強引ぐ・マイ・ウェイ ~乙女ゲームは自分勝手でちょうどいい~

真田奈依

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10 勝ち誇り学園ライフ

 王城から正式に発表された王子の婚約者の座。
 サティは翌朝、誰よりも早く学園に現れた。
「まあ……今日は気分がいいですわね」
 校門をくぐる足取りが、明らかにいつもより軽い。
 周囲の生徒たちは一斉にざわめいた。
「見て、サティ様よ」
「正式な婚約者なんて……すごい」
「以前の校則チェックの厳しさも、“信念”だったということかしら」
(いや、それは違うけれど……まあいいか)
 サティは心の中で満足げに微笑んだ。
 王子の誤解がここまで大きな“評価”として広まったのだ。
 もはや誰も、サティの細々とした違反常習を覚えてなどいない。
 廊下を歩けば、見知らぬ下級生が深々と頭を下げる。
「サティ様、おはようございます」
「婚約、おめでとうございます!」
「ありがとう、ありがとう。皆さんも学園生活を楽しんでくださいませね」
(ふふ……学園という舞台、全部があたしのために整っているみたい)

 サティは中庭に行き、好きな場所に座った。
 すると、さっそく取り巻きの令嬢たちが駆け寄ってくる。
「サティ様、本日の授業のノート写し、お持ちしますわ!」
「いえ、私がサティ様のお茶をご用意します!」
(あらまあ。昔はあたしのこと避けていた子たちが……使い勝手がいいですわね)
 サティは微笑み、申し出を都合よく受け取った。
「まあ、皆さんがそう言うのなら。助かりますわ」

 さらに、昼休みになると――
 王子がわざわざ学園内に姿を現した。
「サティ、午後は時間があるか? 中庭を一緒に散歩しよう」
 いきなり婚約者特権を全力で行使してくる王子。
 周囲の生徒たちのざわめきは、もはや歓声に近かった。
「サティ様、素敵……!」
「王子殿下が自ら迎えに……!」
 サティは優雅に立ち上がり、わざとゆっくり王子に微笑む。
「ええ、殿下。喜んで」
(これよ、これ。これこそあたしが求めていた学園生活!)
 手を差し出され、腕を取る。

 中庭を歩くだけで、サティはまるで舞台の主役になった気分だった。
 王子は柔らかな声で囁く。
「サティ。私は君と共に歩めることが何より嬉しい。
君の想いをこれからも聞かせてほしい」
(“私の想い”というより“私の言い訳を拡大解釈したもの”だけれど……まあ、殿下が幸せならいいか)
 サティは満面の笑みを返した。
 太陽が降り注ぎ、花々が風に揺れ、誰もがサティを称賛し、王子はサティに夢中。
 ――サティは、学園生活の絶頂を楽しみ尽くしていた。
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