残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

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リアルホラー、その後……

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「おい、ヨシマサよ。本当に良かったのか? せっかく念願の嫁第1号をもらえるチャンスじゃったのに――ぷくくっ!」

「やかましいわ!」

 助手席でニタニタと笑うセシリアを一喝する。

 こいつ、普段はハーレム反対とか言っているくせに、俺が困るような状況であるなら例外的に何でもOKにしてくるな。
 まったく性格が悪いったらありゃしない。
 さすが性悪邪神と俺から呼ばれるだけのことはある。
 
 あの魔人(=マリアンナさん)との邂逅の後、俺は自らの貞操を守るため、一晩中屋敷の中を逃げ回るというサバイバルゲームに突入した。
 なお、屋敷の窓や外へ通じる扉はアイラさん始め使用人各位によって厳重ガードされていたため、外へ逃げることは適わなかった。
 あれぞ正に現実版『リアル鬼○っこ』。
 俺はこの世の恐怖というものを、一晩かけてまざまざと味わったというわけだ。

 ちなみに、俺が地獄の鬼ごっこをしている間、隣のロリ邪神は呑気に部屋でグースカ寝ていたり、たまに気まぐれを起こして俺を探しに来たりした。

 このクソガキ、どういうわけか俺の隠れている場所をつぶさに暴き立て、その上呼び子で肉の壁親子を呼ぶもんだから、さあ大変だ。
 その度に隠れ場所を変える羽目になった。

 つうか、こいつ本当にどっちの味方だよ。

「決まっておろう。お主の味方じゃよ、お主の。何たってわらわは、お主の幸せを心の底から願っておるからな。ぬふふふふ!」

 超小憎たらしい笑顔をこちらに向けるセシリア。
 忌々しい……。

「つうか、俺があの魔人に捕まって本当に結婚しちまったら、お前もこれ以上旅ができなくなったかもしれんのだぞ。そこんとこ、どうするつもりだったんだ」

「まあ、あの娘? を見た時点で、お主のことじゃからどんな姑息な手段を使ってでも逃げ延びると確信しておったからな。無問題じゃ、無問題。なーっはっは!」

 チッ!
 さんざっぱら俺で遊びやがって……。
 こいつ、次の街に着いたら絶対仕返ししてやる。

 けど、それだけでは俺の気も治まらんな。
 んじゃ、とりあえず今は……。

「あ、横道から勇者が馬に乗って駆けてくる」

「ほぎゃーっ!」

 セシリアが速攻で後ろの図書館のクッションの中にダイブ。
 ハハハ。いい気味だ。
 少しは追われる者の辛さを味わうといい。
 ともあれ、これで少しは俺の溜飲も下がるというものだ。

 ――おっと、話がずれたな。

 そんで、夜明けも近くなったころ、俺はとうとうあの親子に捕まっちまったわけだ。
 挙式だ、ハネムーンだと暑苦しくオレに迫るカイゼル氏とマリアンナさんのダブル肉の壁。
 ただ、そこは俺もヴァン王国で腕を鳴らした稀代のエンターテイナーだ。
 持ち前のトーク術を駆使し、「俺は旅を続けなければいけない」とか、あれやこれや結婚できない理由を捲し立て、どうにかこうにか結婚の話をなしにしてもらった。

 まあ、マリアンナさんが「私もお供します」とか言い出した時は本当に肝を冷やしたが、そこはさすがにカイゼル氏が止めてくれた。
 カイゼル氏も跡取りが完全にいなくなったら困るからな。この点だけは本当にカイゼル氏に助けられた。――まあ、すべての原因を作ったのもあの人だから、感謝する気にはなれんかったが。

 なお、さっきの言葉からもわかる通り、その間セシリアはまるで面白いコントでも見るかのように大爆笑し続けていた。しかも、アイラさんにお茶と菓子を用意してもらった上でな。
 こいつ、ホント許すまじだ。
 俺は脳内『あいつ絶対許さんリスト』で勇者の隣にリストアップしてやる。
 せいぜい仲良くしろや、性悪ロリ邪神。

 とまあ、そんなこんな命を懸けた徹夜の攻防戦の末、俺は自らの貞操と自由を守り抜いたというわけだ。

 その後、俺は日が出るとともに、セシリアをひっつかんでカイゼル氏の屋敷を後にした。
 徹夜明けでの運転はさすがに堪えたが、早くあの親子の魔手が届かない地へ逃げ出したいからな。
 肉弾親子に名残惜しそうに見送られた俺たちは、ようやく昨日アイラさんと出会った十字路まで戻ってきたのだった。

「やいこら、貴様! 勇者など、どこにもおらぬでないか!」

 ん? どうやら俺のウソがばれたらしい。
 セシリアがカンカンにご立腹といった様子で俺に食って掛かってきた。

「ハハハ。どうだ、少しは追われる者の気持ちがわかったか」

「むきーっ! 万年童貞野郎がちょっと男にモテたからって粋がりおって! お主なんか、一生童貞でいる呪いにでもかかってしまえ。いや、むしろわらわが今からかけてやる!」

「上等だ、クソガキ! 表へ出ろい。決闘だ!」

「臨むところじゃ! 今度こそ、お主に邪神の恐ろしさを刻みこんでやるわい!」

 万桜号を止めて、11度目の決闘を行うために外に出る。

「隙ありじゃ、間抜けめ!」

「甘いわ、アホんだら!」

 草原を突き抜けていく、俺たちの罵声。
 こうして、俺たちはいつもの日常へと戻っていくのだった。
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