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第2話 レインコートに雨宿り
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レインコートは両手を上げ、大声を出した。
「ニャニャーッ」
そしてうんうんと強く頷いた。
「勿論ニャ!」
「ワタシの売りもの何でも買えちゃうのニャ」
ミルフィは胸を撫で下ろした。なるほど、ミルフィを追っていたやつらはこれを狙っていたのだろう。ヴァルダスはやっと納得した。ミルフィに心を読める力があったなら、また怒ったに違いない。
ミルフィはそのようなヴァルダスの頭のなかもつゆ知らず荷車の後ろに回り、これとあれ、あとは…と何かを選んでいる。そしてそれらを抱えてレインコートの傍に戻り、彼女にしては大きい革袋を最後に指差した。
「あれもください」
「分かったニャ」
金の欠片からやっと顔を上げて、レインコートは革袋にミルフィが選んだものを器用にひょいひょいと入れた。そして言った。
「ミルフィ、他のひとにはこれを見せたら駄目ニャ」
残っていた金の欠片を元の小袋に入れて、ミルフィに持たせるとレインコートは両手でミルフィの手のひらごと包んで、ぎゅうと握った。ヴァルダスも続ける。
「同感だ」
「気を付けるのだぞ」
ミルフィはふたりの真剣な様子に、しっかりと頷いた。それからレインコートは、あっ、と言ってミルフィから手を離すと、荷車からがさごそと何かを取り出して差し出した。それは猫の頭をかたどった、桃色のキャンディであった。
「オマケなのニャ」
ミルフィの顔が明るくなった。
「わあ、ありがとうございます」
「レインコートさん」
キャンディを手渡しながら、
「ワタシのことは、レインで良いニャ」
と言った。
レインコートと飴。だからアメネコなのか。愛称の由来に気付き、ミルフィは感心した。
荷車の音が聞こえなくなってから、ヴァルダスが訊ねた。
「また大きい荷物になったな」
「何を買ったのだ」
両手で抱えるように持っていたそれから目を上げて、ミルフィは笑う。
「色々なものですよ」
その袋はミルフィの顎を隠すまでのおおきさであったので、ヴァルダスはそれをミルフィの両腕から持ち上げるように引き抜くと、自分の斜め掛けの鞄の上に乗せた。ミルフィは恐縮し、軽くなった腕を自分の目の前で振った。
「駄目ですよ、重いですよ」
「そうでもない」
ヴァルダスはつっけんどんに返した。実際それは彼にとって軽かったし、おおきくもなかった。
「ありがとうございます」
ミルフィはちいさく照れたように言った。
しばらく進んだところでヴァルダスが少し早足になったので、ミルフィは慌てて小走りになった。
「少し急ぐ」
「降り出すぞ」
ミルフィは見上げたが、そこには青い空が広がっているだけだ。不思議に思いながらも、分かりました、とミルフィはヴァルダスの後に付いた。
それから直ぐに、ごろごろ、と頭上から響いて来た。先ほどはなかった濃い灰色の大きな雲が流れている。あっと思った瞬間、ひとつぶ、雨の滴がミルフィの鼻に当たった。
「間に合わなかったか」
「走るぞ」
はい、と答えてミルフィはヴァルダスと一緒に駆け出した。雨粒は徐々に強く、激しくなって、ブーツがびちゃびちゃ、と音を立てた。ミルフィは顔を上げていられなかったので、またヴァルダスの尾を見ながら走った。
「こっちだ」
ヴァルダスの声に何とか顔を上げると、そこにはちいさな洞窟がぽっかりと口を開けていた。
「ニャニャーッ」
そしてうんうんと強く頷いた。
「勿論ニャ!」
「ワタシの売りもの何でも買えちゃうのニャ」
ミルフィは胸を撫で下ろした。なるほど、ミルフィを追っていたやつらはこれを狙っていたのだろう。ヴァルダスはやっと納得した。ミルフィに心を読める力があったなら、また怒ったに違いない。
ミルフィはそのようなヴァルダスの頭のなかもつゆ知らず荷車の後ろに回り、これとあれ、あとは…と何かを選んでいる。そしてそれらを抱えてレインコートの傍に戻り、彼女にしては大きい革袋を最後に指差した。
「あれもください」
「分かったニャ」
金の欠片からやっと顔を上げて、レインコートは革袋にミルフィが選んだものを器用にひょいひょいと入れた。そして言った。
「ミルフィ、他のひとにはこれを見せたら駄目ニャ」
残っていた金の欠片を元の小袋に入れて、ミルフィに持たせるとレインコートは両手でミルフィの手のひらごと包んで、ぎゅうと握った。ヴァルダスも続ける。
「同感だ」
「気を付けるのだぞ」
ミルフィはふたりの真剣な様子に、しっかりと頷いた。それからレインコートは、あっ、と言ってミルフィから手を離すと、荷車からがさごそと何かを取り出して差し出した。それは猫の頭をかたどった、桃色のキャンディであった。
「オマケなのニャ」
ミルフィの顔が明るくなった。
「わあ、ありがとうございます」
「レインコートさん」
キャンディを手渡しながら、
「ワタシのことは、レインで良いニャ」
と言った。
レインコートと飴。だからアメネコなのか。愛称の由来に気付き、ミルフィは感心した。
荷車の音が聞こえなくなってから、ヴァルダスが訊ねた。
「また大きい荷物になったな」
「何を買ったのだ」
両手で抱えるように持っていたそれから目を上げて、ミルフィは笑う。
「色々なものですよ」
その袋はミルフィの顎を隠すまでのおおきさであったので、ヴァルダスはそれをミルフィの両腕から持ち上げるように引き抜くと、自分の斜め掛けの鞄の上に乗せた。ミルフィは恐縮し、軽くなった腕を自分の目の前で振った。
「駄目ですよ、重いですよ」
「そうでもない」
ヴァルダスはつっけんどんに返した。実際それは彼にとって軽かったし、おおきくもなかった。
「ありがとうございます」
ミルフィはちいさく照れたように言った。
しばらく進んだところでヴァルダスが少し早足になったので、ミルフィは慌てて小走りになった。
「少し急ぐ」
「降り出すぞ」
ミルフィは見上げたが、そこには青い空が広がっているだけだ。不思議に思いながらも、分かりました、とミルフィはヴァルダスの後に付いた。
それから直ぐに、ごろごろ、と頭上から響いて来た。先ほどはなかった濃い灰色の大きな雲が流れている。あっと思った瞬間、ひとつぶ、雨の滴がミルフィの鼻に当たった。
「間に合わなかったか」
「走るぞ」
はい、と答えてミルフィはヴァルダスと一緒に駆け出した。雨粒は徐々に強く、激しくなって、ブーツがびちゃびちゃ、と音を立てた。ミルフィは顔を上げていられなかったので、またヴァルダスの尾を見ながら走った。
「こっちだ」
ヴァルダスの声に何とか顔を上げると、そこにはちいさな洞窟がぽっかりと口を開けていた。
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