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2章
2-4 はい、格の違いです。
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放課後俺たちは、模擬戦をすることとなった。
この学園では、生徒同士の模擬戦は珍しくない。
むしろ、勉強熱心だと褒められるくらいだ。
勇者ライトは、木刀を――まるで聖剣のごとく、まばゆく光らせた。
ライブのステージにでも上がれば、観客を魅了すること間違いなし。
あんな木刀パフォーマンス、重宝されるだろう。
右手に剣。左手には小盾。
その構えは無駄がなく、美しい。まっすぐこちらを据える目には、迷いがない。
対するは、モブたる俺――モヴ=ニモツモチ。
アンチマジックポーションを投与され、ヒカリは依然として不調のまま。
そんな状況で、出てくるのは当然、負けても誰も困らない俺の出番だ。
「じゃあ、いくよ」
ライトの声と同時に、視界が揺れた。
「っく――!」
速い。そして、重い。
片手とは思えない剣圧。
全身にのしかかる一撃を、両手でなんとか受け止める。
木刀越しに伝わる衝撃が、骨にまで響いた。
「へえ」
感嘆とともに笑みを浮かべるライト。
どうやら一応、実力は認めてくれたようだ。――でも、攻撃の手は一向に止まらない。
緩めてくれても、いいんだぜ……!?
けれど、そんな情けは一切ない。
矢継ぎ早に繰り出される連撃。
半端な攻撃はこちらの木刀をすり抜け、小盾で的確に弾かれる。
彼の中では、明確に「攻め」と「守り」が左右に分かれている。
無駄がなく、機能的。戦闘スタイルとして完成されている。
脳で追いつくのは早々に諦めた。
俺は直感に切り替える。
反射、経験、身体が覚えている動き――それらの集合知に委ねる。
……もちろん、適当にやってるわけじゃない。
経験に裏打ちされた「勘」だ。
それで今まで、どんな敵とも渡り合ってきた。だけど――
なぜだ。なぜ、こうも差がある?
そうだ。
そもそも――基礎能力の差が、開きすぎている!!
彼のレベルはいくつなんだ……?
俺はカンストの99だ。スキルも、すべてSまで育て上げた。
それなのに――負けている。
明確に、ステータスで、押し負けている。
これがモブというやつの宿命か。
これが、才能ある者の世界か。
「才ある者は、何事にも勝る」――その言葉が脳裏をよぎる。
レベルが並べば、戦いは熾烈になる。
けれど、才がある者が、俺よりも高みにいたら――
追いつけるわけがない。
俺の強さは、努力と工夫の積み重ね。だが、それはまやかしだ。
真の強者とは似て非なる、偽りの姿だ。
そのとき――
「あっ」
ライトの剣が、俺の木刀を真上にすくい上げた。
軽やかで、しかし力強い一撃。
武器が弾け飛ぶ。
思わず目を見張った。予想外すぎる。
こんな序盤で、ここまで圧倒されるなんて。
だって俺、カンストだぜ!?
腕が、スッと垂れた。
役目を終えたかのように、だらりとぶら下がる。
指先に、力が入らない。
「これで僕を、勇者と認めてくれるかな?」
俺はただ、力なくうなずいた。
うなずくことしかできなかった。
こんなこと、わかっていたはずだ。
知っていたはずだった。
それがあまりにもはやく、訪れたに過ぎない。
俺にとって99は、努力の象徴であった。
誇りであった。
それでも今は、ただその数字が恨めしい。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
お気に入りやしおり、感想など、とても励みになっています。
引き続きお楽しみ下さい!
この学園では、生徒同士の模擬戦は珍しくない。
むしろ、勉強熱心だと褒められるくらいだ。
勇者ライトは、木刀を――まるで聖剣のごとく、まばゆく光らせた。
ライブのステージにでも上がれば、観客を魅了すること間違いなし。
あんな木刀パフォーマンス、重宝されるだろう。
右手に剣。左手には小盾。
その構えは無駄がなく、美しい。まっすぐこちらを据える目には、迷いがない。
対するは、モブたる俺――モヴ=ニモツモチ。
アンチマジックポーションを投与され、ヒカリは依然として不調のまま。
そんな状況で、出てくるのは当然、負けても誰も困らない俺の出番だ。
「じゃあ、いくよ」
ライトの声と同時に、視界が揺れた。
「っく――!」
速い。そして、重い。
片手とは思えない剣圧。
全身にのしかかる一撃を、両手でなんとか受け止める。
木刀越しに伝わる衝撃が、骨にまで響いた。
「へえ」
感嘆とともに笑みを浮かべるライト。
どうやら一応、実力は認めてくれたようだ。――でも、攻撃の手は一向に止まらない。
緩めてくれても、いいんだぜ……!?
けれど、そんな情けは一切ない。
矢継ぎ早に繰り出される連撃。
半端な攻撃はこちらの木刀をすり抜け、小盾で的確に弾かれる。
彼の中では、明確に「攻め」と「守り」が左右に分かれている。
無駄がなく、機能的。戦闘スタイルとして完成されている。
脳で追いつくのは早々に諦めた。
俺は直感に切り替える。
反射、経験、身体が覚えている動き――それらの集合知に委ねる。
……もちろん、適当にやってるわけじゃない。
経験に裏打ちされた「勘」だ。
それで今まで、どんな敵とも渡り合ってきた。だけど――
なぜだ。なぜ、こうも差がある?
そうだ。
そもそも――基礎能力の差が、開きすぎている!!
彼のレベルはいくつなんだ……?
俺はカンストの99だ。スキルも、すべてSまで育て上げた。
それなのに――負けている。
明確に、ステータスで、押し負けている。
これがモブというやつの宿命か。
これが、才能ある者の世界か。
「才ある者は、何事にも勝る」――その言葉が脳裏をよぎる。
レベルが並べば、戦いは熾烈になる。
けれど、才がある者が、俺よりも高みにいたら――
追いつけるわけがない。
俺の強さは、努力と工夫の積み重ね。だが、それはまやかしだ。
真の強者とは似て非なる、偽りの姿だ。
そのとき――
「あっ」
ライトの剣が、俺の木刀を真上にすくい上げた。
軽やかで、しかし力強い一撃。
武器が弾け飛ぶ。
思わず目を見張った。予想外すぎる。
こんな序盤で、ここまで圧倒されるなんて。
だって俺、カンストだぜ!?
腕が、スッと垂れた。
役目を終えたかのように、だらりとぶら下がる。
指先に、力が入らない。
「これで僕を、勇者と認めてくれるかな?」
俺はただ、力なくうなずいた。
うなずくことしかできなかった。
こんなこと、わかっていたはずだ。
知っていたはずだった。
それがあまりにもはやく、訪れたに過ぎない。
俺にとって99は、努力の象徴であった。
誇りであった。
それでも今は、ただその数字が恨めしい。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
お気に入りやしおり、感想など、とても励みになっています。
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