残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

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何でも屋、初めての(まともな)お客さん

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「はーい! 皆様、本日の演目はこれにて終了でございます。本日はお越しいただき、誠にありがとうございました。もしよろしければ、心ばかりのおひねりをいただけますと幸いです」

 俺の言葉が終わらない内に、四方八方からおひねりが飛んでくる。
 今日も大漁。
 稼ぎは上々だ。
 こりゃもう、笑いが止まらんでゲスな!
 うひゃひゃひゃ!

 ヴァン王国の市場に居ついて、早一週間。
 俺とセシリアは大道芸で荒稼ぎをしていた。
 なんか一日目の公演がやたらと盛況で、噂が噂を呼び、あっという間に人気のショーと化してしまったのだ。
 この世界の人間も、これほどの大魔法の盛り合わせを見る機会はなかなかないってことなんだろうな。
 更に夏の開放的な雰囲気もあってか、みんなよく金を落としていく。
 おかげで、あっという間に軍資金もたんまりだ。

 ただまあ、すっかり大道芸人という扱いに落ち着いてしまったことに不満を持つ奴もいたわけで……。

「むう~、なぜ何でも屋の仕事が全く来んのじゃ」

 ここ二日ほど、うちの姫様はピンク色のほっぺたをふくらませてご立腹なさっておった。

「いやさ、お前の目的は、勇者の人気を奪うことなんだろ? だったら、今の俺たちの人気っぷりって、お前の目的通りなんじゃねえか?」

「それはそうなのじゃが~。わらわはなんかこう、もっと血沸き肉躍るような冒険も期待していたわけで」

 こいつは何でも屋を冒険者か何かと勘違いしてないだろうか。
 少なくとも、俺はそんな大冒険に出たくなんかないぞ。危ないったらありゃしない。
 平和最高!

「ともかく、ここに留まって毎日芸をするのには飽きたのじゃ」

 飽きたって、いや、あんた。
 仕事を何だと思ってんだ。
 つうか、芸しているのもっぱら俺だし。
 お前、俺に魔力供給しながら万桜号の中でメシ食ってばっかじゃん。(いやまあ、魔力供給してくれるだけでも有り難いけど)

「ヨシマサ~、そろそろ別の街に行こ~。わらわ、もっといろんなところに行きたいのじゃ~」

 こいつ、勇者に嫌がらせとか言っていたけど、実際は世界旅行したいだけなんじゃ……。
 その足として、車持っている俺を召喚しただけなんじゃ……。

「そうは言うけどよ、セシリア。どこか行く当てがあるでもないしさ、他の町でもここみたいに稼げるかはわかんないんだぞ」

 せめて何らかの稼ぐ当てでもあれば話は別だけどな、と付け加える。
 まあ、そんなもんがあったら苦労はしないんだがな。
 
 ――と、そんなことを思っていた時だった。

「あの~、すみません。ここは、何でも屋で間違いないですかな」

「はい?」

 初日のロリコンオヤジ以来の確認に、思わず疑問詞つきで振り返る。
 そこには、一人の爺さんと17~8歳と思われる美少女系町娘さんが立っていた。

「ようこそ、お嬢さん。何でも屋『万桜堂』へようこそ。まずはそこのオープンカフェでお茶をしながら依頼の――いや、依頼なんてどうでもいい! 俺は君のことが知りたい」

 町娘さんにかしずいて、俺式イケメンスマイルを向ける。
 え? じいさん?
 知るか、そんなもん。
 俺は今、忙しいんだ。
 そこらで道草でも食ってろ。

「あ……、ええと、私はその……」

「ああ、お金のことなら心配いらないですよ。腐るほどありますので、ここは俺のおごりです。ハハハ」

 この間のロリコン貴族よ、あの時はすまんかった。
 今、俺はあんたの気持ちを理解した!

「大変うれしいのですが……、その、お茶はまたの機会ということで……」

 そそそ……、と後ろに下がりながら断るお嬢さん。

 超引かれた!
 なぜだ!
 地球にいた時に読んだ、絶対モテると童貞仲間の間で評判のハウツー本通りにやったのに!

「じゃから言ったじゃろうが。お主の面では振られるのがオチじゃと……。というか、顔以前に行動がキモいし」

 黙れクソガキ。
 あと、その『やれやれ、まったく……』って仕草を止めろ。

 ……………………。

 ……違う! 『わらわもドン引き~』って仕草に変えろって意味じゃねえ!
 
 第一、まだ振られてねえし!
 お茶を断られただけだし!

「すみません、取り乱しました。ではお嬢さん、ちょっとそこで、我々の将来についてお話しましょうか」

「ご、ごめんなさい! 私、勇者のアルフレッド様に憧れていまして……。正直、あなたの顔はまったく好みじゃないんです!!」

 振られた!
 完膚なきまでに振られた!

 ――っていうか、ここでも勇者か。
 おのれ勇者め、許すまじ!
 俺の恋路を邪魔しおって。
 ぜってぇ復讐してやる~!

「おお! ヨシマサから久方ぶりにフォー○の暗黒面が!」

 なんかセシリアが超はしゃいでいるが知ったことではない。
 俺は脳内『あいつ絶対許さんリスト』に勇者をインプット。
 勇者め、魔王の恐ろしさ、とくと味わうがいい。世界の果てまでネチネチストーカーしてやる……。たっぷりいやがらせしてやる……。

「あの~、そろそろお話よろしいかな」

「え? ああ、おじいさん、まだいたのですね。すみません、もう道草を食いに行ったものと思っていました」

 声をかけられて、まだじいさんがいたことに気づいた。
 このじいさん、気配を消すのが上手いな。
 実は忍者か。

 ともあれ、正直あんまり金を持っていなさそうだが、客は客。(←すっかり金の亡者)
 失礼のないよう、丁重に接客せねば……。

「ええと、何でも屋へのご依頼でしたね」

「ええ、その通りですじゃ。実は何でも屋さんに至急お願いしたい案件がありましてな」

「ふむふむ、そうですか。では、メシでも食いながらじっくり伺わせてもらいますよ。ちょうど晩御飯の時間ですしね」

 俺が言うと同時、セシリアのお腹が『くぎゅ……』と可愛らしい音を立てる。
 欲望に忠実なやつだ。
 さすが邪神。

 俺はじいさんとお嬢さん、ついでにうちのロリ邪神を引き連れ、近くの飯屋へと繰り出すのだった。
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