ふたりの愛らぶyou

三愛 紫月 (さんあい しづき)

文字の大きさ
92 / 250

氷雨との本当のお別れ

しおりを挟む
目覚めたら、氷雨の姿はなかった。

トボトボと部屋をでた。

「シャワーはいってきて、ご飯できるから」

「はい。」

僕は、洗面所に言った。氷雨がお水を置いていてくれていて飲んだ。

シャワーを浴びて、でてきた。

「星(ひかる)の服、洗濯して今乾燥してるから」

「ありがとう」

なぜか、朝から麻婆豆腐をだされた。

「ここにきたらいつもこれ食べてる。」

「いただきます。」

口の中に広がったのは、紛れもなく僕の味だ。

涙が、ポタポタと落ちてく。

「本当のお別れなんだね。」

「うん」

「指輪は?」

「これ、あげる。」

そう言って差し出されたのは、ネックレスだった。

「サイズがわからないから、いつか渡そうと思ってた。」

そう言って氷雨は、自分のネックレスを見せた。

二つを繋げると星の形になる。中には、雨の形が刻まれている。

「無理なんだね。どう頑張っても」

「うん。」

「僕も、氷雨の幸せをちゃんと願えない」

「僕もだよ。」

一緒にいると欲深くなっていく。

愛してるけど、傍にいれない。

「愛してるけど、傍にいれない。」

氷雨と一緒に言った。

こんな言葉をハモる必要ある?

「でも、一生忘れないから」

「僕もだよ。」

僕は、麻婆豆腐を食べる。

「兄さんの目が覚めたら、連絡するから」

「うん。」

病院には来ないでって遠回しに言われた。

「本当は、僕が星を幸せにしたかった。」

氷雨の目から涙が、こぼれ落ちる。

「僕も、氷雨を幸せにしたかったよ。」

涙が、麻婆豆腐にポタポタ落ちる


「こんな愛もあるんだね。」

「うん。そうだね。」

苦しくて、悲しくて、辛くて、相手の幸せさえ願えない愛。

全てを飲み干してしまいたくなる愛。

焼き尽くす炎は、どちらかを灰にするまで終わりはしない。

どれだけ愛してると言われようと信じる事もできない。

氷雨が、結婚しているからではない。

最初から、そういう愛なのだ。

「ごめんね。一緒にいたら疑心暗鬼になって休まる日がない。」

「僕もだよ。星が月さんと話すだけで疑ってしまう。それだけじゃない、働いていても疑う。」

そう言って、氷雨はコーヒーをいれにいった。

「最初に出会った時の、感情(きもち)がどう頑張っても見つけられない」そう言ってコーヒーを渡された。

「わかってるよ。同じだから…。傷つけたくなるし、言いたくない言葉がでる。でもね、止められないの。氷雨を食べて体の一部にしたい衝動も止められないの。心(ここ)に化け物を飼ってるんだよ。」

涙が、おちてく。

「僕も同じ。体の一部にしてずっと暮らしたいと思う。そんな自分が怖くて仕方ない。だけど、止められないんだよ。」

氷雨の涙が、コーヒーカップにおちてく。

「一緒にいたいのにいれないなんて、嫌だよ。星。嫌だけど、これ以上、星を苦しめたくない。悲しい顔をさせたくない。化け物に心を食べられて欲しくない。だから、お別れしよう。」

胸を貫く痛み、締め付ける痛み、
涙が溢(あふ)れて止まらない。

「僕も氷雨に化け物になって欲しくない。止められない衝動に突き動かされて欲しくない、悲しい顔をして欲しくない。だから、僕もお別れするよ。本当は、一緒にいたい。ずっと、一緒にいたい。でも、僕は氷雨に穏やかな愛を与えてあげられない。ごめんね、氷雨。こんなに愛してしまって」

涙がとめどなく流れていく。

「僕も、ごめんね。星をこんなに愛してしまって…。優しい愛を与えてあげようと思ったのにできなくてごめんね。」

そう言って、氷雨も泣いていた。

こんな愛は、間違ってるって言われると思う。

愛とは、穏やかなものだって誰が決めたの?

だって、僕は氷雨を心から愛してるよ。

ただ、想像した愛ではなかっただけ…。

こんなに求めて、愛し合ってるのに一緒にいれないなんて…

「ごちそうさま」僕は、そう言って立ち上がった。

「はい、服」氷雨が服を持ってきてくれた。

ギュー着替える前に抱き締められた。キスまでされた。

僕は、服を着替えた。


「下まで送るよ。タクシーは呼んでるから」

「いい、玄関で」

これ以上いるとまた、化け物に飲み込まれてしまう。

「わかった。星」

そう言って、ギューって抱き締められた。

「ネックレスつけていい?」

「うん。」氷雨がつけてくれた。

「プラチナだから、はずさないで」

「わかった。」

「僕と星の愛だから」

「うん」

名残惜しいようにキスをした。

長い長いお別れのキス。

「さよなら、氷雨」

「さよなら、星」

パタン、玄関を閉めた瞬間、氷雨の泣き崩れる声がした。

僕も、泣いて泣いて歩きだした。 

愛してたよ、氷雨


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

【完結】君の穿ったインソムニア

古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。 純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。 「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」 陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

処理中です...