65 / 120
第二部第四章 クーデターイベント(当日)
セッション57 蛇王
しおりを挟む
三護が勝利した。冥王ヘルと犬王ガルムを討ち倒した。
その結果に僅かに気が緩み、勝利の余韻に浸り掛けた。だが、
「SHAaaaaa――――!」
その余韻に待ったを掛ける吠え声があった。ハクだ。
ヘルが猛吹雪を放つ寸前、彼女はホールの外に出ていたのだ。変温動物故に寒さに弱いからだ。そのお陰であの太陽の如き劫火からも回避する事が出来たのだ。
戦いはまだ終わらない。ハク――蛇王ヨルムンガンドを倒すまでは。
「S!」
ハクの掌底が三護を襲う。三護は節足を駆使して跳躍し、掌底から逃れた。そのまま壁や天井を跳ねてハクの背後へと回る。巨体故に無防備を晒している背中に三護は飛び掛かり、鉤爪を突き立てた。
だが、通らない。ガルムの胸部を貫いた鉤爪がハクの肌には弾かれた。僅かに傷は付けたものの肉にまでは届いていない。
「竜ト同ジ程度ニハ堅イカ……! 怪物メ!」
三護が渋面で言い捨てる。そんな三護にハクが顔を向ける。首が長い故に真後ろにまで振り向く事が可能なのだ。
「SH――!」
「グァアアアアアッ!」
ハクが吐いた毒液が三護に命中する。鉤爪を突き立てた直後だったので態勢が悪く避けられなかったのだ。もんどりうってハクの背中から転落する三護。床に激突した後も彼は悶絶し続ける。猛毒が異形の彼をも蝕んでいるのだ。
「おい、三護! クソ!」
三護の下へと走る。氷の拘束具は先程の火炎魔術で溶け去った。今の僕を縛るものは何もない。
近寄る僕にハクが口腔を向ける。口内には集う魔力――竜の吐息だ。
「舐めんな! 吐息ならこっちにもある!」
急いで『吸引』、『大気圧縮』を行う。以前は『吐息』に指向性を持たせる事が出来なかったが、あれから修行してある程度は可能になった。まだ完璧とは行かないが、ここで使わずしていつ使うのか。
「S――!」
「Z――!」
魔力の砲撃と大気の砲撃が正面から激突する。拮抗は一瞬で、大気の砲撃が競り負けた。だが、魔力の砲撃も打ち砕かれた。結果として四散した破壊力が強風となって僕の方へと吹き荒れ、僕の身体が飛ばされる。
しかし、これで良い。充分注意は引き付けた。ハクが僕に意識を向けている隙にステファが迂回して三護の下へと辿り着いていた。すぐさまステファが『弱体回復聖術』で三護の毒状態を打ち消す。
「毒液は無効化出来るんじゃなかったのですか?」
「器ハナ。今ノ我ハ本体ガ剥キ出シニナッテオル。本体ニ浴ビセラレルト苦シインジャ」
苦悶に表情を歪めながら三護が答える。やはりあのゴーレムの器には耐毒機能が付いていたか。本体が表に出ている今は頼りに出来ないが。
「SH!」
ハクが前脚を振り上げ、ステファ達へと下ろす。踏み潰す気だ。頭上に落ちた影でそれに気付いたステファが咄嗟に『亀甲一片』を構える。掌底が結界を叩いた。その一打だけでは砕けなかったが、ハクは更に結界に体重を乗せてきた。あのままではいずれ超重量に耐え切れず結界が割れてしまうだろう。
「――『槍牙一斬』!」
偃月刀を振るい、ハクの喉元に斬撃を叩き込む。だが、通じない。僕の槍技ではハクの防御力を撃ち抜けない。
「くっ……!」
「ステファ! おい三護、さっきの最上級は使えないのか?」
「今、詠唱シテオルワ! ジャガ、最上級ハ日ニ何度モ撃テルヨウナモノデハナイ。負担ガ大キインジャ。詠唱ニハ時間ガ掛カル!」
そうこうしている内にもハクは結界に体重を乗せ続ける。結界からミシリ、パキリという音が聞こえた。このままではステファも三護も潰されてしまう。
さすがは蛇王。最低でも秩父の親竜と同程度には強かろうとは思っていたが、本当に想定通りだった。子竜にさえパーティー全員揃ってでないと勝てなかったというのに、僕達三人では勝てる道理がない。
「……だったら!」
強いのならば弱体化させるまでだ。
口を大きく開き、再び『吸引』する。僕の『吐息』の準備を見て、ハクも口腔に魔力を集める。先程と同様に吐息同士で相殺する気だろう。だが、僕にそんなつもりはない。一度敗れた攻撃を二度もするつもりはない。
「SH――!」
放たれる竜の吐息。しかし、その瞬間に僕はハクに背を向けていた。地面に向けて『吐息』を放ち、『有翼』を展開して飛翔する。爆風が僕の身体を加速させ、ハクの吐息を躱し、彼女の背後を取った。ハクが僕を追って首を巡らすが、加速した僕には触れられない。
更に『吐息』を重ねて再加速。背中から急降下しつつ偃月刀を僕自身へと立てる。
「しかし、今まで色んな死に方をしてきたもんだが……」
ハクと激突する。同時に『槍牙一断』を発動。『一斬』よりも攻撃力が増した刃が僕を串刺しにしてハクへと縫い付ける。胸から鮮血を噴出しながら背中にハクの鮮血を浴びた。
「自殺するのは初めてだな!」
激痛と自暴による恍惚が脳髄を痺れさせる。
全く僕もなかなか狂気が回ってきたものだ。
その結果に僅かに気が緩み、勝利の余韻に浸り掛けた。だが、
「SHAaaaaa――――!」
その余韻に待ったを掛ける吠え声があった。ハクだ。
ヘルが猛吹雪を放つ寸前、彼女はホールの外に出ていたのだ。変温動物故に寒さに弱いからだ。そのお陰であの太陽の如き劫火からも回避する事が出来たのだ。
戦いはまだ終わらない。ハク――蛇王ヨルムンガンドを倒すまでは。
「S!」
ハクの掌底が三護を襲う。三護は節足を駆使して跳躍し、掌底から逃れた。そのまま壁や天井を跳ねてハクの背後へと回る。巨体故に無防備を晒している背中に三護は飛び掛かり、鉤爪を突き立てた。
だが、通らない。ガルムの胸部を貫いた鉤爪がハクの肌には弾かれた。僅かに傷は付けたものの肉にまでは届いていない。
「竜ト同ジ程度ニハ堅イカ……! 怪物メ!」
三護が渋面で言い捨てる。そんな三護にハクが顔を向ける。首が長い故に真後ろにまで振り向く事が可能なのだ。
「SH――!」
「グァアアアアアッ!」
ハクが吐いた毒液が三護に命中する。鉤爪を突き立てた直後だったので態勢が悪く避けられなかったのだ。もんどりうってハクの背中から転落する三護。床に激突した後も彼は悶絶し続ける。猛毒が異形の彼をも蝕んでいるのだ。
「おい、三護! クソ!」
三護の下へと走る。氷の拘束具は先程の火炎魔術で溶け去った。今の僕を縛るものは何もない。
近寄る僕にハクが口腔を向ける。口内には集う魔力――竜の吐息だ。
「舐めんな! 吐息ならこっちにもある!」
急いで『吸引』、『大気圧縮』を行う。以前は『吐息』に指向性を持たせる事が出来なかったが、あれから修行してある程度は可能になった。まだ完璧とは行かないが、ここで使わずしていつ使うのか。
「S――!」
「Z――!」
魔力の砲撃と大気の砲撃が正面から激突する。拮抗は一瞬で、大気の砲撃が競り負けた。だが、魔力の砲撃も打ち砕かれた。結果として四散した破壊力が強風となって僕の方へと吹き荒れ、僕の身体が飛ばされる。
しかし、これで良い。充分注意は引き付けた。ハクが僕に意識を向けている隙にステファが迂回して三護の下へと辿り着いていた。すぐさまステファが『弱体回復聖術』で三護の毒状態を打ち消す。
「毒液は無効化出来るんじゃなかったのですか?」
「器ハナ。今ノ我ハ本体ガ剥キ出シニナッテオル。本体ニ浴ビセラレルト苦シインジャ」
苦悶に表情を歪めながら三護が答える。やはりあのゴーレムの器には耐毒機能が付いていたか。本体が表に出ている今は頼りに出来ないが。
「SH!」
ハクが前脚を振り上げ、ステファ達へと下ろす。踏み潰す気だ。頭上に落ちた影でそれに気付いたステファが咄嗟に『亀甲一片』を構える。掌底が結界を叩いた。その一打だけでは砕けなかったが、ハクは更に結界に体重を乗せてきた。あのままではいずれ超重量に耐え切れず結界が割れてしまうだろう。
「――『槍牙一斬』!」
偃月刀を振るい、ハクの喉元に斬撃を叩き込む。だが、通じない。僕の槍技ではハクの防御力を撃ち抜けない。
「くっ……!」
「ステファ! おい三護、さっきの最上級は使えないのか?」
「今、詠唱シテオルワ! ジャガ、最上級ハ日ニ何度モ撃テルヨウナモノデハナイ。負担ガ大キインジャ。詠唱ニハ時間ガ掛カル!」
そうこうしている内にもハクは結界に体重を乗せ続ける。結界からミシリ、パキリという音が聞こえた。このままではステファも三護も潰されてしまう。
さすがは蛇王。最低でも秩父の親竜と同程度には強かろうとは思っていたが、本当に想定通りだった。子竜にさえパーティー全員揃ってでないと勝てなかったというのに、僕達三人では勝てる道理がない。
「……だったら!」
強いのならば弱体化させるまでだ。
口を大きく開き、再び『吸引』する。僕の『吐息』の準備を見て、ハクも口腔に魔力を集める。先程と同様に吐息同士で相殺する気だろう。だが、僕にそんなつもりはない。一度敗れた攻撃を二度もするつもりはない。
「SH――!」
放たれる竜の吐息。しかし、その瞬間に僕はハクに背を向けていた。地面に向けて『吐息』を放ち、『有翼』を展開して飛翔する。爆風が僕の身体を加速させ、ハクの吐息を躱し、彼女の背後を取った。ハクが僕を追って首を巡らすが、加速した僕には触れられない。
更に『吐息』を重ねて再加速。背中から急降下しつつ偃月刀を僕自身へと立てる。
「しかし、今まで色んな死に方をしてきたもんだが……」
ハクと激突する。同時に『槍牙一断』を発動。『一斬』よりも攻撃力が増した刃が僕を串刺しにしてハクへと縫い付ける。胸から鮮血を噴出しながら背中にハクの鮮血を浴びた。
「自殺するのは初めてだな!」
激痛と自暴による恍惚が脳髄を痺れさせる。
全く僕もなかなか狂気が回ってきたものだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる