旧支配者のカプリチオ ~日本×1000年後×異世界化×TS×クトゥルフ神話~

ナイカナ・S・ガシャンナ

文字の大きさ
42 / 120
第二部第一章 転職イベント

セッション38 結婚

しおりを挟む
 イタチ邸に帰ったら、イタチが書類仕事をしていた。

「……む? うむ、帰ったか」

 イタチが僕達の帰宅に気付き、顔を上げる。隣には理伏が立っており、お茶を出したり必要な資料を運んで来たりしていた。彼女がイタチ邸に来てから二~三日以内にはイタチとこういう関係になっていた。特に何もない時はただ黙ってイタチの傍で佇んでいる事も多い。

「理伏もすっかりイタチの秘書が板に付いてきたな」

 忍者なのに。心の上に刃を置く者なのに。
 半分皮肉を込めた言葉だったが、言われた理伏はキラキラした目でこちらを見返して来た。

「はい! 人に仕えるのめっちゃ楽しいで御座りまする!」
「……そうか。良かったな」

 理伏が楽しいなら、僕としては何も言えまい。
 いるよな、こういう従者根性染み付いている奴。

「うむ。良い働きをする。素晴らしい部下だ」
「有難きお言葉に御座りまする」

 イタチもすっかり御満悦だ。こいつは自分を覇王と信じ切っているからな。自分を持ち上げてくれる奴がいるのは気持ちが良いのだろう。僕もステファも三護も他人に傅く事はないしな。
 調子に乗ったイタチは更にこう言った。

「いつまでも手元に置いておきたい逸材よ。こやつが風魔の長になる事が確約されていれば、政略結婚も考えていた所だ」
「は……えっ!? けっ……!?」
「結婚!?」

 イタチの発言に一瞬思考が固まる。
 結婚って……イタチと理伏がか?

「不思議か? 婚姻して関係を強固に結び付け、家と権力を纏めるのは貴族として一般的だろう?」
「いや……そりゃそうだけどよ……」

 そんな簡単に考えて良いもんじゃねーだろ、結婚って。
 そう思ってしまうのは僕が一〇〇〇年前の人間だからか。僕の考え方が古いのかなあ。

「まあ、とはいえ、理伏を嫁にする予定は今の所はないのだがな。理伏を介して俺様が忍の軍勢を手中に収められれば、天下統一もより近付けたのだが……ん? いや、待てよ。風魔の長の選出方法によっては理伏を長にすることも可能か? 今は年齢的に無理でも将来長になれるのであれば……。
 おい、理伏。風魔の長とはどうやって選ばれるのだ?」
「…………」
「理伏の奴、聞こえちゃいねーぞ」
「む?」

 見れば、理伏は顔を真っ赤にしたまま直立していた。手も足も背筋もピクリとも動かない。彫像を言われれば信じてしまいそうな程に彼女は硬直していた。

「何だ、初心うぶな奴め。仕方あるまい。覇王の寵愛をくれてやるのはまだまだ先だな」

 動かなくなった理伏に本気で呆れた顔をするイタチ。
 ……いやいやいやいや、呆れたいのはこっちだから。
 やはり一〇〇〇年前とは考え方がまるで違う。さすがは生き死にが過去より身近になっている異世界化日本。結婚に対するこの即決即行ぶりよ。晩婚が流行りの二十一世紀出身の僕には想像もつかない思考回路だ。早熟な奴め。

「ところで、何の書類なんだ、それ?」
「冒険者ギルドへの申請書だ。冒険者ランクの査定はギルドでしか行っていないからな」
「ああ……」

 イタチはギルドから独立した冒険者――フリーランスだ。しかし、フリーランスだからといって自由に冒険者ランクを上げて良い訳ではない。ランクはギルドが基準を定めており、ギルドの保証がなければランクの信頼は得られないのだ。
 先日のゴブリン事変解決の功績を称えられ、僕達の冒険者ランクはCに上がった。Aではない。ゴブリン事変はAランクの危機だった筈だが、それを解決しても一ランクしか上がらなかった。冒険者に飛び級制度はないらしい。

「でも、申請書? なんでだ? 最近ランクが上がる様な事したっけか?」

 フリーランスになってから受けた依頼は小さなものばかりだった。雑魚モンスター狩りや護衛、小規模ダンジョンの調査。どれもランクが上がる様な大した成果ではなかった筈だ。

「最近ではない。これから上がるのだ。明日から始める依頼によってな」
「依頼? 新しく貰ったんですか? どんな依頼なんです?」

 イタチはにやりと笑い、

竜殺しドラゴンスレイヤーだ」

 と答えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美咲の初体験

廣瀬純七
ファンタジー
男女の体が入れ替わってしまった美咲と拓也のお話です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

いつまでもドアマットと思うなよ

あんど もあ
ファンタジー
二年前に母を亡くしたミレーネは、後妻と妹が家にやって来てからすっかり使用人以下の扱いをされている。王宮で舞踏会が開催されるが、用意されたのは妹のドレスだけ。そんなミレーネに手を差し伸べる人が……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...