マナブのおばけ2

つしまつとむ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

マナブのおばけ2

しおりを挟む
   マナブのおばけ2

 マナブが目ざめました。起きて、あれ?と思いました。いつもと何かちがう、
「ううう」
マナブはまた、おばけになっていました。キッチンに行くと、
「おや、おばけのマナブだ」
と、おとうさん。
「あら、おばけのマナブ」
と、おかあさん。
「わあ、なんなの?」
と、おねえちゃん。
「おむかえにまいりました」
と、子オニ。え? 子オニ? とマナブは思いました。おまけにマナブの分の朝ごはんを食べていました。
「なんで、きみがいるの? なんで食べてるの?」
マナブが聞くと、
「ですから、おむかえに」
と、子オニがこたえます。
「家にはいれたんだ」
「そりゃ、ちゃんとげんかんからきたら、はいれるさ」
と、おとうさん。
「朝ごはん、まだだって言うし」
と、おかあさん。
「だって、かわいいじゃない」
と、おねえちゃん。
 この人たちは、ぼくがおばけになってもへいきなんだ、マナブは思いました。おころうという気持ちにもならずにマナブは子オニに聞きました。
「子オニ君は、ごはんたべるんだ」
「はい、オニですから」
「へえ。 ぼくはおばけになると、食べなくてもいいのにね」
「わたしはよくわかりませんが、オニは食べることもできるんです」
「ふうん。 で、むかえって、どこに行くの?」
「はい。学校です」
「学校って、おばけの学校に?」
「そうです。いきましょう」
「まあ、しょうがないね。このままふつうの学校には行けないし」

 学校、おばけの学校はマナブの家の近くにあります。マナブが人間のときにはぜんぜん場所がわかりません。でもおばけになったマナブにはすぐにわかりました。地ぞうの道の奥です。
 学校の門の外には校長先生が、あ、いや胸には「大校長」の名ふだをつけたままでした、立っていました。大校長先生のとなりに身長が2メートル以上ありそうな、オニが立っていました。

「たいへん申しわけないです、マナブ君。いや、マナブ様。ぜひ、お力をおかしください」
大校長先生がいいました。マナブがおばけにもどったのは、学校のおばけたちが関係がありそうでした。
 
 おばけの学校では、現代のおばけ事じょうについて、分せき、けんとうを行っていました。そして、おばけ事じょうはあまり明るくない、とけつろんしました。おばけはわすれられつつある、どうにかしなくては、と。学校に入ると大校長先生がマナブにせつ明しました。
「そこでおばけ地ぞう先生が、おばけプログラムを考えたのです」
「おばけのプログラムって、なにをするんですか?」
「そりゃあ、きまってます。おばけかつどう、つまり人間や人間のペットをおどかすのです。それがおばけのしごとです」
「コンピュータのプログラムでするんですか?」
マナブが聞きました。
「はい。そしてけいたいたんまつなんかでも、動くんだとか。そうすれば、世界中がかつやくの場になると、まあそんなところです」
大校長先生、じつはあまりくわしくは、なさそうでした。
「それを実けんするんですか?」
「はい。ちゃんと動作、つまりコンピュータを使っている人を、おどかすことができるのか、という実けんを、しようとしています。そしてその実けんに、立ちあっていただきたいのです。マナブ様」
「どういうことをするんですか?」
「げん場に行きましょう。地ぞう先生のところに」
大校長先生とマナブたちは、学校の中のあるへやに行きました。
「ここです」

 そのへやにはつくえがあって、コンピュータが一台置かれていました。ノートパソコンでした。
つくえの前にはおばけ地ぞう先生が、立っていました。口からはケーブルがのびていて、そのケーブルはノートパソコンにつながっていました。
「地ぞう先生は、直せつコンピュータとつながることができるんです。キーボードもマウスもいりません」
大校長先生が言いました。
「では。はじめましょう」
大校長先生が言うと、おばけ地ぞう先生がうなずきました。
 みんながノートパソコンの、画面をのぞきました。画面は何もうつっていません。
「マナブ様、キーボードにさわってみてください」
「はい」マナブがキーボードにさわりました。
すると、ノートパソコンがワニの、あの口の大きな、きばがたくさんの、頭に形を変え、マナブの手をぱくり、とくわえてしまいました。
「わああああああ」
マナブが手を引くと、手くびのさきが無くなっていました。
「わああ、どうしよう」
マナブがさけびました。
「マナブ様、おちついてください」
大校長先生は平ぜんと言いました。

 マナブがもう一度じぶんの手をみると、なんともありません。ちゃんと手はついていました。ノートパソコンもワニではなくなっていました。
「実けん、成功です。いや、よかった」
大校長先生がにこにことして、言いました。
「どうです? おどろいたでしょう?」
「ええ、すごくびっくりしました。これがコンピュータおばけなんですか?」
「そうです。このパソコンにネットワークをつないで、できあがりです。電気があればどこでも、おばけかつどうができます」
大校長先生が、ノートパソコンのそばにあったスイッチをオンにしました。
「はい。これでネットワークにつながりました。では、地ぞう先生、もういいですよ」
 その時でした、ノートパソコンとケーブルでつながったままのおばけ地ぞう先生が、ぶるぶるとふるえ、体から、ぴしっと音がきこえました。みんなが見ていると、ノートパソコンの画面におばけ地ぞう先生がうつりました。くるしそうな表じょうでした。
「た、たすけて」
ノートパソコンの画面で、おばけ地ぞう先生が言いました。
 マナブは、まだ実けんが続いているのかな、とぼんやり考えていました。しかし、
「これは、いけない。地ぞう先生、地ぞう先生」
大校長先生が地ぞう先生の体とノートパソコンの画面を交ごに見ながらさけびました。

 ノートパソコンの画面のおばけ地ぞう先生はもうくるしそうな顔はしていません。つくえの前のおばけ地ぞう先生の体はぴくりとも動きません。
「しょ君、もうよい、もうよいのです」
ノートパソコンの画面のおばけ地ぞう先生が言いました。
「なにがいいんですか? え? 地ぞう先生、だいじょうぶなんですか? え? あなたは地ぞう先生なんですか? それともおばけプログラムなんですか?」
大校長先生がノートパソコンの画面のおばけ地ぞう先生に言いました。
「わたしはもう、おばけ地ぞうではない。そして、ただのおばけプログラムでもないのですよ」
と、ノートパソコン画面のおばけ地ぞう先生。
「なんだか、よくわかりませんが、しかし、では、おばけ地ぞう先生はどうしたんですか?」
大校長先生が聞くと、
「わたしはおばけ地ぞうではないが、おばけ地ぞうでもあります。あらたなおばけなのです。コンピュータネットワークに住むおばけなのです」
画面のおばけ地ぞう先生がこたえました。
「どういうことですか?」
「つまり、古いおばけの時代は終わったのですよ。これからは私、いやたくさんのコピーの私たちが新しいおばけとして活やくするのです。ネットワークいっぱいに広がるのです」
「いやいやいや、何を言っているんですか? 地ぞう先生。じょう談はやめましょう」
大校長先生がんばります。
「しょ君のたちばをわからせてあげましょう。まずは、私の体にひびをいれるくらい強かったマナブ君。君だ。私をにらみなさい、とく意な大顔でね」
ノートパソコンの中の地ぞう先生が言うと、
「マナブ様、お願いします。思いきりにらんでみてください」
大校長先生がマナブに言いました。
「わ、わかりました。やってみます」
マナブはへやの天じょうに頭がつくくらい顔を大きくして
「ええいっ」
ノートパソコンの地ぞう先生をにらみました。
「ふふふふふふ、どうってことないぞぉ。ははははははは」
マナブは、にらんだ先がぜんぜん手ごたえのないものをつついている、そんなふうに感じました。マナブがもっと強くにらもうとしていると、ノートパソコンがそうじきの形に変わりました。そうじきはマナブを吸いはじめました。
「わっ、吸いこまれるっ」
マナブはさけぶと同時にそうじきに吸いこまれてしまいました。

 マナブは目を開けました。まわりのけしきは見たことのないものでした。どこかの山の中のようでした。マナブがまわりを見まわしていると、どさ、どさ、ふわとオニと子オニ、大校長先生が現れました。
「みなさん、ごぶ事ですか?」
大校長先生が言いました。
「ここは、どこなんですか?」
マナブが聞きました。
「ちょっとよくわかりませんね。オニ君、さぐってくれますか?」
「しょう知」
そう言うとオニと子オニは走り出しました。
「どういうことなんですか?」
マナブは大校長先生に聞きました。
「どうも、たいへんよくないことのようです。地ぞう先生の反らんというか、新しいてきの出げんというか」
オニと子オニがもどってきました。
「申しわけない。まったく場所のけんとうがつきません」
「そうですか。しょうがないですね。どうするか考えましょう」
 また、どさ、どさ、ぽん、ふわ、とだれかがやってきました。他のおばけのようでした。
「あなたがた、どうしたんですか?」
「はあ。いやあ、人間をおどかそうとしたら、その人間のもってる、ええと、スマホ? が急に大きな口になって、食われてしまって、気づいたらここにいました」
真っ白な長いかみのおばけがこたえました。他の口の大きなおばけも同じことを言いました。おばけの学校とは全ぜんべつの場所にいたおばけたちでした。
「おばけ地ぞう先生がやったのでしょうね」
大校長先生がため息をついて、言いました。

 マナブたちが飛ばされてきたのは、まだご前中でした。夕方になって夜になってもここがどこなのかわかりません。
「ここがどこなのか、あいかわらずわかりません。しかし、どうもいやな感じがします」
大校長先生がいいました。
「ここは人間がいないようです。感じられるはんいには1人もいません。ということは」
大校長先生はことばを切りました。
「どういうことなんですか?」
マナブががまんできずに聞きました。
「ここにいては、ほとんどのおばけは消えてしまいます」
「え? そんな」
「おばけというものは人間の心のあまった力を、いわば食べて生きているのです。人間がいないと心もありません。オニ君たちはごはんも食べますが、そのごはんもここにはありません。だからわれわれは全めつします」
「じゃあ、どうするんですか?」
だれかが聞きました。
「逃げましょう」
と大校長先生。
「どこへ逃げるんですか」
マナブが聞きました。
「さいわい今日は月が見えます。オニ君、うつるものは何かありましたか?」
「は、みずうみがありました」
そうです、マナブたちおばけは水やかがみに月をうつして、月まで飛ぶことができるのです。
 おばけ地ぞう先生に飛ばされたみんなは、みずうみにうつった月に飛びこみました。

 月にとう着したマナブたちはみんなで話しあいをしました。と言っても、けつろんらしいけつろんは出ませんでした。そうして、話しあいをしている間にも、月にやってくるおばけたちがいました。聞いてみると見たことのないおばけに、人間のいない場所にとばされたそうでした。こまったおばけたちは大校長先生と同じことを思い、月にやってきたのでした。
 大校長先生は、さすがにおばけの学校の校長先生だけあって、みんなのまとめやくになりました。マナブも祭りのときの活やくのおかげで、ゆう名でした。そのマナブがかなわなかったということで、地ぞう先生のコンピュータおばけは、やっぱり強いんだ、とみんななっとくしました。

 月にやってきたおばけのなかにノイマンさんというおばけがいました。えらい科学者の、昼ねのまくらに使われた事てんのおばけなのだそうです。
「そうじゃ、わしがおばけのノイマンじゃ。つくもがみ、ともよばれておる」
「ノイマン先生、コンピュータにくわしいんでしょ?」
「ま、くわしくないことも、ないがな」
なんかもったいぶってる、マナブは思いました。
「で、なにが知りたい?」
「はい、どうしたらコンピュータおばけをやっつけられるんでしょうか?」
「そうじゃな。ちょっと考えてみよう」
ノイマンさんは、
「ううん」
とうでをくんで、うなりつづけました。そして、
「そうじゃ、コンピュータおばけはな、コンピュータウィルスのようなものじゃ。だからワクチンプログラムを入れると動けなくなるはずじゃ。その手はどうじゃ?」
「はあ?」
「つまりコンピュータおばけだけをこうげきするプログラムを作るのじゃ。どうかの?」
「あ、わかりました。でも、どうやってその、わくちんプログラムをつくるんですか」
「コンピュータおばけのかけらがあればよい。それをもとにワクチンプログラムを作るのじゃ」
マナブは考えました。でもコンピュータおばけには近づくこともむずかしいのです。
「コンピュータおばけのもとになった、地ぞう先生の体はどうでしょう?」
こっそりかけらをとるくらいは、できそうに思いました。
「そうじゃなあ。なんとかなるかもしれん。もってこれるかね?」
 マナブは大校長先生に話し、地球に行くことにしました。他に子オニもついて行くことになりました。

「よろしくたのみましたよ。マナブ様」
マナブたちは大校長先生たちに見送られ、かがみにうつった地球に飛びました。地球につくとおばけの学校にむかいました。
「じゃあ、行くよ」
「はい」
 コンピュータのへやに入りました。マナブたちはコンピュータに見つからないように、地ぞう先生のいた場所に近づきました。ですが、
「これはこれは、マナブ君。来ると思っていましたよ。どうせワクチンでも作ろうとしているのでしょう。君たちの考えることはお見通しです。
 みなさんは、きっと月に飛んでこそこそしているのでしょうから、今度はもっとべつの場所に飛ばしてあげましょう」
コンピュータが大きな口に変わりました。マナブと子オニを一口に飲み込んでしまいました。

 マナブたちは、ぺっ、とはきだされました。こんどの場所はうちゅう空間でした。月と地球の両方が見えました。どっちに行くのもたいへんそうです。たいへんそうどころか、マナブはうごき方がわかりません。どうしようか、とマナブは考えました。
「マナブ様、マナブ様」
子オニが話しかけてきました。おばけどおしは空気がなくても話ができるのです。
「きゅうえんをよびましょう」
「そうしたいんだけど。どうやって?」
「はい、月にマナブ様の大顔をむけてよびかけるのです。もしかしたら、だれかこれるかもしれません」
「わかった、やってみよう」
 マナブは大顔で月をにらんで
「みんな、ぼくたちはここです。だれかたすけて」
そうねんじました。
 つづけてやるのはたいへんなので1時間に1回くらいかな、というくらいにマナブは大顔で月にねんを送りました。
 ねんを送って1日くらいたったころでしょうか。マナブがあきらめはじめたころでした。マナブたちに近づいてくるものがありました。ロケットでした。
「やあ、おまたせ」
ロケットには顔あって、にっこりとわらいました。
「あの、あなたは? むかえに来てくれたんですか?」
「そうですよ。月で君の声を聞いたおばけにたのまれました。わたしはブラウン」
 ブラウンさんはえらい科学者の研究室にあったロケットのもけいのおばけでした。だから月から飛んでこれたのです。子オニとマナブがまたがったロケットが月にむかって飛びました。マンガみたいなとび方だな、マナブは思いました。

 マナブたちはぶ事に月にもどりました。と言っても何もできずにもどったので、あまりうれしくはありませんでした。
「まあ、消えなかっただけ、よかったです」
大校長先生はなぐさめてくれました。

 みんなが月にいることはコンピュータおばけも知っているようでした。だから地球の見えるおもてがわは、い心地がわるいので、みんなで月のうらがわにい動しました。こっちにいれば地球からは見えません。
 さて、月のおばけはまた数がふえていました。月に人間はいませんが、人間の想いが集まってくるところ、と大校長先生が言いました、なのでおばけにはいい場所でした。だからずっとここにいてもへいきなのです。だけれど、それはおばけたちのプライドがゆるしませんでした。それにマナブは早く人間にもどってふつうの生活をしたい、という思いもありました。だからみんなはやく地球にもどりたいのです。でもコンピュータおばけがいる間はもどれません。みんなで
「はあっ」
とためいきをつきました。

「みんな、なにか来るみたいだよ」
月の空をみていたおばけが言いました。何かが月にむかって飛んできました。みんながその方向を見ました。地球から来たのでしょうか?
「ほう、ああいう形のロケットは知りませんな」
ロケットおばけのブラウンさんも知らないそうです。形はボールを半分にしたドームのようでした。
「あれ?」
マナブは思いました。ドームがたのうちゅう船はマナブが見たことのあるものでした。
 ドームがたうちゅう船が月の地面に着きました。中からは赤いうちゅう服をきた人間?が3人出てきました。1人が先頭でピストルみたいなものをかまえていました。なんだかびくびくしています。まあ、おばけにかこまれているのですから。2人は後ろではい色のカバンのようなものを1つ持って出てきました。カバンのようなものをおばけたちの前におくと、3人はにげこむようにうちゅう船に入りました。うちゅう船はすぐにとび立ちました。地球とは全ぜんべつの方向にとんで行きました。

「あれは、何だったんでしょう?」
大校長先生が言いました。
「ぼく、見たことあります」
マナブがこたえました。
「さすがマナブ様。あの正体をごぞんじですか?」
「いや、それは知らないんですが」
「はあ」
「前に月にきた時に、あのピストルみたいな光線じゅうでうたれたんです」
「それは、たいへんな」
「でも、なんともなくて、そしたらうちゅう船は、とんで行ってしまいました」
「ほう、かなわないのでにげた、と言うことでしょうね。うちゅう人だったのでしょうかね?」
「やっぱりそうなんですか?」
「もう行ってしまったので、わかりませんね。それよりもこのカバンです」
 うちゅう人? がおいて行ったカバンみたいなものがまだ地面、いや月面におかれたままでした。おばけたちがまわりをかこんで、見つめました。
 
 かばんから手がのびて出ました。手はカバンのとめ金をはずし、カバンをひらきました。カバンみたいなものはやっぱりカバンだったようです。でも自分で自分をあけるカバンです。
「おばけっぽいですね」
大校長先生が言いました。
「おばけなんですか?」
マナブは聞きました。
「それが、ふつうのおばけの力とはちがうのです」
「じゃあ、何なんですか?」
「よくわかりませんねえ。まあ、生き物ではないようですよ」
「じゃあ、うちゅうおばけかなあ」
他のおばけたちもみんな、何だろうと考えて、あれこれと言いあっていました。マナブがうちゅうおばけと言うとみんなが、そうか、そうだ、うちゅうおばけだ、と言いました。

 カバンからは人間のすがたのものが出てきました。というよりカバンは自分で自分を開けると、そのまま人間の形に変わったのです。大きさはオニと同じくらいでした。そして、
「ああああええええええいいいいいいううううう」
と言いました。もちろんおばけたちの頭の中にちょくせつかたりかけたのです。
「ことばはこれでいいのかおまえたちわたしのことばがきこえているかことばはこれでいいのかおまえたちわたしのことばが・・」
マナブにはっきりと聞こえました。大校長先生がみんなを代表するように、
「はい、よくきこえます。あなたはどなたなのですか?」
と聞きました。
「わたしはこのうちゅうのちょうてんにあるものところがもっとつよいものがいるというものたちがいるのでここにつれてこさせたのであるそれはなぐってもきかずうたれてもきかないとかたられた」
「それを語ったというのはさっきのうちゅう船のひとたちですか?」
大校長先生がそうきくと、
「さようであるそのものたちがこのほしでであったさあわたしとたたかえ」
 大校長先生はマナブを見ました。
「どうもマナブ様のことを言っているように思うのですが。どうなんでしょう」
「たしかに、この前のお祭りの夜に、あのうちゅう船と赤いうちゅう服の人たちに会いました。そんで、ぼうでたたかれたりピストルみたいな光線じゅうでうたれました。ぼくにはぜんぜんきかなかったけど。そしたら、すぐにうちゅう船はとんで行きました」
「まちがいないですね。このうちゅうおばけはマナブ様とたたかうために、ここに来たようですね」
「さあわたしとたたかえすぐにたたかえ」
うちゅうおばけがさいそくしました。
「しょうがないようです。マナブ様、たたかってください。マナブ様のとくいわざで、たおしてください」
マナブは考えました。と言ってもたたかうしかないんだろうな、と思いました。
「わかりました。やります」
マナブはけついしました。みんなの代表です。
「で、どういうふうにたたかうのですか?」
大校長先生がうちゅうおばけに聞きました。
「すべてのちからでこのばでたたかうのであるすぐにはじめるのである」

 マナブはうちゅうおばけとむき合いました。そして顔を大きくすると、うちゅうおばけをにらみました。
「おおおおおこれはなかなかであるなかなかつよいちからのもちぬしだしかしふんんぬ」
強い力がマナブの顔をねじりはじめました。マナブはていこうしました。でもだんだんがまんできなくなり、ついに
「だめだあ。ごめんなさい。こうさんです。みんなごめんなさい」
「さあわたしのかちであるほかにたたかういしのあるものはおらぬかええおらぬのか」
うちゅうおばけは他にあいてがいないかと聞きました。しかしマナブがとてもつよいおばけだということは、とてもゆう名でマナブに勝ったあいてとは、だれもたたかおうとはしませんでした。
「ではこれでみなのものわたしのつよさをみとめるがよいわたしのまえにひれふすがよい」
みんなの代表、マナブが負けたのです。みんなうちゅうおばけに頭をさげました。
「よろしいよろしいこれよりみらいえいごうわたしにしたがえ」
「ははあ」
 コンピュータおばけがあらわれてから、マナブはれんせんれんぱいです。月にいるおばけはうちゅうおばけの手下になってしまいました。

「では、わたしたちはこれから何をすればいいのでしょうか?」
大校長先生がうちゅうおばけに聞きました。
「ないぞなにもないぞおまえたちはわたしのまえにひれふしたあとはあんねいにすごすがよいわたしはまんぞくしているみなすきにすごすがよい」
「大校長先生、うちゅうおばけさんは、なんて言ってるんですか?」
うちゅうおばけの言うことがわからなかったのでマナブが聞きました。
「ええと、とくに何もないようですね。手下になっても何かすることもないようですね」
みんな、力がぬけるような、ほっとするような気分になりました。
「ところでわしはさんぽしてくるようすをみてくるぞ」
うちゅうおばけが月の表がわにむかって歩き出しました。みんなは、マナブも大校長先生もいっしょにうちゅうおばけについて行きました。
「そうかみなもついてくるかよいよいついてくるがよい」

 月の表がわに出ました。地球が見えました。
「あれはなんだあのほしはきれいなほしであるな」
「あれは地球です。われわれの生まれた星です」
「そうかうまれらほしであるかではなぜあのほしにおらぬのだ」
「それが、じつは、」
大校長先生がコンピュータおばけにみんながおいだされたことを話しました。
「それはなんということだわたしにしたがうものたちをおいだしたものがいるのかわたしはそのものとたたかわなければならぬ」
うちゅうおばけはコンピュータおばけとたたかうようです。
「みなのものよいかわたしはこれからちきゅうにいくぞみなのものはここでまつがよい」
うちゅうおばけは言うと地球にむけてジャンプしようとしました。
「お待ちください。地球にはこれを使ってまいりましょう」
大校長先生がかがみをとりだしました。

 大校長先生とマナブと子オニ、そしてうちゅうおばけがぶ事に地球にとう着しました。そして、おばけ学校に来ました。
「こちらです」
コンピュータおばけのうまれたへやに入りました。
「ではどれがこんぴゅーたおばけであるのだそのちいさなものかだいのうえのものか」
「この中におります」
大校長先生がノートパソコンをさしました。
「やれやれ、あなたがたですか? マナブ君もこりないですね。おや私の知らない顔がいますね」
すぐにノートパソコンが地ぞう先生の顔に形を変えて言いました。
「そなたがこんぴゅーたおばけであるかわたしにしたがうものをおいだしたものであるなではわたしとたたがうがよい」
「何を言っているのかわかりませんが、はいはい、先にほうり出してあげましょう。あなたがたもすぐにほうり出してあげますからね」
地ぞう先生の顔のコンピュータおばけが大きく口をひらくとぱくりとうちゅうおばけを口に入れてしまいました。
「ああ」
マナブたちは、あまりのあっけ無さにそう言うだけでした。しかし、地ぞう先生の頭とあごから手が2本にょきりとのびると、地ぞう先生の口を上下に開きそのまま顔をうら返してしまいました。
「あがががが」
口の中からうちゅうおばけがあらわれると地ぞう先生の顔は消えてしまいました。もとのノートパソコンがつくえにありました。
「こんぴゅーたおばけはこうさんせずにげたのであるこのうえはわたしはゆるさぬおいかけてたたきつぶしてくるのでそのまままつがよい」
うちゅうおばけはノートパソコンの画面から中に入ってしまいました。
 それからほんの数分でした。ノートパソコンの画面からうちゅうおばけが出てきました。
「さておわりであるこんぴゅーたおばけはいくつもいくつもすべてばらばらにこなごなにふんさいしたのである」
うちゅうおばけはコンピュータおばけに勝ったようでした。
 つくえの前にいた地ぞう先生がぶるぶるっとふるえました。そして、
「たすけて、 あれ? なんだ? なんともないですね。
 あの、こちらはどなたですか」
地ぞう先生はたすけをよんだ時のままのようでした。
「くわしいことは後で、お話しましょう。まず、こちらはうちゅうのおばけのしはいしゃの方です。そして、おばけのプログラムは中止です」
大校長先生がおばけ地ぞう先生に言いました。

 その後、月のみんなは、ぶ事地球に帰って来ました。うちゅうおばけ自しんは、地球に住むより月から地球をながめていたい、と言って月に住むことにしました。あいかわらず、し配すると言いながらとくに何のさしずもしていないようです。マナブが人間にもどることも、うちゅうおばけはすぐにゆるしてくれました。
「よいよいすきにそごすがよいわたしがうちゅうのしはいしゃであることをわすれなければすきにするのがよい」
と、いうことでした。

 マナブが人間にもどってから学校でコンピュータのじゅ業がありました。インターネットでのしらべ学習です。マナブはこっそりと、うちゅうおばけをけんさくしました。
『うちゅうおばけ
 マナブ様が宿てきのコンピュータおばけをたおすため、うちゅうからしょうかんした、さい強のおばけ。げんぞんするおばけでは、マナブ様に勝てるゆい一のそんざい』
とせつ明がありました。
「ちょっとちがうんだけどな」
マナブは小さな声で言いました。

#おわり
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...