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第18話 ~はじめて海で泳ぎます~

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「海に行こうぜ!!」

「ふぇっ?」

 良く晴れた朝のこと。

 朝ご飯を食べ終わったわたしは、いつも通りお部屋でココちゃんとお話をしようと思っていたんだけど。

 そこに現れたのはわたしのお友達で村の子どもの中で一番の年長者でもある猫人族のロジーくん。

 それに。

 隣には同じくわたしのお友達の村でも少ない種族の狐人族であるエリオくんも立っていて。

 呆気にとられるわたしに向かって二人とも元気有り余る姿を見せていました。

「だから海に今から行くんだよ。冷たくて気持ちがいいんだぜ」

 海……。

 海って鍾乳洞を抜けた先にある海のことだよね?

 確かに最近暑い日が続いているけど、海に行ってどうするんだろう?

 冷たくて気持ちがいいって言ってるぐらいだし海の中に入るのかな?

 ふわふわとロジーくんの言葉を頭の中で反芻してると。

 ロジーくんの隣に立っていたエリオくんが補足してくれて。

「ロジー兄の言葉だけじゃリアちゃんは分かってないんじゃないのかな? ねぇ、リアちゃんって泳いだ経験ってあったりする?」

「およぎ? えっと……なんだろうそれ?」

「ほら、やっぱり。ロジー兄はいつもいきなりすぎるんだからもう少し落ち着きなよ」

「う、うるさいなぁ。俺だってちゃんと説明するつもりだったんだっての!!」

 暑い中よくやるなぁって。

 わいわい言い合っている男の子たちを見ながら。

 およぐって何だろうって思っていると、横からくいっくいっと服を引っ張る感触があって。

「えっとね。海の中に潜ったり、海の上をぱしゃぱしゃ身体を動かして楽しむことを泳ぐって言うんだよ。エリオお兄ちゃんの言う通り冷たくて気持ちがいいんだ」

「海の中……わぁ、楽しそうかも」

 ココちゃんが教えてくれた内容を想像してみると。うん。確かに冷たくて楽しそうな気分になれそうかも。

 あれ、でも海ってもちろん川や湖と一緒でしょっぱいけど水の塊なんだよね?

「服のまま入っちゃったら濡れちゃわないかな?」

「そこは、ほら大丈夫だって! ちゃんと用意したんだよな? ココ」

「あ、うん。この前言われてからちゃんと作っておいたよ。ちょっと待っててね」

 用意? 何のことだろう。

 ロジーくんの言葉にココちゃんが家の中に消えていったんだけど。

 そう間もないうちに戻ってきて。

「はい。これはリアお姉ちゃんの為に作ったんだ」

 わたしに手渡してきたソレは。

 水色に染まった手と足が露出した服……水着でした。

「有り難う……。え、これって水着なのかな?」

「お? 水着は知っているのか?」

「あ、うん。町にいるときに外で身体洗う為に着てたんだよね。これより面積は全然小さかったけど身体を隠す為に着てた服を水着って呼んでたかな」

 孤児院にはお風呂なんて立派なものなかったからね。

 だから普段は濡れタオルで身体を拭くだけで済ませていたんだけど。

 それだと髪がべたつくし、綺麗になった感じがしないから、偶に井戸の近くで身体を洗ってたりしたんだよね。

 もちろん外だし人の往来もあるから。

 裸になるのは恥ずかしかったからボロボロになった服を再利用して水に濡れても問題ない水着として使ってたんだ。

 と、そのことを何気なくみんなに話したんだけど。

「苦労してたんだな……」

「僕、自分が幸せに生きてきたことが何だか恥ずかしく感じてくるよ」

「リネお姉ちゃん大丈夫?」

 何故かみんなが励ましてきたんだよね。

 わたしにとってはそれが普通なことだと思っていたから。

 訳が分からずに当然わたわたしちゃったんだけど。

 まぁ、確かに言われてみればこの村に来てからは誰からも見られない空間で温かいお風呂に入れるんだから裸でもいいんだもんね。


「ってことはこの水着だけを着て海に入るってことなの?」

「そりゃ、もちろん。濡れてもいい服だしな」

 ココちゃんからもらった水着を身体に当てながら思うんだけど。

 見た感じ身体に張り付く様に出来ているから当然体のラインは浮きでちゃうよね、これって。

「えっと。ちょっと恥ずかしいかな? なんて思っちゃったり」

 当然この流れだとロジーくんやエリオくんも一緒に海に行くってことなんだよね?

 さすがのわたしでも男の子に素肌を見られるのは恥ずかしいと思うんだよ?

 でも、そんなことをわたしが言うと、え。何いってんのコイツみたいな顔をロジーくんがしてきて。

「お前、この村にやって来たときボロボロの葉っぱしか身に着けてなかったじゃねぇか。え、それで恥ずかしいって…………あれ」

 ぷるぷるぷるぷるぷる……。

 うわぁ。そうだったよ。

 わたしあの時は胸と股の大事な部分しか隠してなかったんだ。

 それも不安しかない葉っぱだけで。

 当然お尻だったり、背中とかお腹は丸見えで。

 え。その姿をみんなに見られていた?

 そりゃそうだよ。あの時は村のみんなも様子を見に門近くまでやって来ていたんだから。

 そう思うと身体中が真っ赤になるぐらい恥ずかしくなってきて。

「ロジー兄……。それは言っちゃまずいことだって分からないかな?」

「ロジーお兄ちゃん最低……」

「いや、あのな? その……。あれだ! とっても綺麗だったぞ!!」

「ッ――――――!!!!」

 …………。


 わたしがやった行為はきっと許されると思うんだ。

「ごめんなさい……」

 目の前には頬に真っ赤な小さな掌のカタチをした痣があるロジーくんがいて。

「こればっかりは同情の余地もないよね」

「ロジーお兄ちゃんはリネお姉ちゃんに近づいちゃ駄目なんだから」

 これでも手加減したんだからね?

 誰が何をしたのかは想像にお任せします。

 正直言ってわたしはこれ以上恥ずかしかった記憶を呼び起こしたくないのです。

「だから、このお話はもうお終いだからね。わかったかな?」

「は、はい! 分かりました!!」

「ん。宜しい。でも、本当にこれを着て、その泳ぐってことをやるの?」

「リアお姉ちゃん、そんなに気にしなくても大丈夫だよ? 私も似たようなのを着るし。実はこの水着はね。特殊な鉱石を使って染め上げているから、水に濡れても身体は透けないから大丈夫なんだよ」

「うん。ココちゃんの言う通り、僕達なんてほら、下しか履かない訳だしね。村の中でこんな格好してたらさすがに恥ずかしいけど、海の近くならこれが普通なんだから」

 ココちゃんもエリオくんも大丈夫だって言ってくれるし。

 うん。そうだね。

 郷に入っては郷に従えって言うし。

 わたしも頑張ってみるよ。

「あれ? でも今から海に行くの? お昼からのお手伝いはどうしよう?」

「いつつ……。ああ、それなら今日は子どもたちは皆休みでいいって長が言ってたから気にしなくていいぞ」

「え? 休んでってそんなことしちゃっていいの?」

 お休みなんて町にいた時には聞かなかった言葉だよ。

 言葉の意味自体は知っているけど……。

「わたし、村にいさせてもらってる立場なのに。お手伝いをもっとやらないといけないんじゃないのかなぁ?」

 わたしの居場所を与えてくれて。

 美味しいご飯も食べさせてくれる。 温かいお風呂やベッドももらっているのに。

 だからこそ、それに報いるためにももっとお手伝いを頑張らないといけないと思ってるのに。

 そんなことを考えていたわたしに対して、何時の間にか後ろからクリネおばさんがやってきたから。

「なんだい? まだこんな場所で長話してたのかい」

「あの。ロジーくんから今日は子どもたちはお休みだって聞いたんですけど」

「ん? ああ、そうだったね。でも、それがどうかしたのかい?」

「ふぇ? え、あの。それってわたしもなんですか?」

「何を当然のことを聞いているのさね。もちろんそうに決まってるじゃないか」

 やっぱりわたしもだったみたいです。

 でも……。

「わたし。まだ村のみんなに何も返せてないのに。休んじゃっていいのかな?」

 そう思っちゃうわたしがいて。

 急に休んでいいと言われても働くことが当たり前だと思っていたから。

 少しでもみんなの為に恩を返さないといけないと思っていたから。

 それなのに。

「はぁ。まだこの子はそんなことを考えていたのかい。いいから今日は休む!! 一日二日休んだところで罰なんて当たりゃしないさ。それに子どもってのはね。遊ぶことも大事なことなんだよ。ほら、アンタたちも。今日はクーリアとしっかりと遊んでくるんだよ!!」

「もちろんだぜ!!」

「ほら、リアちゃんも行こうよ」

「それじゃお母さん行ってくるね」

「え、えっと。わわっ!!?!?」

 わたしの返事を待たずに両手を引っ張るロジーくんとエリオくん。

 後ろからはココちゃんもわたしを手で押してきて。

「怪我だけはするんじゃないよ」

 そう言ってお家の中に戻っていくクリネおばさんを見ながら。

 わたしは未だ釈然としない気持ちはあったけれど。

 これ以上わがままを言って逆にみんなを困らせても仕方ないのかなぁ。

 連れてかれるがままにみんなと鍾乳洞に向かっていったのでした。


 そんな感じで鍾乳洞に向かう途中で。

 わたしより年下の犬人族であるアレクくんとフィーゼちゃんが待っていたので合流して。

 ちなみに二人とも同じ9歳だけど、双子とかじゃなくて。

 一緒に育った幼馴染だそうなんだけど。

 普段から犬耳が垂れているアレクくんと、逆に細長くピンと張ってあるフィーゼちゃんも泳ぐのが楽しみなのか何時の間にかわたしを中心にしてえっさほいさ引っ張り出しちゃったんだよね。

 自分の足で歩くって言ってもみんなは離してくれなくてね。

 わたし含めた子供たちの引率役としてやって来た犬耳のお兄さんたちはその様子を見て大笑いしちゃってるし。

 もー。本当に恥ずかしいんだってばー!!

 でもね。そんな色々な気持ちは。

 海にやってきた瞬間から全部吹き飛んでしまったんだよね。


 鍾乳洞を抜けて海に面する砂浜へとやってきたわたしたちは。

 男の子たちは上着を脱ぐだけでさっさと海に飛び込んで行っちゃったんだけど。

 ココちゃんやフィーゼちゃん。わたしはそうもいかなくて。

 砂浜に建てられていた小さな小屋の中で水着に着替えて。

 やっぱり恥ずかしいんだけど、ココちゃんからもらった水着はわたしにぴったりと着ることができたんだよね。

 ただねぇ。そんなことよりも。

 ココちゃんはわたしとあまり変わらない体格なんだけど。

 それはいいとして。ん? 3歳年下の子と同じ体格なのはいいことなのかな? ……うん。今それを考えるのはとても悲しくなるから止めとこうかな。

 それよりも。問題はフィーゼちゃんなんだよ。

 わたしの一つ下のフィーゼちゃん。

 すでに私よりも背がおっきくて。色んな意味で負けている感はんぱないんだけど。

 水着を着るために全裸になっているフィーゼちゃんを見て絶望を感じちゃったんだ。

 あのね。胸が……。胸が大きいんだよ。え、なに? フィーゼちゃん何でそんなに胸が大きいの?

 走ったらおっぱい揺れるんじゃないのそれ? ってぐらい大きいんだよ。

 服の上からだとあまり気にならなかったんだけど、うぅ……。わたし本当に10歳なのかなぁ?

 自分の身体を見下ろすと足の指先どころか足首まで綺麗に見えるくらいぺったんこなんだけど。

 わたしって本当に成長するのかなぁ……。

 そんな女の子として色々と敗北を知った悲しい状況だったけれど。

 ピンク色の水着を着たフィーゼちゃんとわたしとお揃いの水色の水着を着たココちゃんに連れられて小屋の外に出たわたしは。

 犬耳のお兄さんたちに言われるがままに砂浜の上で身体を動かして準備運動をしっかりと行いました。

 海に入る前にまずきちんと身体を動かしておかないと海の中で足が吊ったりすることがあるらしくて。

 わたしは言われた通りに身体を動かし続けます。

 だって、ほら。

「いってえぇぇぇぇ!!?!?」

 さっそく海の上でロジーくんが転げまわっているんだもん。

「はぁ。あの馬鹿共は。クーリアちゃんは真似しちゃ駄目だからね」

「うん。もちろんだよ」

「クーリアちゃんに良いところを見せようと見栄を張ってもあれじゃあなぁ」

「え? わたしに?」

 わたしが何だろう?

「あぁ、いや何でもないよ。ほら、そろそろ身体も十分伸びたと思うから海で泳いでくるといいよ。でも、あまり沖合いまでは行かないようにね」

「「「はーい!」」」

 犬耳のお兄さんの言葉に首を傾げてみるもよく分からなかったから、とりあえず海へと近づいてみることにしました。

 空を見ると雲がうっすらとはあるけど、ほぼ快晴といってもいい晴れ模様で。

 素肌を晒している手と足がジリジリと太陽光に焼ける感覚があって。

 白い砂浜もとっても熱くて。

「ほら。リアお姉ちゃんも早く早く」

 我慢できずに走り出したココちゃんとフィーゼちゃんに引かれて、わたしも海水が波に押されたり引いたりする浅瀬までやって来ました。

「わわっ、なにこれ!?」

 あのね。

 足の裏がとってもこそばゆいんです。

 冷たい海水がわたしの足と。それに足の裏の砂を持って行って。

 何とも言えない感覚が襲ってくるんだ。

 それにとっても冷たくてみんなが言った通り気持ちがいいんだ。


 そんな感じで海を満喫していたわたしはというと。

「わぷっ!? わわわわっ!!?!?」

「ほら、慌てないで。まだリアちゃんでも足が着く場所だからね」

 そんなこと言ってもこの不思議な感覚には慣れないんだってば!?

 今、わたしはエリオくんの手に引かれて泳ぐ練習を行っていました。

 最初はロジーくんがわたしに泳ぎの練習を教えるって張り切ってたんだけど。

 ココちゃんがわたしに近づいちゃ駄目って怒ってくれて。

 代わりにエリオくんが私に泳ぎの練習を行ってくれることになったんだ。

 うーん。やっぱりこの感覚は慣れないなぁ。

 長い髪が邪魔だったから束ねてポニーテールにしてるんだけど。

 濡れた髪が結構重くて顔だけが水面に沈んで行っちゃうし。

 それはともかく、何て言ったらいいんだろうね。

 湖で浮かんだ時とは全然違うっていうのかな。

 何もしなくても勝手に浮いてきちゃう感じ?

 そんな変なふわふわ感があるんだよね。

「まずはゆっくり浮かんでみるといいんじゃないかな? ほら足をぷかーって浮かせて。顔は僕に向けているといいよ」

「わぷ。う、うん。頑張ってみるっ! だから絶対に手を離さないでね!?」

「あはは。分かってるってば」

 身体の力を抜いて。

 わわ。本当に全身がぷかーっと浮いてきたよ。

 初めて味わう感覚に。

 ちょっと楽しくなってきちゃって、顔もちゃぷって水面につけてみたら。

 とっても凄いんだよ。

 綺麗に透き通っていてね。ちょっと向こうにはおさかなもいっぱい泳いでいる様子が見えるんだ。

 これが海なんだねぇ。

 まだ全然泳げていないけれど川や湖とは違った楽しさがあるってことは何となく分かって来たよ。

 でも、そんな感激は唐突に終わっちゃって。

「おい! 何時までクーリアの手を握ってるんだよ!!」

「え、わ。ちょ、今手を離したら――」

「ふぇっ? わ、わわ!? わぷっ!!?!?!?」

 急にエリオくんの手が離れちゃって。

 何が起こったのか分からないままごぼごぼと口から息が漏れるし、手足をばたばたしても地面につかないしで。

 当然溺れちゃってるわたしがいたんだよね。

「わぷっ、わぷっ!?」

「ッ!! この馬鹿が!!!! クーリアちゃん、早くオレに捕まるんだ!!」

 そして急に引っ張られる感覚がやってきて。

 けほけほ咳込みながら涙目で見てみると焦った顔の犬耳のお兄さんがわたしを抱き抱えていて。

 隣には同じく別の犬耳のお兄さんが。

「お前本当に馬鹿だろ!! やっていいことと悪いことの判別も付かないのか!?」

「うぅ、だって……。エリオの奴ばっかりいいとこ見せてるから……」

 うぅ……。何が起こったの?

「けほけほ……。あぅ、口の中がしょっぱいよぉ」

「リアお姉ちゃん大丈夫!? はいこれお水だからゆっくり飲んで」

 犬耳のお兄さんに砂浜まで抱えられた後。

 ココちゃんにお水が入った水筒をもらってくぴくぴ飲んで。

 ふぅ。やっと落ち着いてきたよ。

 でも、一体なにがあったの?

 ロジーくんがまた何かしたのかな。ものすごく怒られてるみたいだし。

「リアちゃん大丈夫だった? ほんとごめん。ロジー兄の馬鹿が僕にぶつかってきて手を放しちゃったから……」

「けほっ。ううん、エリオくんは何も悪くないよ。うぅ……ロジーくんのばか」

「あー……えっとね。確かにロジー兄の行動は僕でも馬鹿だと思うんだけど、あんまり悪く言わないで欲しいかな、なんて」

「ふぇ? 何で? だってわたしのことよく意地悪してくるんだよ? 今だってロジーくんの意地悪のせいでわたし溺れちゃったんだよね?」

 うぅ、まだ口の中がしょっぱいよ。

 ほんとロジーくんって遊んでる時にわたしによく意地悪してくるんだよね。

 追いかけっこするときもわたしが捕まえようとしてもギリギリのとこで逃げてばっかりだし。逆にロジーくんが捕まえる側の時はわたしを一番に狙ってくるし。

 ボール遊びもそう。

 わたしばっかりボールぶつけてくるし。

 わたしのこと嫌いなのかなぁ?

 ねぇ、お父さんイグニスはどう思う?

『……どう見てもアレだが。クーはまだ知らなくていいぞ。それにクーのことをやるつもりなぞ毛頭ないがな』

 うーん?

 お父さんイグニスの言ってることもよく分からないや。

「うーん。こればっかりは僕からはこれ以上言えないからなぁ。だけど、ロジー兄はリアちゃんのことを嫌ってるわけじゃないから、リアちゃんも出来ればロジー兄のことを嫌わないで欲しいかな」

「うぬぬ? ねぇ、ココちゃんは言っている意味分かる?」

「ロジーお兄ちゃんのこと? 私は分からないかも」

 だよねぇ。

 意地悪してるけど嫌いじゃない。だからわたしも嫌わないでいて欲しい。

 要はそういうことなんだよね、たぶん。

 うーん。考えれば考えるほどよく分からないかも。

 でも、せっかく出来たお友達だもんね。

「よく分からないけど、わたしから嫌うってことはないから安心していいと思うよ? だってロジーくんもエリオくんも大切なお友達だもんね」

「リアお姉ちゃん。私は?」

「ココちゃんももちろんわたしには大事なお友達だよ!! あっちで遊んでるアレクくんとフィーゼちゃんも同じくね」

「がーがー!!」

「わ。がーくんもわたしには大事なお友達……? いや、がーくんはわたしの家族だよね!?」

 何時の間にかわたしの膝の上に乗っていたがーくん。

 海に一緒に連れてきてたことすっかり忘れていたよ。

 って、がーくんそれ何食べてるの?

 口からはみ出ている足がたくさん生えてるソレなんなのかな?

「がー?」

 ガリガリ音を立てて食べてるがーくんがちょっと怖いよ。


「えっと、リアちゃんまだ海に入れそうかな? ロジー兄のことならもう大丈夫だと思うよ。さっき思いっきり怒られてたし、もうリアちゃんにとっては危ないことはないと思うから」

「えへへ。うん、わたしもまだまだ泳いでみたいかも」

 だってまだ海に来て二時間も経ってないんだもん。

 せっかく来たんだから遊び倒さないとね。

 それにせっかくなら一人でも泳げるようになりたいんだ。

 よいしょっと立ち上がって、お尻についた砂を手で払い落して。

 まだまだ遊ぶためにわたしはみんなと一緒にまた海へと走り出したのでした。
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