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拓夢の最後の話2

凛が欲しい

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「凛、大丈夫?しんどくない?」

「うん」

凛は、俺の首に手を回す。

「撮りたい?」

「撮らないよ」

「撮っていいよ」

「俺が、リベンジポルノしたらどうするんだよ」

「拓夢は、そんな事しない」

「じゃあ、データ取られるかもだろ?」

「それは、あるかも」

「撮って欲しいの?」

凛は、俺のおでこにおでこをくっつける。

「最後なら、そうしたい」

「昔、見た映画だろ?」

凛は、ニコって笑った。

「何で、わかったの?」

「何か話してくれたよなーって、いつだったっけ!ホテルに泊まった日だ!美紗が来て」

「そうだったね」

「何か、変な感じだよな!話ながらしてるなんて」

「うん」

「でも、今、俺、凛と一つになってる。どっから、俺で、どっから凛かもうわかんないや」

「わかるよ」

俺は、凛の唇をハムっと唇で噛んだ。

「んー」

「凛、一緒にいてよ」

「無理だよ」

凛の頬を涙が濡らす。わかってる。わかってるのに、凛が堪らなく欲しい。

「だったら、撮らせて」

「いいよ、拓夢なら」

凛は、そう言って、俺の両頬に手を当ててくる。そんなのいらない、凛が欲しいのに、俺は嘘をついた。

「一回いこうか」

「うん」

俺は、早く動き始める。さっきまで、一体化していたそれは、別のものだとわかり始める。

『ッッ』

声にならない声で、俺と凛は果てた。

「ハァ、まだ、出来る?ハァ」

「いいよ」

凛は、泣いてる。

「何で泣くの?凛」

「泣いてないよ、泣いてないから」

「泣いてるだろ?」

俺は、避妊具を縛ってゴミ箱に捨てた。

「最後だから、してあげようか?」

「いらないよ」

「頑張ったら、出来るかも知れないでしょ?」

「泣いてるのに、しなくていいよ」

「ごめんね」

立ち上がろうとする俺の腕を凛が掴んだ。

「謝らないでいいって」

「拓夢の事、愛してるよ!だけどね、拓夢には普通の幸せを掴まえて欲しいの」

凛は、俺の腕にしがみついてる。涙が当たってくのがわかる。

「不倫じゃなくてって事?」

「そうじゃない」

「じゃあ、何?」

「拓夢は、結婚して子供が出来て、そんな普通の幸せを掴まえて欲しいの」

「ふざけんなよ」

俺は、振り向いて、凛の肩を掴んで押し倒した。

「何で、そんな事言うんだよ!俺となら、出来るかも知れないだろ?やってみよう?なぁ?」

凛は、首を横にゆっくりと振ってる。

「普通って何だよ!凛。俺、幸せだよ!今だって、こんなに…」

「今は、結婚してないからだよ!結婚したら、拓夢と言い争うの」

「わかんないだろ?」

「わかるよ」

凛は、優しく言いながら俺の涙を拭ってる。

「だったら、やってみよ!俺との子なら、作れるかもだろ?」

「それが、何になるの?」

凛は、そう言って泣いた。

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