愛してる。梨寿&真白

三愛 紫月 (さんあい しづき)

文字の大きさ
16 / 20

別れ

しおりを挟む
次の日の夜、私と梨寿(りじゅ)は梨寿(りじゅ)の家にやってきていた。

「あの、その…。」

旦那さんは、話しにくそうにしていた。

「こちらは?」

梨寿(りじゅ)の言葉に旦那さんは、恥ずかしそうにしながら…

「市木千尋(いちきちひろ)だ。」

「その方が、何故ここに?」

「あのね、梨寿(りじゅ)、実は、俺達、付き合ってるんだ。」

梨寿(りじゅ)は、少し驚いた顔をしたけれどニコッと笑った。

「よかった。由紀斗が、一人だったらどうしようと悩んでいたの。私、真白(ましろ)と一緒に住もうと思っていたから」

その言葉に、由紀斗さんは泣いている。

「そんな風に言ってくれるとは、思わなかった。」

「何故?私達は、お互いをちゃんとまだ思っているじゃない?嫌いなわけじゃない。だから、由紀斗が幸せになりたいと思える人を見つけたならよかったと思ってるよ。」

梨寿(りじゅ)は、そう言ってニコニコ笑った。

「市木さん、由紀斗をよろしくお願いします。私じゃ、幸せに出来なかったから」

「そんな事ないですよ。俺なんかと付き合う前から由紀斗さんは幸せでしたよ。」

市木さんは、そう言って梨寿(りじゅ)に笑いかける。

何故か、こいつは嫌いだ。

きっと、両方いける人なんだ。

梨寿(りじゅ)をとられたくなくて、梨寿(りじゅ)の太ももに手を置いた。

「井田さん、梨寿(りじゅ)をよろしくお願いします。これから、幸せにしてあげて下さい。」

「梨寿(りじゅ)さんも、ずっと幸せでしたよ。私に会う前からずっと…。でも、幸せにします。約束します。」

梨寿(りじゅ)は、私に微笑んでくれて、ギュッと手を握りしめてくれた。

「由紀斗、私、今日から真白(ましろ)と住むから…。今まで、お世話になりました。ありがとう。幸せだったよ。ずっと…。でもね、子供に縛られる期間が長すぎちゃったよね。本当は、もっと前から二人で歩き出す人生を考えるべきだったよね。ごめんね、お父さんにしてあげられなくて。由紀斗は、いいお父さんになったよ。だって、体調が悪い私の為に家の事をしたり、ご飯を作ってくれたり、眠るまで看病してくれたりしてくれたじゃない。簡単に出来ないよ。そういうの…。」

梨寿(りじゅ)の言葉に、由紀斗さんは泣いている。

「俺も、今までありがどう。お母さんにならしてあげれなくて、ごめんね。梨寿(りじゅ)も、いいお母さんになったよ。ご飯もうまいし、優しいし、グッピーがいなくなった時も何日も泣いてさ。俺が、熱でた時も何時間も起きて看病してくれたり。結婚してる周りでも、そんな人少なかったよ。みんな、薬飲んで寝とけって感じだったから…。俺は、梨寿(りじゅ)と一緒になれてよかったよ。」

強い絆で、結ばれているのに…。

二人は、その絆を固くは結ばなかった。

スルスルとほどけてしまう程、緩く結んでいたのは、こんな風にいつかを考えていたから?

こんなに愛し合ってるのに、子供が出来ない。ただ、それだけで…。

二人の絆は、簡単にほどけてしまった。

わかるよ。

私だって、市木さんだって、しっかり手を繋いでいないと簡単に離されてしまうんだよ。

それだけ二人の間を繋げる、接着剤(こども)の存在は、他人である夫婦にとって強いものなのだ。

「ゆっくり、荷物片付けたりとりにくるから」

「わかった。」

「じゃあ、真白(ましろ)。私、服とかつめてくるね。」

「私は、車で待ってるから」

「うん、わかった。」

「失礼しました。」

「また、会いましょう。井田さん」

「はい」

私は、頭を下げて梨寿(りじゅ)についていく。

私と梨寿(りじゅ)も、簡単に離れていっちゃうのかな…。

「真白(ましろ)、心配しないで。大丈夫だよ。」

「梨寿(りじゅ)」

「こうやって、ちゃんと掴まえておくから」

何かに気づいて、梨寿(りじゅ)はそう言って、手をしっかりと握りしめてくれていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...