残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

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見よ、俺の演技力!

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 ~~回想・15分前のやり取り~~


 国境警備隊に止められた俺たちは、ヴァン王国の時と同じく、万桜号から降ろされて職務質問を受けていた。

『とりあえず、名前と入国の目的を教えてもらおうか』

『フッフッフ! わらわたちに名乗れとな? よいだろう。ならば聞かせて進ぜよう。わらわたちはかの有名な魔――おぎゃーっ!』

 偉そうに余計なことを言いかけたセシリアの足を、警備兵に見えないように思いっきり踏みつける。
 ヴァン王国の時とまったく同じ過ちをしようとするとか、こいつは学習能力がないのか。
 まったくこれだから、ポンコツロリ邪神は……。

『お、おい、どうした。大丈夫か?』

 急にうずくまったセシリアを驚き半分気遣い半分で見つめる警備兵氏。
 何と言うかこの人、お人好しオーラがにじみ出ているな。

 ふむふむ……。
 ――OK。把握した。
 こいつなら――言いくるめられる。(ニヤリ)

『我々は旅の何でも屋兼大道芸一座『万桜堂』をやっております、ヨシマサとセシリアと申します~。この度はヴァーナ公国で一商売したいと思いまして、やって来た次第でして。――あ、万桜というのは桜という私の故郷の木が一万本あるという意味でして、決して魔王アンデルスなどとは関係ありませんです、はい! あと、この乗り物は南部の町で出土したロストテクノロジーの産物ですのでお気になさらず!』

 とりあえずセシリアは放っておいて、揉み手をしながら兵士にすり寄る。
 マシンガントークで息つく暇なく捲し立てるように自己紹介をすると、警備兵氏は「あ、そ、そうか」と若干のけぞり気味に頷いた。

 モテるかもと思って大学時代にかじった演劇技術が、こんなところで役に立つとはな。
 何事もやっておくもんだぜ。
 
 ともかく、よっしゃあ。
 この警備兵氏は完全に俺のトークに飲まれている。
 これでこっちのペースは確定。
 あとはこの場から逃げるだけ。

『ところで警備兵殿、どうやら連れが急に腹の調子をおかしくした様子。彼女も性別上はい・ち・お・う女である気がする生き物ですので、このようにうずくまった姿を衆人にさらさせることは忍びない……。つきましてはすぐに医者へ見せたいと思いますので、ここを通していただけますでしょうか?』

『む……。それは……。い、いや、しかしだな……』

 俺の演技入りマシンガントークに、再びしどろもどろになる警備兵殿。

 なお、セシリアに対する表現に悪意がこもっているように見えるのは気のせいだ。
 決して先日のカイゼル邸での一件の恨みなどではない。
 心が晴れた日の青空のように澄み渡っている俺が、仕返しなんて醜いマネをするはずないからな。

 と、それはさておき……。

 フッ!
 かかったな、愚か者め。

『ああ! 大陸一慈悲深いと聞くヴァーナ公国の兵士様が、よもやこのようないたいけな少女っぽいものに醜態をさらさせるというのか! 大陸一慈悲深いとうわさされる兵士様が!』

 国境を通る人々にも聞こえるよう、最大ボリュームの声を上げる。
 同僚の兵士や一般人の目が集まる中、当の警備兵氏は……。

『わ、わかった! 通っていいから、大きな声を出すのは止めろ。さっさと医者に見せてやれ!』

『おお、なんと慈悲深いお言葉。このご恩は一生忘れません。それでは、アディオス!』

 うずくまったままのセシリアを抱えて、万桜号へ直行。
 乗り込んだらお荷物を助手席へ適当に転がし、エンジンON。
 速攻で離脱だ。

『では警備兵殿、引き続きお仕事頑張ってください! さ~よ~う~な~ら~』

 狐につままれたような間抜け面の警護兵氏に手を振り、万桜号を全速力で走らせる。

 フハハ!
 見たか、これが新生魔王様の実力だ。
 俺の手に掛かれば、小市民を演じることなどお茶の子さいさい!
 何たってこちとら、本当にただの無能な小市民だからな。(←情けない……)
 格の違いを思い知るがいいわ。
 ハーッハッハッハ!

 ともあれ、こうして俺たちは無事にヴァーナ公国へ入ることができたのだった。


 ~~~~回想終了~~~~


「お主に代わり名乗ろうとしたわらわの足を踏み、さらには衆人環視の前で言いたい放題言いおって……。お主、わらわに何か恨みでもあるのか!」

「いや、恨みならそれこそ星の数ほどあるけどさ……」

 勝手にこの世界に召喚したこと。
 モテないモテない連呼し、その上童貞呼ばわりすること。
 妙なところでポンコツになってトラブル引き起こすこと。
 偉そうな態度でトラブル引き起こすこと。
 俺の一世一代の決心の場面で寝落ちしてたこと。
 カイゼル邸で俺を見捨てた上に、余計なことばっかしてくれたこと。
 etc. etc.……。

 ……うん。
 挙げ出したらキリがないな。
 つか、俺なんでいまだにこいつと旅しているのか、不思議になってくるわ。

 まあ、そんなこと言っても始まらんか。

「ともかく、さっきから何度も謝っただろうが。それに、あの場面ではああするしかなかったんだ。ああでもしなきゃ、国に入るのにどれだけ拘束されることになったかわからなかっただろう?」

「むう~……。まあ、確かにそうかもしれんが……」

 本当はこいつの性別云々の件(くだり)がなくても問題なかったわけだが。
 あっさり騙されてくれているみたいなので黙っておこう。

「いや! やっぱり納得できん! 大体じゃな、お主はわらわに対する敬意というものが……」

「ほれ! 昨日作ったおやつの残りだ」

「わーい! ドーナツなのじゃ!」

 俺が放ったドーナツを空中で咥え、早速はぐはぐし始めたロリ邪神様。
 お菓子を食べて、ものすごくご満悦といった顔だ。

 ハハハ!
 あっさり機嫌を直しやがったな。
 単純なやつめ。
 持つべきものは扱いやすいポンコツ邪神だ。

「さて! んじゃ、今度こそ本当に、ヴァーナ公国へ乗り込むぜ!」

「うむ! いざ行かん、うまいものがたくさんの市場へ!」
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