ふたりの愛らぶyou

三愛 紫月 (さんあい しづき)

文字の大きさ
172 / 250

大切が違うから

しおりを挟む
「俺は、美咲が大切なんだよ。だから、こんなのに引っ掛かって傷ついて欲しくないんだよ。」

「大切、大切って、だったら俺と付き合ってくれてもよかったじゃないか」

美咲さんは、椎名さんの言葉に本音を言った。

「付き合う?なんで、俺と美咲が?昨日の答えか、決まったならするよ。彼氏の前だけどいいのか?」

バシャ…

俺は、怒りで水をかけてしまった。

「なにするんだ、仕返しか」

「飲みすぎだから、頭冷やした方がいいと思って」

そう言った俺を椎名さんは、睨みつけた。

「美咲、別れるべきだよ。」

「別れないよ」

「俺に相手にされなかったら、誰でもいいのか?」

「誰でもよくないよ、月(るい)だからいいんだよ。」

椎名さんは、頭をふった。

「大切にしてるって、わかんないだろ?口では、何だって言えるんだよ。俺は、美咲が大切だから言ってるんだよ」

「しーちゃんの大切と月の大切は違うよ。」

「そんなの違うに決まってるだろ?」

「仕事仲間として、これからもよろしく。だから俺は、しーちゃんとはもうプライベートは、過ごさないから」

「なに、それ?本気で、こいつがいいの?」

「そうだよ」

美咲さんは、力強く言った。

俺には、この人が何を言いたいのかわからなくなってきた。

「あっそ。じゃあ、もういいわ。俺、美咲には幸せになって欲しかったんだけどな。」

そう言って、立ち上がった。

「美咲、俺にたいしての気持ち。まだ残ってるなら捨ててよ。そう言う恋愛的な気持ちは、いくら綺麗な美咲でも嫌だから」

「ちょっと待てよ。そんな言い方ないだろ?」

俺は、歩きだそうとした椎名さんの胸ぐらを掴んでいた。

「あのね、当たり前だよね。普通の感情(きもち)わかる?橘さんには、わからないよね?」

「当たり前とか普通ってなんだよ。椎名さんと同じだろ?女に恋してるのとかわらない。」

「あー。橘さんって女好きから男に乗り換えたタイプね。俺は、そうならないから…。周りにいても何とも思わないんだよ。だけど、自分を好きってなると話しは違うよね?そういうの嫌だなって、大人だから気持ち悪いとかまでは言わないよ。ただ、嫌なだけ。」

そう言いはなった目が冷たい。

「詩音を大切なのは、嘘なのか」

「嘘じゃないよ。仲間として、友達として大切だよ。幸せになって欲しいとも思ってる。ただ、俺への気持ちがあるなら捨ててって話。さっきも言ったけど、嫌だなって話」

「もういいよ、月。離してあげて」

俺は、そう言われて椎名さんから手を離した。

「美咲、こんなやつやめとけよ。美咲は、綺麗な顔してるんだからもっと違うやつがいるよ。」

「それでも俺は、月(るい)が好きだから…。だから、今日呼んだのはしーちゃんに昨日の件は出来ないって伝える為だから。俺は、今
、月が大切で大好きだから」

「あっそ。ならよかった。じゃあ、帰るわ」

椎名さんは、美咲さんを見ずに手をあげて帰って行った。

店の扉が閉まった。

「カッターシャツもスーツも、染みになっちゃうよね」

美咲さんは、タオルでまた俺の服を拭いてくれてる。

俺は、美咲さんを抱き締めていた。

「月君、もう終わったよ」

「終わってないよ。辛いんでしょ?傷ついたんでしょ?」

「あー。」

美咲さんが、泣き出した。

「華や晴海の言う事は、聞くもんだね。二人が反対してたのは、こうならないようにだったのかな」

美咲さんは、俺を抱き締める。

「大切、大切って言われる度に、苦しかった。極めつけは、嫌だなだって。本当は、気持ち悪いって思ってたんだよ。ずっと、俺の事」

「気持ち悪くなんてないですよ。」

美咲さんは、俺から離れた。

「キツいね。俺、しーちゃんと一緒に働けるかな。でも、働かないといけないよな。プライベートと仕事は、別だよ。しーちゃんの作る料理にお客さんもついてる。何より、この店には必要だから…。でも、明日会うのキツいよ。」

美咲さんは、テーブルの上のワインを片付けながら泣いてる。

俺は、それを見ている事しか出来なかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

【完結】君の穿ったインソムニア

古都まとい
BL
建設会社の事務として働く佐野純平(さの じゅんぺい)は、上司のパワハラによって眠れない日々を過ごしていた。後輩の勧めで病院を受診した純平は不眠症の診断を受け、処方された薬を受け取りに薬局を訪れる。 純平が訪れた薬局には担当薬剤師制度があり、純平の担当薬剤師となったのは水瀬隼人(みなせ はやと)という茶髪の明るい青年だった。 「佐野さんの全部、俺が支えてあげますよ?」 陽キャ薬剤師×不眠症会社員の社会人BL。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

処理中です...