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異世界で1日目が過ぎました。

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部屋にあるベッドは俺の家にある物よりも気持ちが良さそうだ。
部屋も家のリビングより広い。あの人超いい人だなぁ。
俺が感動していると後ろから声を掛けられる。最初に案内してくれた召使いのようだ。
「着替えをお持ちしました。元のお召し物は私共で洗っておきます。浴場へは入られますか?ご案内致しますが」
おお、風呂か。
「お願いします」
「では、こちらへ」
そう言われて、俺はついて行った。貴族の屋敷の浴場か...楽しみだな。

「こちらでございます」
暫く歩くと浴場らしき所に着いた。
なんで洋風のお屋敷の大浴場がスーパー銭湯みたいになってんだよ...
混浴までは期待していなかったけどな、これはおかしいだろ...
あの馬鹿神何考えてんだ?
まあ、そんな事を考えても仕方ない。さっさと入ろう。
「ごゆっくりして下さい。お召し物は私が回収しておきます」
俺は服を脱いで、籠に入れる。取り替えてくれるんだよな。スマホは新しい服のポケットに入れておこう。
俺は着替えと共に渡されたタオルを持って、浴室へと入る。
流石に富士山の絵は無かったが大きな絵がある。
「バルス!」
そこには某天空の城のような絵が描かれていた。
この世界には能力があるからありえない事でも無いかもしれない。
まあ、とりあえずシャワーを浴びよう。りんごジュースの感覚がまだ残ってる。ケツは入念に洗うとしよう。
そうして鏡を見る。なかなかに筋肉もあるし、顔も整ってんじゃねえか。前世だったら恨み言吐いてたな。
そう思いながら身体を洗う。

「いっい湯だっなー」
シャワーを浴びた後、俺は浴槽に入る。
めっちゃ気持ち良い。
近くで見ると凄い迫力だな。マジで城が飛ぶことあるんだろうか?
それにしてもスーパー銭湯を貸切にしたらこんな感じなのか。ちっこいのが騒がしいなとは思ってたけど、これはこれでちょっと寂しい。
十数分で俺は浴槽を出る。掛け湯はないようなので、シャワーを浴び、浴室を出た。案の定元々着ていた服は回収され、新しい服だけが残っていた。
俺は新しい服に着替える。パンツまで用意されてるよ...俺のパンツ回収されたんだな。
なんだか恥ずかしくなりながらも着替えて廊下に出る。
「では、お部屋まで案内致します」
俺は行きに来た道をついて行った。
部屋に着くと、
「寝間着は部屋にご用意しております。お食事はお運びしますのでお部屋でお待ち下さい」
と言われ俺は椅子に腰掛けた。
ベッドには寝間着が置いてある。めっちゃいい人だなやっぱ。
スマホを取り出して、海斗に連絡する。
『まあ、なるようになったよ』
『良かったじゃんd('∀'*)』
返信速いな。
『屋敷に泊めて貰える事になった』
『ウォンバー家は兵役に行く奴と帰って来た奴を屋敷でもてなす習慣があるんだよ。だから客室や大浴場があるんだ』 
『大浴場、スーパー銭湯だったけどな』
『あれは、神の啓示を受けた奴らの子孫で能力を持たない奴らが作ったんだ』
『能力を持たない?』
『まあ、その話は後々として銭湯にあった絵は気にならなかったか?』
『ラピ〇タ?』
『あれは、能力で城を飛ばして転戦し続けたこの世界の伝説の英雄ロック将軍を描いてるんだ。何百年も前って事になってるがな』
『英雄か』
『なんだ?お前も目指してみるか?( ^ω^)』
『いや無理だろ?3年しか居られないのに』
『そうでも無いぜ?お前の身体は英雄になれるようにしてある身体だからな』
『なるほどな。でも能力の使い方知らないんだが...』
『ああ、すまん忘れてたm(_ _)m』
...コイツ
『おい(^_^ꐦ)』
『明日教えるから許せ~』
『本当だろうな』
『神に誓って』
『お前だろうが!』
『じゃあどうしろってんだよ!』
『なんでキレんだよ!』
マジで馬鹿神だな。
『明日は特訓だからな。早く寝ろ』
『学校はどうすんだ?』
『風邪ってことで』
『そうかい』
まあ、前世ならともかく今はその方がありがたい。
ドアをノックする音がした。
「お食事をお持ちしました」
俺はスマホをポケットにしまって応答する。
「はい」
ドアを開けて召使いが入ってくる。
ステーキか。めっちゃ美味そうだ。デザートらしき物はメロンだろうか。早く食いてえ。
「食べ終わりましたら、お下げしますのでお呼び下さい」
召使いが去ったところで俺は食事に手をつける。
「いただきます」
ステーキを口に運ぶ。
「うまっ!」
そのステーキは想像を超えていた。俺の今まで食べたステーキでトップではないだろうか。それどころか食事の中でトップかも知れない。
俺は黙々とそのステーキを味わう。
筆舌に尽くし難いとは語彙力が無いことを誤魔化すためのもんだと思っていたがこの味こそその言葉に相応しい。
そして、名残惜しくも食べ切ってしまった。
だが、まだだ。
「デザートのメロンが残っている!」
思わず口に出てしまった。
俺はメロンを口に入れる。
「んっ!」
俺はほとんどメロンなんて食った事は無いから比較する対象がほとんどないと言える。
だが、前世でメロンを食いまくったって、これを超える物は無いんじゃないかという程に美味い。
俺は大満足だった。
「ごちそうさまでした」
作った人に感謝だ。
「もう下げて良いですよ」
ホントはまだ味わいたいが何も乗っていない皿では流石に何も味わう事は出来ない。
「では、お下げします」
俺は皿を目で追ってしまった。
召使いが出て行くと、俺は寝間着に着替える事にした。
海斗の言った通りにさっさと寝ようと思った。
まあまあ、疲れているしな。
寝間着に着替えてベッドに横になる。
2人ぐらい寝れそうな広いベッドだ。兵役に行く奴が誰かを連れ込むのに配慮しているんだろうか?
そんなのはどうでもいいか。俺はすぐに眠りに着いた。

そして、朝になった。外から呼ぶ声で起こされる。
「朝食をご用意しました」
俺はアイドルの如き早着替えで寝間着から着替え席に着く。
「はい」
そして、パンが運ばれてきた。きっとこれも美味いんだろう。
それにしてもこの人はずっと俺の世話なんだな。割り振られて居るのだろうか?
「今日は如何なさいますか?」
「今日はここを見て回る事にします」
そうすればどっか人のいないとこ見つけて訓練出来んだろ。
「案内致しましょうか?」
それだと特訓が出来なそうだ。
「いや、良いですよ。1人で回ります」
「畏まりました」
そう言って部屋を出て行った。
じゃあ、朝食を頂くとしようか。
「いただきます」
パンを口に入れて噛む。
「うめぇ...」
美味いのは予想通りだが味は予想を超えていた。
異世界の飯はこんなにも美味いのか。調理に向く能力者が居るのだろうか?出来ればシェフを呼んで褒め称えたい。
「ごちそうさまでした」
食べ終わり召使いに皿を下げて貰うと、俺は早速外に出た。

「おお!」
屋敷に連れて行かれた時にはあまり気にしていなかったが屋敷の前の大通りは市場だ。屋敷の横に行けば住宅がある。商人らしき人も多いな。
空を飛んで追いかけっこをする子供達や風を出してスカートをめくろうとする少年もいる。けしからんしっかり監視しなくては。
俺がけしからん少年を監視していると小さな子供達がこっちへ向かってきた。
「そこの兄ちゃん昨日捕まってただろ」
「マジでこの人悪いヤツ?」
「脱走したのか!」
ええ、見られてたのかよ...
「俺はなんもやってねぇぞ」
「ホントかよ。ウォンバー様に迷惑かけたら承知しないからな」
随分慕われてるな。まあ、当然か。あんなにいい人だもんな。
「ああ、勿論だ。俺は悪い事しないぞ」
「口で言うのは簡単だぞ!」
めんどくせぇ。
「人を信じない人間は立派になれねえぞー?」
「てめえ」
地面の石が浮き始めやがった。
「やっちゃえケン!」
子供達も煽り出す。ヤバっ。
「そんな事するとウォンバー様に迷惑がかかるぞ」
これは効くだろ。
「っ!分かったよ」
釣っていた糸が切れたように地面に石が落ちる。一安心だ。
「それでいいんだ。じゃあな」
そうして俺はその場を後にした。

暫く歩くと住宅が途切れて森が見える。何かを育てている訳ではなく自然の森のようだ。というか山か。
ここの中なら誰も来ないだろうと思い、辺りに人が居ないことを確認して森に入る。
道が見えなくなった所でスマホを取り出す。
『特訓の準備が出来た』
『了解。じゃあ教えるぞ。まずは右足から』
『おう』
『まず周りにパワーが漂っていると思ってパワーを自分の心臓に集めるようにしろ。そこには能器と呼ばれるパワーを自分の能力に変換する器官がある』
『おう』
『手でかき集めるんじゃなくて心臓が吸い込んでいるイメージだ』
手でかき集めていたため恥ずかしくなる。実は見えてんだろおい。
何か分からんが本当に溜まって来た気がする。
『そして吸い込み続けたまま心臓からホースを伸ばして右足にくっつける。これで完了だ。片足立ちでジャンプしてみろ。着地するまでそれをし続けろ。右足から意識を離すなよ』
俺は言われるがままに右足だけでジャンプした。
「うあぁぁぁぁぁぁ!」
俺の身体は片足立ちのまま、軽く5mは跳ねた。
そして地面に落ちる。意識をただ右足に向けた。
俺の落下で土が舞う。しかし、痛みが無かった。落ちた衝撃もあまり感じない。
スマホの画面を見る。
『どうだ?』
『やべぇな。これすげぇ!』
『次は同じようにして手に伸ばして石にデコピンでもしてみろ』
言われた通りにデコピンをすると石が簡単に砕け散った。
『すげぇよやっぱ!』
『そんだけじゃない。2つに分けて腕に伸ばして手を叩いて見ろ』 
俺が腕に集め手を叩くと、バーン!!!と音がした。
「耳があ!!」
『すげぇうるせえじゃんか!』
『ハハハすまんすまん(-人-)ちなみにこれは目に使っても透視は出来ないからな。あくまで今ある機能の強化だ』
『分かった』
『じゃあ特訓は終わりな。おつかれさん』
『ああ、ありがとな』
そして俺は早速両足に使って山を下った。速すぎてぶつからないように脳も強化した。片足の時より力が弱くなっているようにも感じる。集めたパワーを分けたせいだろう。数分かけて奥まで来たのに数秒で森から出てきてしまった。恐ろしい能力だ。
せっかくだし少しこの街を見よう。
そう思って俺は能力を解除し、ゆっくりと歩き出した。
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