旧支配者のカプリチオ ~日本×1000年後×異世界化×TS×クトゥルフ神話~

ナイカナ・S・ガシャンナ

文字の大きさ
77 / 120
第二部第五章 クーデターイベント(後日談)

幕間6 帝国幹部の会話2

しおりを挟む
「あっ、いたいた。やっほー、皆!」

 則天の安宿部紹介が終わった所で、シロワニ・マーシュがバルコニーの奥より現れた。

「これは皇女殿下。御機嫌麗しゅう」
「うん、御機嫌よう。ナイ、信長。皇帝おとうさまが呼んでいたよ。またスパーリングの相手をしろって」
「げっ、またかよ……」

 皇帝と模擬戦をしろスパーリングと聞いて信長がげんなりする。

「前回相手してやったのが何日前だと思ってんだ。何度ブチのめしてもお咎めなしなのは有難ぇが……戦争狂ウォーモンガーにして戦闘狂バトルマニア。殿下の父親なのも納得の凶暴さだよな」
「何だよぅ。信長だっておかしな趣味を持っている癖に。火葬場に足繁く通う『五渾将』なんて歴代でも信長一人だけだよ」
「処刑場に入り浸る皇女様に言われたくねえよ、殺人狂」

 シロワニと信長が軽く睨み合う。空気は軽いものの発言内容そのものは物騒だ。そんな二人の様子を微笑ましいとナイが小さく笑った。

「まあ、仕方ないじゃないですか。あまり我慢をさせると暴れ出して帝国を壊しかねませんし。敵国に攻められて滅ぶならともかく、自国の長によって滅んだなんて事になったら、笑い話にしかなりませんよ」
「そりゃあな。全く、是非もなしだな」

 信長が溜息を吐く。とはいえ、彼らにとってはいつもの事だ。血生臭い父娘を主君と仰ぎ、機嫌を損ねない様に立ち回る。これが彼らの日常だった。

「まあお父様の事は置いといて。わたしからも話が合ってね。皆が揃っててちょうど良かったよ」
「ほう?」

 シロワニの発言に四人の目が彼女に集まる。

「皆、ロキがまだ生きてて人質にされているってのはもう知っているよね?」
「ん、知っているね。ついでに言うと、『ロキに国を滅茶苦茶にされた』と山岳連邦から遺憾の意を示されたのも知っている」
「ああ。皇帝陛下が『文句があるならいつでも掛かってこいガハハ』って返していた奴ネ」

 クーデターでロキの所業が発覚した後、当然連邦は帝国に抗議した。ロキによって発生した損害を賠償しろと。連邦を唆し、二荒王国との戦争に駆り立てた責任を取れと要求した。
 しかし、皇帝はこれを拒否。賠償も責任も負わないと断言した。その上、「要求を通したければ力ずくで従わせてみせろ」と挑発。これには連邦も怒り狂い、更なる抗議を送り付けたのだが、そこまでだった。西日本全域を支配する大国を相手に武力行使など出来る筈もない。強攻すれば返り討ちに遭うのは必至だ。結局、連邦は口先だけの非難に留まるしかなかった。

 一方で、賠償も責任も拒絶した事で人質であるロキは切り捨てられた形になったのだが、それについて帝国側で言及する者はいなかった。いざという時は死ぬのも仕事の内、それは『五渾将』であろうと変わらない――それが帝国幹部の信条だからだ。

「でも、そのロキを低コストで救出出来るとなったら?」
「どういう事だい?」
「イタチから連絡があってね」

 シロワニが腰から一冊の本を取り出す。表紙には『ルルイエ異本』とタイトルが記されていた。帝国在住の魔術師が普遍的に使っている魔導書だ。シロワニはこの魔導書を通話機にイタチや栄とのホットラインを結んでいたのだ。

「『ロキの身柄と引き換えに「祭り」に参加して欲しい』んだって」
「『祭り』ですか?」
「うん。実はね――」

 シロワニがイタチの要求を『五渾将』に伝える。

「――という訳なんだよ」
「ふーん、成程ネ……」
「それはまた……はは」
「良いでしょー。わたし絶対行くからね!」

 聞き終えた『五渾将』は一様に目を輝かせた。ナイも則天もシロワニも、イタチの言う『祭り』に興味津々だった。ネフレンだけは仮面のせいで不明瞭だったが。

「そういう事なら、俺が行かせて貰うぜ」

 その中で真っ先に立候補したのは信長だった。

「あいつは俺の事を親の仇だと思っているのだろうが、俺の方こそあいつのせいで任務を失敗した。阿漣ヨシキリに接触する為に、ギルド本部にスパイしていた期間は短いものじゃなかったからな。あいつがヨシキリを殺したせいで、それが全部ふいになっちまった」
「阿漣イタチを恨んでいる、と?」
「多少はな。だが」

 ククと信長が笑い声を漏らす。

「それ以上に興味がある。俺の邪魔者が俺の敵と呼べるまでに成長したのか。父親ヨシキリを殺した息子イタチが五年の内にどんな風に歪んだのかってな」

 信長が苛立ちと愉悦が入り混じった凶笑を浮かべる。悪質な狩人が獲物を前にして、どう甚振いたぶってやろうかと考えているかの様な嗜虐的な笑い方だった。

「それ、人数制限とかはないよね。だったら余も行きたい」

 と二番目に立候補したのはネフレンだ。

「代わりにイタチにはこう要求して欲しい。『冥王ヘルの身柄を頂きたい』と」
「冥王ヘル? ロキの娘の?」
「そう。正確には彼女の器としている亡骸が欲しいんだけどね」

 先の戦いでヘルは黒炭となった。
 しかし、あの三護がヘルの肉体をそのまま放置する筈がないとネフレンは確信していた。たとえ骨の一片しか残っていなかったとしても、あの狂的好奇心の塊は必ずそれを回収したに違いないと見做していた。

「『五渾将』が二人も出陣かあ。大事になってきたね」
「でしたら、いっそ皆で行きましょうか」
「は? 皆って『五渾将』全員でって事カ?」

 ええ、とナイが頷く。

「祭りは大勢の方が楽しいでしょう。それに、皇帝陛下の戦争狂ウォーモンガーを満足させるちょうど良い案が、イタチのお陰で思い付きましたので」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...