71 / 113
実践といってみようか
しおりを挟む
驚きで目を見開くブタと腰巾着どもを、俺は睥睨するように見下ろす。
俺からしたらアホの代名詞でしかない『魔王』の雷名も、こいつらからすればそれなりに意味があるものらしいな。
思った以上に効いたわ。
ああ、もしかしてこいつら自身が小悪党だからかな?
悪党はより上位の悪党を恐れるってことで……。
「まったく……。肥えるしか能のないブタの分際で、俺の客に随分と調子こいたことしてくれたな。覚悟はできているんだろうな、うじ虫共が!」
「ぐぬぬ……。 調子に乗っているのは貴様の方だ、チンピラ風情が!」
頭から湯気を立ち上らせた四男坊が、取り巻きたちを押しのけ、立ち上がる。
おお~。怒っとる、怒っとる♪
大勢の前で俺にコケにされたことが、相当気に食わないと見えるな。
いい気味だ。
つか、あんまり顔を近づけんなよ、クソデブ。
暑苦しいことこの上ないだろうが。
その上、汗臭いし息が臭い。存在するだけで最悪だな、こいつ。
「このヴァーナ公国で『魔王』の名を騙ったことを後悔するがいい。すぐにしょっ引いて、公開処刑してくれるわ!」
「あ~、さいですか」
わなわな震えながら、怒りを爆発させる四男坊。
「――何をしておるか、警備兵ども! すぐにこの魔王を名乗る危険人物を捕えろ!」
パンパン! と四男坊が丸々太った手を打ち鳴らし、市場街の警備兵たちを呼び寄せる。
だが……。
「すみません、マカロフ様。野次馬が多くて、なかなかそちらに辿り着けません!」
「なんだと!?」
野次馬の壁が行く手を阻み、警備兵たちはにっちもさっちもいかない様子。
どうにか壁を抜けようとしているが、なかなかうまくいかないようだ。
――って、おいおい、みんな。
さすがにこっち向かってサムズアップはまずいだろう。
ようやく役目を見つけてうれしいのはわかるが、お前たちもしょっ引かれちまうぜ。
まあ、警備兵たちも壁を抜けようと頑張っている振りしているだけみたいだから、咎められたりはしないだろうけどな。
ホント人気ねえわ、このおっさん。
あの横暴さじゃ、当然だけどな。
「ええい、無能どもめ。どこまで使えないのだ!」
「てめえほどじゃないだろうさ、ブタ野郎」
拳をバキバキと鳴らし、四男坊たちへ向かって一歩踏み出す。
さてと……。
んじゃ、みんなが稼いでくれたこの時間、有効活用するとしますか。
なーに、こんな連中、五分もあれば片が付く。
「ひっ! 来るな、下郎! 寄るんじゃない!?」
「わ、我らに手を出せば、お前もただでは済まんぞ!」
「必ず後悔させてやるぞ!」
助けが来ないとわかり、顔を青くしたブタと喚くしか能のない取り巻きが後退る。
まったく、さっきまでの威勢はどこへやらだな。情けない……。
あと、その金切声は耳障りだ。いい加減黙れ、腰巾着ども。
「わ、わかった。今回の余への不敬は、不問にしてやる。貴様もこのガキどもも許してやる。そのガラクタも返そう。だから、冷静になれ。な?」
後退りながら、ブタが譲歩するように捲し立てる。
上から目線の恩情、痛み入るね。
けど、悪いな。
「……なあ、マカロフ様よぉ。国のトップってのは、国民の見本となるべき存在なんだよな。だったら、俺もお前を見本に行動しなきゃなんねえってわけだ」
「そ、そうだ。その通り! つまりお前も、余を見習って冷静に――」
「……『やめて』と頼まれたら、嘲笑って続行。それがてめえの流儀だったな。マカロフ様の有り難い教え、確かに受け取ったわ」
「んなっ!」
足を止めたマカロフ様(笑)の前に到達。
きつくきつーく拳を握り締め、全身のバネと腰の回転を活かしつつ……、
「んじゃ、実践といってみようか! とことん付き合ってもらうぜ、マカロフ様?」
「ひぎーっ!?」
弾丸のような拳をブタ型サンドバックのたるんだ頬へ突きさす――直前だった。
「――ヨシマサ、ちょっと待った!」
「――んぐっ!」
聞き覚えのある、よく通るイケメンボイスが野次馬の外から発せられる。
この声、間違いなくあいつだよな。
チッ!
なんだよ、いいところだったのに。
思わず拳を止めちゃったじゃんか。
本当に間の悪いヤツだ。
そんなことを考えていたら、今度はこんな声だけでも美人とわかるソプラノボイス×2が聞こえてきた。
「すみません、みなさん。ちょっと通してもらえますか?」
「すまない。通してくれ!」
非難混じりの視線(あ、もちろんこれはあの野郎に対してだぞ。美人二人は悪くない!)を、声が聞こえた方へ向ける。
同時に、野次馬の壁がモーゼの奇跡のように真っ二つに割れた。
割れた壁の先に現れたのは――予想通り、シェフィルさんとフレアちゃんを連れたイケメン勇者・アルフレッドだった。
俺からしたらアホの代名詞でしかない『魔王』の雷名も、こいつらからすればそれなりに意味があるものらしいな。
思った以上に効いたわ。
ああ、もしかしてこいつら自身が小悪党だからかな?
悪党はより上位の悪党を恐れるってことで……。
「まったく……。肥えるしか能のないブタの分際で、俺の客に随分と調子こいたことしてくれたな。覚悟はできているんだろうな、うじ虫共が!」
「ぐぬぬ……。 調子に乗っているのは貴様の方だ、チンピラ風情が!」
頭から湯気を立ち上らせた四男坊が、取り巻きたちを押しのけ、立ち上がる。
おお~。怒っとる、怒っとる♪
大勢の前で俺にコケにされたことが、相当気に食わないと見えるな。
いい気味だ。
つか、あんまり顔を近づけんなよ、クソデブ。
暑苦しいことこの上ないだろうが。
その上、汗臭いし息が臭い。存在するだけで最悪だな、こいつ。
「このヴァーナ公国で『魔王』の名を騙ったことを後悔するがいい。すぐにしょっ引いて、公開処刑してくれるわ!」
「あ~、さいですか」
わなわな震えながら、怒りを爆発させる四男坊。
「――何をしておるか、警備兵ども! すぐにこの魔王を名乗る危険人物を捕えろ!」
パンパン! と四男坊が丸々太った手を打ち鳴らし、市場街の警備兵たちを呼び寄せる。
だが……。
「すみません、マカロフ様。野次馬が多くて、なかなかそちらに辿り着けません!」
「なんだと!?」
野次馬の壁が行く手を阻み、警備兵たちはにっちもさっちもいかない様子。
どうにか壁を抜けようとしているが、なかなかうまくいかないようだ。
――って、おいおい、みんな。
さすがにこっち向かってサムズアップはまずいだろう。
ようやく役目を見つけてうれしいのはわかるが、お前たちもしょっ引かれちまうぜ。
まあ、警備兵たちも壁を抜けようと頑張っている振りしているだけみたいだから、咎められたりはしないだろうけどな。
ホント人気ねえわ、このおっさん。
あの横暴さじゃ、当然だけどな。
「ええい、無能どもめ。どこまで使えないのだ!」
「てめえほどじゃないだろうさ、ブタ野郎」
拳をバキバキと鳴らし、四男坊たちへ向かって一歩踏み出す。
さてと……。
んじゃ、みんなが稼いでくれたこの時間、有効活用するとしますか。
なーに、こんな連中、五分もあれば片が付く。
「ひっ! 来るな、下郎! 寄るんじゃない!?」
「わ、我らに手を出せば、お前もただでは済まんぞ!」
「必ず後悔させてやるぞ!」
助けが来ないとわかり、顔を青くしたブタと喚くしか能のない取り巻きが後退る。
まったく、さっきまでの威勢はどこへやらだな。情けない……。
あと、その金切声は耳障りだ。いい加減黙れ、腰巾着ども。
「わ、わかった。今回の余への不敬は、不問にしてやる。貴様もこのガキどもも許してやる。そのガラクタも返そう。だから、冷静になれ。な?」
後退りながら、ブタが譲歩するように捲し立てる。
上から目線の恩情、痛み入るね。
けど、悪いな。
「……なあ、マカロフ様よぉ。国のトップってのは、国民の見本となるべき存在なんだよな。だったら、俺もお前を見本に行動しなきゃなんねえってわけだ」
「そ、そうだ。その通り! つまりお前も、余を見習って冷静に――」
「……『やめて』と頼まれたら、嘲笑って続行。それがてめえの流儀だったな。マカロフ様の有り難い教え、確かに受け取ったわ」
「んなっ!」
足を止めたマカロフ様(笑)の前に到達。
きつくきつーく拳を握り締め、全身のバネと腰の回転を活かしつつ……、
「んじゃ、実践といってみようか! とことん付き合ってもらうぜ、マカロフ様?」
「ひぎーっ!?」
弾丸のような拳をブタ型サンドバックのたるんだ頬へ突きさす――直前だった。
「――ヨシマサ、ちょっと待った!」
「――んぐっ!」
聞き覚えのある、よく通るイケメンボイスが野次馬の外から発せられる。
この声、間違いなくあいつだよな。
チッ!
なんだよ、いいところだったのに。
思わず拳を止めちゃったじゃんか。
本当に間の悪いヤツだ。
そんなことを考えていたら、今度はこんな声だけでも美人とわかるソプラノボイス×2が聞こえてきた。
「すみません、みなさん。ちょっと通してもらえますか?」
「すまない。通してくれ!」
非難混じりの視線(あ、もちろんこれはあの野郎に対してだぞ。美人二人は悪くない!)を、声が聞こえた方へ向ける。
同時に、野次馬の壁がモーゼの奇跡のように真っ二つに割れた。
割れた壁の先に現れたのは――予想通り、シェフィルさんとフレアちゃんを連れたイケメン勇者・アルフレッドだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる