僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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月下に灯るメイド長

16話

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プハー……。

もう何度タバコの箱を開けたのだろう。
今日は奇跡的に休みだったけど私は酷くパニックになっていた。
せっかく頑張ってオープンした矢先のこの炎上。
私だけならともかく、ほかの女の子まで傷つける事態になっていた。

明日はみんなに顔を合わせて、私はどんな言葉をかければいいのだろう。
私は酷く悩んで気がついたら目的もなく道を歩いていた。
さらにはネットを見ると私の批判で溢れかえっていて、改めて知名度というのは諸刃の剣だというのがこの身をもって実感した。

「でさー、あれ見た?」
「やばいよね?」

ピクッ

私は隣を過ぎ去る若い子たちの声が妙に耳に入ってきた。心拍数が上がりさらに汗をが滲み出てる気がする。

「ク〇ちゃんがプロポーズしてて…。」

その言葉に肩透かしを食らう。
…なんだ、私のことじゃないのか。

このように街行く人々の噂話が私をさしてるのではないかとビクビクして、私は逃げるように人気の無い公園でブランコに揺られながらタバコを吸っていた。

どうにもニコチンか何かで誤魔化してないと気が狂いそうだった。
気が付けばもう夜遅く、夜の公園はとても静かでボーッとするにはうってつけの時間だった。

そんな時だった、私の耳にキンと冷えたものが耳に当てられ私はびっくりしてしまった。

「……うわぁ!?」
「あっはっは!ことねぇみっけ!」

すると、そこには笛吹さやかがいた。
同じ施設で育った奇妙な友人がえびす顔で隣にいて今も酒に酔ってる感じがした。

彼女は私の隣のブランコに座りゆっくりとブランコを漕いでいた。

「……てか、なんであんたこんなとこにいるのよ。」
「買い出し!れんれんに今日頼まれちゃってさ~、そしたらことねぇゾンビみたいな歩き方で歩いてるんだもん!ビックリしちゃったよ!」

さやかは基本的にSNSとか見ないから、まだ状況を把握してない様子だった。
陽気な彼女の声にこの時ばかりは苛立ちを感じてしまう。

「……1人にさせて。」
「やーだよー!こういう時のことねぇは必ず何かあるときだもん!相変わらずぼっち極めすぎだよ。」

そう言って、彼女は私に缶ビールを差し出す。
そして、いつもの通りニコニコと笑っていた。




しばらく足が冷える感覚に耐えながら私も静かにブランコを漕いでいた。
そして、どうやら全て聞き出さないと立ち上がらない様子のさやかに呆れて素直に話すとする。

「……私の店……炎上しちゃった。」
「え?そうなの?なんで?」
「……恐らく、同業からの複数の犯行、前のメイド喫茶の人物からも写真をリークされてたり、デマもそれっぽく流されてめちゃくちゃネットでディスられてるの。」
「なんだそら!ムカつくじゃん!」

確かにムカつく。
でも、私の気持ちはそれ以上の感情に押しつぶされていた。

「……それよりも、もっと早く対処すればと自分を責めてるの。もっと見てあげればよかったなとか。」
「まあね~、ことねぇ優しいから他の子達の分も心配になるわな。」


私とさやかは同じタイミングでビールを飲む。
ヤケクソになった喉にビールの苦味は心地よく、少しだけ言語化された不安にモヤがかかるようだった。

「……あんたは炎上からは程遠いからいいわよね。」

そんな、冷たい言葉を発してしまう。
彼女なりに気遣ってビールをくれたのに、私はそんな事も気にせず彼女に皮肉をいってしまった。

「え?ことねぇ…何言ってるの?」
「……へ?」
「私もよく炎上してるよー?ほら、前の新作のレビューとか見てちょ!」

笛吹さやかと調べると、恐ろしいほど批判の言葉があった。

笛吹さやか つまらない。
笛吹さやか サイコパス

Googleではそんな心無いサジェストが出てくる。
そして、小説が難しすぎる点や登場人物みんなが気持ち悪いなどあることない事がこれまでと書かれていた。

「ふふん!どーだ、ディスられてる数は負けてないでしょ!」
「……いや、なんのステータスよ。」

呆れてビールを飲んで少し考える。
こんなにディスられてるのに彼女はにんまりと振舞って小説を書いている。
もしかしてとんでもないドMなのかイカれてるのかとか疑ったけど、そんな様子もなかった。

「……あんたは、なんで笑ってるのよ。あんたにも編集部とか、出版とか沢山の人の責任に立ってるはずでしょ?」

そう、彼女の小説は何度でも映画化している。
彼女のパフォーマンスの悪さは損失に直結するのだ。
私と彼女はどうにも分かり合えそうになかった。

でもさやかは手をクルクルと回し、ゆっくりと答える。

「へ?そんなの……好きな事をやらない理由にはならなくない?それにさ……これみてよ!」

すると、彼女の悪口で溢れた掲示板だけど……一つだけあるコメントがあった。

「妻を亡くし、この先も分からない時に出会ったのがこの作品でした。この人に尽くして幸せになる天使のように他人に貢献する素晴らしさに触れて、今一度家族を大切にしようと思います。素敵な作品をありがとう。」

10個の悪口じゃなくて、1個の感動に彼女は喜んでいたのだった。

「このコメントがすっごい嬉しくてさ!なんかこんな書くこと以外空っぽの私でも人に感動与えられるのかと思うと、よりこの仕事が好きになったんだよね!」

そう言ってるさやかは本当に誇らしげに笑っていた。
ただイカれてるだけじゃない。
彼女は嫌われても誰かのためにと小説を書いてるのだった。
まるで最初からアンチがいるのを理解して、それでも前に進むかのような彼女に言葉を失っていた。

そして、私は残りのビールを一気に飲みきる。
まるで自分のマイナスの感情を流し込むかのように。
そして、勢いで包むかのように。

「……ごめん、さやか。少しわかった気がする。」
「あはは!なんかいい顔になったね。」

私は恐れていた。
たくさんの批判に恐れて自分の好きなものさえも失っていた。
好きなものをやって何が悪い。
人に嫌われることが全てな訳がない。

そう理解すると、私はブランコを立ち上がりその場を去ろうとしていた。

「へっへー!どう?私を採用したくなった?」
「……いや、あんたは問題起こすからダメよ。」
「相変わらず酷くない!?」
「……あんたは中途半端にメイドじゃなくて小説家に集中しなさいよ。」

そう言って、答えの出た私はまっすぐ自宅に帰り自分の道を突き進むことにした。
寒さはまだ厳しく私の足を止めるようだったけど、1度決めたら私は止まることはなかった。

「今度酒奢れよー!」

そんな彼女の声が公園に響き、私は静かに手を振る。
そして、親友に背中を押されるかのように公園を後にするのだった。
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