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凛の話4

ごめんね…この道を…

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龍ちゃんは、私からそっと離れた。

「お風呂入って、用意しようかなー」

涙を見せないように、洗面所に龍ちゃんは消えていく。私は、龍ちゃんを見つめながら泣いた。
出来ることなら、あの日に戻って「結婚は、出来ません」って、龍ちゃんに言いたいよ。
この人生(みち)に、連れてきてごめんね。
もしも、違う人を選んでたら…。
今頃、龍ちゃんは【パパ】になっていたよ!私には、わかるよ!
小さな赤ちゃん抱いて!
「パパですよー」って笑ってる龍ちゃんが想像つくよ!赤ちゃんのハプニングのテレビを一緒に見て「可愛いなー」って目を細めて笑ってる龍ちゃんを私知ってるよ!
だから、龍ちゃん。ごめんね、私のせいで…。

こんな針の山歩くみたいな道を選ばせてごめんね。

「お風呂洗ってきたよ」

龍ちゃんが、戻ってきた。必死で、涙を止めようとして拭うのに、まるで泉があるように湧き出て止まらなくて…。

「凛、言っていいんだよ」

龍ちゃんは、私の前に跪いて両手を握りしめた。

「ほら、我慢しないで!いいから言いなよ」

涙で、龍ちゃんがどんどん滲んでく。

「いいんだよ、凛」

「くない……」

「うん」

「あー、あー、諦めたくない」

「うん」

「続けたかった」

「うん」

「欲しかったよー、龍ちゃん。龍ちゃん、私、あか、あか、赤ちゃん欲しかったーー」

「そうだね」

「ああー、ああー」

私は、龍ちゃんの手を握りしめて赤ん坊みたいに泣いた。

「ごめんな…。俺じゃなかったら、もしかしたら…」

「がう…違う…。龍ちゃんは何も悪くない、何も…何も…」

私は、首を左右にブンブン振り続けた。ホラー映画の幽霊みたいに必死に振り続ける。

「首、痛めちゃうから」

龍ちゃんは、優しく私を抱きしめた。

「龍ちゃん、ごめんね。ごめんね、ごめんね」

「いいって」

「ごめんなさい、ごめんなさい、私がプロポーズ受けたからごめんね」

「俺が、凛じゃなきゃ結婚したくなかったんだ!ごめんな!苦しませる事しか出来なくて」

龍ちゃんは、私の背中を優しく擦ってくれる。

「ひ、ひっく…」

泣きすぎて、しゃっくりが出てきた。

「凛、辛かったね。悲しかったね。気づいてあげられなくてごめんな」

「うー、ううん。ひっく」

「凛、無理しないでいいからな!ゆっくりゆっくり、二人で生きる道を俺は見つけて行けたらいいって思ってる。確かに、赤ちゃんは欲しいよ!でも、こんな風に凛を苦しませるなら…。やめてもいいんだよ」

「龍ちゃん」

私は、龍ちゃんの背中に手を回した。辛くて、悲しいのは、同じなのわかってるよ。望んでるのだってわかってる。だけど、私、やっぱり龍ちゃんに申し訳ないよ!プロポーズを受け入れた事が、不倫をした事よりも申し訳ないなんて…。私、変わってるよね。
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