Emmy Liebe―エミー・リーベ―

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第二十話「広大な街と大切なもの」

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「はぁ・・・・・・・・・まだ・・・・・・・・・まだ足りない・・・・・・・・・」
    女性は低い草の生い茂る大地にいた。
「あと何年・・・・・・・・・あと何年待たせればいいの・・・・・・・・・!?」
    女性は怒りと悲しみに満ちた声で呟く。
「早くしてあげないと・・・・・・・・・・・・貴女が待ってるから・・・・・・・・・・・・」



「よーし!皆箒は持ったね!」
「大丈夫よ・・・!」
「向かうはヴィーグス・ノヴ~!」
「皆で飛ぶの楽しみ!」
    四人は箒に乗り、空へと浮いていく。
『いってきまーす!』
『いってらっしゃーい!』
    皆は手を振りながら離れていく。するとその瞬間、ヘイリーがある事に気付く。
「!!・・・・・・・・・あ!」
    その時には、四人は空高くまで飛んでいた。
「?・・・どうしたのヘイリー?」
「あ、あれって・・・・・・!!も、もしかして・・・・・・!!ゾ、ゾーエさん!!エミーちゃんの乗ってる箒・・・・・・!!もしかして・・・・・・!!」

ギクッ・・・・・・!

「え、ええ~っと・・・・・・・・・まあ・・・・・・その・・・・・・・・・」
「?」
    アリシアは気付いていない様だが、ヘイリーはその箒に気付いている。
「あ、あれって・・・・・・・・・ヴァ、ヴァンツ・ズァロ・フィオンじゃ・・・・・・!?」
「!?・・・え!?」
    その名を聞いて、アリシアも驚く。
「え~・・・・・・まあ・・・・・・・・・そうですね・・・・・・・・・。」
    ・・・・・・まさか・・・こんなに早く気付かれるとは・・・・・・
「やっぱり!!ゾーエさん買ったんですか!?それとも元々持ってたんですか!?」
    ・・・・・・う、嘘を言う訳にもいかないし・・・気付かれた以上・・・・・・
「え、ええっと・・・・・・・・・あの・・・・・・・・・あれ・・・・・・じ、実は・・・・・・・・・・・・私が・・・・・・・・・・・・・・・・・・造ったんです・・・・・・・・・・・・」
    ゾーエは少し恥ずかしそうに言う。
「「・・・・・・・・・・・・ええぇぇぇ!!??」」
「じゃ、じゃあ・・・・・・・・・ヴァンツ・ズァロ・フィオンの製作者の『ジエ』って・・・・・・・・・ゾーエさんの事だったんですか!?・・・・・・ま、まさか同一人物だったとは・・・・・・・・・!!」
「ま、まあ・・・・・・・・・。箒を長年造ってたら、いつの間にか凄い評価がついちゃってて・・・・・・・・・。あんまり本数は造れないんですけど・・・・・・エミーには自分の造った箒に乗って欲しくて・・・・・・・・・。あ、あの!この事エミーには内緒にしてもらって良いですか!?」
「い、言ってないんですか!?エミーちゃんそれ知ったら、きっと凄い喜ぶと思いますよ!!」
「ま、まあいつかは言うつもりなんですけど・・・・・・あの・・・・・・心の準備が出来てないというか・・・・・・・・・き、気恥ずかしくて、中々言えなくて・・・・・・・・・」
    ゾーエは恥ずかしそうに、ポツリと言う。その様子は普段とは違う雰囲気を出している。
「「か、可愛い・・・・・・」」
「え、ええぇ!?」
「あ、いえ、その!・・・・・・普段冷静でしっかりした感じのゾーエさんが、照れてるのが新鮮で・・・・・・!」
「背が高くてクールな普段のゾーエさんとの、ギャップが可愛くてつい・・・・・・!」
「あ、えと、え、あああの!え!?」
    ゾーエは平静を装い切れず困惑する。その様子を見て、二人は頷く。
「うんうん!ゾーエさん、実は照れ屋さんなんですね!」
「なるほどなるほど!確かにエミーちゃんに知られると、ゾーエさん凄く照れちゃいそうですね!」
「!!・・・・・・お、お恥ずかしいところをお見せしてしまって・・・・・・・・・!!」
「いえそんな!寧ろチャームポイントの一つですよ!」
「アリシアの言う通り!それもゾーエさんの良いところだと思いますよ!・・・・・・・・・いやしかし、本名は少し違うとは聞いた事ありますけど・・・・・・製作者としての名前と本名を微妙に変えているのは、そういう理由だったんですね!」
「は、はい・・・・・・本名だと気恥ずかしくて・・・・・・途中で製作者としての名前を、本名から変えたんです・・・・・・。中々こういうのに慣れなくて・・・・・・。平静を保とうとはしてるんですけど・・・・・・どうしても面に出てしまって・・・・・・。」
「出して良いと思いますよ!それもゾーエさんですから!」
「そうですよ!もちろん私達は黙っているんで!いつか心の準備が出来たら、ゾーエさんからエミーちゃんに教えてあげて下さい!」
「!!・・・わ、私から・・・・・・!そ、そうですね・・・・・・いつか・・・・・・いや、なるべく早めに・・・・・・エミーに伝えないと・・・・・・・・・」
「でもまさか、こんなところでゾーエさんの新しい一面が見られるとは!」
「そうだね!ゾーエさんの新しい顔が見れたね!」
「!!・・・は、恥ずかしい・・・・・・!!」
「「大丈夫!そんな事無いですよ!?」」
     思いもかけず、ゾーエは自身の一面を二人に見せる事となった。


「皆で箒に乗るのって楽しいねー!」
「ようやく四人で空を飛べたわね・・・!」
「これからも皆で飛ぼうね~!」
「良いね!私もちょくちょく来たいな!」
「毎週来ようよ!」
「流石に毎週は難しいかなぁ・・・!」
    四人は心地良い風を感じながら、空を並んで飛んで行く。初めての四人での飛行は、皆の心を踊らせる。
    遠くにヴィーグス・ノヴが見えてくる。
「わあ!空から見ると街の大きさがよく分かるね!」
「うん!いつ見ても広いねー!」
「ここにある無辺図書館がこの何十倍も広いって言うんだから、凄いわよね・・・!」
「無辺図書館はほんとにその名の通りだったね~!限界が見えないよね~!」
    少しすると、下の景色が森林地帯になる。もう少しで街に着く。
    四人はヴィーグス・ノヴの入口手前で降下していき、箒から降りた。
    ・・・・・・久し振りの景色だ!・・・・・・
    四人は門を潜り、街の中へと入って行った。


    街に入って直ぐに広がる大広間。そこにあるベンチに、一人の少女が座っていた。少し緊張した面持ちだ。
「あ!ソフィア!おはよう!」
「!・・・エミー・・・!おはよう・・・!」
    マナも緊張しながらソフィアに挨拶をする。
「あ!えと!ソ、ソフィア!おはよう!」
「あ!・・・マ、マナ・・・!お、おはよう・・・・・・!」
    続けて、リリーとアイラも挨拶をする。ソフィアとは初対面だ。
「初めまして・・・!リリーよ・・・!よろしくね・・・!」
「アイラだよ~!よろしく~!」
「あ、あの・・・!ソ、ソフィアです・・・!よ、よろしくお願いします・・・!」
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ~!・・・なるほど~、君がソフィアちゃんか~!マナの言ってた通りだね~!」
「ええ・・・!すっごく可愛いわ・・・!」
「え、ええ!?」
    ソフィアの顔が赤くなる。それと同時に、マナの顔まで赤くなってしまう。
「え、あ、あの、その、えと、あの、あ、ありが、ありがとう、ご、ございます・・・・・・お、お二人も・・・その・・・凄く、綺麗です・・・・・・!」
    ソフィアは恥ずかしがりながら言う。リリーとアイラに可愛いと言われた事も勿論あるが、それ以上に、マナが自分の事をそう言っていたという事に恥ずかしがっていた。
「!!・・・ありがとう・・・!嬉しいわ・・・!」
「な、なんか照れちゃうね~!これからよろしくね~!私達も、マナの事も~!」
「あ・・・・・・は、はい・・・・・・!」
「緊張しなくても大丈夫よ・・・!気軽に話してね・・・!」
「は、はい・・・・・・!じゃ、じゃなくて・・・・・・う、うん・・・・・・!」
「「可愛い・・・!」」
「ふえぇ・・・!?」
    遂に五人の子供達が揃った。


    五人は街を歩きながら、色々な話をする。
「ソフィアはこの街のどこら辺に住んでるの~?」
「えっと・・・無辺図書館に住んでるの・・・・・・!」
「「無辺図書館・・・!?」」
    リリーとアイラは驚く。無辺図書館に住んでいるという事はつまり、管理人の子供であり、それは、『偉大なる魔女達』の血を継いでいるという事だ。
「じゃ、じゃあ将来管理人になるのぉ!?」
「う、うん・・・・・・!」
「無辺図書館の管理人・・・!凄いじゃない・・・!」
「ま、まだまだ全然だよ・・・!管理人になるには、かなりの場所を把握しないといけないし・・・・・・私が把握してるのはまだ七階辺りまでだから・・・・・・後何十階も把握してないし・・・・・・」
「ソフィアって何歳・・・?」
「え・・・・・・十二歳・・・・・・」
「十二で七階まで把握出来てるなんて凄いじゃない・・・!特に五階なんて、一番迷いやすい階でしょ・・・!?そこが把握出来てる時点で凄いわ・・・!」
「ソフィア流石だね~!それならまたマナが迷子になっても安心だ~!」
「も、もうならないよ!・・・・・・多分・・・・・・」
「ソフィアから聞いたけど、マナって三階で迷子になったんだよね?」
「三階で・・・・・・三階って迷いやすい場所だったかしら・・・?」
「い、いや・・・あんまり迷いやすい場所じゃないよ・・・・・・本棚も少ししかないから、景色も遠くまで見渡せるし・・・・・・」
「よね・・・。てことは、これからも絶対迷子になるわね・・・。」
「うっ・・・・・・!」
「その後、二人で館内を見て回ったんでしょ?」
「うん・・・・・・!」
「マナに振り回されなかった~!?」
「な!ふ、振り回してなんか無いよ!・・・・・・多分・・・・・・いや、振り回しちゃってたのかな・・・・・・」
「い、いや・・・大丈夫だったよ・・・・・・!楽しかったし・・・・・・!」
「!!・・・よ、良かったぁ・・・!」
    五人は二人の出会いについて話しながら、街を散策する。マナがソフィアの事を好きなのは、ソフィア以外全員知っている。しかし、ソフィアがマナの事を好きなのは、エミーしか知らない。
    しかし、流石はアイラ。既に何となく勘づいていた。
    ・・・・・・マナはいつ気付くのかな~!・・・・・・


    五人はある場所に訪れた。リリーが行きたいと言っていた場所だ。
「ここよ・・・!」
    エミーは看板のシルエットを見る。しかし、いまいち分からない。
「何だろう、このシルエット・・・・・・丸に菱形・・・・・・」
「ここ・・・・・・!ピアスのお店だね・・・・・・!」
「そうなの!?」
「ええ・・・!ソフィアの言う通り、ここはピアス店よ・・・!・・・・・・じ、実は・・・・・・ピアス開けようと思ってるの・・・!その為のピアッサーと、新しい遠声魔法のピアスを買いに来たの・・・!」
「ピ、ピアス・・・・・・お、大人だ・・・・・・」
「ゾーエはあんまり痛くないって言ってたけど、やっぱりピアスって痛そうだよね・・・・・・」
「大丈夫~!私が開けるから~!」
「それって大丈夫なの!?」
「うん~!大丈夫なんだよ~!」
    五人はピアス店に入って行った。


「わあ!キラキラしてる!」
    エミーは店内の輝きに驚く。沢山のピアスやイヤリングが飾られてあり、それが明かりに反射している。
「いっぱいあるわね・・・!でも先ずはピアッサーから・・・・・・」
    リリーは目立つように置いてあるピアッサーを手に取る。
    エミーはケースに入ったそのピアッサーを見てみる。
「これがピアッサー・・・・・・針が付いてる・・・・・・!」
    手の平サイズで、英字の『X』の様な形をしている。片方の先端部分には針が一本付いており、もう片方は平たくなっている。
「こ、これで耳に穴を開けるの・・・・・・?」
「ええ・・・!この針で耳に透過魔法をかけるの・・・!」
「透過魔法・・・・・・何かゾーエも同じ事言ってたような・・・・・・」
「透過魔法は、物質をすり抜けたりする魔法なの・・・!例えば、壁とかをすり抜けて通ったりね・・・!」
「す、凄い魔法だね!」
「ええ・・・!その代わり、とても難しい魔法なの・・・。だからあらかじめ用意されてある、このピアッサーで発動させるのよ・・・!針に透過魔法の応用がかけられてあってね・・・針を通した部分に透過魔法が発動するの・・・!」
「なるほど・・・だから、耳の穴が塞がってもピアスを着けられるんだね!」
「そういう事・・・!透過魔法を消したい時は、こっちの平たい方でそこを挟むの・・・!」
「この反対側のやつだね!」
「ええ・・・!ピアッサーにかけられている魔法は弱めでね・・・!消耗していくの・・・!使えなくなっちゃったら、この部分が動かなくなるのよ・・・!」
「おお・・・・・・挟めなくなるんだね!」
「そう・・・!耳に開けた穴が塞がったら、何でも好きに付けられるのよ・・・!」
「便利だね!・・・・・・でも、やっぱり痛そう・・・・・・。」
「痛くならない様に設計されているのよ・・・!ポインターっていうのがあるんだけど・・・・・・赤くなったり青くなったりするの・・・!赤は、そこに刺すと痛い、っていう意味で、青は、刺しても痛くない、っていう意味なの・・・!まあ、実際開ける時に見てみると良いわ・・・!」
「そうだね!どんなのか気になる!」
    リリーの方が、ゾーエより説明上手なようだ。
    その後はピアスを見て回る。リリーが遠声機能付きのピアスがあるスペースで、物色している。
    すると、アイラが傍にやって来た。
「リリー!どれにするの~?」
「そうね・・・。どれも綺麗で良いわね・・・。どうしようかしら・・・。」
「リリーなら、全部綺麗だと思うな~!・・・・・・けど、これとか可愛いよ~!」
    アイラはそのピアスをリリーの耳に近付ける。
「うん!似合う~!」
「どんなの・・・?」
「これ~!」
    アイラはリリーの目の前に、そのピアスを差し出す。
「こ、これ・・・!」
「ね、良い色でしょ~?」
    それは、アイラの瞳の色に似た、黄色いピアスだった。
「!!・・・ええ・・・!良い色・・・!!」
「私も開けようかな~・・・・・・リリー、選んでくれる~?」
「えっと・・・・・・」
    リリーはある色を探す。
「!・・・こ、これとか・・・!」
「!・・・綺麗な色~!!」
    それは、リリーの瞳の色に似た、青いピアスだ。
「「これにする!」」
    二人はそのピアスと、ピアッサーを買った。


    色々な物を見て回っていた三人の元に、二人が袋を持って戻って来る。
    マナがその袋を見て言う。
「あ!リリー買い終わった!?・・・・・・え!アイラも買ったの!?」
「うん!素敵なピアスがあったから~!」
「どんなのどんなの!?」
「これ~!リリーも見せてあげて~!」
「え、ええ・・・!こ、これを・・・!」
    二人は三人に、各々買ったピアスを見せる。
「おお!綺麗だ!」
「黄色と青色だね!」
    ソフィアはそのピアスと、二人の瞳を交互に見ながら言う。
「黄色と・・・青色・・・・・・二人の瞳の色だ・・・!もしかして二人って・・・・・・!」
「うん!婚約者だよ~!これは婚約の証~!」
    リリーの顔が赤くなる。
「こ、婚約者・・・・・・!二人って、付き合ってたんだね・・・・・・!」
「え、ええ・・・・・・!」
    リリーは照れ恥ずかしそうに頷く。
「そうだよ~!ず~っと小さい頃から、両想いなんだ~!結婚の約束もしてたの~!」
「す、素敵・・・・・・!」
    ソフィアはチラッとマナの方を見る。すると、マナと眼が合った。
「「あ・・・!」」
    二人は直ぐに眼を離す。その様子を見て、リリーも勘づく。
「!!・・・なるほど・・・!!」
    お互い両想いである事を知らないのは、マナとソフィア、当事者本人達だけとなった。


    皆はテーブル付きのベンチで、その様子を見守る。
「よいしょ~!」
    アイラはケースからピアッサーを取り出した。
「じゃあいくよ、リリー?」
「え、ええ・・・お願い・・・アイラ・・・」
    アイラはピアッサーをリリーの耳に近付ける。すると、耳の表面に光が当たる。
「この光が青くなる場所に開ければ良いんだよねぇ・・・・・・なんか、緊張するなぁ・・・・・・!」

ゴクッ・・・・・・!!!

    リリーとアイラを見守る三人も、何だか緊張する。
「・・・・・・あ、ここだぁ!青くなったぁ!・・・・・・・・・・・・じゃあ、行くよ?リリー・・・・・・」
「え、ええ・・・・・・」

パチンッ・・・・・・!

『!!』
    ゆっくりと、アイラはピアッサーをリリーの耳から離していく。
「・・・・・・大丈夫・・・・・・?リリー・・・・・・?」
「ええ・・・!大丈夫よアイラ・・・!全然痛くなかったわ・・・!」
『よ、良かったぁ・・・・・・』
    皆は安堵する。そして次は、アイラの番だ。
「大丈夫だからね・・・安心して・・・」
「う、うん・・・リリー・・・お願いぃ・・・・・・」
    ポインターが青くなる。二度目でも、見守る皆は緊張する。
「いくわよアイラ・・・」
「うん・・・」

パチンッ・・・・・・!

『!!』
    リリーはアイラを見つめながら聞く。
「大丈夫・・・?アイラ・・・?痛くない・・・?」
「うん!ほんとに全然痛くないよ~!」
『よ、良かったぁ・・・・・・』
    二度の緊張の後、リリーは自身とアイラに治癒魔法をかける。
「おお・・・!針の穴が綺麗に無くなった!」
「そこからピアス着けられるんだよね!?凄いなぁ!」
「こ、怖かったけど・・・・・・二人とも痛くないみたいで、良かった・・・・・・!」
「ええ・・・!皆、見守ってくれてありがとうね・・・!」
「何かドキドキしちゃったよ~!」
    その後二人は、遠声魔法のピアスを取り出し、元のイヤリングと弾き合わせる。

キィィィィィン・・・・・・!!

「よし・・・!これでピアスの方にも移ったわ・・・!」
「じゃあ早速付けてみよ~!」
    二人はピアスを、ピアッサーで開けた辺りに近付ける。
「・・・・・・・・・ここだわ・・・!」
「・・・・・・あ!ここだ~!」

チャリン・・・・・・!

    二人の耳に、ピアスが着く。
「おおぉ!ほんとにすり抜けて通ってる!」
「これが透過魔法よ・・・!」
「これからはこのピアスで遠声出来るね~!イヤリングの方は部屋に飾っとこ~!」
「そうね・・・!思い出として飾っておきましょう・・・!」
    思い出のものを飾る。それは、魔女達の風習の一つでもある。


    五人はその後昼食をとる事にした。先ずはお店から探す。
「どの店も美味しそうだね!」
「色んな種類があるわね・・・!」
「迷っちゃうね~!」
「どんどんお腹減ってきた・・・・・・!そうだ!ソフィアのオススメは!?」
「え・・・!?わ、私・・・!?」
「確かにソフィアはこの街に住んでるから、良い店知ってるかもね・・・!」
「私は何でも食べれるよ~!」
「わ、私のオススメは・・・・・・」
    ソフィアが少し考えた後、パッと思いついたように言う。
「パスタ専門店・・・・・・!生で作ってるんだ・・・!種類もいっぱいあって・・・!お母さん達と行った時、とっても美味しかったの・・・・・・!」
「生パスタ・・・!良いわね・・・!」
「生パスタ?」
    エミーは生パスタをよく知らない。
「生パスタってのはね~、乾燥パスタよりもモチモチしてたり~、風味が良かったりするんだよ~!その分作るのも大変なんだ~!」
「気になる・・・・・・!」
「私も生パスタ食べたい!」
    ・・・・・・ほんとはどちらかというと、ソフィアが好きなものが食べたいんだけど!・・・・・・
    そういう事で、五人の昼食はパスタ専門店に決まった。


    オシャレな店内の広い席で、五人はメニューを見る。
「・・・・・・・・・・・・・・・す、凄い・・・・・・知らない形のパスタがいっぱいある・・・・・・!こ、このリボンみたいなのは何!?」
「それはファルファーレって種類のパスタなの・・・!他にも、これはラザーニェ、これはタッリアテッレ、これはブカティーニ・・・他にも沢山あるわね・・・!」
「流石リリーだ~!色々知ってる~!」
「!!・・・ま、まあ、色々学ぶの好きだし・・・!じ、実は勉強しに、無辺図書館にも何度か足を運んでて・・・!」
「リリーは将来、無辺図書館に従事したいんだよね~!ソフィアと一緒に働く事になるね~!」
「!!・・・ま、まあ、いつかは従事したいなって・・・!」
「わ、私も!私も無辺図書館に従事する!!ソフィアと一緒に働く!!」
    リリーに続いて、マナも手を挙げて言った。
「ふぇぇ・・・!?」
    ソフィアにとって無辺図書館は家の様なものだ。実際、無辺図書館の一部に家がある。そこに従事したいと二人から言われ、何とも言えない恥ずかしさを感じる。
    ・・・・・・マナはソフィアと一緒にいたいって事だろうな!・・・・・・
    リリーとアイラとエミーは、心の中でそう思う。実際、その通りだ。


「お待たせいたしましたー!どうぞー!」
『ありがとうございます!』
    五人の頼んだメニューが来た。様々なパスタが、テーブルを彩る。
「凄い・・・・・・!色んな色がある・・・・・・!パスタってこんなに種類があるんだね!」
「ここのお店は、パスタが沢山あるんだよ・・・!数え切れないくらい・・・・・・!」
「美味しそ~!」
「これは絶対美味しい!」
「そうね・・・!」
『いただきます!』
    五人は色とりどりのパスタを食べながら、話に花を咲かせていた。


    五人は昼食を食べ終わり店を出た。
「美味しかったね~!」
「ええ・・・!素敵な店だったわ・・・!」
「また皆で来たいね!」
「うん・・・・・・!」
「凄い美味しかったね!・・・・・・あれが生パスタだったのか・・・・・・!」
「エミーは初めて食べたの・・・?」
「いや、初めて食べるんだと思ってたんだけど・・・・・・もしかして、何度か食べた事あるのかもしれない・・・・・・!」
「もしかして?・・・・・・あ!分かった!ゾーエさんだね!」
「うん!ゾーエが何度か作ってくれてたのかも!いつもとモチモチ感が違うって言ったら、張り切っちゃった、って言ってたから!この店のモチモチ感と、ゾーエのパスタでたまに出てくるモチモチ感、何だか似てたし!」
「やっぱりゾーエさんだ!」
「ゾーエさんの料理、とっても美味しいわよね・・・!凄いわ・・・!」
「私達も何度かゾーエさんの料理食べた事あるけど、本当に凄いよね~!お店開けるレベルだよ~!」
「ゾーエさん、沢山美味しいもの作れるけど、生パスタまで作れちゃうんだね・・・・・・!やっぱりマヤお母さんの師匠は凄い・・・・・・!」
「し、師匠・・・!?」
「うん・・・・・・!料理の師匠なんだ・・・・・・!」
「ゾーエさん凄いな~!無辺図書館の師匠だね~!」
    五人は、街を散策しながら色々な話をしていた。
    暫くすると、エミーがある話をする。
「あ、あのさ!私、どうしても買いたいものがあるんだ!」
「ええ・・・!何買うの・・・?」
「それがまだ決まってなくて・・・。実は、レースで賞金貰ったから・・・・・・ゾ、ゾーエに何か、買ってあげたいんだけど・・・・・・何が良いのか分からなくて・・・・・・」
「なるほどなるほど~!意中の人に、プレゼントと一緒に告白・・・良いね~!」
    エミーの顔が紅潮し、恥ずかしそうに言う。
「そ、そそそそういう訳では・・・・・・!!」
「大丈夫だよエミー!私達、エミーがゾーエさんの事好きなの知ってるから!」
「うん・・・!皆知ってる・・・!」
「!!」
    エミーの顔がどんどん赤くなる。
    ・・・・・・そういえばそうだ・・・皆知ってるんだった・・・・・・
「エミーからプレゼントされたら、ゾーエさんは何でも喜ぶと思うけど・・・エミー、ゾーエさんが欲しいものとか分かる・・・?」
「わ、分かんない・・・・・・料理が好きだけど、調理器具も全部揃ってるし・・・読書好きだけど、本が多すぎて何持ってないのか分かんないし・・・何買おうかなって・・・・・・」
「そういう時は、愛を伝えられるものを贈るんだよ~!」
「!!・・・あ、ああ愛・・・・・・!?」
「そう!愛だよ~!」
「あ、愛を伝えられるもの・・・・・・・・・」
    エミーはクレアの話を思い出す。
    ・・・・・・そういえばクレアさんが言ってた・・・。花の本数には意味があるって・・・なら・・・・・・
「は、花束、とか・・・・・・?」
「良いじゃない・・・!花束・・・!」
「うん・・・!ゾーエさんも絶対喜ぶよ・・・!」
「綺麗な花束買って、ゾーエさんに渡そう!」
「流石エミー!良いセンスしてるね~!」
「う、うん・・・・・・!ありがとう!じゃあ、花屋さんに行きたい!」
『よし!行こう!』
    五人はソフィアの先導のもと、花屋に向かった。
「ここの花屋さんが良いと思う・・・!普通の花だけじゃなくて、魔法の花も売ってるんだ・・・!」
「おお・・・!魔法の花・・・!」
「綺麗な花が沢山飾ってあるわね・・・!」
「お母さんの花畑みたい!キラキラしてるね!」
「ここから最高の花束をつくろ~!」
    五人は店内に入って行った。


「んー・・・・・・・・・どれが良いだろう・・・・・・・・・」
    広い店内で、エミーは様々な花を見て回る。
「どれも綺麗だな・・・・・・ゾーエはどの花が好きそうかな・・・・・・・・・」
    多種多様な花の中、どの花も美しく、エミーは迷う。
    暫く歩いていると、とても爽やかな香りがした。

バチンッ・・・・・・!!

    まるで電流に撃たれたかの様に、エミーはその方向を見る。

「!!・・・・・・・・・・・・こっちだ・・・・・・!」
    少し歩くと、その香りのする花を見付ける。
「!!」
    その花が美しく目に映る。その花は、エミーにとって、とても特別に見えた。
「!!・・・・・・こ、この花・・・・・・・・・この花だ・・・・・・!」
    すると、四人がエミーの元に来る。
「決まったの!?」
「うん・・・!この花!この花にする!」
「綺麗な花だね・・・!」
「良いじゃないエミー・・・!『シェメファト』ね・・・!」
「シェメファト?」
「この花の名前よ・・・!『青空に染まる紅』を意味するの・・・!美しい青と美しい紅が、綺麗に混ざりあった様な色彩を、キラキラと輝きながら放つの・・・!魔法の花の一つよ・・・!」
「確かに・・・!キラキラ輝いてる・・・・・・!こ、これを何本買えば良いのかな!?」
「ふっふ~ん!そういう時は、私にお任せだよ~!」
    アイラは花束の本数と、その意味をそれぞれエミーに伝える。
「この中から~、エミーの想う本数を選んで~!」
「ど、どどど、どどどどうしようかな・・・・・・・・・」
    エミーは緊張しながら考える。
    ・・・・・・どうしようかな・・・何本が良いだろう・・・・・・・・・・・・あれ?・・・・・・前もこうやって考えた事があったな・・・・・・・・・いつだったっけ・・・・・・・・・・・・確かあの時は・・・・・・・・・そうだ!!・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よ、四、四十・・・・・・・・・・・・!!」
「四十!良いね~!『永遠の愛を誓います』!」

カァァァァァァァァァ・・・・・・!!!

    エミーの顔が耳まで真っ赤になる。エミーは恥ずかしそうに頷いた。


「はい!どうぞー!シェメファト四十本の花束です!花束専用の袋に入れておきますね!」
「!!・・・あ、あ、ありがとうございます・・・!!」
    エミーはその袋を、大切そうに両手で持っている。
「良かっわねエミー・・・!良いプレゼントが買えて・・・!」
「ゾーエさんも絶対喜ぶよ・・・!」
「花束のプレゼント、ロマンチックだよね!」
「それに四十本!素敵な本数だよ~!」
「う、うん・・・・・・!皆、ありがとう・・・・・・!」
    エミーは照れ恥ずかしそうに礼を言う。


    夕方の大広間。五人は記念写真を撮った。
「良い感じに撮れたわね・・・!」
「うんうん!夕日も綺麗に写ってる~!」
「良い写真!」
「うん・・・!綺麗に撮れてる・・・!」
「良い思い出になったね!」
    その記念写真は、五人の思い出を詰め込んだ、五人にとって、とても大切なものとなった。
    そろそろ家に帰る時間だ。ソフィアも家に帰らなければならない。
「ソフィア・・・!また一緒に遊びましょうね・・・!!そうだ・・・!遠声魔法の接続しましょ・・・!」
「私も~!ソフィアちゃんも毎週水曜日の夜、話そ~!!」
「う、うん・・・!二人とも、これからもよろしくね・・・!!」
    すると、マナも緊張しながらソフィアに言う。
「ソ、ソフィア!わ、私とも・・・・・・え、遠声魔法の接続、してくれる!?」
「!!・・・う、うん・・・・・・もちろん・・・・・・!!」
    遠声魔法に、新たな友人が追加された。


『また会おうねー!!』
「うん・・・!皆、また会おうね・・・!!」
    五人は手を振りながら、再会を告げた。
    夕焼けの空を飛びながら、四人は帰路へ向かう。
「今日は楽しかったわ・・・!ソフィアとも友達になれたし・・・!」
「そうだね~!ソフィアとも友達になれて、良い一日だったね~!」
「うん!凄い楽しかった!」

ぽぉーー・・・・・・

「マナ・・・?」

ぽぉーー・・・・・・

「マナ~?」

ぽぉーー・・・・・・

「マナーーー!!」
「ハッ!だ、大丈夫だよ!何でもない何でもない!!」
「完全に上の空だったわよ・・・。」
「どうしたのマナ?」
「エミー、マナはね~、ソフィアと一日一緒に過ごして~、遠声魔法の接続もして~、心がどこかに行っちゃってたんだよ~!」
「なるほど・・・!」
    するとマナは、声高らかに宣言する。
「私、いっぱい勉強頑張る!!それでソフィアのお手伝いする!!絶対に!!」
「マ、マナ・・・本気だわ・・・本気で勉強するつもりね・・・!」
「おお!マナのやる気が満ち溢れてる!」
「もう完全に心が奪われてるね~!」
「先ずはもっと魔法の技術を磨く!!沢山の魔法覚えて、ソフィアのお手伝いが出来るようになる!!」
「花嫁修業だ~!」
    久し振りのヴィーグス・ノヴ。それは五人にとって、素晴らしい思い出となった。


「じゃあまたね!」
「また会おうねー!」
「ええ・・・また会いましょう・・・!」
「また会えるの楽しみにしてるね~!」
    帰路の途中で、リリーとアイラは自分達の家がある方向へと別れる。四人は手を振りながら、再会を告げた。
    エミーとマナの二人は、家に着く。夕暮れ時、アリシア、ヘイリー、ゾーエの三人は、ベンチで話をしていた。
「「ただいまー!」」
    二人は空から家に向かって降下していく。
「「「おかえりなさーい!」」」
    三人も二人に気付き、返事をする。
    二人が戻って来た後、五人は今日の出来事を話した。そして、日が沈んできた頃合、四人は手を振りながら、各々の家に入っていった。


    夕食を食べた後、二人はソファでゆっくりとしていた。
「皆と良い思い出がまた出来たわね!」
「うん!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゾ、ゾーエ・・・・・・・・・!!」
「ん?」
「あ、あのさ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
    ・・・・・・ど、どうやって渡そう・・・・・・
    夕暮れ時、四人で話している時に、ゾーエはエミーの持つ袋に気付いた。何を買ったのかゾーエに聞かれたが、エミーはヒミツと答えた。・・・・・・・・・流石に皆の前で渡すのは、あまりにも恥ずかしかったから。
    ・・・・・・別れ際、マナもこっそり言ってくれたよね・・・頑張って、って・・・ちゃ、ちゃんと渡さなきゃ!・・・ゾーエにプレゼントするんだ!・・・・・・
「え、えっとね・・・・・・・・・・・・こ、これ!!」
「ああ!さっきの袋!エミー秘密って言うんだもん!気になっちゃったわ!」
「じ、実はね・・・・・・・・・・・・・・・これ・・・・・・・・・・・・ゾーエに買ったものなんだ・・・・・・・・・・・・・・・皆の前で渡すのは・・・・・・その・・・恥ずかしかったから・・・・・・・・・・・・い、今渡すね・・・・・・!!」
「わ、私に買ってくれたの・・・!?う、嬉しいわ・・・・・・!!!」
    ゾーエは驚きと、喜びと、感動に満ちた笑顔をする。
    エミーは袋から、ゆっくりと、ゆっくりと、取り出していく。
    ・・・・・・ううぅ・・・き、緊張する・・・凄いドキドキする・・・だ、大丈夫・・・大丈夫・・・・・・・・・・・・・・・よし!!!・・・・・・

バッ・・・!

    エミーは袋から取り出した。その瞬間、爽やかな香りが広がる。エミーは花束をゾーエに差し出した。
「い、いつもありがとう!!!ゾーエ!!!沢山の大切なものを、ずっと貰ってばかりだったから・・・ずっと何もお返し出来てなかったから・・・私からも何か贈りたくて!!!」
    エミーは日頃の感謝の言葉と共に、花束を贈る。すると・・・・・・・・・・・・

ポタッ・・・ポタッ・・・ポタッ・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・ゾ、ゾーエ!?な、何で泣いてるの!?こ、この花嫌だった!?」
「違う・・・!!違うのエミー・・・!!嬉しいの・・・!!嬉しくて・・・涙が止まらないの・・・!!」
    ゾーエはエミーの両手を覆いながら、花束を受け取る。
「ありがとう・・・!!!ありがとうエミー・・・!!!本当にありがとう・・・!!!」
    ゾーエの涙は止まらない。ずっと溢れてくる。しかしエミーは、その涙を見て分かる。それは、嬉しくて、幸せで、美しい涙なのだと。心の底で、そう感じる。
    ゾーエは泣きながら、エミーを思いっきり抱きしめた。
「エミー・・・・・・!!!ありがとうね・・・・・・!!!嬉しい・・・・・・!!!言葉が見つからないくらいに・・・・・・!!!」
「良かった・・・・・・!!!ゾーエ・・・私こそ・・・・・・いつもありがとう・・・・・・!!!」
    気が付けば、エミーの眼にも涙が溜まっていた。本当に、目一杯の幸せな感情が、心から溢れてくる。


    気が付けば、数分は経っていた。ゾーエはゆっくりと涙を拭き、エミーに聞く。
「・・・・・・どうして私の好きな花が分かったの・・・・・・?」
「!!・・・・・・自分でもよく分からないんだけど・・・・・・・・・見た瞬間にこれだって思ったんだ・・・・・・・・・これが一番だって・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・シェメファト・・・・・・・・・本来の名を、『シェメーレ・ファツィフ・ホジュトゥ』・・・・・・・・・『青空に染まる紅』・・・・・・・・・・・・私の一番好きな花よ・・・・・・・・・!!!」
「!!・・・ほ、本当に良かった・・・・・・・・・ゾーエが喜んでくれて・・・・・・・・・本当に・・・・・・・・・・・・!!!」
「ええ・・・・・・!!!本当に嬉しいわ・・・・・・!!!ありがとうエミー・・・・・・!!!」
「うん・・・・・・・・・!!!」
「でもね・・・・・・・・・お返し出来てないなんて、そんな事無いのよ・・・・・・・・・!!」
「え・・・・・・!!」
「私も、エミーから沢山のものを貰っているの・・・・・・!!沢山の幸せをね・・・・・・!!!だから私も、もう沢山の大切なものを、いっぱいエミーに貰っている・・・・・・!!!」
    再びゾーエはエミーを抱きしめる。
「エミー・・・・・・!!!貴女と一緒にいられて、私はすっごく幸せよ・・・・・・!!!」
「!!・・・うん・・・・・・!!!私も・・・・・・!!!ゾーエと一緒にいられて、すっごく幸せ・・・・・・!!!」
    エミーもゾーエを抱きしめる。その暖かさは、お互いを幸せにする。
    旅に出て初めて訪れたこの草原。まだあの時には、この気持ちは感じられなかった。色んな人と出会い、色んな感情を解放して、幸せを感じる事が出来るようになった。何よりも、傍にいてくれるゾーエが、その幸せをこれ以上ないくらいに大きくしてくれている。エミーにとってゾーエは、幸せと愛そのものだった。ゾーエがいないと、この幸せは感じられない。この愛情は感じられない。エミーにとって、一番大切な存在、一番愛する存在は、二年以上前から既に、出会っていたのだ。


    夜も更けた頃。ゾーエとエミーは、ソファでくっついて座っていた。
「ねえエミー。次はどこに行こっか。」
「もっと沢山、色んな場所を見てみたいな。大切なものを、沢山増やしたい。たった二年で、こんなに沢山の大切なもの・・・沢山の大切な思い出が、いっぱい出来たから。これからもっと、もっと増えていくと思う。色んな人達と出会って、大切な思い出がいっぱい出来て・・・・・・私、幸せ。・・・・・・でも、ゾーエがいなきゃ。傍にゾーエがいてくれなきゃ、こんなに幸せな気持ちは感じられない。だから・・・・・・・・・これからも、ずっと一緒に旅をしてくれる?」
「ええ・・・もちろんよ。私はずっと一緒にいるわ。・・・・・・じゃあ、北に向かってみるのはどう?」
「北は何があるの?」
「まだまだ沢山の思い出があるわよ。沢山の景色が、沢山の街が、沢山の人がいる。魔女の世界はとっても広いから。」
「うん、ゾーエと一緒に、北に行きたいな。」
「ええ、行ってみましょう。」
    気が付けば二人は、そのままソファで寝ていた。
    ・・・・・・ああ・・・やっぱり・・・・・・・・・・・・確信したわ・・・・・・・・・・・・エミー・・・・・・貴女なのね・・・・・・・・・・・・待ってるから・・・・・・
    眠りにつく前、ゾーエは微笑みながら、心の中で思う。
    そして、エミーも・・・・・・
    ・・・・・・ああ・・・懐かしい・・・・・・そうだ・・・・・・こうして一緒に・・・・・・よく寝てたっけ・・・・・・



「お願い・・・・・・・・・もう一度、もう一度私に・・・・・・・・・あの幸せを・・・・・・・・・あの温もりを・・・・・・・・・・・・感じさせて・・・・・・・・・」
    女性は写真を抱きしめながら、涙を流していた。
「もう・・・・・・・・・苦しい・・・・・・・・・何も・・・・・・何も幸せを感じられない・・・・・・・・・・・・怒りしか・・・・・・・・・憎しみしか・・・・・・・・・悲しみしか・・・・・・・・・辛い・・・・・・・・・」
    女性の傍には、本が置かれてある。表紙の中心には、欠けた紋章の様なものが描かれている。後少しで、完成しそうな紋章が・・・・・・・・・。
「後少し・・・・・・・・・後少しなのに・・・・・・・・・耐えられない・・・・・・・・・苦しい・・・・・・・・・怒りが・・・・・・憎しみが・・・・・・悲しみが・・・・・・貴女との思い出を邪魔する・・・・・・・・・」
    女性はそっと本を持つ。
「あと・・・二年・・・・・・・・・あと二年で・・・・・・・・・完成する・・・・・・・・・新生魔法が・・・・・・・・・それまで・・・・・・・・・この怒りを抑えないと・・・・・・・・・この憎しみを抑えないと・・・・・・・・・貴女に・・・・・・もう一度会う為に・・・・・・・・・」
    女性は苦しそうに、涙を流しながら本を開く。
「はぁ・・・はぁ・・・・・・あと・・・・・・少し・・・・・・・・・あと・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ・・・・・・ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
    女性は直ぐに本を閉じる。女性の叫びと共に、辺りが揺れだす。
    ・・・・・・抑えろ、抑えろ、抑えろ、抑えろ、抑えろ、抑えろ、抑えろ、抑えろ!!!!!・・・・・・
「あ・・・・・・ああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
    女性は急いで家の外に出る。そのまま走り続け、何も無い拓けた大地にまで出てくる。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
    その咆哮は大地全体に響き渡る。その瞬間、女性の体から、灼熱の炎が溢れ出てくる。

ゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ・・・・・・!!!!!

    その大地は一瞬にして、炎の海になった。空高くまで、炎が昇っている。
「カエセェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」
    彼女は、多くの魔女達が恐れる状態にまで陥っていた。それは、著しい感情の偏り。そして、制御が効かなくなった、魔法の暴走。抑えれば抑える程、その感情が溢れ出してくる。それは魔法という形となって、大地一面を焼き焦がす。
    火の海は、数時間以上登り続けた。女性は何とか平静を取り戻す。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・・・・・・・・・・」

ポタッ・・・ポタッ・・・ポタッ・・・ポタッ・・・・・・・・・

「く・・・・・・!!くそ・・・・・・!!くそ・・・・・・!!」
    女性は崩れる様に膝を落とし、涙を零す。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あと二年・・・・・・・・・・・・耐えるんだ・・・・・・・・・・・・・・・そうしなければ・・・・・・・・・・・・発動しない・・・・・・・・・・・・・・・」
    女性はゆっくりと立ち上がり、家に戻って行く。彼女は既に何度もこの暴走を繰り返している。家の近くには、炎に対する結界が張られてある。しかし、時が経つ毎に、暴走の頻度も増えてきている。そして・・・・・・・・・
「!」
    結界を通り過ぎた瞬間、彼女は気付く。何度も、暴走した壊滅的な炎魔法を受け続けた所為で、結界が軋み始めている事に。
「・・・・・・・・・・・・・・・そうだ・・・・・・・・・私の結界魔法じゃ、暴走した魔法を完璧に防げない・・・・・・・・・張り直さないと・・・・・・・・・・・・」
    女性は手を掲げ、結界魔法を発動させる。
「・・・・・・・・・・・・頻度が・・・・・・増えている・・・・・・・・・・・・・・・クソッ・・・・・・!」
    女性は結界の奥へと消えていった。
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