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美咲晴海[安西の視点]
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初めて、お店に入った瞬間から彼に心を奪われそうになった自分に気づいていた。
彼の心(なか)と、自分の心(なか)が共鳴したのを感じていた。
だけど、こんなのは裏切りだ。
気づかないフリをして、スケッチブックに絵を描(えが)いたのに…
腕を掴まれて、告白までされた。
優しい痛みに胸が踊っていたのに、気づかないフリを続けた。
椚さんの運転する車に乗った時に、藤堂が話してきた。
「晴海は、いいやつだから。安西が、嫌じゃないなら考えてやってくれないか?」
「それは、出来ない」
「生きてる人間は、愛を欲しがるのは当たり前なんだよ。恥ずべき事じゃない。お腹がすくのと同じ事だよ。一生一人でなんて生きていけないよ」
藤堂に、そう言われた。
そして、今…。
晴海さんとキスをした。
自分が、許せなかった。
「とにかく、座りましょう。」
優しくされると彼を放したくなくなってしまう。
藤堂に言われたように、僕は愛を欲しがってる。
「ありがとう」
一度キスをされると、もっとキスをしたくなる。
僕は、霧人とさとを裏切ったのだ。
気づくと指輪を触(さわ)っていた。
「嫌なのに、ごめんなさい」
晴海さんは、また僕に謝った。
「嫌ではないんです。さっきも話しましたが、晴海さんは何も悪くないんです。僕が、僕を許せない。」
晴海さんは、泣いている。
「誰に、許されなきゃなんないんだ?」
「るか君」
「誰に、許されなきゃいけないんだよ。」
僕の掴んでる手を持ったまま、ネックレスをちぎられた。
「橘、何するんだ」
「だから、お前は嘘つきなんだ。」
あっ!
「るか君、駄目だよ。」
転がった指輪を、晴海さんが拾った。
「人が大切にしてるものをこんな風にしちゃ駄目だよ。はい、安西さん」
「ありがとう、晴海さん」
るか君は、僕の胸ぐらを掴んだ。
「安西、許されなくちゃならないなんてないんだよ。受け入れてくれようとする人間の手さえ掴めないなら、そんな物捨ててしまえ」
殴られると思った手を、晴海さんがとめてくれた。
「るか君、あの日、るか君が切りつけた絵は、僕が自分の気持ちに嘘をついた人物画だった。」
「人物画?」
「うん。美鈴さんに渡す為に描(か)いた絵だった。るか君は、僕に同じ事を言った。嘘つきって絵を刺された。」
「安西、もう嘘をつくなよ。晴海君なら、自分を受け入れてくれるってわかってるんだろ?俺も、それをわかったから星(ひかる)を受け入れようと決めたんだ。安西も、受け入れてみろよ」
そう言って、るか君は手をおろした。
「星(ひかる)行くぞ」
そう言って彼と向こうに行ってしまった。
「チェーン直さなくちゃいけないよ。」
「もう、いいんだ。」
僕は、手の中の指輪をポケットにしまった。
「安西さん、駄目ですよ。大切なものなんですよね」
「晴海さん、僕は、最初から気づいていたんだ。晴海さんを見た時から惹かれていた。気づかないフリをしていたんだ。裏切っていた。」
「安西さん、喜んでいいですか?」
晴海さんは、ニコニコと笑ってる。
「晴海さんに釣り合うように、こんな姿はやめなくちゃいけないね。」
「どうしてですか?この姿には、何かがおきてなったんですよね?」
「霧人が、死んで。毎日泣いて、泣いて、過ごしていた。一年泣いたら、涙がでなくなった。久しぶりに鏡を見た僕は、この姿だったよ。霧人を忘れない為に、何もしなかったし、したくもなかった。だけど、晴海さんと向き合うなら…。」
「しなくていいです。安西さんが、霧人さんを忘れる必要はないです。俺も渚を忘れられません。だから、俺と安西さんは同じですよ。」
晴海さんは、僕を抱き締めてくれた。
こんな風に抱き締められたのは、5年ぶりだった。
僕は、やっぱり、愛を欲しがっている。
哀れな人間だ。
結局は、一人でなど生きていけないのだ。
二人も死なせた僕を、晴海さんは、抱き締めてくれる。
感情が流れてくるのを感じる。
怖いのに、暖かい。
手放せなくなるのを感じる。
どうすればいいのだろうか?
霧人、さと、幸せを感じていいのだろうか?
彼の心(なか)と、自分の心(なか)が共鳴したのを感じていた。
だけど、こんなのは裏切りだ。
気づかないフリをして、スケッチブックに絵を描(えが)いたのに…
腕を掴まれて、告白までされた。
優しい痛みに胸が踊っていたのに、気づかないフリを続けた。
椚さんの運転する車に乗った時に、藤堂が話してきた。
「晴海は、いいやつだから。安西が、嫌じゃないなら考えてやってくれないか?」
「それは、出来ない」
「生きてる人間は、愛を欲しがるのは当たり前なんだよ。恥ずべき事じゃない。お腹がすくのと同じ事だよ。一生一人でなんて生きていけないよ」
藤堂に、そう言われた。
そして、今…。
晴海さんとキスをした。
自分が、許せなかった。
「とにかく、座りましょう。」
優しくされると彼を放したくなくなってしまう。
藤堂に言われたように、僕は愛を欲しがってる。
「ありがとう」
一度キスをされると、もっとキスをしたくなる。
僕は、霧人とさとを裏切ったのだ。
気づくと指輪を触(さわ)っていた。
「嫌なのに、ごめんなさい」
晴海さんは、また僕に謝った。
「嫌ではないんです。さっきも話しましたが、晴海さんは何も悪くないんです。僕が、僕を許せない。」
晴海さんは、泣いている。
「誰に、許されなきゃなんないんだ?」
「るか君」
「誰に、許されなきゃいけないんだよ。」
僕の掴んでる手を持ったまま、ネックレスをちぎられた。
「橘、何するんだ」
「だから、お前は嘘つきなんだ。」
あっ!
「るか君、駄目だよ。」
転がった指輪を、晴海さんが拾った。
「人が大切にしてるものをこんな風にしちゃ駄目だよ。はい、安西さん」
「ありがとう、晴海さん」
るか君は、僕の胸ぐらを掴んだ。
「安西、許されなくちゃならないなんてないんだよ。受け入れてくれようとする人間の手さえ掴めないなら、そんな物捨ててしまえ」
殴られると思った手を、晴海さんがとめてくれた。
「るか君、あの日、るか君が切りつけた絵は、僕が自分の気持ちに嘘をついた人物画だった。」
「人物画?」
「うん。美鈴さんに渡す為に描(か)いた絵だった。るか君は、僕に同じ事を言った。嘘つきって絵を刺された。」
「安西、もう嘘をつくなよ。晴海君なら、自分を受け入れてくれるってわかってるんだろ?俺も、それをわかったから星(ひかる)を受け入れようと決めたんだ。安西も、受け入れてみろよ」
そう言って、るか君は手をおろした。
「星(ひかる)行くぞ」
そう言って彼と向こうに行ってしまった。
「チェーン直さなくちゃいけないよ。」
「もう、いいんだ。」
僕は、手の中の指輪をポケットにしまった。
「安西さん、駄目ですよ。大切なものなんですよね」
「晴海さん、僕は、最初から気づいていたんだ。晴海さんを見た時から惹かれていた。気づかないフリをしていたんだ。裏切っていた。」
「安西さん、喜んでいいですか?」
晴海さんは、ニコニコと笑ってる。
「晴海さんに釣り合うように、こんな姿はやめなくちゃいけないね。」
「どうしてですか?この姿には、何かがおきてなったんですよね?」
「霧人が、死んで。毎日泣いて、泣いて、過ごしていた。一年泣いたら、涙がでなくなった。久しぶりに鏡を見た僕は、この姿だったよ。霧人を忘れない為に、何もしなかったし、したくもなかった。だけど、晴海さんと向き合うなら…。」
「しなくていいです。安西さんが、霧人さんを忘れる必要はないです。俺も渚を忘れられません。だから、俺と安西さんは同じですよ。」
晴海さんは、僕を抱き締めてくれた。
こんな風に抱き締められたのは、5年ぶりだった。
僕は、やっぱり、愛を欲しがっている。
哀れな人間だ。
結局は、一人でなど生きていけないのだ。
二人も死なせた僕を、晴海さんは、抱き締めてくれる。
感情が流れてくるのを感じる。
怖いのに、暖かい。
手放せなくなるのを感じる。
どうすればいいのだろうか?
霧人、さと、幸せを感じていいのだろうか?
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