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モンスターは熊や蚊と同じらしい
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一路西へと万桜号を走らせること、およそ30分。
あっという間に西の森が見えてきた。
「今までの旅に比べると、最短での目的地到着だな」
「元々ヴァーナ公国の領地内での移動なのじゃ。当然じゃろうて」
「まあ、そうだな」
森の前に万桜号を停車して、森を眺める。
なんというか、『ヘンゼルとグレーテル』とかの童話に出てきそうな森、そのまんまって感じだな。いかにも悪者が根城にしそうな感じだ。
――と、それはどうでもいいや。
とりあえず、確認すべきことを確認してっと……。
「うーん……。やっぱりここからは歩きだな。とてもじゃないが、万桜号では入って行けない」
「木をなぎ倒しながら進んでいけば良いのではないか?」
さも当然といった顔でアバンギャルドなことを言わないでもらいたい。
一応ここ、国の領地なんだから、そんなことして後で賠償請求でもされたらどうすんだ。
国家からの賠償請求なんて、そんなもん払い切れねえぞ。
「むう……。仕方ないのう。では、歩く準備をしてくるか」
そう言って、セシリアが万桜号の中に戻っていく。
フリフリのドレスじゃあ、森の中は歩きにくいからな。
動きやすい服装に着替えに行ったんだろう。
「待たせたのう。では参ろうか」
「…………。……おい、セシリア」
「ん? なんじゃ?」
「お前、森の中を歩くためにの着替えにもどったんだよな?」
「うむ、そうじゃ。どうじゃ、似合うかの?」
その場でクルリとターンしてみるセシリア。
うん、似合ってるね。
超かわいいね。
でもごめん。俺の頭がおかしくなったのでなきゃ、それもさっきまで着てたのと同じドレスだと思うんだよ。
色が黒から赤に変わっただけで。
「何を言っておるか。ほれ、フリルが3%少なくなって軽量化されておるじゃろうが!」
「わかるか、んなもん! 3%って完全に誤差の範囲だ。森なめてんのか、てめぇ。さっさと動きやすい服装に着替えて来い!」
「えー! そんなのかわいくないじゃろうが!」
ブーブー文句を垂れるセシリアを、万桜号の中に放り込む。
まったく、こいつはどうしてこうも的外れなことばかりするのだ。
俺を見習って、少しは常識と良識というものを身に付けてもらいたいものだな。
「ほほう。美人を見かけたら所構わずナンパするのが常識とは、随分世の中も変わったものじゃの~。わらわ、びっくり~」
万桜号の中から顔を出し、半眼でこちらを見るセシリア。
だまらっしゃい!
美人がいたら声かけるのは当然だろうが。世の常というやつだ。
何をとち狂ったことを言っていやがる、キチガイ邪神め。
「だめじゃな、こりゃ。バカは死ななきゃ治らんのう」
セシリアがため息をついて万桜号の中に引っ込んだ。
ほほう……。
自らをバカと認めるとは、あいつも素直になったものだ。
どうやら俺という社会規範を体現したかのような保護者を得て、あいつも爪の先ほどは成長したらしい。
うむうむ。
褒めて遣わそう。
「ほれ、これでよいかのう」
しばらくすると、着替えを終えたセシリアがピョンと万桜号から飛び出してきた。
今度はちゃんとズボンをはいてきたようだな。
偉い偉い。
てか、どこかで見た覚えがあると思ったら、スコット村の農作業一日目に使っていた服だろう、これ。
こいつ、ちゃっかりもらってきていたのか。
手癖の悪いやつだな。
「失敬な。村長が『せっかくだから持っていきなさい』って持たせてくれたのじゃ」
あの村長め、完全にセシリアを孫扱いだな。
俺にはそんな気遣いしてくれなかったぞ。
まあ、おかげで助かったから良しとしておこう。
グッジョブだ、村長。
「んじゃ、万桜号を隠して行くとするか。――万桜号、ステルスモード!」
俺の言葉に合わせて、万桜号の車体が周囲の風景と同化する。
フッフッフ。
これぞ、本邦初公開! 万桜号の擬態仕様だ。
セシリアの邪神パワーをもらった際に獲得した機能の一つなんだが、今まで使う機会がなかったんだよな。
んで、さっき思い出して使ってみたんだが、なかなかすげぇな、これ。
完全に風景と同化してるわ。
実際に万桜号の車体に触れるまで気が付かねえもん。
さすがは邪神パワー。
「よし。万桜号の方もこれで大丈夫だろう。――んじゃ、行くとするか」
「うむ、参ろうぞ!」
セシリアといっしょに、森の方へ向けて歩みを進める。
と、そこで俺は一つ、重要なことを思い出した。
「なあ、セシリア。この森って、リザードマン一味の他にも、モンスターいるよな?」
「まあ、たんまりいるじゃろうのう」
「それってさ、俺ら格好の餌になるんじゃねえ?」
森に入った瞬間、モンスターの餌。
ハハハ。
武者震いが止まらないぜ。
「安心せい。ほれ、これを腰の括り付けて、後はこれでも全身に振りかけておけ」
鳴子と虫除けスプレーを渡されました。
熊と蚊かよ。ここのモンスターたち。
「知性のない野生のモンスターは警戒心の塊じゃからな。スプレーのにおいをさせて鳴子をじゃらじゃら鳴らしておったら、警戒して近寄ってこんわ」
「鳴子をじゃらじゃらさせてたら、リザードマンたちに気付かれるだろう」
「それならむしろ願ったり適ったりじゃろう。案内役ができて一石二鳥じゃ」
こいつ、いまだにリザードマンたちが自分に服従すると疑ってないな。
それはどちらかと言うと死亡フラグな気がするのだが……。
まあいいや。
どっちにしても最後にはそいつらと会う運命だからな。
早いか遅いかの差だけだ。
ともあれ、鳴子装備で虫除けスプレーを振りかけた俺とセシリアは、今度こそリザードマンたちが巣食うという西の森へ足を踏み入れた。
あっという間に西の森が見えてきた。
「今までの旅に比べると、最短での目的地到着だな」
「元々ヴァーナ公国の領地内での移動なのじゃ。当然じゃろうて」
「まあ、そうだな」
森の前に万桜号を停車して、森を眺める。
なんというか、『ヘンゼルとグレーテル』とかの童話に出てきそうな森、そのまんまって感じだな。いかにも悪者が根城にしそうな感じだ。
――と、それはどうでもいいや。
とりあえず、確認すべきことを確認してっと……。
「うーん……。やっぱりここからは歩きだな。とてもじゃないが、万桜号では入って行けない」
「木をなぎ倒しながら進んでいけば良いのではないか?」
さも当然といった顔でアバンギャルドなことを言わないでもらいたい。
一応ここ、国の領地なんだから、そんなことして後で賠償請求でもされたらどうすんだ。
国家からの賠償請求なんて、そんなもん払い切れねえぞ。
「むう……。仕方ないのう。では、歩く準備をしてくるか」
そう言って、セシリアが万桜号の中に戻っていく。
フリフリのドレスじゃあ、森の中は歩きにくいからな。
動きやすい服装に着替えに行ったんだろう。
「待たせたのう。では参ろうか」
「…………。……おい、セシリア」
「ん? なんじゃ?」
「お前、森の中を歩くためにの着替えにもどったんだよな?」
「うむ、そうじゃ。どうじゃ、似合うかの?」
その場でクルリとターンしてみるセシリア。
うん、似合ってるね。
超かわいいね。
でもごめん。俺の頭がおかしくなったのでなきゃ、それもさっきまで着てたのと同じドレスだと思うんだよ。
色が黒から赤に変わっただけで。
「何を言っておるか。ほれ、フリルが3%少なくなって軽量化されておるじゃろうが!」
「わかるか、んなもん! 3%って完全に誤差の範囲だ。森なめてんのか、てめぇ。さっさと動きやすい服装に着替えて来い!」
「えー! そんなのかわいくないじゃろうが!」
ブーブー文句を垂れるセシリアを、万桜号の中に放り込む。
まったく、こいつはどうしてこうも的外れなことばかりするのだ。
俺を見習って、少しは常識と良識というものを身に付けてもらいたいものだな。
「ほほう。美人を見かけたら所構わずナンパするのが常識とは、随分世の中も変わったものじゃの~。わらわ、びっくり~」
万桜号の中から顔を出し、半眼でこちらを見るセシリア。
だまらっしゃい!
美人がいたら声かけるのは当然だろうが。世の常というやつだ。
何をとち狂ったことを言っていやがる、キチガイ邪神め。
「だめじゃな、こりゃ。バカは死ななきゃ治らんのう」
セシリアがため息をついて万桜号の中に引っ込んだ。
ほほう……。
自らをバカと認めるとは、あいつも素直になったものだ。
どうやら俺という社会規範を体現したかのような保護者を得て、あいつも爪の先ほどは成長したらしい。
うむうむ。
褒めて遣わそう。
「ほれ、これでよいかのう」
しばらくすると、着替えを終えたセシリアがピョンと万桜号から飛び出してきた。
今度はちゃんとズボンをはいてきたようだな。
偉い偉い。
てか、どこかで見た覚えがあると思ったら、スコット村の農作業一日目に使っていた服だろう、これ。
こいつ、ちゃっかりもらってきていたのか。
手癖の悪いやつだな。
「失敬な。村長が『せっかくだから持っていきなさい』って持たせてくれたのじゃ」
あの村長め、完全にセシリアを孫扱いだな。
俺にはそんな気遣いしてくれなかったぞ。
まあ、おかげで助かったから良しとしておこう。
グッジョブだ、村長。
「んじゃ、万桜号を隠して行くとするか。――万桜号、ステルスモード!」
俺の言葉に合わせて、万桜号の車体が周囲の風景と同化する。
フッフッフ。
これぞ、本邦初公開! 万桜号の擬態仕様だ。
セシリアの邪神パワーをもらった際に獲得した機能の一つなんだが、今まで使う機会がなかったんだよな。
んで、さっき思い出して使ってみたんだが、なかなかすげぇな、これ。
完全に風景と同化してるわ。
実際に万桜号の車体に触れるまで気が付かねえもん。
さすがは邪神パワー。
「よし。万桜号の方もこれで大丈夫だろう。――んじゃ、行くとするか」
「うむ、参ろうぞ!」
セシリアといっしょに、森の方へ向けて歩みを進める。
と、そこで俺は一つ、重要なことを思い出した。
「なあ、セシリア。この森って、リザードマン一味の他にも、モンスターいるよな?」
「まあ、たんまりいるじゃろうのう」
「それってさ、俺ら格好の餌になるんじゃねえ?」
森に入った瞬間、モンスターの餌。
ハハハ。
武者震いが止まらないぜ。
「安心せい。ほれ、これを腰の括り付けて、後はこれでも全身に振りかけておけ」
鳴子と虫除けスプレーを渡されました。
熊と蚊かよ。ここのモンスターたち。
「知性のない野生のモンスターは警戒心の塊じゃからな。スプレーのにおいをさせて鳴子をじゃらじゃら鳴らしておったら、警戒して近寄ってこんわ」
「鳴子をじゃらじゃらさせてたら、リザードマンたちに気付かれるだろう」
「それならむしろ願ったり適ったりじゃろう。案内役ができて一石二鳥じゃ」
こいつ、いまだにリザードマンたちが自分に服従すると疑ってないな。
それはどちらかと言うと死亡フラグな気がするのだが……。
まあいいや。
どっちにしても最後にはそいつらと会う運命だからな。
早いか遅いかの差だけだ。
ともあれ、鳴子装備で虫除けスプレーを振りかけた俺とセシリアは、今度こそリザードマンたちが巣食うという西の森へ足を踏み入れた。
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