僕のお母さんは△▽女優

kyonkyon

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第10章 俺の後輩は死にたがり

13話

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俺たちは2両の列車を走らせる。
夏休みの中のこの列車は基本的に部活で高校生が乗っているくらいでとにかく快適そのものだった。

時折、窓を眺めると東に天竜川という巨大な川が流れて、東西には山がそびえ立っていてゲームのオープンワールドを歩いているようだった。

少し目が覚めた、まだ目的の岡谷駅には程遠いのだけれど少しだけ寝ていたことに気がつく。

先程まで膨れ上がった腹は少しだけ空いていた。

「おはようございます、先輩!」

御坂の声が聞こえた、そう……今俺は御坂の肩に頭を寄せて寝ていたのだった。
俺は、咄嗟に御坂から離れる。

「すまん、暑かったよな。」
「いえ!寝ている先輩の寝顔が可愛くて食べたいくらいでした。」
「……相変わらずなんというか、たくましいなお前。」

御坂はたまに俺の想像を超えてくるので恥じらいが不思議と解けてしまう。
普通の女子高生の尺度で見てはいけないのだ。

「……先輩、私のスマホ見てください。」
「ああ?なんだこれインスタ……え……?」

インスタを見ると御坂はヘブンス園原の写真を上げていた。加工はあまりされてなく、周りの星空と調和した御坂や空中散歩をしているような御坂、浴衣を着て全身が濡れた御坂などの写真に対していいねが5000件ほどついていたのだ。

「どうしましょ、プチバズってます。」
「な……なんだと……?」

コメントを見ると、スタイルが抜群で羨ましい!
まるで白雪姫のようだ……などと沢山の褒め言葉が書いてあった。

どうやら俺の提案はほんの少しながら成功を描いていたようだった。

「どんな気持ちだ?」
「承認欲求が満たされて……えへ……えへへ。」

どうやら、また1人SNSで承認欲求モンスターが出来てしまったようだ。
それもあるのだが、フェイスカバーとグラサンをしてえへへへと笑う御坂は危険な不審者そのもので絵面としては少し他人のフリをしたくなった。

「次はー、駒ヶ根ー駒ヶ根ー。」

さて……そろそろ昼飯を食いたくなったな。
トイレも行きたいし、ここで休んでいこうかな?

「なあ、御坂……?次の駅で降りて休憩しないか?」
「あら、先輩……高校生って休憩で入室とかできるんですか?私は全然いいんですけど。」
「お前は致命的な誤解をしてるぞ!普通の休憩な!?飯食うとかそういう意味のな?」
「……なんだ。」

なんでちょっとガッカリしてるんだよ。
御坂の思惑はさておき、ここ駒ヶ根も南信ではそこそこ人気のスポットである。

例えば早太郎という犬を祀った光善寺や、ソースカツ丼が名産らしい。
ソースカツ丼どこにでもある気がするんだけどな。

まあ、そんなことはさておきさっきのカフェから飯を食って2時間とちょっとだとお腹が空いてくる。

少しだけ駒ヶ根を満喫してそこから諏訪に行くとしよう。

俺たちは駒ヶ根駅に降りる。
駅自体は有人駅ではあるものほとんど人の居ない景色になっていた。

「しかし凄いよな~渋谷とか慣れてる俺たちにとって無人駅とか人が少ない駅って別世界のようなもんだよ。」
「ですね。でも……なんかローカルで好きですよ。自然と共存している感じがします。」
「あ、それわかる。」

俺たちは他愛もない話をしながらタクシーを呼んで目的地を光善寺と伝えると、西へ西へと進んで行った。

どうやらこの地域はある意味山に囲まれた谷のような地域なのでひたすら上り坂になっていた。

駒ヶ根市の商店街を抜け、景色は街から農村のような所へ変わっていく……。
そして、森が見え光善寺が見えてきた。

すると、その直前でお城のような建物がある。
俺はそれを見て少しだけ目を逸らした。

「あ、先輩!みてみて、これが田舎のラブホテルですか!休憩……3400円です。」
「……お前、本当に臆しないよな。」
「これ、光善寺に観光に来る人、絶対目に入るから気まずいですよね。特に子どもとか見たらお城ー!とか言って両親からやんわりと話題逸らされるのが目に浮かびます。」

ちょっとわかるというか……それ園児だった頃の俺じゃねえか。
なんでこいつ家にいるのにそういうのだけ解像度が異様に高いんだよ。
そんなしょうもない話題にタクシーの運転手も苦笑いだった。

行きませんよ?行きませんからね?
しかも、タクシーの運転手からみるとフェイスカバーの高身長の変態だからどれだけシュールに見えてるのかは全く想像がつかなかった。

そんなこんなでラブホを抜けると光善寺に到着する。

そこは森林に囲まれた土地になっていて、入口には阿吽の仁王像が立っていて威厳に溢れた門だった。

至る所に柳の木が立っていて、春にはしだれ桜が見えるようだった。

「……凄いですね。私こんなに立派な寺は初めてです。」
「ああ、凄いところだな。」

俺たちは自然の風景に圧倒される。
木も樹齢何百年するんだというくらいの巨木があった。
それを見て御坂は木に抱きつく。

「……何してるんだ?」
「先輩、木って生きてるんですよ。こうして抱きつくと……木が地中から水を吸い上げるような生きてる音がするんです。ほら……聞いてみて!」
「そ、そうか。」

木に抱きつくフェイスカバーの変態の絵面は置いといて、俺は素直に木に耳をあてるとズズ……となんとも言えないような音がした。

まるで木が心臓を刻むような……脈を打つような感じがして生きてることを音で体現しているのだった。
すごいな、こうやって生き続けてるのかと改めて生命の神秘に驚かされる。

「どう?凄いですよね!先輩!」
「……ああ、なんか色々考えさせられるな。」
「次は私の音も……。」
「それは今はやめとく。」

御坂は人との距離感が分からないのでたまにめっちゃ近いときがあるのだが、基本的に恥ずかしいのでその時はドライでいるようにしている。

しかし、御坂にとってはそのやり取りも楽しいようで、一種のスキンシップになっていた。

そうして、森の奥の石畳を1歩、また1歩と進んでいくと奥には木彫りの早太郎の像があった。

「これが、ワンコ神。」
「早太郎な。」

早太郎の像は犬と言われても体調は2m程の大きさを持っており、顔立ちは力強さと威厳を持っていて、犬と仁王像を足して2で割ったような顔立ちをしていた。

「ワンコ神……結構いかつい系でしたね。」
「そうだな、俺が喧嘩しても負けちまいそうだ。」
「この犬……何したんですか?」
「あー、なんか静岡県まで行って化け猿を倒したらしいぞ?」
「え?じゃあ天竜川沿いを下って……飯田や阿智を超えて南に行ったってことですか?歩いて?」
「そう考えると昔の人ってたくましいよな。」
「ワンコが静岡県に行けるんですから、私もまだまだ色んなところに行っていいのかもしれないですね。」
「かもな。」

俺たちは五円玉を賽銭箱に入れてお参りをする。
願い事は……医学部に入れますように。
いつだって願いは変わらない、変えちゃいけないのだ。
早太郎の像はそんな俺を厳しい表情で見届けていた。

御坂を見ると少し長めにお祈りをしていた。
何をお願いしたんだろうか……いや、聞くのは野暮だな。

俺たちは出口を目指すと、売店があった。
軽く見てみるとイヌみくじというのがあった。
どうやら、犬の人形の中におみくじがあるみたい。

「先輩!これ、欲しいです。」
「はいはい。」

俺と御坂はイヌみくじを購入してみる。
御坂は灰色のシンプルな犬のデザインをみてかわいー!なんて言っている。
きっと、そのフェイスカバーの下の綺麗な顔で喜んでいるのだが、今は太陽がそれを見るのを許さなかった。

「きゃー!先輩、私大吉ですよ!いい事あるかもって書いてます!」
御坂は大吉を引いて大はしゃぎだ。
確かに今、知らない世界を見ていて成長をしている御坂は大吉そのものなのかもしれない。

俺もくじを引いてみる。

「あ……。」

引いてみると凶と書いてあった。
内容を見ると勉学、するほど離れていくと書いてありおみくじなんか信じない俺だけど少しだけグサッとくるものがあった。

「ん?あー!先輩……凶じゃないですか!」

それを見て御坂は驚く。
まあ、凶なんてあんまり見ないよな。

「あはは、まあエンタメとしては面白かったよ。じゃあ行くか。」

すると、パシンと御坂は俺の手を掴み売店の方向に歩き出す。
力が強いので俺は振りほどくことができなかった。

「あの、御坂さん?この状況は?」
「買い直します。」
「は?」
「先輩、知ってますか?おみくじって1回だけってルールないんですよ。」
「いや、聞いたことねえよそんなルール。」
「ほら、今度は私と一緒に選びましょ。」

そう言って御坂と一緒に右下のイヌみくじを買う。
意外と御坂はこうなると結構頑固になる。
それだけ俺だけが凶をとることをゆるさなかったみたいだ。

俺はやれやれともう一度くじを引く。

結果は……大吉だった。

「え……。」
「やったー!先輩、状況が逆転しましたよ!バンザーイ!」
「やめろ恥ずかしい!」

しかし、くじを見ると勉学は「このまま進むが良し」と書いてあった。
つまり、頑張りすぎると上手くいかないけど、こうやって御坂と肩の力をぬいて程々に頑張れってことか?

こじつけもいいところだけど、そのこじつけも今は的を得ていてなんとも言えなかった。
御坂は本当に不思議なやつだ。
俺を少しずつ変えていく天才だった。

「御坂、ありがとうな。」
「え?どうしたんですか?」
「俺は凶で諦めるとこだったよ。なんかお前が動いてくれたお陰で大事なことに気がついたよ。」
「えへへ~もっと褒めてもいいですよ。」

そうやって俺たちは木々のトンネルをゆっくり太陽が指す出口を目指していく。

木漏れ日が少しだけ目に入り、木々の葉がなびく音がより自然の穏やかさを表すようだった。
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