上 下
21 / 40

奈美姉ちゃん

しおりを挟む
マンションについた時、奈美姉ちゃんが立っていた。

「おかん、教えたんか?」

「昨日、しつこう連絡きたからついな。」

「アホちゃうか」

奈美姉ちゃんは、俺とおかんを見てる。

おかんは、鍵を開けて家に入ってく。

奈美姉ちゃんが、怒ってる。

「こっちゃんの命日、忘れてたん?今日かて、お父ちゃんの命日やで」

「わかってるよ。今から、するから」

奈美姉ちゃんは、お花とケーキの箱とビニール袋を下げてる。

「座り、お茶いれるから」

そう言われて、荷物をダイニングに置いた。

「こないだの月命日に、お墓に行ったらおばちゃんにおうて、お母ちゃん一度もいってないって聞いたんやけど。みっくんも行ってないんやろ」

「うん。こっち越してきてから、正月しか行かんなった。後は、お墓参り代行に頼んどる。」

奈美姉ちゃんの顔が、怒りの色に染まる。

「あんたら二人は、酷い人間やな。昨日かてこっちゃんの命日忘れてたんやろ」

奈美姉ちゃんが、泣いてる。

おかんは、黙ってお茶いれてる。

「奈美姉ちゃん、俺。こっちゃんとおとんのお墓にいかれへんねん。」

「みっくん、言わんでええの」

おかんは、俺を止めた。

「おかんは、悪ないねん。悪いのは俺やねん。俺が、10年前におかんにお墓に行きたくないって言うてん」

「なんで、そんなん言うんよ。」

「俺が、こっちゃんもおとんも死なせてしもたからや。」

奈美姉ちゃんは、言ってる意味がわからないって顔をしていた。

おかんは、奈美姉ちゃんにお茶を出した。

「みっくんやなくて、お母ちゃんが死なせてしもたんや」

お母ちゃんは、そう言ってダイニングに座る。

「お母ちゃん、あの日な、こっちゃんがトイレ言うて起きてきた時に話したんや。」

俺と奈美姉ちゃんは、驚いた顔をしておかんを見てる。

「5時頃やったわ。こっちゃん眠たいってフリして目擦っとったけど。目が真っ赤やった。お母ちゃん、こっちゃんに寝れてないんやないのって聞いたんや。でも、こっちゃんは眠ってた言うてきた。こっちゃんが、お母ちゃんあのな言うてそれ以上話さへんかった。」

そう言って、おかんはお茶を飲んでる。

「お母ちゃん、頭痛いから、もう一回寝るで言うたら、こっちゃんが、抱きついてきて、私、幸せやで、この家族が大好き。だから、これからも笑ってなって、いつも言わん事言うなって思っててん。」

そう言ってお母ちゃんの目から涙が流れてくる。

「こっちゃん、起きたら映画でも行こか?言うたら、こっちゃんがわかった。て言うた後でな。みっくんと奈美姉ちゃんに、ごめんねってお母ちゃんから言(ゆ)っててくれへんって言(ゆ)うから、喧嘩したんか?って聞いたら首を横にふってな。ほんなら、こっちゃん自分で話たらって言(ゆ)ったら、自分は喋られへんからって笑って言(ゆ)うんよ。」

おかんは、お茶を注いでまた飲む。

「何、言(ゆ)うてんの?って聞いたら、もう寝るわ、おやすみって行ってしもた。変な事、言(ゆ)うなって思ったんやけどな。お母ちゃん、頭痛薬飲んでたから寝てしもてん。」

おかんは、そう言って泣いた。

「こっちゃん、自殺やって言(ゆ)ってたんはそれのせいなん?」

奈美姉ちゃんが、泣いてる。

「ちゃう。もうええな、こっちゃん、お父ちゃん。もう、ええやろ?話して」

おかんは、仏壇に行っておとんとこっちゃんに言ってる。

「何か、こっちゃん残してたん?」

奈美姉ちゃんが、泣きながらおかんを見てる。

「残された私等は、ようさん苦しんだもんな。もう、22年も経つから本間の事話さなアカンな」

そう言って、おかんは自分の部屋に行った。

「みっくんは、知ってたん?」

「知らんよ。何も知らん」

「こっちゃんは、自殺やったん?」

「おかんは、時々話してたけどな。」

そう言ったら、おかんが箱を持って現れた。
しおりを挟む

処理中です...