39 / 59
第ニ章 記憶喪失の転生幼女〜幼女×モフモフは最強説!?
決定権は誰の手に⋯?
しおりを挟む部屋にはコの字型のテーブルが設置されており、中央にルーク達メンバーが腰を掛け、向かって右手側にリューン帝国のクリス達、左手側にセイラン王国のデュラン達が腰を掛けた。
「では今後についての作戦会議を始める。今回の任務の目的は二つ。一つ目は聖獣白虎の番奪還。そしてもう一つは、セイラン王国の獣人が関わっていると思われる誘拐事件の真相究明。こちらに関しては獣人達が犯罪に巻き込まれている可能性がある為、その場合はこちらの救出までが任務となる。この両方にライオネル公国が関わっていると思われる為、今回異例ではあるが三国間共同での任務となった。皆、宜しく頼む。」
ルークの力強い言葉に、デュラン達獣人とクリス達が大きく頷く。
「まずはライオネル公国内部の情報収集を行う為、チームを大きく二つに分けたいと思う。リューン帝国側から情報を集めるチーム、もう一つはセイラン王国側から情報を集めるチームだ。聖獣様の容態にもよるが、まずは優先して番の救出を行う。それぞれのチームが国に着いたら、2週間ごとに互いの情報共有を行いたいと思う。」
そこまで黙って聞いていたクリスとデュランが疑問を呈する。
「情報共有は確かに必要ですが、リューン帝国とセイラン王国では距離があるので、手紙でのやり取りは時間がかかるのでは?2週間ごとでは往復も間に合わないかと。」
「グランに獣化して貰って運ぶにしても、そう何往復もさせるには流石に体力的にも厳しいと思うが?」
確かに、ギルド経由で手紙を出すにしても、魔の森を飛び越えて行くにしても時間はかかる。それを2週間ごとにと言われれば、最新情報の共有は難しいのでは?と言うのが最もな意見だ。
しかし、ここには規格外が二人もいる。
「実は、時間をかけずにやり取り出来る方法があるんだ。皆既に知ってると思うが、シークは希少な闇属性持ちだ。だからあまり知られていないんだが、影を使った魔法がある。説明するよりも実際見てもらった方がいいな。シーク、頼めるか?」
ルークの言葉に、全員がシークを見つめる。シークは立ち上がると、徐に呟いた。
「『影渡り』」
するとシークの体が影にとぷんっと沈み姿が消えると、反対の壁際の影からすっと現れた。
それを目にした両国の冒険者達は皆唖然としている。漸く立ち直ったクリスが、無表情に見えるがどこか驚いた様子で声を発する。
「私は以前他の闇属性の魔法を見たことがありますが、ここまでの魔法は初めて目にしました。これにはかなり繊細な魔力コントロールがいるのでは?」
「その通りだ。これは元々魔力コントロールに優れていたシークだからこそ出来ていた魔法だが、実は聖獣様の加護を受けて魔力も増えたことによって、長距離でも移動が出来るようになった。」
⋯と言う事は。
全員がまさか?という表情でルークの続きを持った。
「そう。つまりシークにはリューン帝国とセイラン王国間でもこの魔法で移動が可能なんだ。ただし、移動先にシークの感知できる魔力があることが条件となる。それに一番適しているのが⋯実はアイリなんだ。」
今度は一同がアイリに視線をやる。
「先に来ていたデュラン達には話したが、実はアイリも聖獣様の加護を受けている。だからなのか、距離に関係なくシークはアイリの魔力の気配を察知することができるみたいなんだ。それを考慮してのチーム分けとなる。こちらは俺とアイリとミリーナとアレクの4人。ジーニアとシークとサニアの3人に分かれる。これで互いの情報共有は基本的にいつでも可能になる。」
あとはデュラン達とクリス達のメンバーをどう振り分けるかだ。
なるべく両チームバランス良く分けたい所だが、さてどうするか⋯⋯。
「ちなみに、情報が集まり次第リューン帝国側からは正規のルートを使ってライオネル公国に入る。そしてセイラン王国側からは多少危険だが、エルフの森を通ってライオネル公国に入る予定だ。」
ルークの言葉にまず反応したのはクリスだった。
「そうですが⋯でしたら、私はセイラン王国側のチームに入った方が良さそうですね。エルフの森を通るなら、私が案内出来ると思います。エルフの居住区にさえ入らなければ、基本的に彼らは無関心ですから。」
クリスが自身の庭とも言える森の案内役を買って出てくれたお陰で、そちらのルートでも危険が少なくなった。
そして獣人達の関わる誘拐事件が起こっているのはリューン帝国である為、そちらに獣人メンバーを多く振り分けることになった。
諸々の能力を考慮して話し合おうとしていると⋯⋯そこで、アイリが一言呟く。
「アイリ、またライオンのおうしゃまに会える?あしょびに行くって、やくしょくちたの⋯」
決して遊びに行く訳ではないのだが、誰もそこにはツッコまない。そしてその一言で、人選が大きく動いた。
「なら、俺とアイリとミリーナ、アレクとクリスのメンバーはセイラン王国側から調査する。リューン帝国側のチームリーダーはジーニアに任せたいと思う。何かあればシークからこちらに連絡してくれ。あとのメンバーだが⋯」
「俺はセイラン王国の案内や王宮とのやり取りも出来る。だからルークさんのチームに入ろう。」
「あ、なら私も⋯「あとはララがこちらに入ってくれ。他のメンバーはリューン帝国側だ。」
デュランがルークの言葉に真っ先に反応し、まずは自分をねじ込んだ。そしてそれに続こうとしたラビの言葉を遮り、双子の鼠獣人の内ララをメンバーに入れ、他は全員リューン帝国側へと振り分けた。
「ちょっとー!?何自分だけちゃっかりアイリちゃんの方に入ってるのよ!」
「流石に戦力がおかしいのでは⋯」
ラビの叫び声が響き、ウルドは苦笑いで反論する。
「別に戦力はおかしくないだろ?諜報に長けてるお前達が広い国土を有するリューン帝国側から探る方がいいだろうし、こちらは俺一人でも充分だが、ララがいればライオネル公国に潜入した後の行動が取りやすい。」
意外にもちゃんと考えられた振分けに、他の獣人達も反論できずにただジト目でデュランを睨みつける。それをどこ吹く風で知らんぷりをしているデュラン。
そしてクリス側の冒険者達は空気を読んで動いた。
「じゃあこっちにも、リューン帝国の王宮と連絡取れる者が必要だな。それならこちらは俺とルイザ、タモがいればいいか?リオはクリス達と一緒だ。これでいいか?」
リヒトの振分けに誰も反論しなかった為、このままチーム分けが決まった。
セイラン王国側のメンバーが、ルーク・アイリ・ミリーナ・アレク・クリス・デュラン・ララ・リオ。
リューン帝国側のメンバーが、ジーニア・シーク・サニア・ラビ・ウルド・グラン・ルイ・リヒト・ルイザ・タモ。
「よし、それでは今後このメンバーで行動する。各自準備を整えたら、3日後に出発だ。こちらにはアイリがいるから少し余裕を持った日程で進むが、恐らく国に到着するのはそちらと同じくらいになるだろう。シーク、まず王都のギルドに着いたら連絡をしてくれ。もし途中で何か問題が発生すれば、ジーニアに判断を任せる。」
「全く、老人を酷使されますな。」
《ジーニア・シーク・サニア心の声》
果たしてこれはバランスが取れているのだろうか?
本来であれば、S級が二人も揃うなんてことは珍しいのだから、それぞれのチームに分かれて欲しいところだが、エルフの森を抜けるのにクリスは必須だ。
ならばデュランをリューン帝国側に⋯とも考えたが、本人も言ったように諜報に長けたメンバーがいた方がいい。それも納得だ。
だがしかし!!それならばルークさん、本来であればこの任務の責任者である貴方が一番に言わなければならない事を、あえて言わせてもらおう。
「「「貴方がリューン帝国側に行けば一番バランス取れてますっ!!」」」
かくして鶴の一声ならぬ、アイリの一声で決まってしまった。
明らかに戦力が偏って見えるが、これも過保護者からしてみれば致し方ないこと。
「やったー!またおうしゃまに会えるの~♪ほかのじゅうじんしゃんにも、会えるのたのしみなの♪」
アイリが喜んでいる。これでいいのだ。
※あ、そう言えばリヒトさん。お名前採用させて頂きました♪笑
他の方も、後々どこかで登場予定ですのでお楽しみに(*´∇`*)
298
あなたにおすすめの小説
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ギルドの小さな看板娘さん~実はモンスターを完全回避できちゃいます。夢はたくさんのもふもふ幻獣と暮らすことです~
うみ
ファンタジー
「魔法のリンゴあります! いかがですか!」
探索者ギルドで満面の笑みを浮かべ、元気よく魔法のリンゴを売る幼い少女チハル。
探索者たちから可愛がられ、魔法のリンゴは毎日完売御礼!
単に彼女が愛らしいから売り切れているわけではなく、魔法のリンゴはなかなかのものなのだ。
そんな彼女には「夜」の仕事もあった。それは、迷宮で迷子になった探索者をこっそり助け出すこと。
小さな彼女には秘密があった。
彼女の奏でる「魔曲」を聞いたモンスターは借りてきた猫のように大人しくなる。
魔曲の力で彼女は安全に探索者を救い出すことができるのだ。
そんな彼女の夢は「魔晶石」を集め、幻獣を喚び一緒に暮らすこと。
たくさんのもふもふ幻獣と暮らすことを夢見て今日もチハルは「魔法のリンゴ」を売りに行く。
実は彼女は人間ではなく――その正体は。
チハルを中心としたほのぼの、柔らかなおはなしをどうぞお楽しみください。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる