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第六話「広大な街と無辺図書館」
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「・・・・・・!!これは・・・・・・!!」
「? マヤ、どうかしました?」
「ああ、マリッサ・・・。今、最高位の魔力を感じたのよ・・・。」
「・・・ケーラさんが来たんでしょうか?」
「いや・・・あの人の魔力とは違うわ。」
「じゃ・・・じゃあ一体・・・・・・!だ、だ、誰なんですか・・・・・・!?」
「・・・・・・・・・そんなにビビらなくても大丈夫よ・・・・・・・・・。」
「ででででも!!」
ギュッ・・・!!
「今は良いわよ、今は・・・。でも、何度も言ってるでしょ?私以外の前では、そんな姿見せちゃいけないわよ!!」
「マヤ・・・・・・。・・・・・・もし、見せてしまったら?」
「・・・・・・・・・あんた期待してるでしょ・・・・・・。」
「き、きき期待!?してませんよ!?お仕置きなんて期待してません!!」
「そ・・・。なら今日は無しで・・・」
「えっ!?」
「・・・・・・。」
「いや、まあ、その、あれですよ!!お仕置きが無いとずっと私ビビり症治りませんよ!!」
「・・・・・・お仕置きしてるから治らないのかも・・・・・・。」
「そ、そんな事無いです!お仕置きしてくれないと!!治りませんから!!して下さい!!お仕置き!!」
「・・・・・・やっぱ期待してるじゃん・・・・・・。」
「してません!!」
草原を抜けた先には、背の高い木々が生い茂っていた。二人は神秘的な森の中を歩きながら、話をする。
「この森を抜けた先に、ヴィーグス・ノヴがあるわ。」
「沢山の知識があるんだよね!」
「そうよ!そこで魔女の世界と魔法に関して、詳しく学ぶ事が出来るわ。」
「いっぱい勉強して頑張る!」
「ふふっ」
「? どうしたの?」
「エミー、とっても元気になったわね。言葉も凄く上手に話せる様になってるし。」
「私、変わった?」
「ええ、成長しているわ。マナちゃん達のお陰ね。」
「うん!皆のお陰!・・・・・・後、どんな感情が解放されてないんだろう?」
「そうねぇ・・・。感情って、とっても沢山あるの。まだ解放されてない感情も、やっぱり色々あると思うわ。でも・・・・・・・・・」
「でも?」
「貴女は、本当に大切な感情を、解放出来た見たい!」
「何て名前の感情?」
「『楽しい』って感情よ!沢山笑ったり、沢山ワクワクしたり!その感情はね、とっても元気になる感情なのよ!」
「そうか・・・。これが楽しいなんだ!」
「皆と過ごした時間でエミーは、とっても大きな『楽しい』を感じたのね!」
「うん!今も楽しい!」
最初、この旅を始めた時から、エミーは既に『楽しい』を感じていた。しかしそれは、抑えつけられた状態でのものだった。けど、今は違う。ゾーエと一緒に歩く事。抑えつけられていない本来の感情を、エミーは感じていた。・・・・・・本当に楽しい・・・・・・!
「ねぇ、エミー。」
「何?」
「さっきも言ったけど、感情って、ほんとに沢山あるの。中には、悲しいとか、辛いとか、少し難しい感情もあるわ・・・。」
「悲しい?辛い?それは、楽しい感じじゃないの?」
「そうね、楽しいとは違うわね。けれど、それも大切な感情なのよ。」
「そうなの?」
「ええ。その感情があるからこそ、成長していく事もあるわ。悲しい感情を持っているからこそ、人の悲しみを一緒に感じてあげる事が出来る。辛い感情を持っているからこそ、辛い思いをしている人を支えてあげる事が出来る。それも、大切な事よ。」
「うん。」
「魔女の世界にはね、一つ、昔から受け継がれてきたものがあるの。」
「なに?」
「・・・『思いやりと慈愛を持って生きる』・・・。私達魔女は、その精神を受け継いでいるの。この世界に争いが無くて平和なのは、その文化があるからなのよ。」
「思いやり・・・慈愛・・・。」
「そう。思いやりはね、人の事を思って、その人を助けてあげたいって、そう思える心なの。そしてそれは、人の悲しみや苦しみを、理解してあげられないと持てない心なの。だから、思いやりを持つ為にも、大切な感情なのよ。」
「分かった。私も、思いやりを持つ!」
「ええ。大切なものを見つけていきましょう!」
夕暮れになり、ゾーエは家を出す。
ガチャ・・・ ギィィィィ・・・・・・
「ただいまー!」
「おかえり!ただいま!」
「おかえりゾーエ!」
二人は早速晩ご飯の準備を始める。
「ふんふふ~んふふ~♪」
「上機嫌ねエミー!」
「楽しいから!」
エミーは楽しそうに支度をする。ゾーエはいつもの様に料理を始める。すると・・・
ペタペタペタ・・・・・・ジーーーーーッ・・・・・・
エミーがキッチンに駆け寄って来て、材料をジーッと見つめる。
「・・・・・・・・・どうしたの?」
「料理・・・・・・・・・やってみたい!」
「えぇ!?」
「駄目?」
「んー、駄目っていうか・・・・・・。」
料理は刃物も使うし火も使う。・・・・・・エミーが怪我したら大変だ・・・・・・。でも・・・・・・。
「・・・・・・・・・そうね。これも経験よね!じゃあエミー!料理手伝ってくれる?」
「! ・・・・・・うん!」
ゾーエが踏み台を持ってくる。エミーはその上に立った。
「・・・・・・!」
エミーは初めて、高い目線でキッチンを見た。背伸びだけでは見えなかった材料や調味料、調理具が沢山ある。
「すごい!」
「初めて見るものもいっぱいあるでしょ?」
「うん!・・・・・・今日は何作るの?」
「グラタンよ!」
「グラタン!気に入ってる!」
「ふふっ、じゃあグラタン作り始めましょっか!」
「うん!」
「ゆ、ゆっくりね!?指切っちゃ駄目よ!?」
「大丈夫だよ!気を付けてるから!」
ストン・・・・・・!
「・・・・・・ふぅ・・・。」
「ゾーエは心配性だね。」
「だってぇ・・・・・・エミー初めて包丁持ったんでしょ?心配になるわよ・・・・・・。」
「でもちゃんと切れた!」
「うん!上手よエミー!」
「えへへ」
ゾーエが見守る中、エミーは野菜を一口大に切っていく。・・・・・・初めて二人で料理を作る・・・・・・。それは、二人にとって心の暖まる楽しい時間だった。
「よし!これでオッケー!後は、表面に焼き目がつくまで待てば完成よ!」
「料理・・・楽しい!」
「良かったわ!」
「これからも手伝って良い?」
「ええ、良いわよ!少しずつ覚えていきましょう!」
「うん!」
「そろそろかしら。」
二人は、キッチンに併設されている石窯の中を覗く。
「わぁ!焼けてる!ねえゾーエ!もう食べれる?」
「そうね!良い感じに焼き目ついてるし、そろそろかな!」
ゾーエはゆっくりと、グラタンを取り出す。そして二人は、いつものソファに向かう。
「「いただきます!」」
「わぁ!この野菜、私が切ったやつ?」
「そうよ、エミーが切ってくれた野菜が入ってるのよ!」
「なんか・・・・・・凄い!」
「いつかエミーも、色々な料理が作れる様になるわよ。」
「うん・・・頑張る!」
シューーーーーーーー・・・・・・・・・
「じゃあ、出発しましょうか!」
「うん!今日のお昼に街に着くの?」
「そうね、このペースなら昼頃には着くわよ。」
二人は歩き出しながら、会話をする。
「とっても大きい街なんでしょ?」
「ええ。この世界でも有数の大都市よ。ヴィーグス・ノヴっていう街でね。かつての魔女の言葉で『広大な街』っていう意味なの。」
「どんくらい広いの?」
「そうね、街の広さで言うと、端から端に歩いて行くまでに、丸二日掛かるくらいかしら。」
「・・・・・・・・・広い・・・・・・・・・!」
「そして街には、ある建物があるの。そこが目的の場所よ。広さで言うと、そうね・・・・・・。街の数十倍はあると思うわ。・・・・・・いや・・・・・・もっとあるかしら?」
「? 街にあるのに、街より広いの?」
「ええ。魔法によって、屋内だけ別の空間になってるのよ。屋内を別の空間に繋げているの。」
「なんか・・・・・・想像出来ない・・・・・・。」
「エミー、あそこは物凄く広いから、勝手にどっか行っちゃ駄目よ。迷子になっちゃうから。」
「そんなとこで迷子になったら・・・・・・見つけてもらえない?」
「そんな事は無いわよ。けど、時間は掛かるでしょうね。だから、一人になっちゃ駄目よ!」
「わ、分かった!」
二人は森の中を歩き続ける。何時間歩いただろうか。ようやく遠くの方に、森の切れ目が見えてきた。
サァーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・
森から出た瞬間、心地良い風を感じる。木から離れた葉っぱ達が、風に乗って飛んでいっている。そして少し離れた位置に、とても大きな城壁の様なものがあった。周りの背の高い木々よりも、更に大きな入口が壁にある。・・・・・・ここが、広大な街、魔女と魔法に関しての全てがあるとされる『ヴィーグス・ノヴ』だ。
「・・・・・・・・・・・・わぁ・・・・・・・・・・・・凄い・・・・・・・・・・・・・・・!」
「来たわねエミー!ここがヴィーグス・ノヴよ!大きな入口でしょ?」
「うん・・・!人もいっぱい居る!」
並木道の先にある大きな入口には、小休憩が出来るベンチが沢山置いてある。そこには、魔女達が座って色々な話をしていた。
「じゃあ、街に入りましょっか!」
「うん!」
最初の頃、エミーは知らない人に対しての警戒心も強く怯えている様子だったが、今のエミーは平気そうだ。・・・・・・これもあの日のお陰だろう。
大きな入口を二人は潜る。そして、遂に街の中に入った。
「・・・・・・・・・賑やかなとこ!色んな建物がある!」
広くとられている石畳の道に、レンガ造りの建物が並ぶ。道沿いに建つ建物は今まで見てきた家とは少し違う雰囲気で、外に椅子と机が置かれており、魔女達がそこで食事をとっている。花が沢山置いてある建物もあれば、ガラス張りで中がよく見える建物もある。様々なシルエットを模した鉄製の看板が、壁から出ているフックにぶら下がっている。
「あの建物は何?」
「ああ、あれは『お店』よ。食事をとったり、色々な物が売られていたりするの。看板がぶら下がってるでしょ?あのシルエットで、何のお店か分かるようになってるのよ。例えば、食事をするとこはフォークとナイフのシルエットが、お花屋さんにはお花のシルエットが模してあるの。」
「凄い・・・・・・色んなお店がある!」
「でしょ!寄ってみる?」
「! ・・・・・・うん!寄ってみたい!」
「丁度お昼時だし、お店で食べましょっか!」
「うん!」
二人は近くにあるレストランに向かった。
「凄い!お家とは雰囲気が違う!」
「エミーはお店に入るの初めてだもんね!」
「うん!」
とても広く、良い雰囲気のオシャレな内装だ。二人は外が見える窓際の席に座った。
「はい、エミー!これがメニューよ!」
ゾーエはエミーにメニュー表を渡す。エミーがワクワクしながらそれを開くと、そこには沢山の料理が写っていた。
「・・・・・・・・・凄い!色んな料理が写ってる!ゾーエ!見た事無いのもあるよ!」
「ふふっ、好きなの頼んで良いからね!」
「沢山ある・・・・・・・・・どうしよっかな!食べた事無い料理にしよっかな!・・・・・・・・・これ!これ食べた事無い!これは何?」
エミーが気になる料理を指差す。
「それは『モンタナーラ』って言う料理よ!とっても美味しいわよ!」
「これ、美味しそう・・・・・・。これにする!」
「じゃあそれ頼みましょっか!」
二人はモンタナーラを頼んだ。
二人がいつもの様に話をしていると、女性が料理を持って来た。
「お待たせしましたー!モンタナーラ二枚です!ごゆっくりどうぞ!」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!!!・・・・・・わぁ~!ゾーエ!これどうやって食べるの!?」
「これはね、一枚の生地を六つに切り分けてあるの。端の方を持って食べるのよ!」
「なるほど・・・・・・・・・・・・こう!?」
「そう!それで食べてご覧!熱いから気をつけるのよ。」
「うん!」
フー・・・フー・・・パクッ・・・!
「・・・・・・・・・! 美味しい!もんたなーら美味しい!」
「美味しい料理でしょ!色んな街に色んな料理があるの。美味しいものが沢山あるわよ!」
「! 楽しみ!」
昼ご飯を食べ終わった二人は、外に出る。まだまだ明るい。二人は少し店を回る事にした。
「このお店は何?」
「ああ、雑貨屋さんね。色々な物を置いてる店よ。」
「どんなのが置いてあるの?」
「日用品とか、お菓子とか。家に飾る物とかも置いてあるのよ。入ってみる?」
「うん!」
二人は、ガラス張りで中がよく見えるそのお店に入って行く。
カランカラン・・・・・・
「! 何か鳴った!」
「ああ!・・・・・・・・・扉の上を見てご覧。」
「・・・・・・・・・木?」
「ええ。木をぶら下げているのよ。開けた時に音が鳴るの。こういう物も、ここでは売られているのよ。」
エミーは中を見渡す。沢山の物が置いてある。
「・・・・・・・・・不思議な物がいっぱいだね!」
「面白いでしょ?」
「うん!・・・・・・・・・これは何?・・・・・・鳥の羽根みたいだけど、すっごくキラキラしてる・・・・・・!」
「それは羽根ペンって言うのよ。あ!それ良いわね・・・。・・・・・・これは、ガラスで出来た羽根ペンね!」
「・・・・・・これもガラスなの?本物の羽根みたいだよ?」
「凄いでしょ?この羽毛の一つ一つが、実はガラスで出来ているのよ。魔法でしなやかに仕上げられているから、本物みたいにサラサラでしょ?これなら割れたりしなくて安心だし、とっても綺麗だし・・・・・・・・・これ良いわね・・・。」
「キラキラしてて綺麗・・・・・・。」
「エミー、気になる物があったら色々見て来ていいわよ。ただし、割れ物もあるから商品には触らない様にね!後、店では走ったりしちゃ駄目よ?」
「うん!分かった!」
エミーは店内をぐるりと回る。本当に不思議な物でいっぱいだ。・・・・・・これはなんだろう・・・・・・これは・・・・・・?気になる物がいっぱいある。すると・・・
「何か気になる物あった?」
「わ!・・・・・・びっくりした・・・・・・。」
「あははっ!大分集中して見てたみたいね。このお店、気に入った?」
「うん!面白いものがいっぱいあって楽しい!」
「それは良かったわ!また来ようね!」
「うん!」
中を一通り見終わった後、二人は外に出る。そして、近くのベンチに座った。
「どうだった?」
「楽しかった!・・・・・・・・・・・・・・・ゾーエ、何持ってるの?」
エミーは、ゾーエが紙袋を持っている事に気付く。
「ああ、これ?はい!エミー!プレゼントよ!さっきの雑貨屋さんで買ったの!」
ゾーエは紙袋をエミーに渡す。
「!!・・・・・・・・・わ、私にくれるの!?」
「ええ!これから先、貴女に必要になる物よ。」
「わ、わぁ~!!!」
エミーは驚きと嬉しさに満ち溢れた表情をする。中には、二つの包装された箱が入っていた。
「あ、開けていい!?」
「ええ!良いわよ!」
エミーはゆっくりと、慎重に、包装された紙を剥がしていく。そして、箱をそろーっと開ける。
「! こ、これ・・・!!」
箱の中には布が敷かれており、その上に、キラキラと光り輝く羽根ペンがあった。
「これ!羽根ペンだ!!さっきの羽根ペン!!」
「ええ!エミーに使って欲しくてね。」
「ありがとう!ありがとうゾーエ!!」
「ふふっ、どういたしまして。」
「わぁ~、綺麗・・・・・・!ね、ねえ!もう一つも開けていい?」
「ええ!もちろん!」
先程と同じ様に慎重に包装を剥がしていき、箱を取り出す。さっきより大きめの箱だ。エミーがそろーっと箱を開けると・・・・・・
「!!・・・・・・・・・わあ!凄い・・・・・・!」
そこには、美しい模様が描かれた一冊の本があった。
「これは!?これはどんなもの!?」
「それはね、魔法で造られた本よ。さっきの羽根ペンで、何か書いてご覧!」
「うん!」
エミーは本を開く。紙には何も書いて無く、自由に自分で書くことの出来る、言わば日記の様な感じの本だった。
エミーはワクワクしながら羽根ペンを持ち、本にスーッと線を書いてみる。すると・・・・・・
フワッ・・・・・・
「! す、凄い!」
本に書いた線が蛍光色に輝き、紙面から浮き上がる。
「これ!書いた線が浮き上がってる!」
「ええ!エミー、よく見ててね!」
そう言うとゾーエが、浮き上がっている線に人差し指を向ける。すると、ゾーエが指す方向に線が浮かんでいく。そして、ゾーエがパッと手を拡げると、その線が蛍光色に輝いたまま、空中に留まる。
「す・・・・・・凄い!空中に書かれてるみたい!」
「この本はね、書いたものを空間に残す事が出来るの。もちろん、本に戻したり、消したりする事も出来るのよ?ほら、エミーも指を線に向けてご覧。」
「う、うん!」
エミーがそーっと指を向ける。すると、線がまた動き出す。
「わあ!」
「じゃあ、それを本に戻してみて?」
エミーは、ゆっくりと指を本に向けていく。
「じゃあ、そこで手を拡げてみて?」
パッ!と、エミーが手を拡げる。すると・・・・・・
スーーーーー・・・・・・
線が本に戻って行く。
「す、凄い・・・!」
「でしょ?そして、ページを掌で摩ると、書いたものが消えるの。つまり、この一冊で何度でも書くことが出来るのよ!例えば、大切な事とか忘れちゃいけない事を書いて部屋の空間に残しておく事で、いつでも目が届く様にしておく事が出来たり、書き間違えたりしちゃった時に、間違えた部分を消したりする事も出来るの。」
「色んな事が出来るね!」
「ええ!それに、エミーはまだ字を上手く書けないでしょ?それの練習になるかなと思ってね。」
「!!・・・・・・ゾーエ・・・・・・!嬉しい!!」
ガバッ!
「きゃっ!もうエミーったら・・・!」
「むふふ~」
エミーは、心の底から喜んでいる。ゾーエからプレゼントを貰った事。そして、ゾーエが自分の事を色々考えてくれている、その事が何より嬉しかった。
そして、ゾーエもエミーと同じ気持ちでいる。エミーの笑顔。喜んでいる様子。それを見る度に、幸せな気持ちになる。
ゾーエは、抱きついているエミーの頭を優しく撫でながら言う。
「エミー。ありがとうね。」
「? ありがとうを言うのは私の方だよ!ゾーエ、ありがとう!!」
「私にも言わせて頂戴?エミーと居るとね、凄く幸せな気持ちになるの。だから、いつもありがとうね!」
「! 私もゾーエと一緒!ゾーエと居るとね、いつも暖かい気持ちになれるの!幸せって、この事を言うんだなって、心から思うんだ!ゾーエ、いつもありがとう!」
「ふふっ」
「えへへ」
「「どういたしまして!」」
二人はお互いに幸せを感じている。まだ始まったばかりのこの旅だが、既に二人にとって、愛おしい旅となっていた。
「エミー、着いたわよ!ここが、『魔女と魔法に関しての全て』があるとされる場所、『無辺図書館』よ!」
「わあ・・・・・・・・・すっごく綺麗な建物!」
石造りの大きなその建物には、様々な美しい彫刻が施されていた。そして、彫刻に縁取られた入口からは、少しだけ中の景色が見える。・・・・・・荘厳な景色だ・・・・・・。
「じゃあ、エミー。行きましょっか!無辺図書館に!」
「うん!」
二人は手を繋ぎ、無辺図書館の入口へと歩き出した。
「? マヤ、どうかしました?」
「ああ、マリッサ・・・。今、最高位の魔力を感じたのよ・・・。」
「・・・ケーラさんが来たんでしょうか?」
「いや・・・あの人の魔力とは違うわ。」
「じゃ・・・じゃあ一体・・・・・・!だ、だ、誰なんですか・・・・・・!?」
「・・・・・・・・・そんなにビビらなくても大丈夫よ・・・・・・・・・。」
「ででででも!!」
ギュッ・・・!!
「今は良いわよ、今は・・・。でも、何度も言ってるでしょ?私以外の前では、そんな姿見せちゃいけないわよ!!」
「マヤ・・・・・・。・・・・・・もし、見せてしまったら?」
「・・・・・・・・・あんた期待してるでしょ・・・・・・。」
「き、きき期待!?してませんよ!?お仕置きなんて期待してません!!」
「そ・・・。なら今日は無しで・・・」
「えっ!?」
「・・・・・・。」
「いや、まあ、その、あれですよ!!お仕置きが無いとずっと私ビビり症治りませんよ!!」
「・・・・・・お仕置きしてるから治らないのかも・・・・・・。」
「そ、そんな事無いです!お仕置きしてくれないと!!治りませんから!!して下さい!!お仕置き!!」
「・・・・・・やっぱ期待してるじゃん・・・・・・。」
「してません!!」
草原を抜けた先には、背の高い木々が生い茂っていた。二人は神秘的な森の中を歩きながら、話をする。
「この森を抜けた先に、ヴィーグス・ノヴがあるわ。」
「沢山の知識があるんだよね!」
「そうよ!そこで魔女の世界と魔法に関して、詳しく学ぶ事が出来るわ。」
「いっぱい勉強して頑張る!」
「ふふっ」
「? どうしたの?」
「エミー、とっても元気になったわね。言葉も凄く上手に話せる様になってるし。」
「私、変わった?」
「ええ、成長しているわ。マナちゃん達のお陰ね。」
「うん!皆のお陰!・・・・・・後、どんな感情が解放されてないんだろう?」
「そうねぇ・・・。感情って、とっても沢山あるの。まだ解放されてない感情も、やっぱり色々あると思うわ。でも・・・・・・・・・」
「でも?」
「貴女は、本当に大切な感情を、解放出来た見たい!」
「何て名前の感情?」
「『楽しい』って感情よ!沢山笑ったり、沢山ワクワクしたり!その感情はね、とっても元気になる感情なのよ!」
「そうか・・・。これが楽しいなんだ!」
「皆と過ごした時間でエミーは、とっても大きな『楽しい』を感じたのね!」
「うん!今も楽しい!」
最初、この旅を始めた時から、エミーは既に『楽しい』を感じていた。しかしそれは、抑えつけられた状態でのものだった。けど、今は違う。ゾーエと一緒に歩く事。抑えつけられていない本来の感情を、エミーは感じていた。・・・・・・本当に楽しい・・・・・・!
「ねぇ、エミー。」
「何?」
「さっきも言ったけど、感情って、ほんとに沢山あるの。中には、悲しいとか、辛いとか、少し難しい感情もあるわ・・・。」
「悲しい?辛い?それは、楽しい感じじゃないの?」
「そうね、楽しいとは違うわね。けれど、それも大切な感情なのよ。」
「そうなの?」
「ええ。その感情があるからこそ、成長していく事もあるわ。悲しい感情を持っているからこそ、人の悲しみを一緒に感じてあげる事が出来る。辛い感情を持っているからこそ、辛い思いをしている人を支えてあげる事が出来る。それも、大切な事よ。」
「うん。」
「魔女の世界にはね、一つ、昔から受け継がれてきたものがあるの。」
「なに?」
「・・・『思いやりと慈愛を持って生きる』・・・。私達魔女は、その精神を受け継いでいるの。この世界に争いが無くて平和なのは、その文化があるからなのよ。」
「思いやり・・・慈愛・・・。」
「そう。思いやりはね、人の事を思って、その人を助けてあげたいって、そう思える心なの。そしてそれは、人の悲しみや苦しみを、理解してあげられないと持てない心なの。だから、思いやりを持つ為にも、大切な感情なのよ。」
「分かった。私も、思いやりを持つ!」
「ええ。大切なものを見つけていきましょう!」
夕暮れになり、ゾーエは家を出す。
ガチャ・・・ ギィィィィ・・・・・・
「ただいまー!」
「おかえり!ただいま!」
「おかえりゾーエ!」
二人は早速晩ご飯の準備を始める。
「ふんふふ~んふふ~♪」
「上機嫌ねエミー!」
「楽しいから!」
エミーは楽しそうに支度をする。ゾーエはいつもの様に料理を始める。すると・・・
ペタペタペタ・・・・・・ジーーーーーッ・・・・・・
エミーがキッチンに駆け寄って来て、材料をジーッと見つめる。
「・・・・・・・・・どうしたの?」
「料理・・・・・・・・・やってみたい!」
「えぇ!?」
「駄目?」
「んー、駄目っていうか・・・・・・。」
料理は刃物も使うし火も使う。・・・・・・エミーが怪我したら大変だ・・・・・・。でも・・・・・・。
「・・・・・・・・・そうね。これも経験よね!じゃあエミー!料理手伝ってくれる?」
「! ・・・・・・うん!」
ゾーエが踏み台を持ってくる。エミーはその上に立った。
「・・・・・・!」
エミーは初めて、高い目線でキッチンを見た。背伸びだけでは見えなかった材料や調味料、調理具が沢山ある。
「すごい!」
「初めて見るものもいっぱいあるでしょ?」
「うん!・・・・・・今日は何作るの?」
「グラタンよ!」
「グラタン!気に入ってる!」
「ふふっ、じゃあグラタン作り始めましょっか!」
「うん!」
「ゆ、ゆっくりね!?指切っちゃ駄目よ!?」
「大丈夫だよ!気を付けてるから!」
ストン・・・・・・!
「・・・・・・ふぅ・・・。」
「ゾーエは心配性だね。」
「だってぇ・・・・・・エミー初めて包丁持ったんでしょ?心配になるわよ・・・・・・。」
「でもちゃんと切れた!」
「うん!上手よエミー!」
「えへへ」
ゾーエが見守る中、エミーは野菜を一口大に切っていく。・・・・・・初めて二人で料理を作る・・・・・・。それは、二人にとって心の暖まる楽しい時間だった。
「よし!これでオッケー!後は、表面に焼き目がつくまで待てば完成よ!」
「料理・・・楽しい!」
「良かったわ!」
「これからも手伝って良い?」
「ええ、良いわよ!少しずつ覚えていきましょう!」
「うん!」
「そろそろかしら。」
二人は、キッチンに併設されている石窯の中を覗く。
「わぁ!焼けてる!ねえゾーエ!もう食べれる?」
「そうね!良い感じに焼き目ついてるし、そろそろかな!」
ゾーエはゆっくりと、グラタンを取り出す。そして二人は、いつものソファに向かう。
「「いただきます!」」
「わぁ!この野菜、私が切ったやつ?」
「そうよ、エミーが切ってくれた野菜が入ってるのよ!」
「なんか・・・・・・凄い!」
「いつかエミーも、色々な料理が作れる様になるわよ。」
「うん・・・頑張る!」
シューーーーーーーー・・・・・・・・・
「じゃあ、出発しましょうか!」
「うん!今日のお昼に街に着くの?」
「そうね、このペースなら昼頃には着くわよ。」
二人は歩き出しながら、会話をする。
「とっても大きい街なんでしょ?」
「ええ。この世界でも有数の大都市よ。ヴィーグス・ノヴっていう街でね。かつての魔女の言葉で『広大な街』っていう意味なの。」
「どんくらい広いの?」
「そうね、街の広さで言うと、端から端に歩いて行くまでに、丸二日掛かるくらいかしら。」
「・・・・・・・・・広い・・・・・・・・・!」
「そして街には、ある建物があるの。そこが目的の場所よ。広さで言うと、そうね・・・・・・。街の数十倍はあると思うわ。・・・・・・いや・・・・・・もっとあるかしら?」
「? 街にあるのに、街より広いの?」
「ええ。魔法によって、屋内だけ別の空間になってるのよ。屋内を別の空間に繋げているの。」
「なんか・・・・・・想像出来ない・・・・・・。」
「エミー、あそこは物凄く広いから、勝手にどっか行っちゃ駄目よ。迷子になっちゃうから。」
「そんなとこで迷子になったら・・・・・・見つけてもらえない?」
「そんな事は無いわよ。けど、時間は掛かるでしょうね。だから、一人になっちゃ駄目よ!」
「わ、分かった!」
二人は森の中を歩き続ける。何時間歩いただろうか。ようやく遠くの方に、森の切れ目が見えてきた。
サァーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・
森から出た瞬間、心地良い風を感じる。木から離れた葉っぱ達が、風に乗って飛んでいっている。そして少し離れた位置に、とても大きな城壁の様なものがあった。周りの背の高い木々よりも、更に大きな入口が壁にある。・・・・・・ここが、広大な街、魔女と魔法に関しての全てがあるとされる『ヴィーグス・ノヴ』だ。
「・・・・・・・・・・・・わぁ・・・・・・・・・・・・凄い・・・・・・・・・・・・・・・!」
「来たわねエミー!ここがヴィーグス・ノヴよ!大きな入口でしょ?」
「うん・・・!人もいっぱい居る!」
並木道の先にある大きな入口には、小休憩が出来るベンチが沢山置いてある。そこには、魔女達が座って色々な話をしていた。
「じゃあ、街に入りましょっか!」
「うん!」
最初の頃、エミーは知らない人に対しての警戒心も強く怯えている様子だったが、今のエミーは平気そうだ。・・・・・・これもあの日のお陰だろう。
大きな入口を二人は潜る。そして、遂に街の中に入った。
「・・・・・・・・・賑やかなとこ!色んな建物がある!」
広くとられている石畳の道に、レンガ造りの建物が並ぶ。道沿いに建つ建物は今まで見てきた家とは少し違う雰囲気で、外に椅子と机が置かれており、魔女達がそこで食事をとっている。花が沢山置いてある建物もあれば、ガラス張りで中がよく見える建物もある。様々なシルエットを模した鉄製の看板が、壁から出ているフックにぶら下がっている。
「あの建物は何?」
「ああ、あれは『お店』よ。食事をとったり、色々な物が売られていたりするの。看板がぶら下がってるでしょ?あのシルエットで、何のお店か分かるようになってるのよ。例えば、食事をするとこはフォークとナイフのシルエットが、お花屋さんにはお花のシルエットが模してあるの。」
「凄い・・・・・・色んなお店がある!」
「でしょ!寄ってみる?」
「! ・・・・・・うん!寄ってみたい!」
「丁度お昼時だし、お店で食べましょっか!」
「うん!」
二人は近くにあるレストランに向かった。
「凄い!お家とは雰囲気が違う!」
「エミーはお店に入るの初めてだもんね!」
「うん!」
とても広く、良い雰囲気のオシャレな内装だ。二人は外が見える窓際の席に座った。
「はい、エミー!これがメニューよ!」
ゾーエはエミーにメニュー表を渡す。エミーがワクワクしながらそれを開くと、そこには沢山の料理が写っていた。
「・・・・・・・・・凄い!色んな料理が写ってる!ゾーエ!見た事無いのもあるよ!」
「ふふっ、好きなの頼んで良いからね!」
「沢山ある・・・・・・・・・どうしよっかな!食べた事無い料理にしよっかな!・・・・・・・・・これ!これ食べた事無い!これは何?」
エミーが気になる料理を指差す。
「それは『モンタナーラ』って言う料理よ!とっても美味しいわよ!」
「これ、美味しそう・・・・・・。これにする!」
「じゃあそれ頼みましょっか!」
二人はモンタナーラを頼んだ。
二人がいつもの様に話をしていると、女性が料理を持って来た。
「お待たせしましたー!モンタナーラ二枚です!ごゆっくりどうぞ!」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!!!・・・・・・わぁ~!ゾーエ!これどうやって食べるの!?」
「これはね、一枚の生地を六つに切り分けてあるの。端の方を持って食べるのよ!」
「なるほど・・・・・・・・・・・・こう!?」
「そう!それで食べてご覧!熱いから気をつけるのよ。」
「うん!」
フー・・・フー・・・パクッ・・・!
「・・・・・・・・・! 美味しい!もんたなーら美味しい!」
「美味しい料理でしょ!色んな街に色んな料理があるの。美味しいものが沢山あるわよ!」
「! 楽しみ!」
昼ご飯を食べ終わった二人は、外に出る。まだまだ明るい。二人は少し店を回る事にした。
「このお店は何?」
「ああ、雑貨屋さんね。色々な物を置いてる店よ。」
「どんなのが置いてあるの?」
「日用品とか、お菓子とか。家に飾る物とかも置いてあるのよ。入ってみる?」
「うん!」
二人は、ガラス張りで中がよく見えるそのお店に入って行く。
カランカラン・・・・・・
「! 何か鳴った!」
「ああ!・・・・・・・・・扉の上を見てご覧。」
「・・・・・・・・・木?」
「ええ。木をぶら下げているのよ。開けた時に音が鳴るの。こういう物も、ここでは売られているのよ。」
エミーは中を見渡す。沢山の物が置いてある。
「・・・・・・・・・不思議な物がいっぱいだね!」
「面白いでしょ?」
「うん!・・・・・・・・・これは何?・・・・・・鳥の羽根みたいだけど、すっごくキラキラしてる・・・・・・!」
「それは羽根ペンって言うのよ。あ!それ良いわね・・・。・・・・・・これは、ガラスで出来た羽根ペンね!」
「・・・・・・これもガラスなの?本物の羽根みたいだよ?」
「凄いでしょ?この羽毛の一つ一つが、実はガラスで出来ているのよ。魔法でしなやかに仕上げられているから、本物みたいにサラサラでしょ?これなら割れたりしなくて安心だし、とっても綺麗だし・・・・・・・・・これ良いわね・・・。」
「キラキラしてて綺麗・・・・・・。」
「エミー、気になる物があったら色々見て来ていいわよ。ただし、割れ物もあるから商品には触らない様にね!後、店では走ったりしちゃ駄目よ?」
「うん!分かった!」
エミーは店内をぐるりと回る。本当に不思議な物でいっぱいだ。・・・・・・これはなんだろう・・・・・・これは・・・・・・?気になる物がいっぱいある。すると・・・
「何か気になる物あった?」
「わ!・・・・・・びっくりした・・・・・・。」
「あははっ!大分集中して見てたみたいね。このお店、気に入った?」
「うん!面白いものがいっぱいあって楽しい!」
「それは良かったわ!また来ようね!」
「うん!」
中を一通り見終わった後、二人は外に出る。そして、近くのベンチに座った。
「どうだった?」
「楽しかった!・・・・・・・・・・・・・・・ゾーエ、何持ってるの?」
エミーは、ゾーエが紙袋を持っている事に気付く。
「ああ、これ?はい!エミー!プレゼントよ!さっきの雑貨屋さんで買ったの!」
ゾーエは紙袋をエミーに渡す。
「!!・・・・・・・・・わ、私にくれるの!?」
「ええ!これから先、貴女に必要になる物よ。」
「わ、わぁ~!!!」
エミーは驚きと嬉しさに満ち溢れた表情をする。中には、二つの包装された箱が入っていた。
「あ、開けていい!?」
「ええ!良いわよ!」
エミーはゆっくりと、慎重に、包装された紙を剥がしていく。そして、箱をそろーっと開ける。
「! こ、これ・・・!!」
箱の中には布が敷かれており、その上に、キラキラと光り輝く羽根ペンがあった。
「これ!羽根ペンだ!!さっきの羽根ペン!!」
「ええ!エミーに使って欲しくてね。」
「ありがとう!ありがとうゾーエ!!」
「ふふっ、どういたしまして。」
「わぁ~、綺麗・・・・・・!ね、ねえ!もう一つも開けていい?」
「ええ!もちろん!」
先程と同じ様に慎重に包装を剥がしていき、箱を取り出す。さっきより大きめの箱だ。エミーがそろーっと箱を開けると・・・・・・
「!!・・・・・・・・・わあ!凄い・・・・・・!」
そこには、美しい模様が描かれた一冊の本があった。
「これは!?これはどんなもの!?」
「それはね、魔法で造られた本よ。さっきの羽根ペンで、何か書いてご覧!」
「うん!」
エミーは本を開く。紙には何も書いて無く、自由に自分で書くことの出来る、言わば日記の様な感じの本だった。
エミーはワクワクしながら羽根ペンを持ち、本にスーッと線を書いてみる。すると・・・・・・
フワッ・・・・・・
「! す、凄い!」
本に書いた線が蛍光色に輝き、紙面から浮き上がる。
「これ!書いた線が浮き上がってる!」
「ええ!エミー、よく見ててね!」
そう言うとゾーエが、浮き上がっている線に人差し指を向ける。すると、ゾーエが指す方向に線が浮かんでいく。そして、ゾーエがパッと手を拡げると、その線が蛍光色に輝いたまま、空中に留まる。
「す・・・・・・凄い!空中に書かれてるみたい!」
「この本はね、書いたものを空間に残す事が出来るの。もちろん、本に戻したり、消したりする事も出来るのよ?ほら、エミーも指を線に向けてご覧。」
「う、うん!」
エミーがそーっと指を向ける。すると、線がまた動き出す。
「わあ!」
「じゃあ、それを本に戻してみて?」
エミーは、ゆっくりと指を本に向けていく。
「じゃあ、そこで手を拡げてみて?」
パッ!と、エミーが手を拡げる。すると・・・・・・
スーーーーー・・・・・・
線が本に戻って行く。
「す、凄い・・・!」
「でしょ?そして、ページを掌で摩ると、書いたものが消えるの。つまり、この一冊で何度でも書くことが出来るのよ!例えば、大切な事とか忘れちゃいけない事を書いて部屋の空間に残しておく事で、いつでも目が届く様にしておく事が出来たり、書き間違えたりしちゃった時に、間違えた部分を消したりする事も出来るの。」
「色んな事が出来るね!」
「ええ!それに、エミーはまだ字を上手く書けないでしょ?それの練習になるかなと思ってね。」
「!!・・・・・・ゾーエ・・・・・・!嬉しい!!」
ガバッ!
「きゃっ!もうエミーったら・・・!」
「むふふ~」
エミーは、心の底から喜んでいる。ゾーエからプレゼントを貰った事。そして、ゾーエが自分の事を色々考えてくれている、その事が何より嬉しかった。
そして、ゾーエもエミーと同じ気持ちでいる。エミーの笑顔。喜んでいる様子。それを見る度に、幸せな気持ちになる。
ゾーエは、抱きついているエミーの頭を優しく撫でながら言う。
「エミー。ありがとうね。」
「? ありがとうを言うのは私の方だよ!ゾーエ、ありがとう!!」
「私にも言わせて頂戴?エミーと居るとね、凄く幸せな気持ちになるの。だから、いつもありがとうね!」
「! 私もゾーエと一緒!ゾーエと居るとね、いつも暖かい気持ちになれるの!幸せって、この事を言うんだなって、心から思うんだ!ゾーエ、いつもありがとう!」
「ふふっ」
「えへへ」
「「どういたしまして!」」
二人はお互いに幸せを感じている。まだ始まったばかりのこの旅だが、既に二人にとって、愛おしい旅となっていた。
「エミー、着いたわよ!ここが、『魔女と魔法に関しての全て』があるとされる場所、『無辺図書館』よ!」
「わあ・・・・・・・・・すっごく綺麗な建物!」
石造りの大きなその建物には、様々な美しい彫刻が施されていた。そして、彫刻に縁取られた入口からは、少しだけ中の景色が見える。・・・・・・荘厳な景色だ・・・・・・。
「じゃあ、エミー。行きましょっか!無辺図書館に!」
「うん!」
二人は手を繋ぎ、無辺図書館の入口へと歩き出した。
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