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麻ちゃんを怒らないであげて
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彼女が、出ていった後。
栞が、救急箱を持って戻ってきた。
「警察は?」
「麻美が、対応してる。」
「そっか。」
そう言った俺の頬を見る。
「傷痕残るよ、これ」
「そう?」
「変に切れてる。病院行く?」
「いいよ、いいよ。」
「月が思ってるより深い。」
「治るだろ?頬ぐらい」
そう言って笑った。
「染みるよ。」栞に言われて我慢する。
「痛みに強いのは、昔から殴らたり刃物で傷つけられてたから?」
「かもな。」
「メスの傷、まだあるの?身体中」
「身体中は、言い過ぎ。」
「だって、よくお兄さんにやられてたじゃん。テストが上手くいかなかった時」
「まあな。」
大きなガーゼを貼ってくれた。
机の上に置かれた紙に大量の血が落ちてる。
頬の傷は深いのだと理解した。
「でも、首じゃなくてよかった。僕、月が死んだらどうしようって思った。」
栞の目から涙がポロポロ落ちてきた。
「ごめん。大丈夫だよ。」
そう言って栞の頭を撫でる。
「月が、彼に本気な気持ちは伝わったよ。でも、僕だって月が大切なのはわかってよ。」
「わかってるよ。ごめん。」
栞はたぶん、あの日が甦ってるんだ。
14年前ー
「月、迎えに来たよ。お祭り」
「お前は、どうやって死ぬのがいい?」
「何してるの?」
「大丈夫だから、待って」
「大丈夫じゃない。」
「兄弟喧嘩に口挟まないでくれる?」
兄貴が、栞に振り上げた手を俺が止めた。
「くそが」イタッ…
兄貴は、持っていたアイスピックで俺の足を刺した。
「ごめんね。月。ごめんね。」
「大丈夫だよ。」俺は、足を器用に止血する。
「すごいね。」
「父さん、見てるから。」そう言って笑った。
麻ちゃんが、扉を開けてはいってくる。
「警察は?」
「泥棒じゃなかったと話しました。」
「そう。」そう言った後、栞が麻ちゃんに「あのさ、警察呼ばないでよ。月が殺(や)られてたかもしれない。彼女があの時冷静になったからよかったけど、そうじゃなかったら月が死んでたかもしれない」
そう言った栞の言葉に、麻ちゃんの目から涙がポロポロと流れてきて「すみません」と言った。
「栞、麻ちゃんを怒らないであげてよ。麻ちゃんは、栞に何かあったらと思って怖かったんだよ。」
栞は、麻ちゃんを見て「ごめん」と言った。
麻ちゃんは、出て行ってしまった。
「何か、疲れたよ。」
俺は、応接室の床に寝転んだ。
「ちょっと寝(ね)な。僕が、いるから」
「うん。」
栞は、机の上の紙を見てる。
「僕の事も、月の事もよく調べたね。」
「探偵だろ?」
「そうだろうね。月の両親、元気そうだね」
「ああ、見た見た。さっきの子からしたら俺は恵まれてるらしい。ハハハ」
「あの子、お金が全てっぽかった。」
「なんか、見えた?」
「うん、金を飲んでも飲んでも喉が渇く化け物に見えてた。」
そう言ってささっとそこにある紙に絵を描(か)いた。
「ヤバイな。それ」
札束飲んでる化け物が、描(えが)かれてる。
「でしょ?僕には、もう彼女は人ではなかったよ。ハハハ」
「だな。不思議だよな。栞って」
「僕も、不思議」
「昔、公園にいたおじさんにあの人飛べるね。羽根があるって言ってたの覚えてる?」
「覚えてるよ。懐かしいな。それから、月の星公園大好きだった。」
「また、行こうよ。月の星公園。」
「そうだね。太陽の丘(こっち)に来てからは、全然行ってないな。」
「だよな。地味に俺の家から遠くて毎回タクシーだし。」
「そっちは、星の丘でしょ?ってか、これ見たら月の両親は、月の丘に住んでるんだね?」
「そうだね。」
「月城(つきしろ)病院って月町(つきまち)では、一番大きな病院の院長になったんだね。宇宙(そら)さん。」
「見た見た。流星兄ちゃんは、星町(ほしまち)の一番大きな病院の院長になってる。」
「本当だ、星城(ほししろ)病院になってる。」
「親父は、昔からあの家でやってたけどさ。」
「だね。僕も中学で親が星町に引っ越したから知らなかったよ。」
「俺も、ばあちゃんち星町だったからな。向こうに行く事なかったから知れてよかった。」
そう言って俺は、横になった。
「おやすみ。」
「ああ」
ポケットからスマホを出して、頭元に置いた。
俺は、栞の痛みに気づいてなかった。
栞がする事に、気づけなかった。
疲れから、すぐに眠ってしまった。
栞が、救急箱を持って戻ってきた。
「警察は?」
「麻美が、対応してる。」
「そっか。」
そう言った俺の頬を見る。
「傷痕残るよ、これ」
「そう?」
「変に切れてる。病院行く?」
「いいよ、いいよ。」
「月が思ってるより深い。」
「治るだろ?頬ぐらい」
そう言って笑った。
「染みるよ。」栞に言われて我慢する。
「痛みに強いのは、昔から殴らたり刃物で傷つけられてたから?」
「かもな。」
「メスの傷、まだあるの?身体中」
「身体中は、言い過ぎ。」
「だって、よくお兄さんにやられてたじゃん。テストが上手くいかなかった時」
「まあな。」
大きなガーゼを貼ってくれた。
机の上に置かれた紙に大量の血が落ちてる。
頬の傷は深いのだと理解した。
「でも、首じゃなくてよかった。僕、月が死んだらどうしようって思った。」
栞の目から涙がポロポロ落ちてきた。
「ごめん。大丈夫だよ。」
そう言って栞の頭を撫でる。
「月が、彼に本気な気持ちは伝わったよ。でも、僕だって月が大切なのはわかってよ。」
「わかってるよ。ごめん。」
栞はたぶん、あの日が甦ってるんだ。
14年前ー
「月、迎えに来たよ。お祭り」
「お前は、どうやって死ぬのがいい?」
「何してるの?」
「大丈夫だから、待って」
「大丈夫じゃない。」
「兄弟喧嘩に口挟まないでくれる?」
兄貴が、栞に振り上げた手を俺が止めた。
「くそが」イタッ…
兄貴は、持っていたアイスピックで俺の足を刺した。
「ごめんね。月。ごめんね。」
「大丈夫だよ。」俺は、足を器用に止血する。
「すごいね。」
「父さん、見てるから。」そう言って笑った。
麻ちゃんが、扉を開けてはいってくる。
「警察は?」
「泥棒じゃなかったと話しました。」
「そう。」そう言った後、栞が麻ちゃんに「あのさ、警察呼ばないでよ。月が殺(や)られてたかもしれない。彼女があの時冷静になったからよかったけど、そうじゃなかったら月が死んでたかもしれない」
そう言った栞の言葉に、麻ちゃんの目から涙がポロポロと流れてきて「すみません」と言った。
「栞、麻ちゃんを怒らないであげてよ。麻ちゃんは、栞に何かあったらと思って怖かったんだよ。」
栞は、麻ちゃんを見て「ごめん」と言った。
麻ちゃんは、出て行ってしまった。
「何か、疲れたよ。」
俺は、応接室の床に寝転んだ。
「ちょっと寝(ね)な。僕が、いるから」
「うん。」
栞は、机の上の紙を見てる。
「僕の事も、月の事もよく調べたね。」
「探偵だろ?」
「そうだろうね。月の両親、元気そうだね」
「ああ、見た見た。さっきの子からしたら俺は恵まれてるらしい。ハハハ」
「あの子、お金が全てっぽかった。」
「なんか、見えた?」
「うん、金を飲んでも飲んでも喉が渇く化け物に見えてた。」
そう言ってささっとそこにある紙に絵を描(か)いた。
「ヤバイな。それ」
札束飲んでる化け物が、描(えが)かれてる。
「でしょ?僕には、もう彼女は人ではなかったよ。ハハハ」
「だな。不思議だよな。栞って」
「僕も、不思議」
「昔、公園にいたおじさんにあの人飛べるね。羽根があるって言ってたの覚えてる?」
「覚えてるよ。懐かしいな。それから、月の星公園大好きだった。」
「また、行こうよ。月の星公園。」
「そうだね。太陽の丘(こっち)に来てからは、全然行ってないな。」
「だよな。地味に俺の家から遠くて毎回タクシーだし。」
「そっちは、星の丘でしょ?ってか、これ見たら月の両親は、月の丘に住んでるんだね?」
「そうだね。」
「月城(つきしろ)病院って月町(つきまち)では、一番大きな病院の院長になったんだね。宇宙(そら)さん。」
「見た見た。流星兄ちゃんは、星町(ほしまち)の一番大きな病院の院長になってる。」
「本当だ、星城(ほししろ)病院になってる。」
「親父は、昔からあの家でやってたけどさ。」
「だね。僕も中学で親が星町に引っ越したから知らなかったよ。」
「俺も、ばあちゃんち星町だったからな。向こうに行く事なかったから知れてよかった。」
そう言って俺は、横になった。
「おやすみ。」
「ああ」
ポケットからスマホを出して、頭元に置いた。
俺は、栞の痛みに気づいてなかった。
栞がする事に、気づけなかった。
疲れから、すぐに眠ってしまった。
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