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日常
しおりを挟む学校での明子も相変わらずである。手を振り振り近づく巨体に、咄嗟に身構える気持ちをほどくのも慣れた。
「奈緒ー」
明子が奈緒を呼ぶ高い声が、辺りをまっすぐに抜けていった。ふいに日差しが一際強くなった。つられるように、時期外れの蝉が季節本番の鈴虫に合わせて大きく鳴く。りんりんと、不協和音とも輪唱ともつかない大きな音の波を背に、明子は奈緒に追い付き、はにかんだ。
夏休みは終わったといえらまだまだ暑い。奈緒はカーディガンで軽く額に浮いた汗を押さえた。
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