Emmy Liebe―エミー・リーベ―

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第二十三話「最高位魔女と魔石」

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「ん?・・・・・・・・・・・・そうか、やっと来たか。」
    様々なものが所狭しと置かれてある大きな部屋。弧を描く壁は全て本棚になっており、本と魔法道具が沢山置かれてある。床にも様々な魔法道具があり、重力を無視するかの様に、天井にまで魔法道具や本が置かれている。更には女性の前にある大きな机にも、本や魔法道具が沢山ある。
    すると、箒に乗って本棚を整理していた女性が、椅子に座ってそう呟いた女性に話しかける。
「来たって?」
「エミーだよ。三人目の最高位魔女。こちらに向かって来ている。ようやくゾーエも私達に会わせてくれるらしい。」
「あんたが引きこもってるから中々会えなかっただけでしょ。」
「し、失礼な!私はここの管理をしなければならないから・・・・・・!」
「ここ暇でしょうよ。マヤちゃん達の方がよっぽど忙しいわよ。それでも外に出かけてるってのに、あんたはずっと引きこもってるからね。」
「わ、私はサマンサがいればそれでいいんだ!・・・・・・サマンサァ・・・・・・そろそろこっち来て、頭でも撫でてくれよ。二人きりだから良いだろう・・・・・・?」
「・・・・・・しょうがないわね・・・・・・」
    サマンサは箒を下降させ、床に降りる。そして、女性の頭を撫でながら言う。
「貴女が散らかしてるから整理してたのよ?」
「整理しなくていいから、私の傍にいてくれよ。」
「あんたはほんとに二人きりになると甘えたになるわね。」
「誰かいるとサマンサがツンツンするから・・・・・・」
「そうね、年上だし、癖が付いちゃってるから・・・・・・よしよし、ケーラ、愛してるわよ・・・・・・」
「サマンサァ・・・・・・!私もぉ・・・・・・!」

ギューーッ・・・・・・・・・!!

「ふふっ!ほんとに甘えたなんだから!よしよし・・・・・・」
「あったかい・・・・・・・・・」
「こんなところ誰かに見られたら、ケーラも大変でしょうに・・・・・・!」
「大丈夫だよぉ・・・・・・私は平気だ・・・・・・!」

コンコンッ・・・・・・!

「失礼しまーす。」

ガタンッ、バタンッ・・・・・・!

「わ!何ですか!?サ、サマンサさん!?ケーラさんは!?」
「・・・・・・・・・さあ?」
「こ、ここだ・・・・・・・・・・・・」
    机の下からケーラが這い上がる。
「ど、どうしたんですか?ケーラさん?」
「い、いや、サマンサが・・・・・・」
「私が何?」
「!・・・・・・いや、何でもない・・・・・・滑って転んだだけだよ。・・・・・・で、どうかしたのか?」
「あ、ああ・・・・・・これ、資料届けに来たんです。数が書いてあるんで、後で確認をお願いします。」
「ああ、分かった。」
「それでは・・・・・・」

ギィィ・・・・・・・・・パタン・・・・・・・・・

「何で急に退くんだよサマンサ・・・・・・君にもたれかかって抱きついてたから、そのまま椅子から倒れたじゃないか・・・・・・」
「だって、そんなとこ見られたくないし・・・・・・」
「私は構わないよ?」
「私が構うの!」
「うーん・・・・・・まあいい。サマンサ、こっちに戻って来て・・・・・・」
「誰か来るかもだし、もう駄目。」
「頼むよサマンサァ・・・・・・」
「今は駄目よ。」
「じゃあ・・・・・・」

キンッ・・・・・・!

「はい、部屋の扉ロックしたから・・・・・・防音もしたよ?サマンサァ・・・・・・」
「・・・・・・・・・もう、しょうがないわね・・・・・・!」
    サマンサは再びケーラの元に行き、抱きしめる。そしてまた撫で始めた。
「もう!仕事時間外も沢山してあげてるでしょ!?」
「何だかんだ言いながら甘えさせてくれるサマンサ、私は大好きだよ。」
「!!・・・そ、そういう事は夜言って!」
「サマンサ顔赤くなってるね。もう今日は仕事切り上げて、二人でゆっくりしようよ。膝枕して欲しいなぁ・・・・・・」
「!・・・し、してあげたいけど!・・・・・・・・・だ、駄目よ!さっき資料貰ったでしょ!?数を確認しないと!」
「じゃあ一分で終わらせるから、仕事切り上げよう?」
「!・・・・・・・・・・・・い・・・・・・・・・・・・い、一時間・・・・・・・・・一時間早く切り上げましょう?数の確認が済んだら、もう今日の仕事終わりだし・・・・・・・・・」
「という事は、後三十分か・・・・・・・・・じゃあ二十九分間、こうしてようよ。」
「そ、それは駄目!皆にも仕事の切り上げ伝えないといけないし!」
「大丈夫だよ・・・・・・いつも切り上げてるから・・・・・・実質三十分後が仕事終わりだよ・・・・・・皆も一時間早く帰るよ・・・・・・」
「うっ・・・・・・・・・た、確かにここは暇よ・・・・・・・・・管理といってもケーラが封印を施してるから、他に皆がする事も殆ど無いし・・・・・・・・・結局やる事、掃除と一日一回の書類作成しかないし・・・・・・ていうか書類っていっても、紙一枚だけだし・・・・・・・・・ほんとは元々一時間早くても十分だけど・・・・・・・・・」
「じゃあそう伝えよう。これからは一時間早く終わる事にしますって。」
「そうなると、更に短くなっちゃうでしょ?」
「どうして?」
「どうしてって、貴女がまた切り上げようって言い出すからよ!一時間早く終わる事にしたら、また一時間早く切り上げようって言うじゃない!」
「それで良いと思うよ。だって皆も、やる事無くて暇だと思うよ。」
「貴女またそう言って・・・・・・・・・元々六時間あった仕事の時間、今何時間になってると思う!?」
「・・・・・・・・・五時間位じゃないかな。」
「三時間よ!三時間!それで一時間早く切り上げてるんだから、実質二時間よ!?」
「それでも暇なんて凄いよねー、此処。もう私達二人でも、仕事十分間に合うんじゃないかな。」
「え、ええ・・・・・・間に合うわよ・・・・・・けど、元々は忙しい方だったのよ?貴女が管理人になるまではね。・・・・・・・・・貴女は最高位の中でも上位に位置する魔力を持っているから、管理を常に魔力でやっているもの。やる事が無くなったのよ。けど、辞めさせる訳にもいかないでしょ?だから今は殆ど、清掃だけやってもらってるの。」
「そうだね・・・・・・皆の仕事が無くなるのも駄目だよねー・・・・・・・・・じゃあしょうがないか・・・・・・・・・二時間で我慢しよ・・・・・・・・・」
「その位我慢して・・・・・・」
「じゃあ、仕事が終わったらいっぱい甘えさせてくれ!!」
「し、しょうがないわね・・・・・・・・・けど、ゾーエさんとエミーちゃんが来る日は、しっかりしてね?」
「もちろん!その代わりいっぱい甘えさせてくれ!」
「はいはい、分かったわ・・・・・・よしよし・・・・・・」



    あれから四ヶ月が経ち、十月に差し掛かった頃。ゾーエと十三歳になったエミーは、とある街に向かっていた。
    二人は山々が連なる大地を抜け、更に進んだ先にある、渓流地帯に入っていた。澄んだ川の側を歩いたり、花々を眺めたり、幅の狭い滝の上にある石を飛び跳ねて渡ったりしながら、二人は様々な話をしていた。
「この渓流地帯を抜けたら、広い草原に出るんだよね。」
「ええ。その先に、今回の目的地、アンエテリア・ノヴがあるわよ!」
「おお!楽しみ!・・・・・・・・・あ!そういえば!」
「ん?」
「アンエテリアの意味、やっと分かったよ!」
「あら、頑張ったじゃない!古代魔女語の勉強は難しいでしょ?」
「難しいね・・・・・・けど、ようやくアンエテリアは突き止めたよ!・・・・・・空中!だと思う!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「正解!」
「やった!じゃあアンエテリア・ノヴって、『空中の街』って意味なんだね!」
「そうよ!気になるでしょ!」
「うん!・・・・・・空中の街・・・・・・もしかして、空に浮いてたり!?」
「それは見てのお楽しみね!」
「気になるなぁ!」
    二人はゆっくりと、その渓流を進んで行く。景色を、そして、二人で共に歩く時間を楽しみながら。
    暫く歩いた後、二人は川の近くで休憩していた。
「もうすぐで渓流地帯を抜けそうね。」
「この景色ともお別れかぁ・・・・・・」
「いつかまた来ましょう?時間はたっぷりあるんだし!」
「!・・・うん!山から渓流をずっと歩いてきたけど、凄い楽しかった!見た事ない景色もいっぱい見れたし、『命』の元素魔法も結構上達出来たし!」
「ええ、やっぱり歩いて旅をするのも悪くないわよね!」
「うん!間近で見る景色はやっぱり良いね!」
    二人は再び歩き出した。


    渓流を抜け、平坦な草原を歩いて行く二人。遂に目的地である、アンエテリア・ノヴが見えて来る。
「!!・・・わ、わあ・・・・・・!!」
「凄いでしょ?空中の街、アンエテリア・ノヴ。」
「うん・・・・・・!!」
    アンエテリア・ノヴ。ドーナツ型に、建物が並んでいる街。そしてその名前の由来は、中心に浮かぶ大きな大地。大地そのものが、空中に浮いているのだ。
「あの浮かんでいる大地の上に、ケーラがいるのよ。・・・・・・そういえば、ケーラのお仕事話してなかったわね。」
「うん。どんな事をしているの?」
「前にも話した事ある、『魔石』の管理をしているのよ。」
「魔石・・・・・・確か、凄い貴重な魔法道具なんだよね。」
「ええ、そもそも今は、手に入れる事自体出来ないの。」
「そうなの?」
「ええ。今は全ての魔石をケーラが管理しているのよ。・・・・・・六百年前の厄災があってから、全ての魔石が使用禁止になったの。二度と厄災を起こさない為にも・・・・・・・・・それに、魔石にどれだけの魔力や感情が吸収されているか、分からないというのもあるからね。」
「じゃあ、どの魔石でどんな魔法が発動するかも、分からないんだね。」
「ええ。しかも、素人が触れたら簡単に発動してしまうわ。魔石を発動させないように触れるのも、それなりの知識がいるの。・・・・・・本当は昔、低位や中位の魔女達が、使いたくても使えない魔法の補助をする為に、少しだけ使用が許されていたんだけどね。けど、もし万が一にでもまた『死の呪い』が発動してしまうのだけは、絶対にあってはならない。だから今はもう、使用は許されなくなったわ。」
「もう全て回収されたの?」
「ええ、一つ残らずね。厄災があった後、全ての魔石をくまなく探し回ったの。感知魔法の応用である、『魔石感知』を新たに創り出してね。それで、魔石の位置が把握出来るようになったのよ。」
「感知魔法の応用って事は・・・・・・高位以上の魔女しか使えないの?」
「ええ。・・・・・・当時生き残った高位以上の魔女達は皆、全力でその応用を覚えた。魔石の回収の仕方も学んでね。皆の力もあって、魔石は全て回収されたの。」
「・・・・・・・・・確か、厄災を起こした魔石は、地中に埋もれていたんだよね。そういったのも?」
「ええ、もちろん。・・・・・・ただ、感知魔法にも強弱が存在する。高位の感知魔法と、最高位の感知魔法じゃ、範囲が変わるの。魔力が強ければ強い程、感知出来る範囲も広がる。厄災を起こした魔石は地中の奥深くにあった・・・・・・そういった地中の奥深くまで感知出来るのは、最高位の魔女くらいなの。それか、かなり優れた、最高位に近い魔力を持つ高位の魔女か。・・・・・・どちらにしても、多くは無いわ。けど、彼女達の頑張りもあって、地中に埋もれた魔石も全て回収された。だから、今はもう安心よ。」
「うん・・・・・・もう、そんな厄災なんて起こらないんだね?」
「ええ・・・・・・・・・」
    二人は魔石の管理をしているとされる、最高位魔女の一人、ケーラの元へと向かって行く。


「!!・・・・・・間近で見ると、更に迫力が凄いね・・・・・・!!」
「ええ!この上に魔石管理場があるのよ!誰が管理場に向かっているか、何処から向かって来ているのか、全て把握出来るようになっているの。ケーラの感知魔法だけでは無く、他の子達の目視でもしっかりと確認できるようにね。」
「なるほど・・・・・・箒で行くの?」
「ええ!基本箒でしか行けないようになっているの。転移魔法とかでは入れないように、結界が張られてあるのよ。万が一の為、侵入を防いでいるの。」
「わ、私達、通してもらえるの・・・?」
「大丈夫よ!ケーラに話はしてあるから!」
    二人は箒に乗り、空へと昇っていく。空中に浮いている大地に、どんどんと近付いていく。
    二人は大地の上まで来た。するとそこには、白い石畳の床に、大きな柱が円状に立っており、その中心にとても大きな、宮殿の様な建物があった。
「わあ・・・・・・凄い・・・・・・・・・!!」
    二人はゆっくりと床に足を付ける。すると・・・・・・・・・
「いやー、やっと来たか。二人共。」
    宮殿の入口から、一人の女性が出て来た。
「あ、あの、もしかして・・・・・・」
「うん。私がここの管理人を務めている、ケーラだ。よろしく、エミー!君と会えるのを楽しみにしてたよ。」
    ケーラ。紫がかった美しい黒髪が、足元近くまである。その瞳はオッドアイで、片方は青緑色、片方は赤色をしている。まるで、アレキサンドライトの様に輝いている。カナリートルマリンのブレスレットを着けた、とても美しい女性だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・背、凄い高い・・・・・・・・・」
「あっはっは!よく言われるよ!エミーはゾーエより身長が高い人を見たのは、初めてかい?」
「は、初めてです・・・・・・!ど、どうやったらゾーエの身長を追い越せますか!?」
「「え!?」」
「ゾ、ゾーエの身長を追い越したいのかい?」
「はい!」
「うーん・・・・・・特段何をした訳でも無いしなぁ・・・・・・ゾーエは?」
「わ、私も何もしてないけど・・・・・・」
「じゃあ、時が経つのを待とう!それでも追い越せなかったら、ゾーエにしゃがんでもらえば良いさ!」
「「!!」」
    二人はあの日の出来事を思い出す。少し顔が紅潮する。
「ま、まあ取り敢えず!ケーラ、エミーに案内してあげて?」
「ああ!いいとも!二人共、着いてきたまえ!」
    三人は宮殿へと入って行った。


「わあぁ・・・・・・・・・凄い綺麗・・・・・・ピカピカ・・・・・・!」
    床も壁も窓も、とても綺麗に掃除されてある。
「凄い綺麗にしてるんですね・・・!」
「え、ああ、うん。皆が綺麗に掃除してくれているんだよ!うちに従事する者達がね。」
「他の仕事の合間にも、掃除までこんなに綺麗にされてるんですね!」
「ん!?ん、んん!そうだね!彼女達には頑張ってもらってるよ!」
    ・・・・・・皆、掃除の他にやる事無いからな・・・物凄くピカピカになってるな・・・・・・
    と、その時、ケーラは先程出会った時の話をする。
「ああ、そういえば。エミー、君は『ヴァンツ・ズァロ・フィオン』に乗っているんだね。ゾーエに造ってもらったのかい?」
「ヴ、ヴァ・・・」

バチンッ・・・・・・!!

    エミーに、電流の様な感覚が走る。
    ・・・・・・その名前・・・私が・・・・・・私が・・・・・・
「っと!!ちょっと待ってねエミー!!」
    ゾーエはそう言うと、ケーラに小さい声で話す。
「ケ、ケーラ・・・!まだエミーには箒の事教えてないの・・・!」
「どうして?」
「ど、どうしてってそりゃあ・・・・・・・・・な、何か恥ずかしいからよ・・・・・・」
「でも絶対いつか気付かれるよ?」
「そ、そうだけど・・・・・・・・・」
「じゃあ今言おう!エミー!ヴァンツ・ズァロ・フィオンっていうのはねー!」
「あーーーっと!!私が言うわ!!」
「ちゃんと伝えられるのかい?」
「ま、任せなさい・・・・・・」
    ゾーエがエミーの元に来る。
「ゾーエ。ヴァンツ・ズァロ・フィオンって、古代魔女語?どういう意味なの?」
    ゾーエは深呼吸をして、エミーに話し出す。
「え、えっとね、エミー。貴女の箒、あるでしょ?」
「?・・・うん!!ゾーエが造ってくれた箒!!」
「じ、実はね、その箒には、名前があるの。それが、ヴァンツ・ズァロ・フィオン。古代魔女語で、『風と共に飛ぶ』という意味なのよ。」
「おお・・・・・・凄そうな箒!!」
「うん!・・・・・・よし!ほら!ちゃんと伝えられたでしょ?ケーラ。」
「い、いや・・・・・・殆ど伝わっていないよ・・・・・・仕方がない、私が言おう。」
「え!?」
    ケーラはエミーの傍に来て話す。
「エミー。その箒、ヴァンツ・ズァロ・フィオン。ゾーエが造ったものである事は、知っているよね?」
「はい!」
「そのヴァンツ・ズァロ・フィオンという箒は、世界でもトップクラスと言われる、超一級品の箒なんだ。箒はね、少しずつ劣化していくんだ。普通の箒なら、通常で五十年、最速で二十年程まで使用出来る。少しランクが上がれば、通常で百年、最速で五十年はもつ。一級品ともなれば、通常で二百年、最速でも百年以上もつ。しかし、君の乗っている箒、それは超一級品。箒の中では唯一『永久品』とまで称されている代物だ。どれだけ飛ばそうが、全速力で飛ばそうが、劣化する事は殆ど無い。更に言えば、ヴァンツ・ズァロ・フィオンは、他の箒には無い特徴を持っている。箒は本来、風の影響を受けやすい。暴風の中で、箒を飛ばす事の出来る者なんていない。しかしその箒は、風の抵抗を一切受けない。寧ろ、風を操る事によって、最高峰のスピードを出す事も出来る。しかしその分、数も少なくてね。一本造るのにもかなりの時間と労力が必要になる。しかも、その箒を造れるのはゾーエだけだ。とても貴重な箒なんだよ。その箒は正に、最高峰の名に相応しい、超一級の代物なんだ。」
    エミーはケーラの話を聞きながら、驚きを隠せないでいた。いや、もはや驚きを通り越して放心していた。
    ゾーエはしゃがみこみ、耳まで真っ赤にして、顔を塞いでいる。
「エミーちゃん。ゾーエの造った箒がどの様なものか、分かったかい?」
「はっ!・・・・・・・・・は、はい!!」
    エミーの放心状態が解かれる。そして次にやってきたのは、溢れる喜びと嬉しさだった。その喜びと嬉しさは、自身の箒が超一級品だからという訳では無い。それは驚きの方だ。エミーの喜びと嬉しさは、その箒を造るのにかなりの時間と労力を要する、劣化しない箒だというところから来ていた。
    ・・・・・・ゾーエは私の為に、沢山の時間と労力を使って、この箒をプレゼントしてくれたんだ!!!・・・それに、殆ど劣化しない・・・つまり、ずっと一生、ゾーエのプレゼントしてくれた箒に乗り続ける事が出来るんだ!!!・・・・・・
    エミーはあまりの嬉しさに思わず、しゃがみこんでいるゾーエに抱きつく。
「ゾーエ!!!本当にありがとう!!!プレゼントしてくれた時も最高に嬉しかったけど、その箒を造るのに沢山の時間と労力を掛けてくれたんだね!!!ゾーエが私の為にそこまでしてくれて、本当に嬉しい!!!それに、ずっと使っていけるのも!!!一生ゾーエのプレゼントしてくれた箒に乗り続ける事が出来るなんて!!!」
「!!・・・・・・エミー・・・・・・!!!ええ、その箒は、貴女の為に造った、貴女だけの箒なの・・・・・・!!喜んでくれて、私も嬉しいわ・・・・・・!!凄い評価が付けられちゃってるから、びっくりしたでしょ・・・?」
「うん・・・ゾーエの造った箒って、そんな凄い箒なんだって、びっくりはしたけど・・・!!そんな事よりも、ゾーエがそこまで私の為にしてくれたのが、堪らなく嬉しいの!!!」
「ふふっ!実はね、プレゼントするずっと前から、私の造る箒はエミーにピッタリだと思ってたの!エミーの最適性が『空気』だから、エミーも楽しく乗れるかなって思って!!」
「!!・・・嬉しい・・・そこまで考えてくれてたんだね!!!本当にありがとう!!!ゾーエ!!!大好き!!!」
「うん!!私も!!!・・・・・・・・・・・・」
「「あっ!!!」」
    二人の顔が真っ赤になる。
    ・・・・・・ま、また思わず言っちゃった・・・こ、告白とは受け取られてないよね・・・・・・いや・・・・・・告白はもうしたっけ・・・・・・
    ・・・・・・・・・・・・まだよね・・・多分・・・・・・・・・まだ完全に戻ってきては無いはず・・・・・・・・・だから、今の意味はそういう意味では無いのよね・・・・・・・・・・・・・・・けど・・・・・・・・・やっぱり・・・・・・・・・『貴女』から言われると・・・・・・・・・嬉しいわ・・・・・・・・・・・・
    二人が仲良くしている所を、ケーラは見ていた。表情を変えないようにしているつもりだが、隠しきれてない。羨ましさが溢れて出ている。
    ・・・・・・ああ、私も早くサマンサに抱きしめてほしい・・・サマンサとイチャイチャしたい・・・サマンサに甘えたい・・・サマンサに頭を撫でてほしい・・・サマンサに膝枕してほしい・・・サマンサの誘惑を受けたい・・・サマンサの・・・・・・
「あ、ああごめんねケーラ!!さ、行きましょうか!!」
「・・・・・・・・・え!?あ、ああ!そうだな!!行こうか!!」
    各々頭に考えを浮かべながら、三人は更に先へと進んで行った。


    長い螺旋階段を上がった先にある廊下を、三人は歩いていた。そして遂に、ある扉が見えてくる。
「さあ、ここが管理室だ。私が普段過ごしている場所だよ。」
「おお・・・・・・!」
「だ、大丈夫かしら・・・・・・」

ギィィ・・・・・・!!

扉が開き三人は中へと入る。
「!!」
    エミーはその部屋の光景に驚く。沢山の本と魔法道具がそこら中にある。見た事の無いものだらけだ。しかも、天井にまで本棚がある。普通なら今にも落ちてくる筈の本や魔法道具が、重力を無視する様に棚に置かれてある。
「・・・・・・・・・・・・す、凄い・・・・・・・・・!!」
「あら、かなり綺麗に整頓されてあるじゃない!・・・・・・けど、やっぱり相変わらず危なっかしい部屋ね・・・・・・魔法道具が多過ぎて、いつ何が発動するか分からなくて怖いわ・・・・・・エミーも気を付けてね。この部屋には、危ない魔法道具もあるから。」
「危ない物なんか置いてないよ。」
「いえ、危ないわ。」
「そうか?例えばこれは、複製箱。複雑な物でなければ、中に入れた物を複製する事が出来る。まあ精々、そこら辺の石ころとか何も書いてない紙とか程度だけど。これは、宝石の瞳。その人が持つ瞳の色彩が、どの宝石になるのかを的確に当ててくれる。これは、適正石。五元素魔法の最適性を教えてくれる。これは、魔力の手形。手形に手を置けば、その人の持つ魔力が現段階で、どの程度残っているのかを示してくれる。」
「あんまり危なそうな魔法道具は無い感じだけど・・・・・・」
「だろ?これは、思慕の水晶。魔力を送り込むと、その人の好きな人の名前や特徴が出てくる。」
「危ない!この部屋やっぱり危ないよゾーエ!」
「だから言ったでしょ!?気を付けてねエミー!」
「う、うん!」
    すると、左にある扉が開く。そこから、一人の女性が出て来た。
「あ!いらっしゃい!ゾーエさん!貴女がエミーちゃんね!よろしく!サマンサよ!」
「久し振りね、サマンサちゃん!」
「あ、エミーです!よろしくお願いします!」
    サマンサ。美しい水色の髪が肩辺りまで伸びている。瞳はカナリートルマリンの様な美しい黄色で、両耳にアレキサンドライトのイヤリングをしている。とても美しい女性だ。
「!!・・・・・・・・・サ・・・・・・サ・・・・・・」
「!!・・・ちょ、ちょっとケーラ?嘘でしょ?」
「サマンサァ!!」
    ケーラはサマンサに向かって両手を広げ走り寄る。

ガシャーンッ・・・・・・・・・!!

    サマンサはスッとかわし、ケーラはそのまま本棚に突っ込んだ。
「わ!!ケ、ケーラさん・・・・・・!?」
「大丈夫よエミーちゃん!なんでもないの!」
「な・・・・・・なんで避けるんだよ・・・・・・」
「あら、何か本棚に捜し物?魔法原理の本なら下から八つ目の棚にあるわよ。」
「い、いや・・・私が今求めているのは・・・・・・」
「ああ!魔女と身体機能に関しての本なら、下から二十三番目の棚に置いてあるわ!」
「う、うう・・・・・・・・・サマンサァ・・・・・・何で冷たくするんだよぉ・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ちょっと待っててね!!」
    そう言うとサマンサはケーラを引っ張って二人に声が聞こえない場所まで行った。
「?・・・な、何がどうなってるの・・・・・・?」
「ま、まあ、見てれば何となく分かってくると思うわ・・・・・・」
    サマンサは小声で話す。
「ちょっとケーラ・・・!今日はしっかりしてって言ったでしょ・・・!?何で二人の前で抱きつこうとするの・・・!」
「だって・・・・・・ゾーエとエミーがイチャイチャしてたから・・・・・・私もサマンサとイチャイチャしたくて・・・・・・我慢が・・・・・・」
「我慢して・・・!絶対よ・・・!」
「あ、ああ・・・・・・善処するよ・・・・・・」
    二人は再び戻って来た。
「ご、ごめんなさいね待たせちゃって!もう大丈夫!」
「あ、ああ・・・・・・大丈、夫・・・・・・・・・・・・・・・」
「えーっと・・・・・・サマンサちゃん、私はもう知ってるから、大丈夫よ?」
「!!・・・い、いやいや!ゾーエさんとエミーちゃんにはそんな姿・・・・・・!」
「大丈夫だって!!さあ、サマンサ!!私達も・・・むぐっ・・・・・・」
    サマンサはケーラの口を塞ぐ。
「あんたはちょっと黙ってなさい・・・・・・」
「あの、お二人は結婚なされてるんですよね!」
「え、ええ!」
「私も大丈夫ですよ!普段通りにしてもらって!」
「え!?い、いやいや!エミーちゃん!これが普段通りなのよ!?普段からこういう感じなの!」
「むぐっ・・・う、うふぉらー!ふふぁんはふぃっふぁいふぁふぁえはへへふへふひゃはいは!」
「ね!?ケーラもこう言ってるでしょ!?」
「何て言ってるのか全然分からないわ・・・・・・」
「ふぁふぉふ、はまんはぁ~、ひっはい!ひっはいはへへひひはら!はひふはへへふれ!」
「・・・・・・・・・・・・頼むサマンサ。一回、一回だけで良いから。抱きつかせてくれ。・・・・・・って言ってますよ。」
「え!?な、何でエミーちゃん聞き取れるの!?」
「流石ねエミー!サマンサちゃん、このままだとケーラが暴走したまま止まらないから、一回だけでも甘やかしてあげたら?」
「・・・・・・・・・ゾ、ゾーエさんがそう言うなら・・・・・・・・・い、一回だけ・・・・・・!」
    サマンサはケーラの口から手を離す。
「やったーーー!!サマンサ!抱きしめておくれ!!」
「も、もう・・・・・・これは仕方なくしてあげてるだけだから!私は別にケーラを抱きしめたいなんて・・・・・・!!」
    そう言いながらも、サマンサはケーラを抱きしめる。
「ケーラさん、見た目クールな感じだけど、実は甘えたさんなんですね!」
「ああ・・・・・・なのにサマンサは私を跳ね除けるんだ・・・・・・・・・二人の時はあんなに優しいのに・・・・・・昨日だって私をさそ・・・」

ギュュュュュュッ・・・・・・!!!

「な、ん、だっ、てぇ!?」
「んーー!んんーーー!」
    ケーラはサマンサの腕をパチパチ叩く。ギブのサインだ。
「・・・・・・ぷはぁ!サ、サマンサ・・・・・・・・・もっと優しく抱きしめてくれよ・・・・・・激しく抱きしめるのは夜にして・・・」

ギュュュュュュュュュュュュッ・・・・・・!!!!

「あーんーたーねぇー!!」
「んーーーー!んーーーー!」
    二人のやり取りを見ながら、エミーはゾーエに言う。
「二人共とっても仲良しだね!」
「ええ!ケーラとサマンサちゃんは、昔からずっと仲良しよ!」


    サマンサとイチャイチャ出来てひとまず落ち着いたケーラは、エミーとゾーエに話をする。
「じゃあ、そろそろ行こうか。」
「?・・・何処にですか?」
「全ての魔石を保管し、管理している、魔石管理室だよ。」
「え!?は、入って良いんですか・・・!?」
「ああ、大丈夫だよ。私と共に行けば入れるさ。勿論、私が一緒でなければ、誰も入る事は出来ないが。・・・・・・魔石管理室も勉強になる。万が一に備えて、魔石に関しての詳しい勉強をするのも良いだろう。」
「魔石の詳しい勉強・・・・・・」
「エミーは見た事しかないからね。基本の勉強はしたけど、詳しい事はここで習うのが一番良いわ。」


    四人は巨大な扉の前に来る。
「この奥に、魔石がある。」
「だ、だ、大丈夫、なんですか・・・・・・?」
    エミーは不安そうに尋ねる。
「ああ、心配しないで。全ての魔石に私の封印が施されている。最高位の封印がね。魔石の機能や性質を全て封印しているんだ。私以外、この封印を解く事は出来ない。」
「ええ。ケーラの言う通りだから、心配しなくても大丈夫よ、エミーちゃん。」
「はい・・・・・・!」
    ケーラは扉に手をかざした。少しすると、扉がゆっくりと上に向かって上がり始めていく。そして、中の景色が見えてきた。
「!!」
    そこは、円の形をした大きな部屋だった。少し薄暗い。弧を描いた壁には棚の様なへこみがあり、そこに魔石が並べて置かれてある。それが等間隔に天井まで続いており、その高さは計り知れない程だ。
「ま、魔石が沢山ある・・・・・・・・・」
「ここに全ての魔石があるからね。・・・・・・っと、全てでは無いな。一つだけここじゃない場所にある。」
「・・・・・・・・・あ!無辺図書館!」
「そうだよエミー!何年か前に、無辺図書館へ資料として送ったんだ。勿論私の封印付きでね。向こうには創設当初の強い魔法もあるし、安心だからね。」
「ここは、いつ建てられたんですか?」
「六百年前さ。厄災が鎮まった後。私の先祖にあたる、『イルゼ』が、この建物を創ったんだ。」
「イルゼ・・・・・・・・・もしかして、偉大なる魔女達の・・・・・・・・・」
「ああ、厄災を封じた内の一人だよ。彼女には、カーラというパートナーがいたんだ。しかし、カーラは厄災により命を落とした。生き残ったイルゼが、魔石の管理を始めたんだ。」
「カーラ・・・・・・偉大なる魔女達の一人・・・・・・」
「ああ。二人共、最高位魔女だった。我が子を安全な場所に送り、皆と共に厄災を鎮めたんだ。しかし、死の呪いは強力な呪いだ。厄災からこの世界を護った九人の内、生き残ったのは三人だけだ。」
「たった三人・・・・・・・・・」
    すると、ゾーエが話をする。
「・・・・・・・・・死の呪いは、魔石が砕けた事によって溢れ出した。溢れ出した瞬間の侵食速度は凄まじかった。一時間足らずで、魔女の世界の半分以上を覆ったわ。その後も少しずつ広がり続けたの。・・・・・・・・・死の呪いにかかった者の多くは、一週間程で命を落とす。けどそれは、どの範囲にいるのかにもよる。死の呪いが溢れ出した場所に近ければ近い程、死への時間が短くなっていく。死の呪いは中心に行くに連れて、力が強くなるの。五人の最高位魔女達は、中心で死の呪いを封印し続けた。・・・・・・・・・もしそこで死の呪いにかかれば、一瞬で命を落とす事になるわ。僅かな時間さえも奪う・・・・・・・・・彼女達は命を懸けて、死の呪いを封印したの。」
「・・・・・・・・・ああ。彼女達は愛する人の為、大切な人の為、この世界に生きる魔女達の為に、命を懸けた。五人の最高位魔女達の内、三人が命を落とした。セリア、カーラ、エラ。そして、聖地を護った四人の内、安息の地を守護した、ジェイミーも、創造の地を守護した、フローラとエトーレも、命を落とした。死の呪いによってね。」
「・・・・・・・・・・・・っ!!」

バチンッ・・・・・・!!ドクンッドクンッドクンッドクンッ・・・・・・!!!

    電流が走る様な感覚。エミーの中で、何かが悲鳴を上げる。胸を抑えながら、エミーは言う。
「・・・・・・・・・あの厄災を・・・・・・・・・二度と起こさない為にも、ここに封印してあるんですね・・・・・・」
「ああ・・・・・・万が一にも、厄災を再び起こしてはいけないからね。・・・・・・・・・・・・こっちに来たまえ、エミー。魔石の種類について教えよう。」
「?・・・魔石の、種類・・・・・・?」
「ああ。魔石にも種類があるんだよ。ぱっと見じゃ分からないだろうが・・・・・・覚えておくに越したことはない。」
    エミーは壁に近付く。沢山ある魔石の内、ケーラはある場所を指す。
「ここの五つがあるだろう?これは全て、種類が違う。」
「・・・・・・・・・・・・た、確かに・・・・・・ぱっと見違いは分からないですね・・・」
「だろう。だが、この中でも大きな違いがあるんだ。・・・・・・・・・・・・魔石には、五段階存在するんだよ。『最下石』、『下石』、『中石』、『上石』、『最上石』。この五段階がね。主に、吸収する範囲と、魔力、感情の許容量によって分かれている。」
    ケーラは左から順に指を指し、次々と説明をする。
「これが、最下石。吸収範囲が狭く、許容量も少ない。」
「これが、下石。吸収範囲が狭く、許容量は通常。」
「これが、中石。吸収範囲、許容量、共に通常。中間の存在だ。」
「これが、上石。吸収範囲は通常、しかし、許容量が多い。」
「そしてこれが、最上石。吸収範囲、許容量、共に多い。」
「じゃあ、この魔石が一番強力な魔石なんですね。」
「ああ、そうだ。最上石・・・・・・広大な範囲と、許容量を持つ。・・・・・・・・・厄災を生み出した魔石も、最上石だ。・・・・・・広大な範囲から、吸収し続けてきたのさ。魔力や、怒り、憎しみといった感情をね・・・・・・」
「・・・・・・・・・最上石以外では、死の呪いは発動しないんですか?それとも、他のでも発動する可能性はあるんですか?」
「ある。上石までならね。上石と最上石は、吸収範囲は大きく違うが、許容量は一緒だ。ただ、やはり最上石の範囲が広いからね。可能性としては最上石が最も高い。・・・・・・・・・しかし、上石でも発動する可能性がある事を忘れてはならない。」
「はい。・・・・・・・・・これは、どうやって見分けるんですか?」
「そうだな・・・・・・私は見慣れているから、見れば分かるが、それは長年見続けているからに過ぎない。一番の見分け方はやはり、実際に持つ事だよ。」
「え・・・・・・」
    ケーラは中石を持ち、エミーに差し伸べる。
「い、いやいやいや!こ、怖くて持てませんよ!?」
「大丈夫!私の封印がかけられてある。何も発動はしないよ。・・・・・・・・・しかし、どうせなら持ち方の勉強もしておこう。万が一に備えてね。」
    ケーラはもう片方の手を出す。
「大切なのは、手にかける魔法だ。自身の指先に薄い結界を生み出すんだ。指先と結界の隙間はほぼ無いように。魔石は魔力を吸収する。その原理は、感情に反応して魔法が発動したその瞬間、再び魔力に変換して吸収しているんだ。それと同時に、感情もね。まあ吸収されたとしても感情が尽きる事は無いが、魔力は自然回復だからね。いずれ尽きてしまう。じゃあ、それを防ぐにはどうするか。魔石が反応しないギリギリの感情を引き金とするんだ。本当にあるかないか位の微々たる感情で、微弱な結界を生み出す。魔石を手に取る為には、これが出来なければいけない。もし失敗してしまえば、魔石は結界魔法を吸収するからね。魔石は反応した時、その中心に小さな光を灯す。光が灯ったら失敗という事だ。・・・・・・まあ魔石の機能や性質は全て封印してあるから、成功失敗関係無く光は灯らないがね。さあ、やってみよう!」
「ええぇ!?い、いや!そんな高度な応用出来ませんよ!?」
「そうかい?案外出来るもんだよ。」
    するとサマンサがケーラとエミーの元へ来る。
「案外で出来るのは貴女だけよ・・・・・・・・・はい、エミーちゃん!これで良いのよ!」
「え、あ、ありがとうございます・・・・・・」
    エミーが渡されたのは、普通の手袋だ。
「て、手袋で良いんですか!?」
「ええ!わざわざややこしいやり方しなくても、手袋で触れば問題無いわ!後は、魔石の近くで魔法を発動しない事。それさえ出来れば、魔石を触れるわ!」
「は、はい!」
「ややこしいやり方って・・・・・・私のやり方は一番ベストだと思うよ?手袋をわざわざはめる手間がかからないからね。」
「手袋はめるのに手間って・・・・・・貴女のやり方は、技術を積んだ一部の人しか出来ないわ。こっちのが手っ取り早いわよ。」
「エミー、君はどちらがベストだと思う?」
「え・・・・・・・・・・・・ま、まあ・・・・・・・・・楽なのは手袋だと思いますけど・・・・・・・・・」
「ほら。」
「んー・・・・・・・・・そうかなぁ・・・・・・・・・魔石を触った後、また手袋を外さないといけないんだよ?そして触る時に、また手袋をはめないといけない。時間かかるよ?」
「えーっと・・・・・・・・・そこまで技術が到達すれば・・・・・・・・・・・・まあ・・・・・・・・・いずれは・・・・・・」
「ほらサマンサ。私のやり方がベストだと、エミーは言っているよ。」
「そんな事言ってないわよ。」
「ゾーエ、ゾーエはどう思う?君は一番の有識者だ。君の答えを聞かせてくれ。」
「楽なのは手袋よ。どう考えても。」
「私の勝ちね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「まあ非常事態でどちらが良いかと言われれば、直ぐに備えられる結界の方が良いでしょうけど・・・・・・」
「ほら!ゾーエがそう言っているぞ!?やはりベストなのは私のやり方だ!」
「いや、それが直ぐに出来たらの話よ?結局は、手袋をはめるのが早いか、結界を張るのが早いかだから。手袋は誰でも直ぐにはめられるけど、結界を直ぐに張るのは誰でもという訳にはいかないからね。」
「やっぱり私の勝ちね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・サマンサ、私の負けだ・・・・・・私の事を好きにしてくれ・・・・・・どんな激しいお望みだって、私は叶えてみせるよ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
「いやだから!サマンサの要望に応えるよ!?だから要望を言ってくれ!ほら!」
「な、何の要望よ・・・・・・?」
「決まってるだろう!?レビアオー・・・」

ギュュュュュュュュュュュュュュュッ・・・・・・・・・!!!!

「んーーーー!!んーーーー!!」
「貴女ほんとに懲りないわね~。どう?このまま気絶する?」
「・・・・・・・・・ほへほひひはほ・・・・・・・・・!」
「・・・・・・それも良いかも、って言いましたね。」
「貴女ねぇ!?」
「・・・・・・・・・はまんはほふひひひへふれ!わはひははまんはほふへほははへははひへふひへほはふふはひ!!」
「・・・・・・サマンサの好きにしてくれ。私はサマンサの胸の中でなら気絶しても悪くない、って言ってます。」
「エミー凄いわね・・・」
「どうなってるのよ貴女は!?」
「わはひははまんはほほほほはひひへふはは!!はまんはひはははひほはへへほはまははひ!!!」
「・・・・・・私はサマンサの事を愛してるから。サマンサになら何をされても構わない、って言ってます。」
「エミーが翻訳してるみたいね!」
「!!・・・わ、私だって・・・!!あ、愛してるわよ!!!」
「・・・・・・私だって愛してるわよ、って言ってます。」
「それは翻訳しなくてもいいのよエミー・・・」
「あ、そうか。・・・・・・完全に集中してた・・・・・・・・・」
「!!・・・はまんはぁぁぁ!!!あいひへふぅぅぅ!!!」
「あ、今のは私も分かったわ!」
「!!・・・・・・も、もう!!」
    サマンサはケーラを離す。
「サマンサァァァァ!!!愛してるーーー!!!」
「わ、分かった!分かったから!!一旦落ち着いて!!」


    四人は魔石管理室から外へ出た。ケーラは再び扉を閉める。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・・・・・・ドンッ・・・・・・!!

「よし、じゃあ戻ろうか。」
「よし、じゃないわよ。歩きにくいから。」
「私がまた暴走しても良いのかい?」
「何よその脅し文句・・・・・・・・・分かったわ・・・・・・」
「うん!このまま行こう!」
    四人は来た道を再び戻って行く。ケーラはサマンサの腕にしがみつきながら歩いている。
「何だかそうして歩いてると、二人の昔の頃を思い出すわね!」
「まあ、身長反対になっちゃいましたけど・・・・・・昔はあんなに小さかったのにねー!」
「昔はサマンサさんの方が背が高かったんですか?」
「ええ、と言っても、元々私の方が年上だから・・・・・・子供の頃もよく、私の腕にしがみついてたのよ!」
「わ、私もゾーエの身長越えたい!!」
「エ、エミー・・・・・・諦めないわね・・・・・・」
「あ、でも・・・・・・・・・ケーラさんとサマンサさんを見て思ったけど、ゾーエより身長低くても抱きしめてよしよし出来るんだね・・・・・・!じゃあ別にいっかな!!」
「そ、そんなに私をよしよししたいの?」
「したい!!」
「なるほど・・・・・・エミーはエスコートする側が良いんだね。という事は・・・・・・」
「ケーラ、あんまり言うとただじゃ済まないわよ。」
「でもサマンサになら何されても良いし・・・・・・」
「一週間よしよし禁止は?」
「!!・・・それは困る。死活問題だ。うん。もう黙っていよう。」
    四人はそのまま、道を戻って行った。


「じゃあまた!二人共!明日も来てくれ!」
「ゾーエさん!エミーちゃん!また明日!」
「ええ!二人共!また明日会いましょう!」
「ケーラさん!サマンサさん!また明日!」
    ケーラとサマンサは宮殿近くで手を振りながら、箒に飛んで行く二人を見送る。
「やっと会えたよ!」
「貴女が外に出ればもっと早く会えてたのに・・・・・・」
「外はなぁ・・・・・・」
    二人は宮殿の中を歩きながら、ある話をする。
「・・・・・・ケーラ。やっぱりまだ分からない感じ?」
「・・・・・・・・・ああ。一応探してみてはいるんだが・・・・・・やはり見つからない。」
「流石にここから魔石を持ち出せる人なんて、貴女以外にいないものね・・・・・・」
「ああ・・・・・・それに、最高位の封印もかけてある・・・・・・まず使用するのは不可能だ・・・・・・・・・しかし・・・・・・」
「ええ・・・・・・やっぱり引っかかるわね・・・・・・・・・あのゾーエさんが言うんだもの、確実に何かが動いてるわ・・・・・・」
「ああ・・・・・・もう残る可能性は一つしかない・・・・・・・・・しかしそれは、あまりに特定が難しい・・・・・・・・・この街から渓流にかけては、常に私の魔石感知がある・・・・・・・・・当初から何度か探してはいるが、あまりにも手掛かりが無い・・・・・・」
「感知されないように、結界や封印を施している可能性もあるわね・・・・・・」
「恐らくは・・・・・・少なくとも普段はしているだろう・・・・・・・・・しかも・・・・・・」
「ええ、向こうも感知魔法は使える筈よ・・・・・・ケーラやマヤちゃんに近付かないようにしているのかも・・・・・・・・・」
「ああ、それもあるかもしれない・・・・・・となれば、こちらから見付け出すのはほぼ不可能に近いが・・・・・・・・・」


    それは、エミーとゾーエが魔石管理場から帰る少し前・・・・・・
「エミー、好きな本読んで良いよ!」
「!!・・・ありがとうございます!ケーラさん!」
    少しすると、エミーは読書に没頭し始めた。
    そして、ゾーエとケーラとサマンサは、ある話をし始めた。
「これ、マヤに複製してもらったの。・・・・・・・・・読んでみて。」
    二人はゆっくりとその本を読む。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なるほど・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・確かに、怪しいわね・・・・・・・・・・・・」
「ええ・・・・・・他にはこれといったものは見つからなかったわ・・・・・・・・・けど、この『三人目』が鍵を握っている可能性は高い・・・・・・・・・」
「ああ・・・・・・・・・共に移動した二人は分かる。しかし、殆ど使わない『扉』を、同じ場所、同じ時刻に使っているのは、偶然とは思い難い。しかもこの距離だと、二人には認識されていない筈だ。それに・・・・・・」
「ええ・・・・・・エミーちゃんの最適性が『空気』なら、遠くまで魔力が流れる・・・・・・向こうは存在に気付けるわ・・・・・・」
「移動した時刻も、丁度暴風に魔力が乗って流れてくる頃よ。どうやら暴風が止んだ時点で扉を発動したみたい。」
「移動を確認したのかもしれないな・・・・・・・・・・・・・・・何やら近頃、不穏な動きがあるようだ・・・・・・・・・」
「ええ・・・・・・十三年前の、ピュライネの件も、未だに掴めていないわ・・・・・・」
「ああ・・・・・・魔力の吸収なんて事は、普通出来る事じゃない・・・・・・しかも相手は植物だ・・・・・・・・・感情は持たない・・・・・・・・・」
「可能性があるとすれば、その時丁度何か確認を行っていたか・・・・・・レイナさんはあの時、五分程魔力を流し込んだ事があったみたい。その時にレイナさんがピュライネに触れていたとすれば、レイナさんを通してピュライネの魔力も一緒に吸収する事が出来るわ。」
「感情を持つ者を経由しての吸収か・・・・・・」
「ええ、その可能性が高いわ。・・・・・・ただ・・・・・・」
「肝心のその方法が、掴めていないですね・・・・・・」
「ああ・・・・・・やはりあの時挙げた推測と同じになりそうだな・・・・・・・・・」
「この『三人目』と、魔石に繋がりがあるかは分からない。けど、魔力を感知出来るのだとしたら、高位魔女のはず。それに、『彼女』も、エミーの話から察するに、高位魔女よ・・・・・・」
「ああ、転移魔法を使ったんだって・・・?それなら高位魔女である事は確定だ・・・。それに、マヤから話を聞くに、新生魔法書にも名前は無かったと・・・・・・」
「そうなれば、魔石、或いは新しい魔法の可能性が浮上するわ・・・・・・現存する魔石は誰も盗む事が出来ない以上、それしか無い・・・・・・」
「ええ。少なくとも『彼女』は新生魔法の登録をしていない。或いは、まだ発動させていない。もし『三人目』の名前が分かれば、新生魔法書があるかないかだけでも確認出来るのだけど・・・・・・」
「もし無いなら、『三人目』と十三年前の件の繋がりも有り得るな・・・・・・」
「確定している事は・・・ある日、殺人が起きた事、新生魔法の登録をしていない者がいる事、そして、もう一人、あの場に魔女がいた事・・・・・・」
「少なくとも最初の二つは、危険な人物である事には違いない・・・・・・殺人は勿論だが、新生魔法を無辺図書館に登録していないのは、発動させる上での義務に反している。」
「今はこの二人を探し出すべきね・・・・・・もしくは一人か、そこは分からないけれど・・・・・・少なくとも、繋がりはありそう・・・・・・」
「嫌な予感がするな・・・・・・やはりエミーに魔石の扱いを教えておいて良かった。」
「ええ、そうね・・・・・・少なくともエミーちゃんとの繋がりはある。エミーちゃんに魔石の事を知っておいてもらうのは、あの子自身にとっても少しは安全になるでしょう・・・。」
「結局、情報として得られたものはこの、『三人目』の存在だけね・・・・・・」
「向こうから仕掛けてくるのを待つしかないのか・・・・・・もしいずれ向こうが仕掛けてきたとして、二人だけだと危険だ。私も直ぐに向かわせてもらう。その時は遠声を頼む。」
「ええ、ありがとうケーラ。」
「・・・・・・・・・最悪の場合も考えておかなければならないかもしれない・・・・・・・・・」
「ケーラ、貴女なら分かっていると思うけど、『土』を無闇に使っては駄目よ。貴女のそれは、地殻変動を容易に起こすわ。」
「ああ、勿論分かっているさ、サマンサ。しかし、『土』は防御にも使える。攻撃に使うつもりは無いよ。」
「私からも、それはお願いするわ。貴女の『土』で攻撃すれば、どれだけ抑えても、命を奪う程の力を持つ。先ずは話す事を試みるわ。それで危険と感じたら、マヤと貴女を呼ぶ。貴女には防御面でのサポートをお願いしたいわ。」
「勿論だ。私は攻撃しない。それは約束しよう。ただ、最悪のケースというのは、私達が間に合わなかった場合の事だ。それが一番危惧される。・・・・・・いつ鉢合わせるか分からない。更に言えば、突然相手が攻撃を仕掛けてくる場合もある。そうなれば、遠声から転移魔法を発動するまでに、間に合わない可能性がある。相手は高位魔女でほぼ確定だ。相手が全力で攻撃してくれば、ゾーエの魔力では防ぎ切れないだろう。そうなれば時間を稼ぐのはエミーになる。子供と言えど最高位魔女だ。高位魔女となら力で勝てるだろう。・・・・・・ただ、戦闘となると話は別だ。相手の動きや攻撃を見極めながら動かなければならなくなる。そうなれば、今のエミーには分が悪い。防御をするといっても、相手の攻撃次第では簡単に打ち破られてしまうだろう。」
「ええ、確かにそうね・・・その通りだわ・・・・・・エミーにはそういった技術はほぼ無い。魔力で勝っていても、戦闘ではほぼ確実に向こうが上になると思う。エミーが攻撃をすれば、向こうも押されるでしょうけど、あまりそれはさせたくない。エミーの攻撃は最高位魔力になるから、もし直撃すれば相手を殺しかねない。真相が分からない今、それは避けたい。エミーの為にも。だから現状では、出来ればエミーに攻撃をして欲しくない。」
「ああ、そうだね。私達なら生きたまま拘束する事も可能だ。しかしそれは力加減が分かっているからだ。エミーの歳でそれはあまりに難しい。だからこそ、私達が到着するまでの護りを、エミーは覚えなければならない。」
「ええ、そうね・・・・・・エミーには攻撃させず、護りに徹して欲しい。」
「そうなるとやっぱり、エミーちゃんには護りに徹した技術が必要になるわね・・・・・・」
「ああ、その為には、『土』の特訓が必要になる。土は破壊力だけでは無い。防御面も最も高い。最高位魔力で土の防御方法を覚えれば、大抵の高位魔法は防げる様になる。・・・・・・エミーに土の元素魔法を教えよう。勿論攻撃方法では無く、防御に関してのね。」
「ええ、そうね・・・・・・ケーラの言う最悪のケースの場合も考えると、その習得は必須ね。」
「なら、向こうが尻尾を出すまでに習得しておこう。早い方が良い。」
「予定がないなら、取り敢えず明日、うちに来てもらって良いですか?」
「ええ、分かった。今は予定無いから大丈夫よ。」
    ゾーエはエミーを呼ぶ。
「エミー!ちょっといい?」
「ん?どうしたの?」
    エミーが三人の傍に来る。
「明日、魔法の特訓をしない?ケーラは魔法が得意だから、貴女の助けになると思うわ。」
「!!・・・どんな魔法ですか!?」
「『土』の元素魔法だよ。私の最適性は土だからね。・・・エミー。土の元素魔法は最も破壊力のある、危険な元素魔法だ。しかし、それだけでは無い。大地に恵みをもたらしたり、防御等にも使える。私から君に教えるのは、防御面だ。もしそれを上手に扱える事が出来るのなら、君にとっても、大切な人にとっても、役に立つだろう。・・・・・・どうだい?やってみないか?」
「!!・・・はい!やってみたいです!!」
「よし!じゃあ決まりだな!」
    攻撃する為では無い。己の身、大切な人を護り、真相を得る為の特訓。『土』の元素魔法の特訓を、エミーは再開する事となった。
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