<完結>追放された。おじさま執事長は元SSS冒険者。新しい仕事先で波乱の人生を送る。

書くこと大好きな水銀党員

文字の大きさ
1 / 14
執事長の復讐

執事長の銀時計

しおりを挟む

 ある日の昼下がり。私の部屋に暇で駄弁っている側近に疑問を投げ掛けた。


「おじさまの銀時計ってアーティファクトだよね」

「そうですね。それが……どうしました?」

「気にならない? 肌に離さず持ってるよね?」

「そうですね……ああ。でも」


 側近のオオコがソファーで座り、執事長が淹れてくれたコーヒーを飲み物を飲みながら天井を見る。


「部下の騎士達が見せてほしいとお願いした物で……実は執事長は断ったそうです。そう……」

「タブー」


 私はその噂を耳にしていた。だから気になった。


「ねぇ……触ってみたくない」

「……いいえ」

「そう……あのおじさまの匂いあるかもよ」

「!?」ピクッ

「見せてといって見せてくれるなら……おじさまの特別な人かも」

「!?!?」ピクッピクッ!!


 オオコの耳が張る。私は気にしてませんと言う素振りの癖に反応はする。


「オオコさん。行けや」


 年上だけど仲がいいのでため口である。執事長に見られたら怒られるだろう。


「ああん? 何よ……年下の癖に偉そうに命令して~」

「オオコさん。行けや」

「…………あああん!! 行ってやろうじゃないかぁ!!」


 トントン


「お嬢様? 悲鳴が聞こえましたが?」


 扉の向こうで執事長の声が聞こえた。悲鳴に聞こえて現れたのだろう。


「……むりぽ」

「な、何でもないわ」

「そうですか……何かあればお呼びください」


 執事長が去っていく気配がする。去ると言うより消えるだろうけど。


「はぁ……絶対むり」

「……オオコさん。駐屯軍団長なら行けや」

「おうおう!! 2回目の挑発か~頭は冷静よ!! 絶対に乗らないからね!!」


「……」見つめる。

「……」見つめ返す。

「……」まだ、見つめる。


「ああん!! やってやろうじゃないか!!」


 オオコが立ち上がり私を指差す。私は爆笑し……そのまま、机のベルを慣らしたのだった。








 数分後、執事長がノックして入ってくる。ベルを鳴らしたがすぐに来なかった事を執事長は謝った。


 理由を聞くと……父上が呼んでいたらしい。まーた父上が私用で執事長を使ったのだろう。まぁ相談役故に……作戦会議だったのかもしれないが。


 もしくは予算の話かもしれない。


「お嬢様。何でございましょうか?」

「用があるのは側近」

「何でございましょうか?」

「え、ええっと!!」(女に二言はない!!)


 私はオオコを見守る。オオコが恐る恐る話始めた。


「あ、あの……銀時計。綺麗ですよね‼」

「ええ。これですね……大切な物です」

「アーティファクトですよね?」

「はい。絶対に時間を間違う事がなく。傷がつかない壊れない物です。何百年でもですね」


 思った以上に凄いものだった。気になる!!


「あ、あの……見せてもらってもいいですか?」


 言った!! オオコ!! 言った!!


「………申し訳ありません」


 そして断られた!!


「側近殿でも……お見せする事は出来ないのです……あまり見せるものではないでしょうから」

「そ、そうなんですね……ごめんなさい。困らせて……ひぐ……ごめんなさい」

「あっ……」


 オオコが泣き出す。あの、軍団長が泣き出す。私はビックリしながらも……狐だしウソ泣きだと思って観察するが………どうもガチ泣きだった。


「オオコ殿!?」


 何故ならあの執事長が少し狼狽えているのだ。


「ひぐ……ごめんなさい。その…………執事長とは長い間がらだから……見せて貰えるかもと勝手に期待してごめんなさい……ひっぐ!! 私……執事長と仲がいいというおごがましい勘違いでした……ごめんなさい」

「あっ……いえ……仲の良さで見せるものでは……」

「ひっぐ……」


 オオコが地面にへたりこんで泣き出す。私はオオコの元へ行った。そして……執事長もしゃがむ。


「これを……」


 執事長の白い手袋の上にはハンカチがあった。オオコはそれを泣きながら受けとる。


 本当に好きなんだなと私は思った。


「オオコ殿……すいません。確かに軽率でした……オオコ殿はこれからも拙作琢磨し、共同で事に当たる仲間です。もう少し心を開くべきでしたね……どうぞ。確認ください」


 執事長がオオコの涙で折れた。私はおおっと驚きながら執事長の銀時計を見る。


 オオコも泣きながら濡れたハンカチでそれを掴んだ。


パカッ


 そして……銀時計を開ける。懐中時計らしく秒針と分針と時針があり。しっかりと時を刻んでいた。中身の金銀の歯車が全て見え、幾枚数が重なって動いている。しかし……それ以外は普通だった。


 オオコと私は顔を見合わせる。何も変わっていない……そう思っていたのだが。


「あれ?」


 オオコと私は気が付いた。蓋の裏に文字が刻まれている事に。



~王国期342年6月22日:キサラギ・ナイツ~



 知らない名前と王国側の暦の年数が掘られていた。絶対に壊れない傷がつかない筈なのについているのは執事長の力だろう。


 しかし……そんなことよりも私は申し訳ない気分になる。


「これは………なんでしょうか?」


 オオコは知っている筈だが察しは悪かったようだ。おじさまの口からこの説明は酷だろう。だから……オオコを小突いて耳に囁いた。


「!?」


 聞いたオオコがまた泣き出しそうになる。


「……ごめんなさい。好奇心で……ごめんなさい」

「いいえ。大丈夫です。お嬢様はご存知でしたね。お嬢様には見せてもよかったですね」

「……ごめんなさい。おじさま」


 私たちは銀時計を返す。立ち上がりおじさまに二人で頭を下げた。


ポスッ


「……気にしてません。私たちだけの秘密です」


 おじさまは気にしてないと嘘をつき、頭を撫でてくる。その優しさにオオコは泣いてしまい。私は……今さっきのオオコを煽った自分を殴りたくなったのだった。









 執事長は呼ばれたために退室する。そのあと、執事長が残してくれたレモンティーを飲みながら……ゆっくりと落ち着かせた。


「姫様……知ってたんですね」

「ううん……知らなかった。名前は初めて」


 察しただけ。


「執事長は……大切にしてますよね」

「毎日見てる」

「……」

「……」


 毎日見てると言うことは。毎日思い出していると言うことだ。


「…………」

「…………」


 なんとも重々しい空気の中で私は元気を出す。


「オオコ……忘れましょう」

「忘れる?」

「そう……執事長は覚えていてもああやって笑顔でいます。それに……執事長が忘れたくないのなら。それを応援するだけです」

「……そうですね!! 姫様」


 開き直る。


「彼女はいったいどんな方だったのでしょうか?」

「いつか話をしてもらえるように頑張りましょう……そう……頑張りましょう」


 私は執事長のおじさまが大切にしている理由と銀時計の文字が亡くなった仲間を忘れないための物だと言うのを今日知ったのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...