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第五章 プレイ十三日目・前
#69 ルトソー・スヨグ・セレファイス
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翌朝。テストプレイ十三日目の午前十時半。朱無王国瑞加祷市が無有途轍神社、その脇にある鳥居の前にて。
「……『という夢を見たんだ』っていうオチになると思ったんだけどなぁ」
私は溜息を堪えられなかった。
私の手元にあるのは『冒険者教典』、開いているのはリスト欄だ。そこには新たにゾヘドさんの名前が追加されていた。
彼女とはあの夢が初対面だ。昨日、ゲーム中に彼女とは会っていない。にも拘らず、こうして彼女の名前が載っているという事は、私がログインする前に運営の方で私のリストを弄ったのだろう。
ついでにゾヘドさんからメッセージも届いていた。「三本勝負、逃げるなよ!」との事だ。推しからメッセージを貰えたのは凄く光栄なんだけど、まさかその内容が宣戦布告になるとは。ちょっと切ない。
同時にこれは昨日の夢が私の夢ではなく、ある種の現実だった証明になる。宇宙の裏側、異世界――幻夢境。まさか本当の本当に実在していたとは。
それにしても三本勝負かあ……勝てるかな。いいや、勝たなくちゃ。是が非でも記憶を奪われる訳にはいかない。相手は推しとはいえど全力で挑まなくては。
「……すのこ」
などと考えていたら背後から声を掛けられた。ルトちゃんだ。
「おはよう、ルトちゃん」
「……おはよ、すのこ。……ロントから聞いた。ゾヘドと戦うんだって?」
「――――っ!」
どうしてそれを、と口にする寸前で悟った。
そうしてもこうしてもない。昨日の夢での出来事を知っているのはチクタクマン社の関係者だから以外にありえない。彼女はロンちゃんと仲が良い。そして、このゲームはチクタクマン社とヒプノス・コーポレーションの共同開発だ。ヒプノス・コーポレーション所属のVtuberである彼女が関係者なのは何ら不思議ではない。
「……わたしのフルネーム、ルトソー・スヨグ・セレファイス。セレファイスは幻夢境にある有力都市の一つの名前。わたしはセレファイスの名代としてここにいるの」
「そうだったんだ……!」
果たして彼女は想像以上の正体を明かした。幻夢境の有力都市の名代。関係者なんてレベルじゃない。重役も重役の中心人物だ。
彼女には異世界出身だっていう『設定』があった。幻夢境の存在を知った時から疑ってはいなかったけど、あれは作り話ではなく、紛れもない真実だったのだ。正真正銘の剣と魔法の世界側の人間。幻夢境はこの世界軸にあるから彼女は地球人でもあるけど。
「……セレファイスはこの計画に期待している。もし成功すれば、幻夢境に新たな、しかも友好的な都市が生まれる。今の現実世界の知識を伴う、未知なる文明。そこと交易を結べば、セレファイスは更なる発展が望めるかもしれない」
「成程。それで、ルトちゃんはこの計画に協力しているんだ」
「……ん。でも、それだけじゃない」
頷いた後、ルトちゃんは小さく頭を振った。
「……『という夢を見たんだ』っていうオチになると思ったんだけどなぁ」
私は溜息を堪えられなかった。
私の手元にあるのは『冒険者教典』、開いているのはリスト欄だ。そこには新たにゾヘドさんの名前が追加されていた。
彼女とはあの夢が初対面だ。昨日、ゲーム中に彼女とは会っていない。にも拘らず、こうして彼女の名前が載っているという事は、私がログインする前に運営の方で私のリストを弄ったのだろう。
ついでにゾヘドさんからメッセージも届いていた。「三本勝負、逃げるなよ!」との事だ。推しからメッセージを貰えたのは凄く光栄なんだけど、まさかその内容が宣戦布告になるとは。ちょっと切ない。
同時にこれは昨日の夢が私の夢ではなく、ある種の現実だった証明になる。宇宙の裏側、異世界――幻夢境。まさか本当の本当に実在していたとは。
それにしても三本勝負かあ……勝てるかな。いいや、勝たなくちゃ。是が非でも記憶を奪われる訳にはいかない。相手は推しとはいえど全力で挑まなくては。
「……すのこ」
などと考えていたら背後から声を掛けられた。ルトちゃんだ。
「おはよう、ルトちゃん」
「……おはよ、すのこ。……ロントから聞いた。ゾヘドと戦うんだって?」
「――――っ!」
どうしてそれを、と口にする寸前で悟った。
そうしてもこうしてもない。昨日の夢での出来事を知っているのはチクタクマン社の関係者だから以外にありえない。彼女はロンちゃんと仲が良い。そして、このゲームはチクタクマン社とヒプノス・コーポレーションの共同開発だ。ヒプノス・コーポレーション所属のVtuberである彼女が関係者なのは何ら不思議ではない。
「……わたしのフルネーム、ルトソー・スヨグ・セレファイス。セレファイスは幻夢境にある有力都市の一つの名前。わたしはセレファイスの名代としてここにいるの」
「そうだったんだ……!」
果たして彼女は想像以上の正体を明かした。幻夢境の有力都市の名代。関係者なんてレベルじゃない。重役も重役の中心人物だ。
彼女には異世界出身だっていう『設定』があった。幻夢境の存在を知った時から疑ってはいなかったけど、あれは作り話ではなく、紛れもない真実だったのだ。正真正銘の剣と魔法の世界側の人間。幻夢境はこの世界軸にあるから彼女は地球人でもあるけど。
「……セレファイスはこの計画に期待している。もし成功すれば、幻夢境に新たな、しかも友好的な都市が生まれる。今の現実世界の知識を伴う、未知なる文明。そこと交易を結べば、セレファイスは更なる発展が望めるかもしれない」
「成程。それで、ルトちゃんはこの計画に協力しているんだ」
「……ん。でも、それだけじゃない」
頷いた後、ルトちゃんは小さく頭を振った。
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