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第五章 魔女の正体
雪の真実
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「あなたたちが越えて来た霧も、バラムの指示でかけてあるのです。私が簡単に倒されては面白くないから、王国の者が近づけないようにしろ、と……。バラムは手下のオーガを通じて、そう命令してきました」
「そうだったんですか……。――わたし、バラムを絶対に許さない」
アルバスの怒りが乗りうつったのだろう。アルバスとメアリの話を聞いた葵の目に、真っ赤な炎が燃え上がる。
だが、それと反比例するかのように、アルバスは沈痛な面持ちになっていった。
「オーガたちが襲ってきた時、私はアイリスを守ることができなかった。あの時、私があの子を守れていれば、このようなことにはならなかったのだ……」
「あなただけの所為ではありませんよ、アルバス。私も魔法で抗うことさえできなかった。何もできなかったのは、私も同じです」
アルバスとメアリが、己を責めるようにうつむく。
すると、その時だ。
「あの、二つ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
重苦しい雰囲気を断ち切るように、総司がメアリとアルバスに向かって口を開いた。
「どうぞ。私たちに答えられることでしたら、何なりと」
「ありがとうございます。では、まず一つ目。バラムたちは今、どこにいるのですか?」
「ヤツらは、この家からさらに森の奥へ進んだ、山々の麓にいる。そこに三方を崖で囲まれた、天然の要塞のような場所があるのだ。バラムはその場所に城を建て、住処としている」
「崖、ですか……。その崖、人が下ることが可能なものですか?」
「下るだけなら可能だろうが、確実に見張りに見つかるだろうな。私ならば短時間で駆け降りることもできるが……」
総司の問いに、アルバスが思案顔で答える。
その答えは、総司にとって有益な情報だったようだ。総司は誰にも聞こえないような小声で、「それは使えるかも……」とつぶやいた。
「よくわかりました。では、二つ目ですが、バラムは常にここやケセド王国を監視しているのですか?」
「いいえ。ここには月に一度、手下のオーガが様子を見に来るだけです。バラムも、娘を人質に取られている以上、私は逆らえないとわかっているのでしょう」
「雪がふり続いている限り、メアリが無事なことはわかるからな。メアリ自身を常に監視する意味はないと、バラムは考えているのだろう。それとケセド王国の方は、王都のみ常に監視しているようだ」
「なるほど……」
メアリとアルバスから情報をもらい、総司が考えごとに集中し始める。
どうやら今もらった答えで、総司の中に必要なピースがそろってきたようだ。考えにふける総司の口元には、かすかに笑みがうかんでいた。
「わかりました。お二人とも、ありがとうございます」
しばらくすると、考えがまとまったのだろう。
総司はすっきりした顔でメアリとアルバスにお礼を言った。
「いえ、お気になさらずに。それと、私とアルバスから教えられることは以上です。この話を信じるかどうかは、あなたたち次第。先ほども言いましたが、私がしたことは許されざることです。ここであなたたちに倒されたとしても恨むつもりはありません」
メアリがまっすぐ三人の方を見つめながら言う。
覚悟を固めたメアリに対し、真っ先に言葉を返したのは――カイだった。
「そうだったんですか……。――わたし、バラムを絶対に許さない」
アルバスの怒りが乗りうつったのだろう。アルバスとメアリの話を聞いた葵の目に、真っ赤な炎が燃え上がる。
だが、それと反比例するかのように、アルバスは沈痛な面持ちになっていった。
「オーガたちが襲ってきた時、私はアイリスを守ることができなかった。あの時、私があの子を守れていれば、このようなことにはならなかったのだ……」
「あなただけの所為ではありませんよ、アルバス。私も魔法で抗うことさえできなかった。何もできなかったのは、私も同じです」
アルバスとメアリが、己を責めるようにうつむく。
すると、その時だ。
「あの、二つ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
重苦しい雰囲気を断ち切るように、総司がメアリとアルバスに向かって口を開いた。
「どうぞ。私たちに答えられることでしたら、何なりと」
「ありがとうございます。では、まず一つ目。バラムたちは今、どこにいるのですか?」
「ヤツらは、この家からさらに森の奥へ進んだ、山々の麓にいる。そこに三方を崖で囲まれた、天然の要塞のような場所があるのだ。バラムはその場所に城を建て、住処としている」
「崖、ですか……。その崖、人が下ることが可能なものですか?」
「下るだけなら可能だろうが、確実に見張りに見つかるだろうな。私ならば短時間で駆け降りることもできるが……」
総司の問いに、アルバスが思案顔で答える。
その答えは、総司にとって有益な情報だったようだ。総司は誰にも聞こえないような小声で、「それは使えるかも……」とつぶやいた。
「よくわかりました。では、二つ目ですが、バラムは常にここやケセド王国を監視しているのですか?」
「いいえ。ここには月に一度、手下のオーガが様子を見に来るだけです。バラムも、娘を人質に取られている以上、私は逆らえないとわかっているのでしょう」
「雪がふり続いている限り、メアリが無事なことはわかるからな。メアリ自身を常に監視する意味はないと、バラムは考えているのだろう。それとケセド王国の方は、王都のみ常に監視しているようだ」
「なるほど……」
メアリとアルバスから情報をもらい、総司が考えごとに集中し始める。
どうやら今もらった答えで、総司の中に必要なピースがそろってきたようだ。考えにふける総司の口元には、かすかに笑みがうかんでいた。
「わかりました。お二人とも、ありがとうございます」
しばらくすると、考えがまとまったのだろう。
総司はすっきりした顔でメアリとアルバスにお礼を言った。
「いえ、お気になさらずに。それと、私とアルバスから教えられることは以上です。この話を信じるかどうかは、あなたたち次第。先ほども言いましたが、私がしたことは許されざることです。ここであなたたちに倒されたとしても恨むつもりはありません」
メアリがまっすぐ三人の方を見つめながら言う。
覚悟を固めたメアリに対し、真っ先に言葉を返したのは――カイだった。
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