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1章
1-12 うん、きみを鬼にはさせないよ2
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「ボクは、勇者だ。」
「……ああ」
「ボクは、小さな村で育った。あれは10年前くらいかな。その村は勇者をかくまうための村で、ボク以外は厄災教に焼かれて死んだ。ボクは卑怯にもみんなを捨てて生き残った。それが罪。」
ヒカリの言葉は、どこか他人事みたいだった。
まるで、感情を置き去りにして、長いあいだ何度も繰り返してきた台詞みたいに。
「……それを償うために、ボクはひとり厄災に立ち向かって、死ぬ」
最初、何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
でも、確かに聞こえた。“死ぬ”って。
胸の奥に、冷たいものがじわりと広がる。
「……死ぬって、なんだよ、それ」
思わず問い返していた。
まさか、冗談のつもりじゃないことはすぐにわかった。ヒカリの目が、本気だった。
「ボクが、生き残ったことが罪なんだ。あのとき、逃げられなかった人たちの分まで――」
「いや、待てよ……」
小さく、息を吐く。混乱してる。
ヒカリが何を背負ってきたのか、少しだけわかった気がする。でも、それでも。
「それって……おかしいだろ」
声が少し強くなる。
自分でも、感情が少しずつ高まってるのがわかった。
「お前、その時……何歳だったんだよ」
「……六歳くらい、かな」
「六歳……!? そんなの……」
言葉が詰まる。
喉の奥が熱い。何かがこみ上げてくる。
ヒカリはずっと、そんな罪を抱えて生きてきたのか。
それがあまりに理不尽で――
「お前が逃げたこと、責めるやつなんか、いるわけねぇだろ……!」
思わず声が荒くなった。
気づけば、目の前に立つ彼女の胸倉を掴んでいた。
「逃げて、生き延びた。それだけの子供に、誰が“罪”なんて押しつけられるんだよ……!」
怒りだった。
でも、ただの怒りじゃない。
悲しみと、悔しさと、どうしようもない無力感が混ざって、言葉にしきれない感情が渦巻いていた。
「俺には、その村の人たちのこと、わかんねぇよ。でもな……でも……」
拳を震わせながら、叫ぶ。
「そいつらが、お前に“死んで償え”なんて思うわけねぇだろ!!!!!」
「俺はな、死ぬ気なんてさらさらない。けど自分の命で大切な人が助かったら、恨んだりなんてしない。」
思い浮かぶのは、シズク、ニモツモチ家の面々、領民、旅で出会った人たち。
「俺の分まで、幸せになってくれ。そう思うはずだ。きっと村の人たちだって、そうだったんじゃないのか?」
お前を鬼になんてさせない。ただの人間なんだ。人間として、仲間と協力して、厄災に挑むんだ。楽しいことばかりじゃない。つらいことがあるかもしれない。それでも勇者は、仲間といなきゃいけないんだ。
ヒカリは俺の手を握った。押し返すでもなく、拒むでもなく、ただ優しく、静かに。
俺の手は、不思議と力を失って、そのまま離れていった。
「もう、決めたことだ。今日は楽しかったよ。」
「じゃあね」
彼女は背を向け、歩き出した。こちらを振り返らず、手を振った。
──その時だった。
黒煙に場が包まれる。
「モヴ!!!!」
「ヒカリ!!!!!」
しまった。襲撃だ。俺としたことが、襲撃を受けるとは。
十中八九、厄災教だ。狙いは勇者の身柄だろう。
万が一にも、攫おうとしているのは勇者。普通にやれば煙幕があってもヒカリが勝つ。だが、奴らがアレを持っていたら、話は別だ。
「ヒカリ、大丈夫か!?!?!?」
返事が、かえって来ない。
黒煙が晴れたとき、あたりには人影がまったくなかった。
最悪のパターンだ。
こういうときは急がばまわれ。
対策パーティを立ち上げる。
俺は無属性の連絡魔法【コール】を起動した。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
お気に入りやしおり、感想など、とても励みになっています。
引き続きお楽しみ下さい!
「……ああ」
「ボクは、小さな村で育った。あれは10年前くらいかな。その村は勇者をかくまうための村で、ボク以外は厄災教に焼かれて死んだ。ボクは卑怯にもみんなを捨てて生き残った。それが罪。」
ヒカリの言葉は、どこか他人事みたいだった。
まるで、感情を置き去りにして、長いあいだ何度も繰り返してきた台詞みたいに。
「……それを償うために、ボクはひとり厄災に立ち向かって、死ぬ」
最初、何を言われたのか、すぐには理解できなかった。
でも、確かに聞こえた。“死ぬ”って。
胸の奥に、冷たいものがじわりと広がる。
「……死ぬって、なんだよ、それ」
思わず問い返していた。
まさか、冗談のつもりじゃないことはすぐにわかった。ヒカリの目が、本気だった。
「ボクが、生き残ったことが罪なんだ。あのとき、逃げられなかった人たちの分まで――」
「いや、待てよ……」
小さく、息を吐く。混乱してる。
ヒカリが何を背負ってきたのか、少しだけわかった気がする。でも、それでも。
「それって……おかしいだろ」
声が少し強くなる。
自分でも、感情が少しずつ高まってるのがわかった。
「お前、その時……何歳だったんだよ」
「……六歳くらい、かな」
「六歳……!? そんなの……」
言葉が詰まる。
喉の奥が熱い。何かがこみ上げてくる。
ヒカリはずっと、そんな罪を抱えて生きてきたのか。
それがあまりに理不尽で――
「お前が逃げたこと、責めるやつなんか、いるわけねぇだろ……!」
思わず声が荒くなった。
気づけば、目の前に立つ彼女の胸倉を掴んでいた。
「逃げて、生き延びた。それだけの子供に、誰が“罪”なんて押しつけられるんだよ……!」
怒りだった。
でも、ただの怒りじゃない。
悲しみと、悔しさと、どうしようもない無力感が混ざって、言葉にしきれない感情が渦巻いていた。
「俺には、その村の人たちのこと、わかんねぇよ。でもな……でも……」
拳を震わせながら、叫ぶ。
「そいつらが、お前に“死んで償え”なんて思うわけねぇだろ!!!!!」
「俺はな、死ぬ気なんてさらさらない。けど自分の命で大切な人が助かったら、恨んだりなんてしない。」
思い浮かぶのは、シズク、ニモツモチ家の面々、領民、旅で出会った人たち。
「俺の分まで、幸せになってくれ。そう思うはずだ。きっと村の人たちだって、そうだったんじゃないのか?」
お前を鬼になんてさせない。ただの人間なんだ。人間として、仲間と協力して、厄災に挑むんだ。楽しいことばかりじゃない。つらいことがあるかもしれない。それでも勇者は、仲間といなきゃいけないんだ。
ヒカリは俺の手を握った。押し返すでもなく、拒むでもなく、ただ優しく、静かに。
俺の手は、不思議と力を失って、そのまま離れていった。
「もう、決めたことだ。今日は楽しかったよ。」
「じゃあね」
彼女は背を向け、歩き出した。こちらを振り返らず、手を振った。
──その時だった。
黒煙に場が包まれる。
「モヴ!!!!」
「ヒカリ!!!!!」
しまった。襲撃だ。俺としたことが、襲撃を受けるとは。
十中八九、厄災教だ。狙いは勇者の身柄だろう。
万が一にも、攫おうとしているのは勇者。普通にやれば煙幕があってもヒカリが勝つ。だが、奴らがアレを持っていたら、話は別だ。
「ヒカリ、大丈夫か!?!?!?」
返事が、かえって来ない。
黒煙が晴れたとき、あたりには人影がまったくなかった。
最悪のパターンだ。
こういうときは急がばまわれ。
対策パーティを立ち上げる。
俺は無属性の連絡魔法【コール】を起動した。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
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引き続きお楽しみ下さい!
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