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前編:会話という概念はご存知?
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卒業パーティーにて、事件勃発。
「リン!私の婚約者という身分を笠に着て行った非道な仕打ち!もはや貴様は人間の風上にも置けぬ!私との婚約は破棄だ!そして貴様に酷い仕打ちを受けたヒアは私の妃とする!」
あらまあ。芝居がかった口調でおバカ殿下がなにやら騒いでいますわ。
あの殿下の婚約者は、悲しいことにわたくし。何が悲しいって、あんな愚かな男の婚約者であること自体。
だから、非道な仕打ちとやらには覚えがないけれど、婚約が無くなるのは願ったり叶ったりというところ。
しかし聞き捨てならないことがありますわね。
殿下が無理やり連れだした元平民の令嬢──ヒアを妃にするって?
「貴様が今更謝罪しようが私の意志は覆らない。私はヒアと、真実の愛に目覚めたのだから」
何を言い出すのかと思えば、してやったり顔で『真実の愛』、ねえ。
それ、ちゃんと確認をとったのかしら?
わたくしはひとつため息をつく。せっかく重荷だった婚約が無くなったのに、まだまだ仕事はありそうね。殿下を諫める、というか尻ぬぐいが。尻ぬぐいをしすぎた摩擦で殿下の尻がなくならないかしら。
ヒアは瞠目して真っ青な顔で狼狽えていますわ。
それはそうよね。殿下が突然わけのわからないことを言い出したもの。失神していないだけましかしら。
「ヒア男爵令嬢。あなたはそれでいいの?」
「脅しをかけるつもりか?謝るどころか悪行を重ねるとはな!ヒア、聞かなくていい。私がついているからね」
わたくしが声をかけたのはヒアなのだけれど、殿下が割り込んでくる。
うーん、はっきりいって邪魔!殿下相手にこう思うのは不敬かもしれないけれど、邪魔なものは邪魔!
声をあげても殿下に遮られるだろうから、視線でヒアに訴えかけます。
するとヒアはようやくはっと我に返ったようで、ゆっくりと首を横に振りました。
「殿下……おやめください」
「ヒア?君は何も心配することはないんだ」
いや心配ごとありまくりでしてよ。
「わたし、リンちゃん……いえ、リッスン伯爵令嬢にひどいことなんてされてません」
「そんなに怯えなくていいんだ。君が真実を口にするときがきたんだ」
あなたの存在自体がヒアを怯えさせているのですが。
「私は多数の令嬢からの証言ももらった。君を後押ししてくれる人はたくさんいるんだ」
ああ、それわたくしの家を失脚させたい輩が吹き込んだのですね。
後押しどうこう言っていますが、ヒアが嫁ぐなら嫁ぐで陰口を叩くのは目に見えましてよ。
はあ、頭が痛い。殿下ってここまで会話を放棄する天才でしたっけ。
わたくしとは長年ろくに話をしてくれなかったから知りませんでしたわ。結婚前に知れたのは幸運ですけども。
もしかして妙なお薬でも飲まれたのかしら?なんてね。
あまりの話の通じなさに、ヒアもとても困っているようですわね。
さて、おバカ殿下といらないことを吹き込んだ令嬢たちに一泡吹かせるには──
「何事だ?」
おっと、タイミングを見計らったように国王陛下がいらっしゃいましたわ。
「リン!私の婚約者という身分を笠に着て行った非道な仕打ち!もはや貴様は人間の風上にも置けぬ!私との婚約は破棄だ!そして貴様に酷い仕打ちを受けたヒアは私の妃とする!」
あらまあ。芝居がかった口調でおバカ殿下がなにやら騒いでいますわ。
あの殿下の婚約者は、悲しいことにわたくし。何が悲しいって、あんな愚かな男の婚約者であること自体。
だから、非道な仕打ちとやらには覚えがないけれど、婚約が無くなるのは願ったり叶ったりというところ。
しかし聞き捨てならないことがありますわね。
殿下が無理やり連れだした元平民の令嬢──ヒアを妃にするって?
「貴様が今更謝罪しようが私の意志は覆らない。私はヒアと、真実の愛に目覚めたのだから」
何を言い出すのかと思えば、してやったり顔で『真実の愛』、ねえ。
それ、ちゃんと確認をとったのかしら?
わたくしはひとつため息をつく。せっかく重荷だった婚約が無くなったのに、まだまだ仕事はありそうね。殿下を諫める、というか尻ぬぐいが。尻ぬぐいをしすぎた摩擦で殿下の尻がなくならないかしら。
ヒアは瞠目して真っ青な顔で狼狽えていますわ。
それはそうよね。殿下が突然わけのわからないことを言い出したもの。失神していないだけましかしら。
「ヒア男爵令嬢。あなたはそれでいいの?」
「脅しをかけるつもりか?謝るどころか悪行を重ねるとはな!ヒア、聞かなくていい。私がついているからね」
わたくしが声をかけたのはヒアなのだけれど、殿下が割り込んでくる。
うーん、はっきりいって邪魔!殿下相手にこう思うのは不敬かもしれないけれど、邪魔なものは邪魔!
声をあげても殿下に遮られるだろうから、視線でヒアに訴えかけます。
するとヒアはようやくはっと我に返ったようで、ゆっくりと首を横に振りました。
「殿下……おやめください」
「ヒア?君は何も心配することはないんだ」
いや心配ごとありまくりでしてよ。
「わたし、リンちゃん……いえ、リッスン伯爵令嬢にひどいことなんてされてません」
「そんなに怯えなくていいんだ。君が真実を口にするときがきたんだ」
あなたの存在自体がヒアを怯えさせているのですが。
「私は多数の令嬢からの証言ももらった。君を後押ししてくれる人はたくさんいるんだ」
ああ、それわたくしの家を失脚させたい輩が吹き込んだのですね。
後押しどうこう言っていますが、ヒアが嫁ぐなら嫁ぐで陰口を叩くのは目に見えましてよ。
はあ、頭が痛い。殿下ってここまで会話を放棄する天才でしたっけ。
わたくしとは長年ろくに話をしてくれなかったから知りませんでしたわ。結婚前に知れたのは幸運ですけども。
もしかして妙なお薬でも飲まれたのかしら?なんてね。
あまりの話の通じなさに、ヒアもとても困っているようですわね。
さて、おバカ殿下といらないことを吹き込んだ令嬢たちに一泡吹かせるには──
「何事だ?」
おっと、タイミングを見計らったように国王陛下がいらっしゃいましたわ。
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