っ張ったのにその分の責任まで龍が背負ってしまったのだから。

「……へえ、た……たいした……こと……げふっ!」
「おい!?大丈夫か虎ノ門!?水!水を買ってくる!」

急いで瑞希は水を買って龍に差し出すと……全身汗だくの龍がそれを受け取り水を飲み干して、またむせ返っていた。

「なんで!私の分の罰ゲームも引き受けた!私のせいでお前負けたんだぞ!!」
「うるせえちんちくりん。カバーしきれなかった俺の責任でもある。責任はきっちり果たしてもらったからな。」
「お前…………、不良で危険人物だと思ったのにかっこいいとこあんじゃん!!」
「うるせえ、次はちゃんと飲んでもらうからな。」

妙に2人に友情が芽生えていた。

このボーリングは、普段と違うメンツでやったのがとても良くて……普段見ない面とかも見れて楽しかった。
俺も、彩奈と協力するのは楽しかった。

年末のボーリングは、これにて終了である。
普段と違う日常は……これでもかと俺の心を満たしていた。

「直輝くん。」
「お、舞衣。」
「……私、どうだった?」
「相変わらず、かっこよかったよ。まさかこんな長所もあるとはびっくりしたよ。」

俺は彼女の頭を撫でる。
どうやらずっと褒めて欲しかったみたいだった。
舞衣もある意味で犬系の性格をしていて可愛い。

「もう、今年でみんなと集まれるの最後かな。なんかさみしい……。」

どうやら彼女は彼女でこの時間が気に入っていたみたいだった。
俺も楽しくて仕方なかった。
きっと、こんな瞬間はもう大人になったら二度と来ないかもしれない。

俺はなんで空港のあの瞬間で日常を選んだのか、少し腑に落ちた。こんな毎日が……どこまでも好きだったからだ。

「お、佐倉もそう思ってたのか!じゃあ今年の年末は直輝の家で集合しないか?」
「へ?」

突然飯田は俺たちの話を聞いてそんな提案をする。
いや、飯田よ……お前そこまでして俺の母ちゃんに会いたいのか?

「なにそれ!楽しそう!」
「なおっち、年末も勉強教えてやろうか?」
「わ……わたしも!年末は、暇だから……参加してやってもいいぞ!」


それにつられて……龍や瑞希、彩奈まで乗っかる。
おいおい、俺はいいと言ってないんだけどな。

「というわけで……みんな次は天野家でハッピーニューイヤーということにするか!」
「「賛成!」」
「うおーーい!?まだいいとは言ってねえぞ!?」

どこまでも、賑やかで……たまに鬱陶しい日常はまだまだ退屈させることはなかった。
でもどこか……それも楽しみと思っている自分がいて、少し心が踊ってるようでもあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...