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優しさに触れる
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ふかふかの枕とシーツの感触に、身体が起き上がりたくないと意識の覚醒を邪魔する。
微睡んだ心地のまま、明るく差し込む陽射しに促され、ゆっくりと瞼を開いた。
繊細な模様が彫刻されたベッドサイドと、天蓋の薄いレースカーテンが視界に飛び込む。
「あれっ?ここは⋯⋯」
徐々に意識がハッキリしてきて、昨日の事を思い出した。
(そっか、私異世界に来て⋯王宮の部屋で休ませて貰ったんだ)
こんなに穏やかな気持ちで、ゆっくり朝を迎えるのはいつぶりだろう。知らない場所で目覚めた筈なのに、寧ろ心は穏やかだった。
コンコンッー
「失礼致します。真子様、お目覚めになられましたか?」
「あっ、はい!起きました。」
シーリアさんに簡単に身支度を手伝って貰い、朝食に別の部屋に案内される。
「真子様をお連れしました。」
案内された部屋は、室内とテラスが繋がったような広く明るい空間で、外を眺めながら食事が出来るようテーブルがセットされていた。
「おはよう真子嬢、よく眠れたか?」
「おはよう、真子。」
そこには陛下とレオンが席に座って待っていた。
「お、おはようございます。お陰様でゆっくり休めました。」
まさか陛下と王子、この国のツートップとも言える二人が朝から揃っているとは思いもせず、言葉に詰まりながらも挨拶をして頭をペコリと下げる。
「畏まらずによい。気を楽にしてくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
気さくに笑い掛けてくれる陛下。その姿にレオンは苦笑しながら
「今日は父上も一緒に、真子と朝食を摂りたいって付いてきたんだ。」
「お前は昨日夜一緒に食事をしたんだろう?抜け駆けしおって。」
「それはっ!知らない場所で、一人きりの食事は心細いだろうと思って⋯」
「ほらほら、お二人とも。真子様が困ってらっしゃいますよ!」
昨日とは違い、とても砕けた言葉で話す三人は、仲の良さが見て取れる。
その様子を温かい気持ちで見ながら、真子はクスクスッと小さく笑っていた。
「ーーっ!!」
それを見たレオンは、顔を赤らめながら視線を逸らし、真子に席を勧める。
席につくと料理が並び、朝からとても豪華だった。真子はそっと手を合わせて「いただきます」と呟いた。
「真子?その『いただきます』とは何だ?昨日も、夜食事の前にそのお祈りのようなことをしていたよね?」
斜め向かいのレオンには聞こえていたようだ。
「あ、これは⋯私がいた所で、命を頂くこと、食べ物に感謝をする意味を込めて手を合わせて『いただきます』って言うんです。」
「聞いたことないマナーだね?でも、素敵なマナーだと思うよ。僕も、真子と一緒に食事をする時はやってみよう。」
「そうだな。儂もやってみよう。」
陛下とレオンは、真子の真似をして手を合わせて言った。
「「いただきます。」」
ーーー「真子ー!ご飯よー!!」
ーーー「お母さん、今日は何ー?」
ーーー「真子の好きなオムライスよ。」
ーーー「お父さんも、早く早く!」
ーーー「「「いただきます!」」」
ポロッ ポロッ
「っ!?ま、真子!?」
「真子様?どうされましたか?」
レオンが戸惑いがちに声を掛け、シーリアが心配そうに、ハンカチを持って溢れた涙を拭ってくれる。
「ごめん⋯なさぃっ⋯。こんな風に、誰かと食事をとるの⋯久しぶりで⋯。それに、皆さんが⋯優しくて⋯。」
優しく労るような眼差しで、陛下が見つめてくれる。
「真子嬢、ここでは出来るだけ私達と食事を共にしよう。私達を家族だと思って⋯」
そこに⋯
『真子ー!私もいるわよー!!』
陛下の声を遮るように、リーシャが元気な声で現れた。
「!!?リーシャ?そういえば、昨日の夜からどこに行ってたの?」
突然のリーシャの明るい声に、さっきまでの寂しかった気持ちも涙も引っ込んだ。
『んー?色々挨拶に行ってたのよー!』
リーシャは何でも無いことのように、軽く答える。
「真子嬢?リーシャとは??もしかして精霊がここにいるのかい?」
陛下が驚いたように、真子に問いかけた。
「あ、はい⋯。陛下たちには、精霊って見えないんですか?」
「精霊の光が見える者は稀にいるが、名付けされている精霊はそもそもが珍しいからね。⋯やはり、精霊の愛子だからだろうか⋯?」
なんだろう?後半は呟くように言われ、よく聞き取れなかった。
「あの森の泉で最初に出会って、加護をくれた子なんです。ここまで着いてきてくれて⋯それで、名前を付けさせてくれたんです。」
「真子嬢が⋯名付けたのか!?」
陛下は目を瞠って、驚愕したように呟く。
(あれ?名付けてって言われたから付けちゃったけど⋯駄目だったのかな?)
「あ、いや、珍しいが⋯そーゆーことも⋯きっとあるんだろう。」
真子の不安そうな表情を見て、慌てて陛下がフォローしてくれた。⋯優しい。
それから精霊のこと、真子がどうやって泉の森に現れたのか⋯食事をしながら、親身になって話を聞いてくれた。
(陛下もレオン殿下も、シーリアさんたちも⋯なんで、皆こんなに優しくしてくれるんだろう⋯?)
真子は初めての優しさに戸惑いつつも、乾いた大地に水を落としたように、心にスッと染み込んでいった。
微睡んだ心地のまま、明るく差し込む陽射しに促され、ゆっくりと瞼を開いた。
繊細な模様が彫刻されたベッドサイドと、天蓋の薄いレースカーテンが視界に飛び込む。
「あれっ?ここは⋯⋯」
徐々に意識がハッキリしてきて、昨日の事を思い出した。
(そっか、私異世界に来て⋯王宮の部屋で休ませて貰ったんだ)
こんなに穏やかな気持ちで、ゆっくり朝を迎えるのはいつぶりだろう。知らない場所で目覚めた筈なのに、寧ろ心は穏やかだった。
コンコンッー
「失礼致します。真子様、お目覚めになられましたか?」
「あっ、はい!起きました。」
シーリアさんに簡単に身支度を手伝って貰い、朝食に別の部屋に案内される。
「真子様をお連れしました。」
案内された部屋は、室内とテラスが繋がったような広く明るい空間で、外を眺めながら食事が出来るようテーブルがセットされていた。
「おはよう真子嬢、よく眠れたか?」
「おはよう、真子。」
そこには陛下とレオンが席に座って待っていた。
「お、おはようございます。お陰様でゆっくり休めました。」
まさか陛下と王子、この国のツートップとも言える二人が朝から揃っているとは思いもせず、言葉に詰まりながらも挨拶をして頭をペコリと下げる。
「畏まらずによい。気を楽にしてくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
気さくに笑い掛けてくれる陛下。その姿にレオンは苦笑しながら
「今日は父上も一緒に、真子と朝食を摂りたいって付いてきたんだ。」
「お前は昨日夜一緒に食事をしたんだろう?抜け駆けしおって。」
「それはっ!知らない場所で、一人きりの食事は心細いだろうと思って⋯」
「ほらほら、お二人とも。真子様が困ってらっしゃいますよ!」
昨日とは違い、とても砕けた言葉で話す三人は、仲の良さが見て取れる。
その様子を温かい気持ちで見ながら、真子はクスクスッと小さく笑っていた。
「ーーっ!!」
それを見たレオンは、顔を赤らめながら視線を逸らし、真子に席を勧める。
席につくと料理が並び、朝からとても豪華だった。真子はそっと手を合わせて「いただきます」と呟いた。
「真子?その『いただきます』とは何だ?昨日も、夜食事の前にそのお祈りのようなことをしていたよね?」
斜め向かいのレオンには聞こえていたようだ。
「あ、これは⋯私がいた所で、命を頂くこと、食べ物に感謝をする意味を込めて手を合わせて『いただきます』って言うんです。」
「聞いたことないマナーだね?でも、素敵なマナーだと思うよ。僕も、真子と一緒に食事をする時はやってみよう。」
「そうだな。儂もやってみよう。」
陛下とレオンは、真子の真似をして手を合わせて言った。
「「いただきます。」」
ーーー「真子ー!ご飯よー!!」
ーーー「お母さん、今日は何ー?」
ーーー「真子の好きなオムライスよ。」
ーーー「お父さんも、早く早く!」
ーーー「「「いただきます!」」」
ポロッ ポロッ
「っ!?ま、真子!?」
「真子様?どうされましたか?」
レオンが戸惑いがちに声を掛け、シーリアが心配そうに、ハンカチを持って溢れた涙を拭ってくれる。
「ごめん⋯なさぃっ⋯。こんな風に、誰かと食事をとるの⋯久しぶりで⋯。それに、皆さんが⋯優しくて⋯。」
優しく労るような眼差しで、陛下が見つめてくれる。
「真子嬢、ここでは出来るだけ私達と食事を共にしよう。私達を家族だと思って⋯」
そこに⋯
『真子ー!私もいるわよー!!』
陛下の声を遮るように、リーシャが元気な声で現れた。
「!!?リーシャ?そういえば、昨日の夜からどこに行ってたの?」
突然のリーシャの明るい声に、さっきまでの寂しかった気持ちも涙も引っ込んだ。
『んー?色々挨拶に行ってたのよー!』
リーシャは何でも無いことのように、軽く答える。
「真子嬢?リーシャとは??もしかして精霊がここにいるのかい?」
陛下が驚いたように、真子に問いかけた。
「あ、はい⋯。陛下たちには、精霊って見えないんですか?」
「精霊の光が見える者は稀にいるが、名付けされている精霊はそもそもが珍しいからね。⋯やはり、精霊の愛子だからだろうか⋯?」
なんだろう?後半は呟くように言われ、よく聞き取れなかった。
「あの森の泉で最初に出会って、加護をくれた子なんです。ここまで着いてきてくれて⋯それで、名前を付けさせてくれたんです。」
「真子嬢が⋯名付けたのか!?」
陛下は目を瞠って、驚愕したように呟く。
(あれ?名付けてって言われたから付けちゃったけど⋯駄目だったのかな?)
「あ、いや、珍しいが⋯そーゆーことも⋯きっとあるんだろう。」
真子の不安そうな表情を見て、慌てて陛下がフォローしてくれた。⋯優しい。
それから精霊のこと、真子がどうやって泉の森に現れたのか⋯食事をしながら、親身になって話を聞いてくれた。
(陛下もレオン殿下も、シーリアさんたちも⋯なんで、皆こんなに優しくしてくれるんだろう⋯?)
真子は初めての優しさに戸惑いつつも、乾いた大地に水を落としたように、心にスッと染み込んでいった。
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