僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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雪と温泉とウィンタースポーツ

13話

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白銀の世界は少しずつ見慣れた景色に変わっていく。
長野県の北から諏訪をすすんで、そして山梨へと進む。

俺が目を覚ました頃には、八王子まで来ていた。

「結構……寝ていた。」

みんなも長時間の運転で疲れたのかぐっすり眠っていた。
俺はそれに合わせて大きく伸びをする。
母ちゃんは……無言だった。

俺は後ろの席だったので無理に母ちゃんに話しかけることが難しかったので、少しだけ振り返ることにした。
この2日間、初めての体験だらけですげー疲れたけどとても素敵だった。

生まれて初めてスキーをして、自然の美しさと厳しさを同時に味わった。
そして、その自然と共存をする人々の逞しさとかにも触れた。

それだけでも、俺の心は満たされた気がする。


俺はポケットにあったコーヒーを飲む。
既に冷めていて少しだけ生ぬるくなっているけど、少しだけ頭がスッキリした気がした。
そして、スッキリした頭で胸の内にある不安について考える。

俺は今は偏差値は63がいい所だ。
医学部最低ラインの68にまだギリギリ届いていない。
龍にはとにかく沢山勉強に触れさせてもらって、あとは何度も時間をかけて間違えての反復だと教えて貰っていた。

少し、無謀な挑戦にも思えるけど確実に歩んできてるんだ。もう逃げない、俺は……この2日でとにかくやってみる事の大切さを学んだのだ。
その他にも、人に貢献する尊さを久しぶりに感じた。
全然医者っぽいことはできてないけど、俺はやっぱり医者になりたいのだ。

そう思うと、俺は車の中で静かに決心を固めていくのだった。
この高速道路を真っ直ぐに突き進むハイエースのように、もう曲がることなく真っ直ぐに。

☆☆

「じゃあ……直輝くん、お疲れ様!」
「ああ……また連絡するから。」
「うん!また忘れたら監視するからね♡」

そういって、舞衣はウィンクをする。
本当にやりかねないんだよな。

「わかった!ちょっと気をつけるから!」
「うそうそ!龍くんから勉強の進捗は聞いてるから……たまにでいいからね!」
「そ……そうか……気をつけて帰ってなー!」

そう言って、舞衣やみんなとちょうどいい位置にあったコンビニでお別れをする。
そして、母ちゃんと2人きりになって、ハイエースを返しにレンタカーショップへと進むのだった。

「母ちゃん、疲れてない?」
「んー、ちょっと疲れたかな~。」
「え、ちょっと!?」

さすが母ちゃん……元人気AV女優はフィジカルに溢れてるようだった。

「でも、むしろ頭がスッキリしてる方が勝ってるかも!」
「ああ、それわかる!俺も……この2日間で疲れたはずなのにリフレッシュしたよ。」
「ごめんね、受験勉強で忙しいのにわがまま付き合ってもらって。」
「いや!これから前向きに頑張れそうだよ!今の自分を冷静に見直せるいいキッカケになった!」

むしろ、最近ずっと同じテーブルで勉強ばっかしていたから気が狂いそうだった。
全然上達してる感覚がなくて、諦めそうにもなっていた。

「良かった、直輝最近ずっと疲れてたから……私もどうすればいいか分からなくて、それでスキーとか自然に触れた方がいいのかなと思ったの。いい温泉に入って、それでまた頑張ってくれればいいな……なんて。」

そう母ちゃんは教えてくれた。

「母ちゃんは……俺はこれからどうすればいい?」
「えー!?私中卒だよ。」
「ま……まあ、言われてみればそうだよな。」
「ちょっと、失礼じゃない?」

でも俺は知っていた。
16年前へタイムリープして俺と同い年の母ちゃんを見たんだけど、彼女は親から医者になるように言われていたことを。
そして、そのためにひたすら勉強に明け暮れていたことも知っていた。
母ちゃんはめっちゃエンジョイしてるようだったけどその背景には俺への想いがあったようだった。

きっと、あの災害や俺を産まなかったらこの人は医者になっていたかもしれない……だからそこまで聞いてしまった。

「んー、でも……これだけは言えるかな。」
「へ?」
「ぶっちゃけ、まだまだ医学部に行くほどの勉強時間が足りてないだけなのかなって。」
「うぐ……やっぱりそうか。」

結局のところ、そこに集約される。
テクニックとか科学根拠ではない。そもそもが俺はこんなに勉強してるけど、他の医学部は俺が寝てゲームしてる間も長距離走のように走っていたのだから、俺が突然走ったところで圧倒的な距離差があるのだ。

「でもね、焦っちゃダメだと思う。今一緒に頑張ってる龍くんは独学で偏差値75まであげた子よ。」
「いや、本当にあいつはすごい。」
「すごいと思ったのが、直輝にまずは医学部受験の範囲を広く浅く教えたところなのよね。一通り問題に触れさせればあとは突然繋がって伸びてくる日があると思う。そこまであの子計算してるから将来塾とか開業しそう……なんて思っちゃった。」

…………。
やっぱこの人は分かっていた。
いつも聞いてないようで、鼻歌を歌いながら料理をしてるようで俺たちの行動を理解していたのだ。

「やっぱ、母ちゃんには叶わんよ。」
「ええ、なんでよ。」
「なんでもない、とにかく俺……またがんばるよ!」
「おっけー!」

そういって、レンタカーショップが見えてくる。
俺たちはハイエースを降りて旅を終えるのだった。

でも、今日の旅は終わったのだけどそれと同時に別の旅が始まったような、そんな満たされた感覚で溢れていた。

俺たちは一歩、また一歩と進む。
また知らない世界に出会えるように、知らない自分を見つけられるように。

「さーて!帰ろっか!」
「うん!」

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