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第三章 わだつみの娘と海の国の物語
8、金位の姫君は全力で疾駆する〔年齢一覧あり)
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海の国において山鳥の声を真似た指笛の招集は北方の山岳地帯出身の護衛隊員だけが使うものであった。
聞き慣れた音から発した相手はジェイドであると判断したグレイは火急の事態の発生を悟りその方角へと走る中、靴音のしない不思議な足音に気付いた。
切羽詰まった表情の少女が駆けてくる。
本来、貴族の令嬢が走るなどしたら━━特にこの少女がそんな真似をすれば周囲から過剰なまでに眉を顰められるのは想像に難くない。
それは誰よりも本人が理解しているはずで、その姿にグレイは余程の事かと緊張が走る。
案の定、少女はグレイの姿を見ると少しだけ安堵したように表情を緩めたが、すぐにまた険しい緊張した面持ちに戻った。
あの男が「王妃の過去の恋人だったら」という可能性もカリナはもちろん考えた。
しかし王妃のあの表情とあの笑顔。漆黒を纏う彼女は何かを警戒していたし、ジェイドがいつになく多弁であった。
「グレイ様っ、シーア様の所へ行ってください」
よって少女は護衛隊隊長の元にたどり着くなり制服の胸元に縋りついたのだった。
「南の回廊から庭に出られました。ジェイド様が追いかけています。目印にこの辺りに靴を置いて来ました」
声を潜めてそう言って手近な植込みの根元を指さす。丁寧に整えられた庭園はほぼ同じ植込みが回廊に沿って並んでいる。
石畳の通路も何本か庭園の奥へ続いている為、カリナは目印として靴を残してきた。
護衛隊隊長である彼に事態は伝わった。養父の元へとグレイからも言われ、カリナは今度こそ養父を探しに行こうと大広間に戻ろうとしたそこで━━今最も会いたくはなかった麗しい人物と対面した。
それはそうだ、護衛隊隊長はこういった夜会ではこの人物に就くのが通例だ。
ジェイドからの緊急事態の招集があったとはいえ、隊長のそばにこの人物がいても何らおかしくはない。
「こんばんは、カリナ嬢。妻を探しているのですが、ご存じありませんか?」
これまで彼と直接話した経験はほとんどない。けれど相対すればいつも丁寧な口調を使われ恐縮してしまう。この国で最も尊い身分に緊張すると言うのに、今はそれに上乗せて自分は懸念案件を抱いている。
さすがに国王に対し「王妃は綺麗な男について出て行った」とは言えない。
従者の目を気にしながら口を開けば、敏い国王は傍にいた従者を遠ざけた。
その様子にカリナは覚悟を決めざるを得なかった。
言葉を選びに選んでカリナは事態を再度説明したのだった。
************************************************
【海の国】
シーア・バルトン 24歳
海姫 オーシアン王妃
気は優しくて力持ち&最近めっきり女性に弱くなってるまさかのヒロイン
いまだに「ビジネス国王夫妻」感が拭えない
レオニーク・バルトン 29歳
オーシアン国王 通称レオン
好青年だったのに虎視眈々タイプに熟成中
グレイ 28歳
シーアに振り回される苦労性のオーシアン王城護衛隊隊長
弓の名手 姉3人を持つ末っ子長男
ジェイド 23歳
言葉数の少ない王城護衛隊の美形な副隊長
痩せの大食い
カリナ 18歳
元羊飼いの美少女 宰相まがいのオズワルド・クロフォードの養女
計算能力が高く、国庫管理室にて社会勉強を兼ねてアルバイト中
リザ 26歳
シーアの数少ない女友達
商社での事務歴を活かしてオーシアンの国庫管理室に就職し一番の出世頭
バツイチ美人
【半賊半商ドレファン一家】
ウォルター・ドレファン 49歳
海王の二つ名を持つシーアの養父。半商半賊ドレファン一家頭領
サシャ 20歳
シーアの義妹 基本的に島にてデスクワーク
物心ついたころからギル狙いで昨今ついに陥落に成功
ギル 30歳
みんなの兄貴分 ドレファン一家ドレイク号の操舵士
サシャとは夫婦
【海賊スミス一家】
エミリオ・スミス 29歳(仮)
世界の港で恋人が待つと名高い海賊スミス一家の新頭領
踊り子姿で襲来した式典から1年経過した状態の年齢になります。
義父は海王ウォルター、義姉は海姫シーア、義兄は海の国国王という壮絶な状態に最近気付いてしまったギル。なんとも一番気の毒な気がします。
聞き慣れた音から発した相手はジェイドであると判断したグレイは火急の事態の発生を悟りその方角へと走る中、靴音のしない不思議な足音に気付いた。
切羽詰まった表情の少女が駆けてくる。
本来、貴族の令嬢が走るなどしたら━━特にこの少女がそんな真似をすれば周囲から過剰なまでに眉を顰められるのは想像に難くない。
それは誰よりも本人が理解しているはずで、その姿にグレイは余程の事かと緊張が走る。
案の定、少女はグレイの姿を見ると少しだけ安堵したように表情を緩めたが、すぐにまた険しい緊張した面持ちに戻った。
あの男が「王妃の過去の恋人だったら」という可能性もカリナはもちろん考えた。
しかし王妃のあの表情とあの笑顔。漆黒を纏う彼女は何かを警戒していたし、ジェイドがいつになく多弁であった。
「グレイ様っ、シーア様の所へ行ってください」
よって少女は護衛隊隊長の元にたどり着くなり制服の胸元に縋りついたのだった。
「南の回廊から庭に出られました。ジェイド様が追いかけています。目印にこの辺りに靴を置いて来ました」
声を潜めてそう言って手近な植込みの根元を指さす。丁寧に整えられた庭園はほぼ同じ植込みが回廊に沿って並んでいる。
石畳の通路も何本か庭園の奥へ続いている為、カリナは目印として靴を残してきた。
護衛隊隊長である彼に事態は伝わった。養父の元へとグレイからも言われ、カリナは今度こそ養父を探しに行こうと大広間に戻ろうとしたそこで━━今最も会いたくはなかった麗しい人物と対面した。
それはそうだ、護衛隊隊長はこういった夜会ではこの人物に就くのが通例だ。
ジェイドからの緊急事態の招集があったとはいえ、隊長のそばにこの人物がいても何らおかしくはない。
「こんばんは、カリナ嬢。妻を探しているのですが、ご存じありませんか?」
これまで彼と直接話した経験はほとんどない。けれど相対すればいつも丁寧な口調を使われ恐縮してしまう。この国で最も尊い身分に緊張すると言うのに、今はそれに上乗せて自分は懸念案件を抱いている。
さすがに国王に対し「王妃は綺麗な男について出て行った」とは言えない。
従者の目を気にしながら口を開けば、敏い国王は傍にいた従者を遠ざけた。
その様子にカリナは覚悟を決めざるを得なかった。
言葉を選びに選んでカリナは事態を再度説明したのだった。
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【海の国】
シーア・バルトン 24歳
海姫 オーシアン王妃
気は優しくて力持ち&最近めっきり女性に弱くなってるまさかのヒロイン
いまだに「ビジネス国王夫妻」感が拭えない
レオニーク・バルトン 29歳
オーシアン国王 通称レオン
好青年だったのに虎視眈々タイプに熟成中
グレイ 28歳
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弓の名手 姉3人を持つ末っ子長男
ジェイド 23歳
言葉数の少ない王城護衛隊の美形な副隊長
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カリナ 18歳
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リザ 26歳
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義父は海王ウォルター、義姉は海姫シーア、義兄は海の国国王という壮絶な状態に最近気付いてしまったギル。なんとも一番気の毒な気がします。
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