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9 王子がサティへ明らかに傾いていく
庭園の片隅、噴水の水音が柔らかく響く。サティは校則違反を隠しつつ、都合よく脚色した“自分の正義”を王子に語っていた。
「――あたくしはただ、学園をより良い場所にしたいだけなのですわ。
時に厳しく見えるかもしれませんが……みんなのためを思ってのことですの」
実際には
・寮内ランプの消灯時間破り
・休日許可なし外出
・髪飾り過多での服装違反
など、本人が常習犯なのに、うっとりと語る。
しかし王子は、その語り口に完全に心を奪われていた。
「サティ嬢……君は、なんと高潔で勇敢なのだろう」
(え? そこ?)とサティ自身は一瞬だけ思う。でも褒められているので黙って微笑む。
王子はさらに身を乗り出す。
「理想を声にするのは簡単だ。だが、実際に行動に移せる者は少ない。
君は……ただの規律ではなく、“学園全体の未来”を見ているのだな」
(あたし、そんな壮大な話したっけ?)と内心で首を傾げつつ、表面上は気品ある微笑み。
サティの曖昧な相槌を、王子は“慎ましい謙虚さ”と受け取った。
「控えめで、自分の功績を誇らない……それでいて信念だけは揺るがない。
こんな女性を、どうしてこれまで気づかなかったのだろう」
王子の視線は、もう完全にサティだけを追っている。
風吹くたび、サティの髪が揺れれば ――王子は息を呑み、
サティが少し微笑めば ――「凛としている……」と胸を押さえ、
サティが黙っていても ――「思慮深い沈黙だ」と勝手に高評価。
王子の世界ではすべてがバラ色に変換され続けていた。
やがて王子が立ち上がり、決意を込めた瞳で言う。
「サティ。君のような女性を、私はもっと知りたい。
……これから、私に君の考えを教えてくれるだろうか?」
うっとりした声。明らかに「興味」ではなく「恋慕」に近い。
サティは戸惑いつつ、しかし拒む理由もなく、
「は、はい……よろしければ」
と言葉を返した。
その瞬間の王子のまなざしは、もう“片想いの青年”そのもの。
こうして――
王子の中だけで美化され、誤解され、増幅された“サティ像”に、王子は完全に落ちていく。
「――あたくしはただ、学園をより良い場所にしたいだけなのですわ。
時に厳しく見えるかもしれませんが……みんなのためを思ってのことですの」
実際には
・寮内ランプの消灯時間破り
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など、本人が常習犯なのに、うっとりと語る。
しかし王子は、その語り口に完全に心を奪われていた。
「サティ嬢……君は、なんと高潔で勇敢なのだろう」
(え? そこ?)とサティ自身は一瞬だけ思う。でも褒められているので黙って微笑む。
王子はさらに身を乗り出す。
「理想を声にするのは簡単だ。だが、実際に行動に移せる者は少ない。
君は……ただの規律ではなく、“学園全体の未来”を見ているのだな」
(あたし、そんな壮大な話したっけ?)と内心で首を傾げつつ、表面上は気品ある微笑み。
サティの曖昧な相槌を、王子は“慎ましい謙虚さ”と受け取った。
「控えめで、自分の功績を誇らない……それでいて信念だけは揺るがない。
こんな女性を、どうしてこれまで気づかなかったのだろう」
王子の視線は、もう完全にサティだけを追っている。
風吹くたび、サティの髪が揺れれば ――王子は息を呑み、
サティが少し微笑めば ――「凛としている……」と胸を押さえ、
サティが黙っていても ――「思慮深い沈黙だ」と勝手に高評価。
王子の世界ではすべてがバラ色に変換され続けていた。
やがて王子が立ち上がり、決意を込めた瞳で言う。
「サティ。君のような女性を、私はもっと知りたい。
……これから、私に君の考えを教えてくれるだろうか?」
うっとりした声。明らかに「興味」ではなく「恋慕」に近い。
サティは戸惑いつつ、しかし拒む理由もなく、
「は、はい……よろしければ」
と言葉を返した。
その瞬間の王子のまなざしは、もう“片想いの青年”そのもの。
こうして――
王子の中だけで美化され、誤解され、増幅された“サティ像”に、王子は完全に落ちていく。
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