近衛隊長のご馳走は宰相閣下

東院さち

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 馬鹿だなぁとは思う。何故私なんかを抱きたいんだろう。まぁ見た目は極上と言われている。孤児が王太子殿下の話し相手として選ばれたくらい頭もいい。でも性格はよくないと思うし、こいつは多分一番の被害者だろうに。

「一回抱いたら飽きるだろうって思った? 男同士がどんなのか試したかった?」

 意地悪だとは思うが、今の私はこいつのいう失恋で身も心も寒かった。興味本位で抱かれるとか、一度だけで思いきれるとか、そんな薄っぺらな気持ちじゃ温かくもならない。別にこいつの一番になりたいとかずっと大事にしてくれとか、そんなんじゃない。

「何を・・・・・・」
「やっぱり止めよう――」
「待てよ、何が気に入らなかった?」

 寝台から降りようとした私の腕を掴み、男は力任せに押し倒して馬乗りになる。

「私を慰めようと思ってたんじゃないのか?」
「当たり前だ・・・・・・」
「お前の興味本位で抱かれて、私が慰められると・・・・・・本気で思うのか」

 子供なら泣くだろう冷めた瞳で見つめた。

 私はこいつのいうように失恋しているのだろうか。この心にあるのは、恋心なのだろうか。一番大事な人、自分よりも大事な人、ただ幸せであってほしいとおもうこの気持ちは、恋心という括りで纏めてしまっていいのかがわからない。
 一度だって、抱きたいとも抱かれたいとも思ったことはない。

「興味本位っていうのが、やってみたいだけという意味ならば違う――。お前は嫌がるだろうけど、俺はお前が好きだし、お前を抱きたいし、お前の一番側に居たい・・・・・・」

 思ってたよりも真剣な告白に息を飲んでしまった。

「ほら、嫌がるだろ。お前がこんな腕でももたれ掛かっていいかって思うほどに弱る時が来るのを虎視眈々と狙ってたんだ。だから・・・・・・、止めない――」

 繊細なガラス細工の人形に触れるかのように、男の指は私の頬を撫でた。顔を寄せ、男らしい精悍な顔を神妙に近づけて来て、唇に触れる。拒否されなかったからか気持ちを微笑みに変えて男は嬉しそうに何度も唇を啄んだ。

 昔からそうだ。私が孤児院で王太子殿下であるリチャード様に拾われて、王城に来てからずっと――。リチャード様の遊び友達として来ていた貴族の子供たちに邪見にされている時も。王立学院に入ってから貴族のおぼっちゃんたちに無意味ないやがらせを受けている時も、何もいわず側に立っていた。そして、侯爵家の継嗣であるヴァレリーが無言で側にいれば、誰もそれ以上のことはすることが出来ない。ありがとうなんて、言うことも出来ない私と目が合えば、やはりこんな風に眉を僅かに下げて笑うのだ。

 その度に私はこいつは大型の犬のようだと思った。

 ガシガシと頭に手を置き、撫でると言うには些か乱暴に髪の毛を掻きまわすと、男は口付けを深めてきた。

「んっ! ・・・・・・躾のなっていない犬だな」

 舌を甘噛みされて、文句を言うと「なら躾けてくれ」と犬であることを喜んで受け入れた。

 もう、こうなったら素直になったほうが楽だというものだ。こいつの気持ちは真っすぐ過ぎて、私にはくすぐったくて堪らないが――。


「やめっ! それ以上そこは――っ」

 そうだ、こいつは女は胸だと言っていたなと、思い出す。男の胸も好きらしい。二つの小さな粒を丹念に弄り、ピンと立つそれに舌を這わす。

「俺好みだ――」
「あっ! やめろって――」

 手で頭を抑えようとしたが、力の差がありすぎて、手首は軽く一纏めにされた。

「うっくっ・・・っ!」
「何でこんなに敏感なんだ?」
「知るか!」

 風呂で身体を擦る時以外に触ることなどないだろう場所が敏感とか言われても、答えなどありはしない。

 正直、この男が満足するころには、ぐったりとしてしまった。体力がないわけではないが、基本身体が主体の騎士と一緒にされても困るのだ。

「ふふっ、お前のここに・・・・・・」

 何を想像しているのかはわかるが、とりあえず、無視だ。こんな枕を腰の下にいれて、あそこもここも見られている状態で、どうしようもない。

「とりあえず、こっちだな」

 きっとそこを擦られるのだと思っていた。しごいて、出して・・・・・・と。

「やっ! やめろって――。待て――、今度こそ本当に待て――」

 腰を掴まれ足を上げた状態で、あそこを吸われた・・・・・・。ギュンッと力強く勃つそこを口に含まれ、慌てたところを何度も吸われた。暴れてもやはり力は緩むことなく。

「何だ? ここ気持ちいいだろうが」

 女の口より大きく熱く、吸い込む力も半端ない。波にさらわれるように、快感が怒涛のごとくやってきた。

「喋るな――」

 シーツを握りしめても腰が痺れるような快楽は抑えることが出来ず、喋る口の動きで更に追いつめられた。

「くっ! あ・・・・・・っ」

 勢いよく出たのをこの男は飲んだ。
 呆然とする中で、麦芽酒でも勢いよく飲んだかのように口元を拭う。

「早いな・・・・・・。びっくりしたぞ、達く時は達くっていってくれ」

 馬鹿にされているような気もしたが、言葉にならない。なんだろう、この罪悪感みたいなものは。言わせてもらうが、ここ最近リチャード様の結婚の準備で忙しくて、抜いてなかったんだ。女を呼ぶ時間もなかった・・・・・・。が、やはり口にするのは躊躇われた。

「どうした? 早すぎた自分にビックリしてるのか?」

 私が何も文句を言わないのが気になるのか男は顔を覗きこんでくる。

「もういいから・・・・・・早くしてくれ・・・・・・」

 言い訳をすれば、何だか本当に早いのだと認めることになりそうで、とりあえず先にすすめて欲しいと口にした。

「おまっ、え、煽るなよ――」

 顔を赤らめて、男は恥ずかしそうにそんなことを言う。

「待て、煽るって何がだ――?」
「早く・・・・・・とか。ちゃんと解さないと大変なことになるらしいからな。早くしてやりたいが、待ってくれ」

 真っ白になった頭の中で、そう言えば女達が強請るように「早く・・・・・・くださいませ」とかいってたのを思い出した。

 何、私は今強請ったことになっているのか? 早かったことよりそちらのほうが重要な気がしたが、何だか笑いが込み上げてきた。

「ブフッ!」
「どうした?」
「ゲフッ・・・・・・グッ・・・・・・ハハハ――」

 吹き出したら止まらなくなった。腰を抱えられて、この状態で捩るように身を返し、笑いを抑えようと頑張ったが、無駄だった。

「ヒー・・・・・・っ、苦し・・・・・・」

 やっと何故か私が笑い出して止まらなくなっているように気付いた男は、怒ったように私の尻に指を突き入れた。

「あっ・・・・・・」

 グイグイ押して来るので痛みと違和感で笑っている余裕がなくなる。

「お前は、本当に雰囲気とかぶち壊すよな」
「痛っ、ちょ・・・・・・待って。私が悪かったから油を使ってくれ」

 私の先走りを絡めているとはいえ、本来そういうことに使わない器官だ。ないならともかく、薔薇とかの匂いがする油があると言っていたのだから使ってほしい。

「もう、笑わないか?」
「多分・・・・・・」

 突然やってくる笑いの神はいつ来るかわからないが、とりあえず今の笑いのツボは痛みでどこかへいったので、頷いた。

「お前の爆笑するところなんて、レアなんだ。いつも綺麗な顔を顰めているからな。でも今は・・・・・・、爆笑されると、馬鹿にされているような気がして・・・・・・」

 いつも元気な自信に溢れたこいつが、情けないくらいの声を出すなんて・・・・・・と、今更ながら私はこいつのギャップに弱いのだと気付いた。

「すねるな・・・・・・」

 チュッと音を立てて唇にキスしてやると、目元を少し赤く染める。お前こそそんなキャラじゃないくせに、気持ち悪い。と、酷いことを思いながら何度かキスを続けた。

「好きだ――」

 真剣な告白だって、私は受け取るつもりはない。

「知っている」
「愛してる――」

 グイグイ攻めてくるこいつは本当に嫌な男だ。

「返すつもりはない――」
「知っている」

 私の真似をする男だが、それが戯れでないのは瞳の熱さでわかっている。

「ここに・・・・・・受け入れるのは俺だけにしてほしい」

 懇願のような要求。

「お前だって、今日だけかもしれない」
「それは・・・・・・、良くするようにがんばる」

 唇は、それだけを言葉にして、男の指が油を纏い私の中に来た。

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