残念魔王とロリ邪神は移動図書館で異世界を巡る

日野 祐希

文字の大きさ
86 / 113

見よ! これが魔王の力だ!? (←調子に乗っているバカの図)

しおりを挟む
 目の前には、高レベルモンスターのクリスタルゴーレム。
 本来ならば、速攻ダッシュで逃げ出すような状況。
 しかし、今の俺は違う。
 だって、美人とのデートの権利が懸っているから!

 俺は、クイクイッと手招きしながら、ゴーレムに啖呵を切った。

「ハハハ! クソゴーレムよ、この魔王様が直々に相手をしてやろう。さあ、どこからでもかかって――へぶらっ!」

 ――ポーン! (←空を飛び……)
 ――ゴロゴロ! (←地面を転がり)
 ――クタッ……。(←力尽きた)

「バカじゃの~。魔導書も持たずに飛び出すとは……」

 クリスタルゴーレムのタックル直撃で帰ってきた俺を、セシリアが『やれやれ、まったく……』といった仕草で迎える。
 うん。わかっていたなら、止めてほしかった……(ガクリ……)。

「ほれ、クリスタルゴーレムが『ヘイ、カモ~ン!』って感じで待っておるぞ。さっさとボロ雑巾にされて来い。その頃にはシェリルも手伝いに来てくれるじゃろう」

「鬼か、貴様!」

 倒れたパートナーを平気で死地に送り込むとは、血も涙もないヤツだ。
 てめえをシールドにして突っ込むぞ、ゴルァ!

 あと、ゴーレム本当に『ヘイ、カモ~ン!』とかしてるし!
 器用だな、ゴーレム!
 神様、無駄なところ凝りすぎだろ!?

「あ」

「ん? ――ぐふぉ!」

「ゴーレムがスライディングしてきておるぞ――って、遅かったな」

 スライディングしてきたゴーレムにはねられ、再び空へ……。
 ゴーレムさん、見かけによらずアグレッシブで機敏でした。
 なんか今も、シャドーボクシングしながら、俺が落ちてくるの待ってるし。

 そしてゴーレムさんよ、なぜ隣で「た~まや~」とかやっているチビカスは襲わない。
 そこは平等に相手しようよ。
 差別反対!
 
「ヨシマサよ~、余計なことを考えている暇があったら、自分の身の心配をした方が良いぞ~」

「だったら、少しは手を貸せ!」

 上昇が頂点に達し、落下が始まる。

 ヤバい。
 マジでヤバい。
 ゴーレムさん、テニスのサーブのような構えを見せ始めた。
 手にはどこから取り出したのか、クリスタル製のラケット持っているし!

「セシリア、マジでヘルプミー!?」

「仕方ないのう。――ほれ」

 セシリアがポーンと一冊の本を放ってくる。
 ナイスだ、セシリア!
 お前なら、俺を見捨てないと信じていた!

 セシリアからパスされた魔導書を空中でナイスキャッチ。
 さすが俺!
 さてさて、うちの神様は一体何をくれたのかな~?

「――って、これ宴会用だろうが! ふざけんな!」

 何を寄こしたかと思えば、大道芸の時にお馴染みの『これでバッチリ! 宴会魔法大全』だった。
 この状況で宴会芸をしろってか。
 ヘイト値高めて、マジで殺されるわ!

 そうこうしているうちに、いよいよ限界点がやって来た。
 このままでは世界ランキング1位もビックリのビッグサーブでジ・エンド。

 チッ!
 仕方ない。

「ミラー!」

 叫ぶと同時、合わせ鏡が現れて、いくつもの分身が現れる。
 これぞ俺のショーでも大人気演目の一つ、分身の術だ!
 ジャパニーズ・ニンジャをなめるなよ!
 
 大量の分身に虚をつかれたのか、ゴーレムの動きが止まる。
 その隙に俺は、辛くも地面に降り立った。

「セシリア、さっさと別の魔導書を寄こせ!」

「我が儘じゃのう。――ほれ」

 セシリアが異次元収納空間に入れておいた別の本を取り出す。
 タイトルは……何々『君も今日から大仙人』?
 まあ、宴会魔法でなければこの際何でもいいや。

 俺は気にすることなく、手渡された魔導書を開いた。

「ええと、『この本を使用することで、あなたは一時的に超人的自然パワーを得ることができます。ただし、長時間使い過ぎると自然と完全同化して、背景キャラの仲間入りをしてしまうので気を付けてください』……」

 地味に恐ろしい魔導書だった。
 まあ、長時間使用しなければ問題ないようなので、そのまま使うとしよう。

「超自然パワー、カモ~ン!!」

 適当に魔導書を使用してみると、なんか体の中に力がみなぎってきた。
 なんというか、世界と接続されたような感覚だな。自分自身が巨人にでもなったかのような雄大さを感じる。
 なるほど、これが仙人パワーか。

「うぉおおおおおおおおおおっ! 魔王仙人モード発動!?」

「おお! ヨシマサのウザい存在感が薄らいでゆく!? なんと素晴らしい魔法なのじゃ!!」

 それっぽいポーズを決めてみたら、隣のガキが失礼なことを言いながら目を輝かせた。
 今の俺を見て、出てくるのはそれか。もっとポーズを褒めろや。

 まあいい。今の俺は仙人だ。
 賢者モード的な心の落ち着きで許してやろう。
 俺、超大人。

「フッフッフ、今の俺に敵はない。さあゴーレム、かかってこい!」

「おお! ヨシマサが威勢はいいがすぐにやられる雑魚敵チックなセリフを……! こやつ、完全に調子に乗っておるぞ!?」

 パチパチと大拍手をしながら囃し立てるセシリアちゃん。

 うん。
 お前、俺のこと称えるような雰囲気だけ出しときゃいいてもんじゃねえぞ。
 行動に対して言葉の中身がまったく伴ってないよね。完全に俺のことバカにしてるよね。
 一体どっちの味方だ、ゴルァ。

「――って、おっとっと」

 俺がセシリアへ殺意を向けた隙に、ゴーレムが渾身の右ストレートを繰り出してきた。
 ただし、俺はその右ストレートを蚊でも払うかのように弾く。
 仙人パワー、スゲーな。
 リスク高いけど、とてつもなく痛快かつ爽快な魔法だ。
 ぶっちゃけ、超気持ちいい!

「フハハ! 貴様の力はこんなものか。毛ほども効かぬぞ!」

「おお! 自然と同化してなお光り輝くそのウザさ。さすがはヨシマサなのじゃ~」

「うん。君ね、いい加減黙れ」(←賢者モード的激オコ)

 セシリアへの怒りをこぶしに乗せ、ゴーレムへと叩き付ける。
 美人の先生に惹かれて始めた少林寺拳法。そこで習った震脚で地面を揺らし、全力全開のこぶしをクリスタルの中へ炸裂させた。

 ――ビシビキッ! バキッ!!

 体の中央から全身にヒビが広がり、クリスタルゴーレムが砕け始める。
 ぃよっしゃーっ!
 あと一息!

「喰らえ! 魔王玻璃拳掌まおうはりけんしょう!?」

「おお! ヨシマサが語感だけかっこ良さげな、まったく意味の解らない必殺技を……! イタい! イタすぎるぞ、この男!?」

 いらん解説を聞き流しながら、ゴーレムにとどめの一撃を叩きこむ。
 セシリアよ、後で覚えていろ。

 ともあれ、俺の一撃を受けたゴーレムは地面から足が離れ、ボコンと内側から膨らむ。
 そして、臨界点を突破したところでゴーレムは爆散するようにはじけ飛んだのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...