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争いは更なる争いを呼ぶ
皇帝の指示
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周りには民間人はいないようで、バルバロッサ陛下と兵士達だけがそこにいます。何やら指示しているようですね、ちょっと聞いてみましょう。
「レジスタンスは他国の支援を受けている。捕虜から情報を聞き出すことはできなかったが、このまま調子づかせるわけにはいかん」
あー、まあそうですね。カーボ共和国が支援してるって、こんな遠くの国にも噂が流れてくるぐらいですから、皇帝陛下が知らないわけないですよね。すると、兵士のリーダー的な人が口を開きます。
「奴等が攻めてきたのは好都合です。この場で全員捕らえて見せましょう」
おおっ、やる気満々ですね。あくまで国の兵隊と考えれば、この人は国のために頑張る立派な隊長さんといえるでしょう。こちらの立場からすると困った相手ですが。
ですが、バルバロッサ陛下はこの隊長さんの言葉を手で制し、言いました。
「いや、捕らえる必要はない。恐らく狙いは捕虜の奪還であろう。好きにさせろ」
なんと!?
情報が引き出せなかったから捕らえておく必要もないということでしょうか。だったら普通に返せばいいのに。
「お前達は鎧を脱いで皇軍であることを隠すのだ」
ん? 隠密行動ですか。レジスタンスにスパイでも送り込むつもりでしょうか。カリオストロさんがそれに気づかないとは思えませんけど。
「そして、町に火をつけて回れ」
えええええっ!?
自分の町に火をつけるんですか? 正気ですかこの人!
◇◆◇
「レジスタンスの仕業に見せかけて悪者にする気ね~」
恋茄子が冷静に分析しています。そんなことのために人が住んでいる町に火を放つなんて、自分の民がどうなってもいいんですか?
◇◆◇
「そんなことをすれば、逃げ遅れた住民に犠牲者が出てしまいます!」
驚いた隊長さんが反論します。ですよね。良かった、この人は住民の味方でした。ですが、バルバロッサは笑って言いました。
「お前はさっきレジスタンスをこの場で全員捕らえると言ったではないか。そんなことをすれば激しい戦闘が発生し町は半壊、大量の犠牲者が出るぞ。何が違うというのだ?」
なんてことを言うんですか、全然違いますよ! 数の問題じゃないでしょう。
「心配するな、半数は火をつけて回り、もう半数は消火活動を行え。そしてレジスタンスが火をつけたと言いふらすのだ。被害者には国から見舞金も出そう。住民の命はお前達の消火活動にかかっている。頑張れば犠牲者を出さずに任務を達成できるぞ、良かったな!」
良かったな! じゃないですよ、こんなの間違ってます!
◇◆◇
「ここで怒っても仕方ないわよ~、それよりこれをギルドのみんなに教えた方がいいわ~」
うっ、そうですね。ここで怒っていても何の意味もありません。バルバロッサに抗議できるわけでもないのですから、私にできることをやりましょう。
これをクレメンスさんが知ったらなんと言うでしょうか。バルバロッサの策を肯定されそうな気がします。陽動のために騒乱を起こすのもあまり変わらないでしょうし……はぁ。
◇◆◇
「なるほど、それなら捕虜を助けるチームはレジスタンスと合流して事情を説明するのがいいな。奴隷商人の方は計画通りに」
サラディンさんは話を聞くと、顔色一つ変えずにミラさんへ連絡しました。やっぱりこういうのはよくあることなのでしょうか。ちょっと気が重くなります。
そしてミラさん達は抵抗の少ない町を警戒しながら進むレジスタンスに近づくと、事情を話しました。
「皇帝が町に火を放ってあなた達のせいにしようとしてる。レジスタンスとして消火活動に参加して、国の兵士が火を放ったと町の人達に言って回るといいわ。捕虜は私達が助け出す」
ミラさんの話を聞いたレジスタンスの人達は驚いた顔をしますが、すぐに頷き合うと町中に散っていきました。ミラさん達はそのまま牢屋に向かいます。
「なるべく我々の姿は見られないようにした方がいいすよ、計画の邪魔をしていることに皇帝が気付くでしょうから」
コタロウさんの忠告に従い、牢屋チームは人気のない道を静かに進んでいきました。ヨハンさんが臭いで危険を察知しますし、このメンバーなら問題はないでしょう。
さて、奴隷商人の方です。こちらが我々の本来の目的ですからね。
「大規模な戦闘は発生しないようだ。町に火の手が上がったら騒ぎに乗じて動き出そう」
サラディンさんの言葉にラウさんが頷きつつ、ふくれっ面で答えます。
「はーい。自分の町に火をつけるなんて、ほんとに悪い人間達だ!」
そうですね。バルバロッサにはいつか本当の意味で痛い目を見てほしいものです。いや、一般人を巻き込んで目的を果たそうとしているのはどこの国も同じでしたね。みんな〝悪い人間〟です。何も考えてないヨハンさんが勇者と認められるのも分かります。
そうこうしているうちに、町のいたるところから火の手が上がりました。人々は悲鳴を上げて逃げ回り、消火活動を行う者達がレジスタンスが火をつけた、いいや国の兵士が火をつけたと騒ぎながら水をかけたり延焼を防ぐために建物を壊したりしています。町は一気に地獄絵図の様相を呈し、もはや武器を使った戦闘をしている者は誰もいなくなりました。
「いくぞ!」
ここで、サラディンさんの号令と共に冒険者達が奴隷商人の館へと潜入を開始したのでした。
「レジスタンスは他国の支援を受けている。捕虜から情報を聞き出すことはできなかったが、このまま調子づかせるわけにはいかん」
あー、まあそうですね。カーボ共和国が支援してるって、こんな遠くの国にも噂が流れてくるぐらいですから、皇帝陛下が知らないわけないですよね。すると、兵士のリーダー的な人が口を開きます。
「奴等が攻めてきたのは好都合です。この場で全員捕らえて見せましょう」
おおっ、やる気満々ですね。あくまで国の兵隊と考えれば、この人は国のために頑張る立派な隊長さんといえるでしょう。こちらの立場からすると困った相手ですが。
ですが、バルバロッサ陛下はこの隊長さんの言葉を手で制し、言いました。
「いや、捕らえる必要はない。恐らく狙いは捕虜の奪還であろう。好きにさせろ」
なんと!?
情報が引き出せなかったから捕らえておく必要もないということでしょうか。だったら普通に返せばいいのに。
「お前達は鎧を脱いで皇軍であることを隠すのだ」
ん? 隠密行動ですか。レジスタンスにスパイでも送り込むつもりでしょうか。カリオストロさんがそれに気づかないとは思えませんけど。
「そして、町に火をつけて回れ」
えええええっ!?
自分の町に火をつけるんですか? 正気ですかこの人!
◇◆◇
「レジスタンスの仕業に見せかけて悪者にする気ね~」
恋茄子が冷静に分析しています。そんなことのために人が住んでいる町に火を放つなんて、自分の民がどうなってもいいんですか?
◇◆◇
「そんなことをすれば、逃げ遅れた住民に犠牲者が出てしまいます!」
驚いた隊長さんが反論します。ですよね。良かった、この人は住民の味方でした。ですが、バルバロッサは笑って言いました。
「お前はさっきレジスタンスをこの場で全員捕らえると言ったではないか。そんなことをすれば激しい戦闘が発生し町は半壊、大量の犠牲者が出るぞ。何が違うというのだ?」
なんてことを言うんですか、全然違いますよ! 数の問題じゃないでしょう。
「心配するな、半数は火をつけて回り、もう半数は消火活動を行え。そしてレジスタンスが火をつけたと言いふらすのだ。被害者には国から見舞金も出そう。住民の命はお前達の消火活動にかかっている。頑張れば犠牲者を出さずに任務を達成できるぞ、良かったな!」
良かったな! じゃないですよ、こんなの間違ってます!
◇◆◇
「ここで怒っても仕方ないわよ~、それよりこれをギルドのみんなに教えた方がいいわ~」
うっ、そうですね。ここで怒っていても何の意味もありません。バルバロッサに抗議できるわけでもないのですから、私にできることをやりましょう。
これをクレメンスさんが知ったらなんと言うでしょうか。バルバロッサの策を肯定されそうな気がします。陽動のために騒乱を起こすのもあまり変わらないでしょうし……はぁ。
◇◆◇
「なるほど、それなら捕虜を助けるチームはレジスタンスと合流して事情を説明するのがいいな。奴隷商人の方は計画通りに」
サラディンさんは話を聞くと、顔色一つ変えずにミラさんへ連絡しました。やっぱりこういうのはよくあることなのでしょうか。ちょっと気が重くなります。
そしてミラさん達は抵抗の少ない町を警戒しながら進むレジスタンスに近づくと、事情を話しました。
「皇帝が町に火を放ってあなた達のせいにしようとしてる。レジスタンスとして消火活動に参加して、国の兵士が火を放ったと町の人達に言って回るといいわ。捕虜は私達が助け出す」
ミラさんの話を聞いたレジスタンスの人達は驚いた顔をしますが、すぐに頷き合うと町中に散っていきました。ミラさん達はそのまま牢屋に向かいます。
「なるべく我々の姿は見られないようにした方がいいすよ、計画の邪魔をしていることに皇帝が気付くでしょうから」
コタロウさんの忠告に従い、牢屋チームは人気のない道を静かに進んでいきました。ヨハンさんが臭いで危険を察知しますし、このメンバーなら問題はないでしょう。
さて、奴隷商人の方です。こちらが我々の本来の目的ですからね。
「大規模な戦闘は発生しないようだ。町に火の手が上がったら騒ぎに乗じて動き出そう」
サラディンさんの言葉にラウさんが頷きつつ、ふくれっ面で答えます。
「はーい。自分の町に火をつけるなんて、ほんとに悪い人間達だ!」
そうですね。バルバロッサにはいつか本当の意味で痛い目を見てほしいものです。いや、一般人を巻き込んで目的を果たそうとしているのはどこの国も同じでしたね。みんな〝悪い人間〟です。何も考えてないヨハンさんが勇者と認められるのも分かります。
そうこうしているうちに、町のいたるところから火の手が上がりました。人々は悲鳴を上げて逃げ回り、消火活動を行う者達がレジスタンスが火をつけた、いいや国の兵士が火をつけたと騒ぎながら水をかけたり延焼を防ぐために建物を壊したりしています。町は一気に地獄絵図の様相を呈し、もはや武器を使った戦闘をしている者は誰もいなくなりました。
「いくぞ!」
ここで、サラディンさんの号令と共に冒険者達が奴隷商人の館へと潜入を開始したのでした。
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