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拜島さんとれん

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警察からの事情聴取が終わり、拜島さんは約束通り被害届はださないと言った。後は、警察に任せると。

僕も、今回の事に対する被害届は出さなかったけど…拜島さんが言ってくれたようにストーカーの被害届だけは出した。

また、あの人に会うかもしれないと思ったら怖くてたまらなかった。

自分の事は、男だから大丈夫と思ってた。でも、拜島さんに助けられた時僕は大丈夫じゃないんだってわかった。
思ってるより、弱いやつだった。好きな人に怪我までさせてしまって。

警察署を出ると雨がパラつきはじめていた。

拜島「どうぞ」

拜島さんが、助手席を開けてくれた。

れん「ありがとうございます。」

そう言って乗り込んだ。

拜島「じゃあ、帰りますか」

れん「はい。」

みんなの待つ家まで、ここからだと二時間半はかかる。今の街から学校は遠い。わざと、遠くに引っ越したんだ。
向島に会いたくないって気持ちを洋はわかってくれた。遠くになってもついてきてくれた。なのに、今こうして隣に拜島さんが居る事が嬉しいなんて。

拜島「雨が、強くなりそうですね。」

れん「本当ですね。」

拜島「今日は、直接自宅まで送りましょうか?もう、3時になりますから」

その言葉に少し黙って、僕は

れん「みんなに会いたくない。」

と言ってしまった。

拜島「では、直接送りますね。」

拜島さんが、エンジンをかける。

れん「洋と会いたくないんです。」

僕がそういうと拜島さんは

拜島さん「では、今日はどこかに泊まりますか?」

と言った。

一緒に泊まってくれるのかと一瞬思ったけど。そんな夢みたいな事あるわけない。僕は、気持ちがバレないようにすぐに返事をした。

れん「えっ?あっ、はい。どこか、ホテルの前でおろしてくれたら大丈夫です。」

そう言った僕に、拜島さんが

拜島「一旦、坊っちゃんにかけますのでエンジンを停めますね」と笑った。

れん「はい。」

拜島さんは、向島に電話をする

拜島「いろいろありまして、こんな時間になりました。」

拜島「今日は、雨が強くなりそうなので…。泊まって帰ろうと思います。」

その言葉に僕の心臓は早くなる。

拜島「皆さんを送れなくてすみません。」

拜島「はい。坊っちゃんから伝えて下さい。明日には帰りますので、よろしくお願いします。」

そう言って拜島さんは、電話を切った。

拜島「何か、服を買って行きますか?」

れん「大丈夫です。」

拜島「汚してしまいましたし、下着も必要ですから」

そう言って拜島さんは笑った。

れん 「じゃあ、買いに行きます。」

僕も笑った。

拜島さんが、エンジンをかけて走り出す。

しばらくするとミオンの看板が現れた。

拜島「ここで、いいですか?」

れん「はい。大丈夫です。」

ミオンの駐車場に車を停める。拜島さんが降りてきて助手席を開けてくれた。

まさか、一緒に買い物に来る日が訪れるなんて

嬉しくてたまらなかった。

れん「先に、拜島さんの服をみましょう」

拜島「わかりました。」

れん「下着は、僕も同じとこですし」

拜島「では、行きましょうか」

拜島さんと並んで歩く

あの手を繋いで歩けたらいいのにと何度も思う。

ミオンの服売場にきた。拜島さんのパジャマを見たり、服を選んだり、下着を選んだり、僕の服も選んだり、楽しくて楽しくてこのまま時間が止まってほしいと思った。






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