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エピローグ【拓夢の話1】

旦那さんには、連絡した?

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トイレに行って戻ってくると、凛はキッチンで鍋を見つめていた。俺は、凛に近寄る。

「旦那さんには、連絡した?」

「したよ」

「何て言ったんだ?」

「理沙ちゃんちに暫くいるって。あっ、実はね、理沙ちゃんとまっつんさんと夫とご飯食べたの」

「そっか」

「理沙ちゃんなら、安心だねって」

「そっか」

「それで、電話切ろうとしたら、ごめんなって言われちゃった」

そう言って、凛は泣いていた。

「いいよとか何も言えなかった。ただ、何でって聞いてた」

「うん」

「そしたら、何でもないから忘れてって言われて切られちゃって…。もう、かけ直すとか出来なかった」

俺は、涙を流す凛を抱き締める。

「頑張ったね」

そう言って、背中を擦った。

「きっと、もう、全部バレてるんだよ。あの子が、全部話しちゃったんだよ」

「まだ、わからないだろ?」

「わかるよ!だから、軽蔑したんだよ。結婚まで、蓮見君と関係してた事もわかっちゃったんだよ。もう、全部終わりだよ」

「凛、自暴自棄になっちゃ駄目だよ。まだ、何もわかってないから…。俺が、全部解決してやるから」

「どうやって?」

凛は、俺から離れて顔を覗き込んでくる。

「平田さんに蓮見の娘に会わせてもらうから!だから、凛は何も心配するな」

「拓夢に迷惑かけてごめんね」

「迷惑じゃないから…。撮影が終わったら、動くから…。遅くなるけど、ごめんな」

「全然、大丈夫だから」

「後、帰るなら、帰っていいから…。ちょっと待って」

俺は、リビングにある引き出しつきの棚を開けて合鍵を取った。

「凛」

「何?」

「俺、明日から仕事だから、これ鍵」

「ありがとう」

「後、一万で足りる?」

「いらない」

俺は、凛の手にお金を握らせる。

「こっちにいる間は、使って!足りなくなったら、また渡すから」

「拓夢」

「旦那さんのお金だろ?俺といるのに、使っちゃ駄目だよ」

「ごめんね」

「だから、謝らないでいいって」

俺は、凛の両頬を軽くつねった。

「笑ってよ!泣かないで、笑ってて」

凛は、その手に手を重ねてくる。

「拓夢、ありがとう」

ニコっと笑う凛の顔に、俺は泣いていた。

グー

「お腹すいたみたいだわ」

俺は、自分のお腹に手をやって笑う。

「もう、出来るから座ってて」

「わかった」

ダイニングテーブルに戻って、俺は座る。今さら、プラトニックな関係にはなれないのはわかっていた。俺は、自分の煩悩を消す為にスマホを見つめる。凛が、ロールキャベツを持ってやってくる姿を見つめる。それだけで、顔がにやける。抱き締めて、キスしたい衝動にかられる。駄目だ、駄目だ。

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