【完結】余命がわずかになり王子に婚約破棄もされたので、妹に生き恥をかかせてから死のうと思います

貝瀬汀

文字の大きさ
7 / 7

7.わたくしの力

しおりを挟む

 わたくしには、不思議な力があった。転生し、周囲の人や貴族の生活にも少し慣れた頃、誰も気に留めないそれに気がついたのだ。
 体を覆う“なに”か。
 勉強の合間に、これを操ってみた。少しだけハンカチを浮かせたり、水を出したり、まるで魔法のようなことが実現できるとわかった。
 しかし大きな効力はない。そのせいなのだろうか、力についてこの世界の人たちは意識していないようだった。もしかしたら、気づいている人や、無意識に使っている人もいるのかもしれないけれど……。
 無理をしてもっともっと、と能力を高めようと頑張ったこともあった。その結果自分を浮かせることはできた。けれども、すぐに脱力し意識を失ってしまったのだった。
 わたくしは、これが危険な力なのかもしれないと気がついた。なのでそれ以降はたまに練習するだけに留め、もしものときだけに行使する保険のようなものとして、過大な期待を寄せるのはやめたのだ。

 最後の最後。わたくしはルリフィネを抱きしめたときに、呪いを……婚約発表の時間に合わせて、本日のお昼。一時間だけおならの音がルリフィネからやまない呪いをかけた。全ての力を使いきってしまう勢いで……。成功したのかを自らの目で確かめることはできないのが残念だけれど。
 
 許せなかった。今までのわたくしの努力も、殿下への想いも。踏みにじっていったあの子が。
 でももし、予期せぬできごとが起こった今日を。ルリフィネとロシャ殿下が乗り越えられたのなら。ロシャ殿下がそれでもルリフィネを大切にしたいとおっしゃるのなら――祝福しなければならないわね……。

 申し訳ありません。お父様、お母様。ルリフィネの命までは取りませんので、どうかお許しくださいますよう……。
 ロシャ殿下も申し訳ありません。本当に、お慕いしておりました……。
 わたくしの意識は、二度と上がってこられない深みへと落ちていった。



 リロエラが永遠の眠りについたその日のお昼すぎ。ふらふらと、道を歩く一人の女がいた。美しかっただろうドレスはあちこちに引っかけたのかボロボロで。結っている髪も乱れていた。

「――ああ! ああ! ロシャ、殿下。違いますの! 私じゃないのです! 違うのっ。私じゃなくて、私じゃなくて……」

 遠巻きにされ気味の悪い独り言を繰り返す女は、おぼつかない足取りで街の暗いほうへと消えていった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

モブは転生ヒロインを許さない

成行任世
恋愛
死亡ルートを辿った攻略対象者の妹(モブ)が転生ヒロインを断罪します。 .

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

処理中です...