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拓夢の最初の話【1】

解散します

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『どうした?拓夢』

ギターの松田優太、まっつんが俺に話しかける。

「大事な話あって」

『何、大事な話って?』

ドラムの金田篤、かねやんが顎に手を当てながら俺を覗き込む。

「うん、あのさー」

『待って、待って!心の準備』

キーボードの瀬戸俊太、しゅんが俺を制止していた。

「いいかな?」

『オッケー』

三人は、丸を作って言った。

「バンド解散しようと思ってる」

『えっ?』

『何で?』

『嘘だろ』

中学時代から始めたバンド、snowrose。全員が薔薇と雪が好きだからって理由でつけた!単純な名前ながら、それなりにファンもついてきていた。

『拓夢、何でだよ!』

まっつんの声に我に返った。

「智が辞めることになったから」

『はぁー?意味わかんないんだけど』

かねやんは、苛々しながら煙草に火をつけていた。

「智、結婚するって!彼女の腹ん中にガキがいるらしい」

『ふざけんなよ』

ダンッとしゅんが机を殴り付けていた。

『約束違うじゃねーかよ!バンドで飯食えるまで、ちゃんとするって決めてたよな?』

かねやんは、苛々していた。

「そうだけど、家族がいたら夢なんか見れないって言われたんだ」

『何で、勝手にしてんだよ!俺等、ちゃんと避妊してんだぜ』

まっつんは、ボロボロ泣き出していた。

『拓夢、これが最後のチャンスだったんだろ?』

しゅんも泣いていた。

「でも、俺。この五人じゃないとバンドするつもりないから…」

『わかってるから、俺等ちゃんと避妊してたんだよ!』

まっつんの声が震えてる。

『最低だよ!智輝(ともき)マジでありえねーわ』

かねやんは、煙草の火を消しながら苛立っている。

「わかってる」

『ふざけんなよ!どんだけ、頑張ってきたかわかってんのか?俺等、就職もちゃんとしたじゃんか!親に心配掛けない道も選んだじゃんか』

しゅんが泣きながら言う言葉に、俺も泣いていた。

『断わるって意味だろ?』

「ああ、ごめん」

『もしかしたら、メジャーデビュー出来たかもしれないのにな』

『拓夢、俺!マジで悔しいよ』

『智の事、一生許せない』

「わかってる。みんな、ごめんな」

『解散は、もう少しだけ考えてくれないか?拓夢』

「まっつん」

『ここまでやってきたんだし、趣味で続けるってのも考えてよ』

「わかった!考えてみるよ」

考えられる筈なかった。

みんなといたら、メジャーデビューしたくなるに決まってる。だって、みんなで追っかけてきた夢がそこだったから…。

でも、無理だから…。

五人じゃないと無理だから…。そう考えたら絶望しかないんだ。
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