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八岐大蛇討伐隊
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玉藻もアリスも無事だった。あとはちょっかいをかけてきた八岐大蛇をどうするかだが、ひとまずこの場で天照達と合流しよう。私が人間の姿をとると玉藻は落ち着いた様子で近づいてきた。
「天照を待とう。大蛇は川の中から首を出していた。マレビトには幽世の扉を開くことはできない以上、ここと奴の居場所は確実に繋がっている」
私の提案に、用事のある星熊も含めて一同が賛同する。今更だが星熊はよくこんなところにまで付き合ってきているものだ。明蓮が先ほどから川の方を気にしているが、奴の目的などが気になるのだろうか? クラスメイトと険悪になったままだからな、その元凶でもある大蛇に対して思うところはあるだろう。
「明蓮、君は大蛇に迷惑をかけられた当事者だ。奴をどうしたい?」
大蛇は私に何かと嫌がらせをしてきているが、直接被害を受けたのは明蓮だ。彼女の意向を確認せずに物事を進めるべきではないだろう。
「え……私? そうね……」
明蓮が振り返る。その手にはどこから出したのか、一振りの剣が握られていた。妙に古い、太古の遺跡から出土するような形をした剣だが、その刃は光り輝き、神気があふれ出すように立ち上っている。こんなものを鞄の中に持っていたら気付かないはずがないのだが。
「あれ? 何これ」
明蓮は自分の手に握られている剣を不思議そうに見る。どうやら無意識のうちに持っていたようだが……?
「危ねえ!」
星熊の声が耳に届いた時には、剣が私の腹部を貫いていた。
速すぎて反応できなかったというわけではない。明蓮が手に持った剣を私に突き刺すという行動を、私の頭が事実として受け入れたくなかったのだ。
だから、されるがままに彼女の『草薙の剣』を己の腹に刺したのだった。
「明蓮さん!? 何してるの!?」
オリンピックの悲鳴が耳に届く。目の前にいる明蓮は、驚愕の表情を浮かべて手を剣から離し、後ずさった。
「え……な、なにこれ、どうなってるの?」
パニック状態に陥っているようだ。私は剣を腹に刺したことで状況が掴めたが、見ていたオリンピックや刺してしまった本人の動揺ははかり知れない。早く説明しなくては、と思うが神剣で傷つけられた身体はすぐには言うことを聞いてくれない。
「ちょっと待ってよ、なんで私……勝手に!」
明蓮が川に向かって歩いていく。不味い、早く何とかしないと……だが、私の心の焦りとは裏腹に身体はその場に膝をついて崩れ落ちていく。
その視界の端で明蓮が川に飛び込むのを見た後、意識が遠ざかっていった。
「お兄ちゃん!」
私の頬を軽く叩く感触がする。この声はアリスか。
「あれからどれぐらい時間が経った?」
目を開け、その場にいるであろう他の者達に尋ねる。
「河伯君! 大丈夫なの?」
オリンピックがのぞき込んできた。私は大丈夫だと示すために首を縦に振る。身体はだいぶ回復してきているようだ。
「明蓮が川に飛び込んでから五分ぐらいよ。天照が剣を抜いて怪我を治したわ」
玉藻が教えてくれた。まだそれほど時間は経っていないな、よかった。
「そうか。天照ありがとう」
「そんなにすぐ立つと危ないわよ。もうちょっと休んで体調を万全にしてから追いましょ」
さすがは天照、状況が分かっているようだ。私は立ち上がり、周りの様子を確認した。
「大変だったわねぇん」
ん?
「まったく、あの蛇め。人間に迷惑をかけおって」
何故かこの場に両面宿儺と稲荷がいる。私が怪訝な顔をすると、稲荷が笑顔を浮かべた。
「ふふん、友人が困っていたら助けに向かうものだろう?」
そうか。二柱はどうやってか状況を把握して、我々を助けに来てくれたのだ。ありがたい。
「それで、一体どうして明連さんがあんなことをしたの?」
未だ状況が掴めていないオリンピックの質問に、私が答えるよりも早く天照が口を開いた。
「河伯のお腹に刺さってたのは草薙の剣っていって、元々八岐大蛇の胴体から出てきた剣よ。たぶん明蓮はずっと前に幽世で草薙の剣を自分の身体に宿したんでしょうね。人の体内にあったら神でも存在に気付けないからね」
「つまり……八岐大蛇は初めから明蓮に宿っていた。明連は大蛇を身に降ろした巫だったのだ。それも無自覚のうちにな」
続けて私も説明をした。するとアリスが私の手を引き、聞いてきた。
「それで、これからどうするの?」
「無論、助けに行くさ。大蛇を倒し、明蓮を救い出す。守ると約束したからな」
アリスは腕を組み、フンと鼻を鳴らす。
「約束ねー……お兄ちゃんはほんとブレないねぇ。玉藻お姉ちゃんも協力しようね」
「す、するわよもちろん!」
なんだかよく分からないやり取りをしているが、皆で助けに行くということで納得しているようだ。
「五輪ちゃんはここで待っててね。さすがに人間が大蛇の巣に入るのはやめておいた方が良いわ」
「妾が安全な結界を張ってやろう。心配するな、八岐大蛇といえどこの面子を相手にしては何も出来ぬよ」
「大変なのは明蓮ちゃんを無事に助け出すことぐらいねぇん。頑張りましょっ!」
オリンピックはさすがに連れていけない。彼女もさすがに川の中までついてくるとは言えず、渋々と頷いた。
「うん、わかった……私はここで待ってるから、せめてこれを持っていって」
そう言って、彼女の武器であるハンドジャマーを渡してくる。彼女が持っていても気休めにしかならない武器だが、邪気を放つことができる道具はマレビトとの戦いで役立つこともあるだろう。私はそれを受け取って懐にしまった。
「あっしも行きますぜ!」
星熊は最後まで一緒に来てくれるようだ。戦力は多いほどいい、ありがたく協力をお願いした。
「さあ、行こう!」
こうして、神と妖怪合わせて七柱の大蛇討伐隊が斐伊川の中に飛び込んでいくのであった。
「天照を待とう。大蛇は川の中から首を出していた。マレビトには幽世の扉を開くことはできない以上、ここと奴の居場所は確実に繋がっている」
私の提案に、用事のある星熊も含めて一同が賛同する。今更だが星熊はよくこんなところにまで付き合ってきているものだ。明蓮が先ほどから川の方を気にしているが、奴の目的などが気になるのだろうか? クラスメイトと険悪になったままだからな、その元凶でもある大蛇に対して思うところはあるだろう。
「明蓮、君は大蛇に迷惑をかけられた当事者だ。奴をどうしたい?」
大蛇は私に何かと嫌がらせをしてきているが、直接被害を受けたのは明蓮だ。彼女の意向を確認せずに物事を進めるべきではないだろう。
「え……私? そうね……」
明蓮が振り返る。その手にはどこから出したのか、一振りの剣が握られていた。妙に古い、太古の遺跡から出土するような形をした剣だが、その刃は光り輝き、神気があふれ出すように立ち上っている。こんなものを鞄の中に持っていたら気付かないはずがないのだが。
「あれ? 何これ」
明蓮は自分の手に握られている剣を不思議そうに見る。どうやら無意識のうちに持っていたようだが……?
「危ねえ!」
星熊の声が耳に届いた時には、剣が私の腹部を貫いていた。
速すぎて反応できなかったというわけではない。明蓮が手に持った剣を私に突き刺すという行動を、私の頭が事実として受け入れたくなかったのだ。
だから、されるがままに彼女の『草薙の剣』を己の腹に刺したのだった。
「明蓮さん!? 何してるの!?」
オリンピックの悲鳴が耳に届く。目の前にいる明蓮は、驚愕の表情を浮かべて手を剣から離し、後ずさった。
「え……な、なにこれ、どうなってるの?」
パニック状態に陥っているようだ。私は剣を腹に刺したことで状況が掴めたが、見ていたオリンピックや刺してしまった本人の動揺ははかり知れない。早く説明しなくては、と思うが神剣で傷つけられた身体はすぐには言うことを聞いてくれない。
「ちょっと待ってよ、なんで私……勝手に!」
明蓮が川に向かって歩いていく。不味い、早く何とかしないと……だが、私の心の焦りとは裏腹に身体はその場に膝をついて崩れ落ちていく。
その視界の端で明蓮が川に飛び込むのを見た後、意識が遠ざかっていった。
「お兄ちゃん!」
私の頬を軽く叩く感触がする。この声はアリスか。
「あれからどれぐらい時間が経った?」
目を開け、その場にいるであろう他の者達に尋ねる。
「河伯君! 大丈夫なの?」
オリンピックがのぞき込んできた。私は大丈夫だと示すために首を縦に振る。身体はだいぶ回復してきているようだ。
「明蓮が川に飛び込んでから五分ぐらいよ。天照が剣を抜いて怪我を治したわ」
玉藻が教えてくれた。まだそれほど時間は経っていないな、よかった。
「そうか。天照ありがとう」
「そんなにすぐ立つと危ないわよ。もうちょっと休んで体調を万全にしてから追いましょ」
さすがは天照、状況が分かっているようだ。私は立ち上がり、周りの様子を確認した。
「大変だったわねぇん」
ん?
「まったく、あの蛇め。人間に迷惑をかけおって」
何故かこの場に両面宿儺と稲荷がいる。私が怪訝な顔をすると、稲荷が笑顔を浮かべた。
「ふふん、友人が困っていたら助けに向かうものだろう?」
そうか。二柱はどうやってか状況を把握して、我々を助けに来てくれたのだ。ありがたい。
「それで、一体どうして明連さんがあんなことをしたの?」
未だ状況が掴めていないオリンピックの質問に、私が答えるよりも早く天照が口を開いた。
「河伯のお腹に刺さってたのは草薙の剣っていって、元々八岐大蛇の胴体から出てきた剣よ。たぶん明蓮はずっと前に幽世で草薙の剣を自分の身体に宿したんでしょうね。人の体内にあったら神でも存在に気付けないからね」
「つまり……八岐大蛇は初めから明蓮に宿っていた。明連は大蛇を身に降ろした巫だったのだ。それも無自覚のうちにな」
続けて私も説明をした。するとアリスが私の手を引き、聞いてきた。
「それで、これからどうするの?」
「無論、助けに行くさ。大蛇を倒し、明蓮を救い出す。守ると約束したからな」
アリスは腕を組み、フンと鼻を鳴らす。
「約束ねー……お兄ちゃんはほんとブレないねぇ。玉藻お姉ちゃんも協力しようね」
「す、するわよもちろん!」
なんだかよく分からないやり取りをしているが、皆で助けに行くということで納得しているようだ。
「五輪ちゃんはここで待っててね。さすがに人間が大蛇の巣に入るのはやめておいた方が良いわ」
「妾が安全な結界を張ってやろう。心配するな、八岐大蛇といえどこの面子を相手にしては何も出来ぬよ」
「大変なのは明蓮ちゃんを無事に助け出すことぐらいねぇん。頑張りましょっ!」
オリンピックはさすがに連れていけない。彼女もさすがに川の中までついてくるとは言えず、渋々と頷いた。
「うん、わかった……私はここで待ってるから、せめてこれを持っていって」
そう言って、彼女の武器であるハンドジャマーを渡してくる。彼女が持っていても気休めにしかならない武器だが、邪気を放つことができる道具はマレビトとの戦いで役立つこともあるだろう。私はそれを受け取って懐にしまった。
「あっしも行きますぜ!」
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