怖い話集 ホラー

海

ある日、夏の夕暮れ時、私はひとりで海辺を散歩していました。海は穏やかで、波がささやく音が心地良く響いていました。

突然、私の足元から何かが触れてきました。振り返ると、小さな手が海から伸びているのが見えました。驚いて後ずさりすると、手は再び海へと引っ込んでしまいました。

好奇心がわき、私は手が現れた場所に近づきました。再び手が現れ、今度は私の手をつかんで引っ張ってきました。戸惑いながらも、私は手に引かれるままに海へと足を踏み入れました。

すると、一瞬にして私は闇に包まれました。周りには何も見えません。ただ、海の音だけが耳に響いてきます。

恐怖が広がる中、突然目の前に不気味な声が響きました。「私は海の主です。あなたが私の領域に踏み込んだことを後悔させてやろう。」

声の主は語り続けました。「私は長い間、この海で人々をおびえさせてきた。彼らの恐怖心を餌に生きてきたのだ。そして今、あなたが私の力に引っかかったのです。」

私は恐怖で声も出せず、ただただ立ち尽くしていました。闇の中で、何かが私に触れる感触がありました。それは寒さと共に徐々に強くなっていきます。

私の体は次第に冷たくなり、力が抜けていきました。恐怖に打ちのめされ、私は闇の中で消え去ってしまいました。

その日から、私は二度と戻ることのできない闇の海に取り込まれてしまったのです。