僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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第9章 俺と母ちゃんの富士五湖修行

4話

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高速道路を西へ西へと進む俺たち。

甲府南インターチェンジに降りる予定が間違えて通過してしまい、母ちゃんは慌てふためいていた。

運転もやや小刻みに左右してるので焦ってるのが目に見える。

「直輝ー、どうしよー!母ちゃんペーパードライバーだからこんな時どうすればいいのかわかんない!」

母ちゃんもまだまだ若い。だって32歳なので俺くらいの子供がいるのが珍しいくらいだ。
いつもはしっかりしてるけど、こういう時は年相応だなとおもってしまう。

俺もルートが変わったので現在位置と目的地への照合をしつつ思考こらす。

「あ!甲府昭和だって!ここで降りて引き返そうかな?」
「いや、このまま突っ切ろう。」
「え?どうして?」

俺はルートを眺めて効率も大事だけど……もっと大切なことに気がついたのだ。

「さらに先に双葉があるんだけど、そこから身延という地域に南下して六郷というインターチェンジで降りてから、迂回しても本栖湖に着くことができるみたいなんだ。引き返すよりも効率がいい。」
「そうなんだ!さっすが直輝!」

「もうひとつ……実はこのルート、素敵なルートみたいなんだ。」

☆☆

高速道路を進んで、ナビの赴くままに進んで言った俺たちは谷の狭間のような身延と呼ばれる街について行った。

山々に囲まれて、川が流れ、絵に書いたような自然の風景が普段の都会の喧騒になれた俺たちの目を癒して言った。
都会というのはあまりにも不自然な世界なのかもしれない。
安心感と開放感が全身を包み込む。

「ふー!何とか高速道路降りれたわ~。直輝いて良かった!」
「まあ、これくらいは任せてよ。」
「そうね。このまま東北に行けばいいのね。」
「うん!」

高速道路を下りると、速度で圧迫された鼓膜が緩み聴覚が落ち着く。
今車の中では曲が流れている。

それは、backnumberの「大不正解」という曲だ。
実写版銀魂のエンディング曲でアニメしか見ない俺でも知っている。
子気味良いドラムのリズムとかっこよさが入りまじるギター、そして優しい語りかけるようなボーカルが特徴的な曲だ。

サビで「僕らは完全無欠じゃない原型を愛せる訳じゃない」という個性の歪さを分かち合うような歌詞は行動力の母ちゃんと冷静な俺の個性のぶつかり合いと支え合いを表現しているようだった。

道を間違えたから「大不正解」なのだけれども、それでも道があるのだから世の中は本当によくできているのだと思う。

「ここも案外素敵なところね。」
「そうだね、寧ろ本栖湖を楽しむならこのルートの方が人気だったみたい。多少非効率でもそれを楽しむからこそ、見えてくる感動もあるみたいだよ。」
「なんで人気なの?」
「それは……見てからのお楽しみだよ。」

しばらくすると真っ直ぐ直進する。
そして、曲がりくねった登り道に変わっていった。

運転するには大変そうだけど……この道は自然と調和して言って、景色は上昇して山並みを拝めることが出来るドライバーやライダーには人気の道なのだそう。

「なるほど、この景色を私に見せたかったわけね!」
「めっちゃいいでしょ!だからこのルートは人気があるみたい。でも……この道の醍醐味はまだまだ続くよ。」

山道を超えると、先が見えないトンネルが最後に待ち構えていた。
俺たちは、そこを一気に突っ切る。
車のエンジンが動く音がトンネルの中で反響されてまた鼓膜を押し付ける。

本能的に不安になるけど、その代わり目の前の光がどんどん大きくなっていき、安心感が大きくなって言った。

トンネルを出る。
右を見ると、雲ひとつない景色で雄大な富士山がそびえ立っていた。

「すごいー!!こんなに素敵な富士山初めて見た!」
母ちゃんが感動する。
俺もそんな風景に目を取られ、釘付けになっていた。
富士山は青く彩っていて、上の部分はまだ残雪で白く染っている。夏の本栖湖は風が凪いでいて1000円札でみた逆さ富士がこれでもかとはっきり写っていた。

俺たちは、駐車場に車を停めて外国人たちが写真を撮りまくってるロータリーに立つ。

山の中の風は不思議と涼しさが感じでずっとここに居たい位快適そのものだった。

「自然ってすごいね、神様が作ったみたい。」
「そうだな。」

母ちゃんはその風景をパシャリと写真を取った。

「自然は……私から沢山のものを奪ったことがあってね、母ちゃんは自然が憎い時期があったの。」
「それって……あの沖縄の南海トラフ地震?」
「うん、それ。直輝のお父さんも……おじいちゃんおばあちゃん、母ちゃんの家や親友もみんな自然でいなくなっちゃったの。だから自然が大っ嫌いだった。」

母ちゃんは、少しその過去を忌まわしそうに見つめる。
南海トラフ地震は令和になってから記録的な災害をもたらした災害となっていた。
それだけは知っている。
しかし、それが俺たち以外の家族を無に帰したのはこの時初めて知った。

「でも、今は自然が好き。自然は大きすぎて抗うことは出来ないけど……時に私を受け入れて、優しく語りかけてくれるの。だから今がある、こうして生きているのも自然の1部なんだから。」

母ちゃんの目は希望に満ち溢れていた。
この本栖湖の水のように青く澄んだような瞳で。

家族とこうして腹を割って自然と向き合うことが、こんなに素敵なことなんだと今のこの時間を大切にしたくなった。

「なあ、母ちゃん?俺と父ちゃんって……どんな人だったの?」

少し気になった。
俺は父ちゃんの顔も名前も知らない。
ましてやどんな人だったかさえも知らないのだ。

「そうね……いつかそれについて話そうとは思ってたけど、沖縄の海のようなおおらかで、それでいて穏やかで素敵な人だったよ。」

車に向かって歩く母ちゃんは、金色のポニーテールを左右に揺らしどこかその様子が哀愁と、それを突っ切る勇気を感じた。

「…………行こ!次の目的地。」
「そうだな、ちょっと疲れたし。」

俺たちは木のカーテンを潜りながら本栖湖の周りを進んでいく。
富士山は見る度に少しずつ表情を変えて言った。
富士五湖は富士山とセットで見るものである。

次は……どんな富士山が見えるのだろうか。
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